Balenne

  Balenne百詩篇第2巻32番に登場する語。近くでペストが発生するという形で言及されているため、地名の可能性が高いと思われるが、具体的にどこを指すのかには諸説ある。



  • エヴリット・ブライラーは、プリニウスも言及しているローマ近郊のトレブラニ (Trebulani) に近いとしつつも、むしろ中欧の地名のほうが文脈に合うとして、パンノニア (現在のハンガリーにほぼ対応) のボレント (Bolento) を挙げた。ボレントは古い地図では誤ってバレンノ (Balenno) と記載されることがあったというのが、その根拠である *4

  • ピエール・ブランダムールは「バレンヌは未詳のままである。アントニヌス・アウグストゥスの『諸地方の旅程』は、アルプス山頂から32マイルのアウレリア街道沿いにコスタ・バレネ (Costa Ballene, 鯨の海岸) という宿営地の存在を認識しているが、スロヴェニアのリュブリャナのことも想起される」 *5 と説明していた。ここで唐突にリュブリャナが候補に挙げられているが、語源的説明はない。高田勇伊藤進はバレンヌを未詳とした上で、リュブリャナについても「一説」 という形で紹介している *6 。同じく未詳としたジャン=ポール・クレベールも、リュブリャナとする説については、根拠不明とした *7

  • クレベールは、ル・ペルチエのラティウムの人々と見る説を好意的に示しつつも、むしろヴェネツィア北部の町ベッルーノ (Balluno) のほうが適合しているのではないかとした *8

  • マリニー・ローズは中欧の地名だろうとし、古代ギリシアのバレネ行政区 (le dème de Ballènè) が置かれた現在のカッサンドラ半島を挙げた。ほかに、離れている場所とした上で、フリュギアのバレナエオン山 (le mont Ballenaeon) や、日本(!)の鯨湾 (Baie de la Baleine)、アフリカの鯨たちの湾 (Baie des Baleines) なども挙げた *9 。ローズは詳述していないので、最後の2つはどこのことかよく分からない。日本で捕鯨といえば和歌山県の太地町が有名だが、太地湾を想定しているのだろうか (太地の捕鯨は17世紀の発祥なので、仮にローズが太地湾を想定していたのなら、この可能性は無視してよいであろう)。
  • また、ローズは Baleine だとすれば、くじら座の意味もあることを指摘した *10 。くじら座は魚座や牡羊座にも近いので、「くじら座」の近く、と読んだ場合、魚座 (双魚宮) や牡羊座 (白羊宮) の時期 (つまり2月下旬から4月中旬ごろ) の意味になるのかもしれない。

 いずれにせよ、ブライラーやローズが指摘するように、ダルマチアスラヴォーニヤと登場していることを考えれば、中欧の地名ないしそれと向き合うイタリアの地名の可能性が高いことは事実だろう。ゆえに有力候補はベッルーノ、リュブリャナ、ボレントあたりか。


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