Saint Nicolas

 Saint Nicolas詩百篇第9巻30番に登場する。
 直接的な意味は「聖ニコラオス」で、サンタクロースのモデルになったとされるミラの聖ニコラオスや、ローマ教皇の聖ニコラウス1世など、この名を持つ聖人は何人かいる。

 ただし、登場箇所の文脈では港と結びついて登場しているので、地名か(その地の代表的な)建造物名と見るのが自然だろう。
  • エドガー・レオニはプーラのあるイストラ半島の北部、カポディストリア(コペルの別名)から湾を横切ったところに位置するサン・ニコロ (San Nicolo) としていたが、当「大事典」では該当する地名を見つけられていない。リチャード・シーバースの説明はほぼ同じだが、カポディストリアではなく、ポレッチの湾を横切るとある。実際、ポレッチの沿岸にはスヴェティ・ニコラ(聖ニコラオス)島がある。

  • ジャン=ポール・クレベールヴェネツィア近郊のサン=ニコラ=デュ=リド (Saint-Nicolas-du-Lido) だとしているが、明らかにフランス式の綴りのこの地名がイタリア語の何という地名に対応するのか、当「大事典」では該当する地名を見つけられないでいる。ヴェネツィアのリド(外洲)にはサン・ニコラ・アル・リド聖堂があるが、それのことだろうか。

  • マリニー・ローズはアドリア海のトレミティ諸島を構成するサン・ニコーラ島か、かつてオトラント近郊で栄えたサン・ニコーラ・ディ・カザーレ修道院ではないかとした。オトラントは「長い間ロンバルディーア人やノルマン人に対して抵抗を続けたビザンチン帝国の最後の砦であった」*1ため、ビザンチン(ビュザンティオン)やノルマンが登場する文脈にあてはまらなくもない。

  • ロジェ・プレヴォはイタリアのプーリャ州にある都市 (Ville) としている*2。州都バーリはミラの聖ニコラオスと縁の深い巡礼地であるので、その周辺にサン・ニコラを冠する町があっても不思議ではないが、どこのことかよく分からない。都市ではないが、プーリャ州には上記のオトラント周辺も含まれるので、サン・ニコーラ・ディ・カザーレ修道院も含まれる。ピーター・ラメジャラーは基本線としてプレヴォの読みを踏襲しているが、 Saint Nicolas には何の注記もしていない。


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最終更新:2016年05月26日 23:26

*1 『ミシュラン・グリーンガイド イタリア』p.206

*2 Prévost [1999] p.199