rubriche

 rubriche は現代フランス語にない単語。DMFでは、rubrique とともに「民法ないし教会法の書物の題名」(Titre des livres de droit civil ou canon)、「法廷の議事録」(Procès-verbal d'audience)、「典礼規則」(Règles de la liturgie) の意味とある*1。これらの意味は現代語では rubrique が担っている。

 この語源は DMF にも明記されているようにラテン語の rubrica で、その本来的意味は「赤土」である。
 ただし、そこから転じて、ラテン語の時点で「赤文字」「法規の項目(朱書された)」「法律、典礼規則」などの意味があった*2

 DFEだと rubriche は「代赭石」(rudle / ruddle)、「オーカー」(oaker / ochre)、「鉛丹」(red lead)、「赤いチョーク」(red chaulke / red chalk)、「赤い印用の石」(red marking stone)とあり、何らかの鉱物由来の赤色顔料 (オーカーは一般に黄土だが、赤い場合も含む*3) の意味しか載っていない。

 アナトール・ル・ペルチエはイタリア語の rubrica からとして「策略」(ruse, finesse) の意味を導いている。
 手許の伊和辞典に依拠する限りでは、そういう用法は見当たらないが、『ロベール仏和大辞典』には、rubrique の古語としての用法として 「策略、狡猾さ」 とあるので、そうした用法があるのは事実だろう。
 ただし、マリニー・ローズによると、その意味が用いられていたのは17世紀と18世紀の話らしい*4
 ゆえに、16世紀のノストラダムスの作品に「策略」の意味を読み込むのは無理がある。
 実際、ローズが挙げているのは、赤土や赤粘土、あるいはそこから派生した朱書関連の用法で、ピエール・ブランダムールも赤土、赤粘土しか挙げていない。

登場箇所



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最終更新:2015年03月20日 23:58

*1 DMF, p.566

*2 『羅和辞典』

*3 『ロベール仏和大辞典』

*4 Rose [2002c]