御言葉 (
みことば) は、『
聖書』の中の様々な文脈で登場する語である。
ことに、『
新約聖書』中の『ヨハネによる福音書』冒頭での登場 (ロゴス論、ロゴス讃歌)は、キリスト教の三位一体説において第二位格のイエス・キリストを指す語として理解される根拠となった。
なお、『ヨハネによる福音書』のロゴス論は、もともと福音書の原著者 (ヨハネ福音書は文体や思想の齟齬から、単一の著者によるものではなく、原著者の作品を別人が大きく加筆したという説がある) が参照した別の資料にあったものと考えられており、洗礼者ヨハネの支持者の間で流布していたロゴス讃歌に対し、その解釈を正す目的で冒頭に引用されているという説もある。
【画像】 田川建三 『新約聖書 訳と註・第五巻 ヨハネ福音書』
訳語について
『ヨハネによる福音書』冒頭の Logos の訳語は、
- フランシスコ会訳では「み言葉」
- バルバロ訳および共同訳では「御言葉(みことば)」
- 文語訳・口語訳・新共同訳・聖書協会共同訳では「言(ことば)」
- 新改訳および岩波の新約聖書翻訳委員会訳では「ことば」
- 岩波の塚本虎二訳では「言葉(ロゴス)」
- 田川建三訳では「ロゴス」
となっている (カッコ内に示したものはルビ)。田川は原語をそのままカナ転写することの不適切さを認めつつ、原語が持つ意味あいの広さを表現するための止むをえない措置である旨を表明している。
Logos にはラテン語の Verbum が当てられ、フランス語では le Verbe や verbe divin と表現される。
ノストラダムス関連
『予言集』には le Verbe が1回、divin verbe が4回登場しているが、
ピエール・ブランダムールらの分析によれば、いずれも三位一体と結びつくロゴスの意味で用いられている(verbeの登場箇所は他にない)。
当「大事典」では特に訳語の使い分けはせず、le Verbeも divin verbe も 「みことば」 と訳しておく。なお、前述のように、ヨハネ福音書の当該箇所を「みことば」と訳すのは、最も普及していると思われる新共同訳が採用していないこともあり、現在では一般的とは言いがたいかもしれないが、宗教的な用語であると見当を付けやすくするために、あえてそのように訳出したものである。それ以上の宗派的理由などを込めた選択ではない。ただ、少なくとも公刊された文献では王党派カトリックの姿勢を示していたノストラダムスの詩の訳語に、フランシスコ会訳やバルバロ訳と一致する訳語を採用することには、特段の問題は生じないものと考えられる。
le Verbe
divin verbe
【画像】 『聖書(旧約聖書続編付き) 聖書協会共同訳』
【画像】 フランシスコ会聖書研究所『聖書』
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最終更新:2015年01月13日 22:50