ノストラダムスの2017年予言


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ノストラダムスの2017年予言

ネットニュースなどでの報道

 毎年のことだが、ノストラダムスの2017年に関する予言なるものが出回っている (以下はいずれも外部リンク)。

  しかし、ノストラダムスの予言に2017年と明記されたものはない。
 実際、上に挙げた記事で紹介されている「予言」のほとんどは、ノストラダムス自身の具体的な書き物のどの部分に対応するのかも不明瞭な、書き手の単なる妄想の域を出ない。

 例外的に具体的な典拠が挙げられているのは、ドナルド・トランプと結び付けられている百詩篇第1巻40番などだが、これは具体的な年代の明記された予言ではない。

 また、ナポレオンを第1の反キリスト、ヒトラーを第2の反キリストと解釈し、第3の反キリストが27年間の戦争を引き起こすといった見通しを織り込んだものもあるが、百詩篇第8巻77番の通俗的解釈に過ぎない。その詩に言われているのは、反キリストが三(3人? 3か国?)を滅ぼすというもので、「第3の反キリスト」なるモチーフではない(そのように訳せる可能性が全くないとまでは言わないが、ナポレオン、ヒトラーに続く、といった解釈は20世紀の英語圏などで作り上げられたものに過ぎず、実証主義的には当然支持されない)。そして、当然この詩にも2017年という年数表示はない。

 ノストラダムスの2016年予言などに書いたことの繰り返しになるが、ノストラダムスの予言が新たに見つかり、それはたまたま発表された年以降を予言したものだったというストーリーは、過去数百年にわたり、使い古されてきたパターンだったといえるのである。そもそも出所すら示さずにノストラダムスがああ言った、こう言ったといった「予言」を示すのでは、新発見の由来を偽った上で予言をのたまうという伝統的パターンと比べてさえも、手を抜きすぎであろう。

2017年人類滅亡説

 『ノストラダムスの大予言』シリーズでおなじみの五島勉の著書、『ユダヤ深層予言』(祥伝社、1989年)で、「2017年5月15日」を終わりの日とする解釈が登場する。


【画像】 『ユダヤ深層予言』 Amazonへのリンク

 五島はダニエル書に登場する「69週」を69年と解釈し、イスラエル建国の1948年の69年後が予言されていると解釈したのである。そして、五島はノストラダムス予言と重ね合わせた「最悪の仮説」として、以下のような解釈を提示した。

  • まず一九九九年七の月、原子炉衛星の墜落や汚染災害が空から襲い、中東でも大戦が――第三次大戦といえるような惨禍がはじまって、宇宙兵器・毒ガス・ミサイル類が使われる。/地球はこれで荒廃し、多くの犠牲者も出るため、戦争はいったん止む。しかし戦った民族間の怨念はいっそう深まり、二〇一七年五月、第四次世界大戦が始まる。/これは超大国が介入し、一二九〇日つづく。しかし前々からの「日の出の天使」の必死の工作が効を奏して停戦、四五日後かろうじて新世界への歩みがはじまる、と解くのである。 *1

 すでに第三次大戦云々が外れているので詳しく踏み込むまでも無いが、念のため、「69週」についてコメントしておく。「69週」はダニエル書9章に登場する。しかし、これは前段を踏まえれば、エレミヤ書が下敷きになっていると分かる。『新共同訳聖書』からいくらか引用しておこう。
  • さて、わたしダニエルは文書を読んでいて、エルサレムの荒廃の時が終わるまでには、主が預言者エレミヤに告げられたように七十年という年数のあることを悟った。 (9章2節)
  • お前の民と聖なる都に対して/七十週が定められている。それが過ぎると逆らいは終わり/罪は封じられ、不義は償われる。とこしえの正義が到来し/幻と預言は封じられ/最も聖なる者に油が注がれる。/これを知り、目覚めよ。エルサレム復興と再建についての/御言葉が出されてから/油注がれた君の到来まで/七週あり、また、六十二週あって/危機のうちに広場と堀は再建される。/その六十二週のあと油注がれた者は/不当に断たれ/都と聖所は/次に来る指導者の民によって荒らされる。その終わりには洪水があり/終わりまで戦いが続き/荒廃は避けられない。/彼は一週の間、多くの者と同盟を固め/半週でいけにえと献げ物を廃止する。憎むべきものの翼の上に荒廃をもたらすものが座す。そしてついに、定められた破滅が荒廃の上に注がれる。(9章24節から27節)

 つまり、ガブリエルの託宣という形で「70年」を「7+62+1週」に置き換えており、リベラル派の聖書学者たちの見解では、1週間のように7年をひとまとまりとする単位で70『週』、つまり7×70=490年という期間の延長が行われたと見なされている。ダニエル書は紀元前6世紀を舞台とする文書だが、リベラル派によれば実際には紀元前164年ごろに作成された偽名文書と考えられており、490年はおよそバビロン捕囚から文書作成の時期、すなわち諸王朝の支配下に置かれた時期に対応する(細かい年代の対応関係にはいくつかの説がある)。
 つまり、五島のように週をそのまま年に置き換えるような解釈は、聖書学的には支持されていないし、こじつけの域を出ない。現代のイスラエル建国を基点にすることが支持されないのはもちろんだが、それ以前の話ということである。

 もちろん福音主義的な聖書理解(=聖書の字句は一字一句正しい)の場合、ダニエル書は紀元前6世紀のダニエル自身に遡るとされることから、「70週」の解釈についてもリベラル派より幅がある (それでも『BIBLE navi』のように、いくつかある説の一つとして、バビロン捕囚から紀元前160年代までの期間と見る説を紹介している文献はある)。ただ、70週を単純に70年とし、しかもそれを現代のイスラエル建国を基点として数えるなどという五島式の解釈が、リベラル派から以上に福音派から受け入れられないであろうことは、言うまでも無いことだろう。

 なお、ダニエル書12章に登場する1290日についてはシリアの記事で触れたので、そちらを参照のこと。

 この種の終末論解釈は、根拠がデタラメでも日付だけが一人歩きすることもしばしばなので、ノストラダムスという主題からはやや外れるが、念のため取り扱った。

参考文献

  • N.ポーチャアス 『ダニエル書 私訳と註解 (ATD旧約聖書註解)』 ATD・NTD聖書註解刊行会、1980年
  • W. S. タウナー 『ダニエル書 (現代聖書注解)』 日本基督教団出版局、1987年
  • 『新共同訳 旧約聖書略解』 日本基督教団出版局、2001年
  • 『BIBLE navi』 いのちのことば社、2011年
  • フランシスコ会聖書研究所 『聖書 原文校訂による口語訳』 サンパウロ、2013年
  • 『聖書 スタディ版』改訂版 日本聖書協会、2014年


【画像】 『聖書 スタディ版』


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