Morisque

 Morisque は「モール人の」の意味。現代フランス語では、Morisque と Moresque の2通りの綴り方がある。モール人(More)は北アフリカの民族名で、モーリタニアの語源になった。

 ピエール・ブランダムールはユゲの辞書に基づく語釈として「トルコの」(turque)という意味も挙げている。これは明らかに本来の意味から拡大されたものだが、ノストラダムス自身の用例として「モール人の、つまりはムハンマドの一派」(la secte Morisque, ou Mahumetique)という表現も確認されており(『1565年向けの暦』)、彼がイスラム教徒の意味でも使っていたことが窺える*1

 詩百篇第3巻95番の la loy Moricque については、信奉者たちの間では「(トマス・)モアの法」と読み、モア(More)の主著『ユートピア』で提示された共産主義的思想と解釈されることがある。
 ノストラダムスの蔵書の中に『ユートピア』が含まれていたことは間違いない。これは、彼の署名入りの版本が現存することで確認されている。
 ただし、この事実が直ちに信奉者側の読み方を正当化するかは疑問である。


【画像】 沢田昭夫 訳 『改版 ユートピア』中公文庫

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最終更新:2009年03月10日 22:12

*1 Brind’Amour [1996] pp.457-458