山口敏太郎

  山口敏太郎 (やまぐち びんたろう、1966年 - )は、作家、漫画原作者で、(株)山口敏太郎タートルカンパニー代表取締役。放送大学大学院修士課程修了(学位請求論文は「インターネット時代における異界観」)。
 妖怪、都市伝説などに関する著書が多数あり、テレビ出演のほか、妖怪関連の町おこしのプロデュースなども行なっている *1

 著書に『未確認生物 超謎図鑑』『大迫力! 日本の妖怪大百科』などがある。


【画像】『大迫力! 日本の妖怪大百科』

ノストラダムス関連

 ノストラダムスについては、予言関連のコンビニ本やムックなどでいくらか取り扱われたことがある。その認識はウィキペディアをはじめとする幾つかのインターネットサイトを基にしたようなものだが、情報源を正しく読み取らずに一知半解によく分からない認識を披露している場面もしばしばである *2

 たとえば、監修書 『新都市伝説・2008年大予言』(コアマガジン) には、山口が原作を担当した漫画 「山口敏太郎vsノストラダムス&ジョン・タイター」 が掲載されている。これは、ヒステリックにノストラダムスやジョン・タイターの予言の凄さをまくし立てる先輩作家に対し、信奉者でありながら懐疑的知識も豊富な山口が逐一冷静に反論するという構図で描かれている。

 しかし、先輩作家を「妄信的な信仰は危険です」と諭している山口の認識にも首を傾げざるをえないものがいくつもある。その最たるものは

  • 彼が蔵書を焼いたのは明らかになっています その中に当時の予言書『ミラビリス・リベル』『栄えある学識について』などがあったのは間違いない つまり元ネタを消したわけです *3

という台詞であろう。この 「元ネタを消した」 というのは山口のお気に入りのネタなのか、大槻ケンヂとの対談本 『人生で大切なことはオカルトとプロレスが教えてくれた』(KADOKAWA、2015年) にも

  • 『諸世紀』(略)を書いた後で、ノストラダムスは弟と一緒に資料にした本を焼いているんですよね、元ネタが分からないように、証拠を隠滅しようとした形跡があるんです。/だからノストラダムスは古代の予言の総集編を作っていたことになるんです。 *4

などという形で登場しているので、前出の漫画の台詞も作画担当者の勇み足などでなく、本人の認識に基づくものだろう。

 たしかに、ノストラダムスが蔵書を燃やしたとされることはある。それはセザールへの手紙に以下のようなくだりがあるためである。

  • 隠秘哲学が排斥されている以上、たとえ長い間隠されていた何巻かの文献が私の手許にあったとしても、私はその度の外れた教えを提示したいとは思わなかった。しかし私はそれがもたらすものに憂えて、読んだ後にウォルカヌスに捧げたのである。それらが燃え尽きるまでに、空気をなめる炎は自然の炎よりも明るく、あたかも稲妻の輝きのような異常な明るさを放ち、突然に家を照らし、まるで大火災が起こったかのごとくであった。おまえがいずれ月や太陽 〔=銀や金〕 の全き変化の研究であるとか、地中や伏流の朽ちない金属の研究などに惑わされないようにと、私はそれらの文献を灰にしたのである。(第28節 - 第29節)

 弟と一緒に、などという話が出てこないのは勿論だが、一読して明らかなように、ノストラダムスは『予言集』を書いた際の参考文献を燃やしたなどとは一言も言っていない。あくまでも息子セザールにとって悪影響を及ぼすおそれのある錬金術関連の文献を破却したと述べているだけである。『ミラビリス・リベル』には錬金術関連の情報は含まれておらず、ノストラダムスが焼いた文献に含まれていたなどと決め付ける根拠はどこにもない。

 ノストラダムスが蔵書を残していたことは、彼の遺言書で、息子に 「全蔵書」 を遺す旨を明言していること (当「大事典」の区切りでいう8節後半) からも容易に推察できる。その多くは散逸してしまったが、少なくとも、アル=カビーシーの占星術理論の本や、コンファロニエリの料理本 (『化粧品とジャム論』の参考文献になった) はきちんと現存している (ノストラダムスのサインがあり、ミシェル・ショマラらが本物と認定している)。

 そもそも元ネタを分からなくするために蔵書を燃やすというのも意味不明な論理である。世界に1冊しかない写本を燃やしたというのならともかく、当時数百部単位で印刷されていたであろう文献のうち、自分の持っている1冊を燃やしたところで、第三者から見て元ネタが分からなくなるはずもない。
 たとえば、山口は前出の対談本で百詩篇第5巻38番の前半2行を紹介しているが *5これは当「大事典」の訳文を丸写しにしたものである。出典が全く書かれていないので、引用の要件を満たしておらず、明らかに不適切な転載となっている (誰が訳してもほぼ同じにしかならない詩ならまだしも、この詩がそうでないことはその詩の記事の「訳について」節を見て頂けば明らかであろう)。
 さてここで、山口が自身の手許にある(?)当「大事典」の訳文の閲覧記録や、自身の対談本を焼却したとしよう。それであの詩の訳文をどこから転載したのかが第三者に分からなくなる、などということがあるだろうか。

 また、上に引用した対談本の発言だと、「古代の予言の総集編」というのも意味不明である。西洋における「古代」はローマ帝国分裂の頃(4世紀)までだが、ノストラダムスの重要な典拠である『ミラビリス・リベル』に収められた予言の場合、4世紀に原本が成立していたと推測されている『ティブルのシビュラ』を除けば、収録されている20以上の予言の中に「古代の予言」に該当するものはない。

 山口にしてみれば、あくまでもエンターテインメント的な脚色の範囲だ、真面目に取らないでくれということなのかもしれないが、ウィキペディアに書いてあることすら誤読しているレベルの杜撰な調査に立脚した「エンターテインメント」は、読者を楽しませるというよりも、単に馬鹿にしているだけではないのだろうか。
 山口は妖怪に関する民俗学的研究で修士号を取得しているのだし、おそらくオカルト関連について相応のリテラシー能力を備えているものと思われる。しかし、それがことノストラダムス関連のコメントとなると全く発揮されないのは、当「大事典」としては遺憾という他ない。

 なお、ASIOS会長の本城達也は、『怪奇秘宝』(2016年9月)でオカルト番組を批評した記事の中で山口のスタンスに疑問を投げかけた際、「オールラウンドプレイヤーともいわれるが広さゆえに浅くなってしまう欠点もはらむ。ノストラダムス現象の愛好家などからは、その付け焼刃な知識を批判されている」 *6 と言及している。


【画像】 『新都市伝説・2008年大予言』


【画像】 『人生で大切なことはオカルトとプロレスが教えてくれた』

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