喇叭(らっぱ)は金管楽器の総称であり、吹口がすぼまり、反対側が朝顔のように開いている。もとは弁のないナチュラルトランペットを指しており、現在でも特にそれを指すことがある。語源についてはいくつかの説があり、サンスクリット語の rappa 、オランダ語の roeper 、古代中国で軍用信号機を意味した喇叭などからとされる。少なくとも17世紀の浮世草子には「らっば、ちゃるめら、万の物の音迄もゆたかに」といった用例がある。
旧約聖書ではハツォーツェラー(まっすぐな朝顔形の金管楽器)の訳語として「らっぱ」が用いられる。これはもともと非宗教的な楽器であったが、しだいに宗教的な儀式と結びつくようになった。また、雄羊の角笛(ショーファール)も「らっぱ」の一種とされ、ギリシア語訳聖書ではいずれも「サルピンクス」の語があてられる。
新約聖書における「らっぱ」は、軍事的用法あるいは宗教的用法で引き合いに出され、『コリント前書』『テサロニケ前書』などでは終末の合図としても用いられているほか、『ヨハネの黙示録』にも「らっぱ」を携えた天使たちが登場している。
【画像】YAMAHA YTR-2330 Bbトランペット
ノストラダムス関連
ノストラダムス『予言集』には、らっぱの訳語をあてうる単語がいくつか登場している。まずは
trombe ないし
trompe で、trompe は現代語でも「らっぱ」「らっぱ状の鳴り物」などの意味である。DMFには trompette という意味が載っている。語源はフランク語の擬音語 trumpa とされる。DFEには trompe の訳語として trump (らっぱ) と trumpet の二通りの英訳が掲載されている。
次が tube で、これはラテン語の tuba からとされる。現代でチューバというと低音の金管楽器を指すが、この用法の定着は19世紀以降のことであり、古代ローマでは「直管トランペット」を指した。
最後が trompe(t)te で、これは現代でもトランペットの意味で用いられる。ただし、現在のような弁のあるトランペットの実用化は19世紀以降のことであり、16世紀においては上記の trompe や tube とさしたる意味の違いはなかったであろう。なお、現代でも trompette にはトランペットだけでなく「トランペット奏者」「喇叭手(らっぱしゅ)」の意味がある通り、DMFでも「トランペットを吹く担当の兵」の意味が載っている。DFEは兵に限定せず、trumpet と trumpetter の二通りの訳語を挙げている。
当「大事典」では、ノストラダムスが想起した金管楽器を厳密に限定しがたいことから、上記の各種単語の訳語を区別せず、金管楽器の総称としても用いられる「喇叭」で統一し、このページへのリンクを貼った。なお、その吹き手に任じられた兵卒は明治時代の軍制綱領でも「喇叭手」と呼ばれており、こうした伝統的な呼称との統一性という観点からもこの訳語は好ましいものと考える。
【画像】正露丸(第2類医薬品)。この「ラッパのマーク」は喇叭手の信号喇叭に由来する。
登場箇所
- trombe
- trompe
- tube
- trompete
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最終更新:2016年11月19日 10:13