詩百篇第12巻62番


原文

Guerres1, debats. 2 à Blois3 guerre & tumulte.
Diuers aguets. adueux inopinables4.
Entrer dedans chasteau Trompette5, insulte:
Chasteau du Ha6, qui en seront coulpables.

異文

(1) Guerres : Guerre 1780MN
(2) debats(.) : & debats 1672Ga
(3) à Blois : à blois 1668 1698L, a Blois 1672Ga
(4) inopinables : inopinable 1689PA 1689Ma
(5) chasteau Trompette : Chasteau trompette 1611A 1611B 1627Ma 1627Di 1650Ri, Chasteau-trompette 1644Hu, Chasteau Trompette 1649Xa 1667Wi 1672Ga 1689Ou 1689Be 1691AB, chasteau trompette 1653AB 1665Ba 1697Vi 1698L 1720To, Château-Trompette 1689PA 1689Ma 1780MN
(6) Ha : ha 1627Ma 1627Di 1650Ri

日本語訳

戦争、戦闘。ブロワでの戦争と喧騒。
様々な待ち伏せ、予想外の認可。
シャトー・トロンペットに入り、攻撃(を)
シャトー・デュ・アー(へと)、その件で有罪の者たちが。

訳について

 1行目 debat は「討論」以外に一般的な「戦闘」などの意味もある。
 3・4行目は前置詞などが明らかに不足しているので、文脈がつかみづらい。エドガー・レオニはほぼ逐語訳に近い。テオフィル・ド・ガランシエールの訳を踏まえるなら「シャトー・トロンペットとシャトー・デュ・アーに押し入った者たちは、そのことについて有罪であろう」とでも理解すべきかもしれないが、語順や言葉の補い方が不自然にも思える。当「大事典」の訳が最良と言うつもりはないが、補う言葉は最小限にとどめた。

 既存の訳についてコメントしておく。
 大乗訳について。
 2行目 「数人が期待できない知識をもって」*1は不適切。aveu (告白、自白。古語では「許可、認可」などの意味も)を「知識」とする理由も、aguets (罠、待ち伏せ)が訳に十分反映されていない点もよく分からない。
 4行目「ハーの城のなかへいき だれがせめられるべきだろうか」の後半は、qui を関係代名詞ととるか、疑問代名詞ととるかによる違い。

信奉者側の見解

 ジャン=エメ・ド・シャヴィニー(1594年)は、シャトー・トロンペットとシャトー・デュ・アーがボルドー市内に存在した城塞の名前であると指摘し、16世紀後半のフランスの情勢と解釈していた*2
 テオフィル・ド・ガランシエール(1672年)、ヘンリー・C・ロバーツ(1947年)、ジャン=シャルル・ド・フォンブリュヌ(1980年)も細部の見解はともかく、宗教戦争期のフランスと理解している*3

 1689年ルーアン版『予言集』に掲載された「当代の一知識人」の解釈では、「ボルドー市のシャトー・トロンペットの奇襲」とだけ書かれているが、いつの事件かは書かれていない*4。この解釈は1691年版や1710年版でも全く増補されていない。当時の人々にとっては自明な事件だったのだろうか。

同時代的な視点

 シャヴィニーやガランシエールの解釈は、詩の文脈に十分に沿っている。それは言い換えれば、例によって事後予言の可能性が疑われるべきだろう。

 仮に、16世紀よりも後の時期を指した予言だとしても、シャトー・トロンペットもシャトー・デュ・アーもフランス革命を経て、現存しない(トロンペットは取り壊され、フランス革命以降カンコンス広場になり、アーの跡地には現在、裁判所が建てられている)。そのため、予言の対象となりうる時代はフランス革命以前に絞られる。

その他

 1605sn 1628dR 1649Xa では62番(LXII)が42番(XLII)になっている。
 1672Gaでは52, 55, 56, 59, 62番が、なぜか4, 5, 6, 7, 8番という、不適切な通し番号が振られている。これは1685年版でも直っていない。


名前:
コメント: