ノストラダムスの2015年予言

  ノストラダムスの2015年予言 は、「ロシアの声」ほかロシアのメディアで報じられ、いくつかの日本語メディアでも紹介された。しかし、単なる与太話の域を超えるものではない。
 ここではロシアの声(日本語版)およびTOCANAの記事に基づいて、紹介と検証を行う(見出しに使った 「 」 付きの予言のフレーズらしきものはいずれもTOCANAからの引用。見出しのうち、「 」をつけていないものは要約など)。

 なお、ノストラダムス本人の予言で2015年と明記された予言は存在しない。

概要と検証

 ノストラダムスの2015年についての予言には、次のような項目があるという。しかし、具体的に検証するように、ノストラダムス自身の 『予言集』 から採られたフレーズはほとんどない。

「人々が王に税金を支払うことを拒否する」

 これは政府への反乱によって課税制度がなくなることの予言だという。

 しかし、このようなフレーズはノストラダムスの『予言集』には見当たらない。あえて近いものを探すとすれば、百詩篇第2巻28番の 「多くの人々を租税から解放するだろう」 がそれに当たるのかもしれないが、この詩には時期の指定はない。

「豚は人間の仲間になるだろう」

 ノストラダムスはこの言葉によって動物と人間が会話する方法が発明されることを予言しているという。

 あえて近いものを探すとすれば、百詩篇第3巻44番の 「飼い馴らされた動物が人へと大変な骨折りと跳躍の末に話しかけに来るであろう時」 あたりか。しかし、これも時期の指定がないし、素直に読めば人語を話すようになるというものではないだろう。
 あるいは百詩篇第8巻90番の 「聖職者の座に角の生えた牡牛を見るであろう時に、乙女の代わりに豚がその座を占めるだろう」 などという詩句もあるが、これは明らかに何らかの (否定的ニュアンスをこめた) 隠喩であろう。
 また、五島勉の『ノストラダムスの大予言』はセオフィラスの異本なるものに収められた断片のひとつとして 「それは人間というよりブタである」 *1 を挙げているが、これは明らかに偽作である。

 以上からすれば、この予言も単なる偽作と見なして差し支えない。
 なお、人類の祖先が豚とチンパンジーの交配によって生まれたとする仮説が出現していることとこの予言を結びつける意見もあるようだが、その進化仮説は遅くとも2013年に登場していた上に、奇説としてまともな専門家からは強い批判を浴びていることからすれば *2 、それをもってこの予言が的中したと見るのは無理があるだろう。

「王たちが森を奪い、空が開き、大地は熱で焼け焦げる」

 これは熱帯雨林の消失がオゾン層破壊につながり、有害な紫外線が降り注ぐことの予言だというが、そもそもオゾン層破壊の主因はフロンガスの使用などであって、森林の消失と直接的な因果関係はないだろう。地球温暖化とオゾン層破壊を混同した者による偽作ではないだろうか。

 ノストラダムスの予言にはこのような詩はない。あえて近いものを挙げるなら百詩篇第6巻35番の 「それが焼くだろう、大平原と木々と都市を」 だろうか。その詩には確かに星位らしきものがあるが、「白羊宮、金牛宮、巨蟹宮、獅子宮、処女宮、火星、木星、太陽」という曖昧なものであり、2015年を特定しているかは疑問である。ちなみに、信奉者側の解釈になるが、ジョン・ホーグはその星位を1987年、1998年、2011年などと結び付けていた *3

「富裕層の恵まれた未来はなくなり、彼らは幾度となく衰退していくだろう」

 この予言は、世界経済の危機的状況を予言したものだという。しかし、このような予言はまったく見当たらない。
 かなり無理やり近そうなものを探すとすれば、百詩篇第5巻32番の 「全てが良好にして順調で、太陽と月 〔=金と銀〕が豊かにある場所。その破滅が近づいている」 あたりか。しかし、これまた時期の指定がなく、2015年と解釈しうる根拠はない。

「今から千年も経たずして地獄の部屋が足りなくなったとき、葬られた死者は彼らの墓から這い出てくるだろう」

 これは死者の復活を予言したものだという。
 一連の2015年予言の中で、明確に元ネタを特定できる唯一の予言である。明らかに百詩篇第10巻74番の 「生じるだろう、千年紀の大きな年代から遠からずして、被葬者たちが墓から出てくるだろうことが」 が下敷きになっている。しかし、「地獄の部屋」云々はまったく原文になく、粗悪なアレンジに過ぎないことが明らかである。

ヴェズヴィオ山の噴火

 イタリアのヴェズヴィオ山が2015年後半から2016年前半に噴火し、大きな被害をもたらすという。
 もしも本当に、ノストラダムス予言の中に時期を明記してヴェズヴィオ山の噴火を予言したものがあるのなら、池田邦吉『ノストラダムスの預言書解読』シリーズ『21ノストラダムス』シリーズなどでヴェズヴィオ山の噴火時期を1999年、2003年、2007年などと解釈して次々と外すようなことはなかっただろう。

 もちろん、2015年から2016年にかけて噴火しないなどと断言できるものではない。ヴェズヴィオ山は歴史上何度も噴火しており、近く噴火したとしても何の不思議もない。しかし、それはノストラダムスと何の関係もない、それだけの話である。

アメリカで大地震が起こる

 アメリカ西部で地震がおき、続いて火山の噴火も起こるという。これもまたすぐ上の予言と同じ構造である。環太平洋造山帯に含まれるアメリカ西海岸でなら、大地震が起こる可能性は常にある。それが2015年だったとしてもおかしくはなかったが、それはノストラダムスの予言と関係がない。

 クロケットの四行詩には、既存の詩篇を改変した 「平和な岸辺 〔=太平洋沿岸〕 に近い世界の庭園は山の断層の小道にあるが、巨大な水槽に沈み込む」(仮21番) などという予言があるが、これは単なる偽作である。

医学の進歩で寿命が200歳に

 長寿に関する薬の開発で200歳まで生きられる人が現れる一方、太陽放射(有害な紫外線?)のせいで早死にする人々が多く出るという。

 しかし、ノストラダムスの予言にはこんなものは見当たらない。だいたい、2015年に本当に長寿の秘薬が開発されていたとしても、それを飲んだ人間が200歳まで生きられると、2015年の時点でどうやって確認するつもりだったのだろうか。

出産が許可制に

 一部の国では産児制限が厳格になり、出産が許可制になるという。

 しかし、こんな予言もまた、ノストラダムスには見当たらない。そもそもノストラダムスの時代は戦争や疫病による死亡率も高かったはずで、産児制限によって人口を調整しないといけないほどに人があふれる世の中というのは、彼の想定の範囲外だったのではないだろうか。百詩篇第1巻63番の 「災厄が通り過ぎて、人々が減らされる」 など、さまざまな人災・天災などでの人口減少を仄めかす予言は多いが、政策的な人口調整と解釈できそうな予言は見あたらない。

 なお、よりによって2015年は、産児制限で有名だった中国政府がいわゆる「一人っ子政策」廃止を打ち出した年となった。まったくもって皮肉というほかない。

付記

 ノストラダムス予言の時事的偽作というのは、19世紀まではよくある話だった。ノストラダムスの生前に刊行された偽の暦書はもとより、彼の死後も 『ノストラダムスによる西暦○○年から○○年までの○年間の予言』 といったパンフレット類は数え切れないほど刊行され続けた。

 2015年予言は、そうした時事的インチキ予言の一変種とみるべきだろう。2015年はジョン・タイターが第三次世界大戦で30億人死ぬと予言した年であり、2012年に騒がれたマヤ暦についても計算間違いで2015年とする説も登場している。ノストラダムスもこうした風潮に関連付けられる危険性があるので、 ノストラダムスは2015年を明示した予言など一つも残していない という事実を、あらためて明記しておきたい。

 なお、2036年の未来からやってきたという設定のジョン・タイターについては、状況証拠からその正体となる人物(兄弟)を推定する見解もある。そのあたりの検証は当「大事典」のテーマから外れるので扱わないが、詳しくは 『検証 予言はどこまで当たるのか』 にて、ASIOS会長の本城達也が展開している検証を参照のこと。また、同書の別項目ではマヤ暦についての考察も展開されている。2015年説に直接触れているわけではないが (それは言い換えると同書が執筆された2012年上半期には2015年説がほとんど知られていなかった証拠でもある)、そこで展開されている検証は、マヤ暦が2015年の激変を予言していると考えることの馬鹿馬鹿しさを確信させてくれるだろう。

外部リンク

2015年予言の情報源として使用したのは以下の2サイトである。


コメントらん
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  • ノストラダムス予言と公開された解釈は、強欲と欺瞞と快楽に溺れた研究者と民衆の吹聴。真の理解者は言を慎むので愚者の目に触れること絶対に無い。ネットで読める=エンタメ=外れ、である事は間違いない。 -- れもん (2016-01-01 14:23:48)
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