Vstagois

 VstagoisUstagois)は百詩篇第4巻64番に登場するが、現代語辞典にも古語辞典にもない語(韻を踏む都合上、正しくは Ustageois と綴られるべきという見解もあるが、辞書にない点では同じ)。

  • マリニー・ローズはいくつかの地名に由来する語(つまりその土地の住民)を指す可能性を指摘し、地名の候補としてユスタリ(Ustaritz, ピレネー=アトランティック県)、ユステル(Uster, スイス)、ウースチー・ナド・ラベム(Ústí nad Labem, チェコ)を挙げた。他方、ローズは ustage (住居のために支払われる領主権)やラテン語の ustor (死体を焼く人)などに由来する可能性も挙げた。

  • ジャン=ポール・クレベールは、Eustageois ないし Oustageois が本来の綴りではないかと想像しつつも(どのみち辞書には見出されないつづりなので)意味は不明とした。

  • DALF で Ustage を引くと hostage の綴りの揺れであることが示される。その hostage の定義については「住居、館」(gîte, logement, demeure)とある*1。なお、hostage は現代語では otage (人質)である。『ロベール仏和大辞典』によると、館を意味する hostage が人質の意味になったのは、人質は領主の館に収容されるのが常だったためという。

  • 後の異本ではこの語は Villageois (村人)と書き換えられることが多くあった。これは単に bourgeois (都市民)と韻を踏んでいることから連想された書き換えだろうから、妥当性を持つとは思えない。


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最終更新:2015年11月21日 22:31

*1 DALF T.04, p.501