未来からの大警告

 『 未来からの大警告 』は1986年に徳間書店から刊行された浅利幸彦の著書。前年に別の出版社から刊行された『神の正体』(全2巻)をアレンジした内容となっている。

内容

 浅利の後の著書『セザール・ノストラダムスの超時空最終預言』(1992年)と比べると、設定にかなりの違いがあり、この時点では彼の基本構想が固まっていなかったことがうかがえる。

 ノストラダムスについては、新約外典の『ニコデモ福音書』から

  • 世界の創造の時より五千五百年たった時に、地上に神の子が人の形をとって降りてくる *1

の前後を引用し、聖書における世界創造は紀元前4000年だから、そこから5500年後はノストラダムスが生まれた西暦1503年とほぼ重なるとして、この「神の子」をノストラダムスのことだと解釈し、ノストラダムス予言の正当性を主張した *2

コメント

 浅利自身が後に大幅に修正することになる世界観について逐一コメントをしても不毛なので、『ニコデモ福音書』関連についてだけコメントしておく。

 『ニコデモ福音書』の該当箇所は、イエスの復活に際して冥府が明るく照らし出され、それについて過去の偉人たち(イザヤ、洗礼者ヨハネ、アダム、セツ)がそれぞれに発言をしている文脈で、セツの発言の一部として出てくる。つまり、この「神の子」はイエス以外にありえない。イエスの復活に際して皆がイエスのことを話している中で、唐突にセツだけノストラダムスの話を出したなどと曲解するのはナンセンスである。
 浅利は前著『神の正体』では『ニコデモ福音書』からの引用を、『世界の奇書101冊』からの孫引きで済ませていたが、この『未来からの大警告』ではきちんと日本唯一の完訳である田川建三訳に依拠している。しかし、せっかくの完訳を手にしても、その中身をきちんと読まなかったのではないだろうか。

 また、西暦4世紀前後に成立した *3 『ニコデモ福音書』が、天地創造を紀元前4000年としていたかは大いに疑わしい。古くは、天地創造からイエスの時代までを5500年程度に見積もることはなんら珍しいことではなかったからである。たとえば、ヨセフス『ユダヤ古誌』(1世紀末)は5440年、ユリウス・アフリカヌス『年代誌』(3世紀前半)やオットー・フォン・フライジング『年代記』(1146年)は5500年、アウグスティヌス『神の国』(5世紀初頭)は5349年といった具合である *4

 さて、ノストラダムス自身は、天地創造からイエスの時代までをどう見積もっていたのだろうか。
 アンリ2世への手紙では、4757年(4758年)と4173年8ヶ月の二通りを挙げる一方、セザールへの手紙などにはエウセビオスに従ったリシャール・ルーサの伝統的な年代観(5200年)に基づくらしい記述もある。しかし、そのいずれを基準にしても、天地創造の5500年後が西暦1503年にならないことは、小学生にだって分かる。

 浅利によればノストラダムスが神の子だというのは聖書の中でも「奥義中の奥義」で、外典に入れて気づかれにくくしたのは「実に巧妙な仕掛け(トリック)」だというが *5 、小学生レベルの算数で反論できる話が奥義中の奥義とは、聖書を貶めるのにも程があるだろう。

売れ行き

 『SPA!』 1991年3月20日号の 「ノストラダムス本全58冊一覧表」(これには1991年までに刊行された主だった解釈書の発行部数が出ている) に掲載されていないため、正確な部数はわからない。本人は後に 「次作の出版に必要な最低限の読者を獲得できなかった」 *6 と述懐している。


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