原文
Par Villefranche1 Mascon en desarroy:
Dans les fagots2 seront soldats3 cachez.
Changer4 de temps5 en prime pour le Roy.
Par de6 Chalon7 & Moulins8 tous hachez.
異文
(1) Villefranche : ville franche 1605sn 1649Xa, Ville-franche 1611A 1611B 1628dR 1644Hu 1649Ca 1650Le 1667Wi 1668 1689Ma 1689Ou 1689PA 1689Be 1691AB, Ville-Franche 1627Ma 1627Di 1665Ba 1780MN, Ville franche 1650Ri, ville-franche 1653AB, Ville Franche 1672Ga, ville-Franche 1697Vi 1698L 1720To
(2) fagots : fagors 1627Di, Fagots 1672Ga
(3) soldats : Soldats 1672Ga 1689Ou
(4) Changer : Changez 1689Be 1691AB
(5) temps : temples 1649Xa, tems 1697Vi 1720To
(6) Par de : Par 1697Vi 1720To
(7) Chalon : Châlon 1627Ma 1627Di 1697Vi 1720To, Chalons 1780MN
(8) Moulins : Molins 1611B
日本語訳
ヴィルフランシュ経由で、
マコンに混乱が。
兵士たちは柴の束の中に隠されるだろう、
初めの季節に王のために変える(目的で)。
シャロンとムーランでは全てが細切れにされる。
訳について
3行目の prime は「最初(の)」などの意味だが、古語では「春」の意味もあった。また、temps には現代語同様に「季節」の意味があった。とりあえず「初めの季節」と訳したが、
エドガー・レオニが「春」と訳しているように、そう受け止めて問題ないものと思われる。
4行目 Par de は、この場合どう訳すのが適切か、判断がつかない。
テオフィル・ド・ガランシエールは By と英訳しているが、ここでは In と訳したレオニに従った。
既存の訳についてコメントしておく。
大乗訳について。
1行目 「フランスの村によってマスコンは無秩序になり」の「フランスの村」は誤訳。ヴィルフランシュを逐語訳するにしても、『ロベール仏和大辞典』の franc の項目にも出ているように、「自由都市」とすべきだろう(franche は franc の女性形)。par を「~によって」と訳すこと自体はおかしくないので、「ヴィルフランシュ(または自由都市)によって、マコンに混乱が」といった訳は可能。
4行目「地引き網とひきうすによって かれらは断片を切りきざむだろう」は誤訳。「地引き網とひきうす」は、底本となった
ヘンリー・C・ロバーツで chalon & moulins と一般名詞のように書かれており、dragnets & mills と英訳されていたものをそのまま転訳したものだろう。確かに引き網を意味する現代語の chalut は古語 chalon から来ているらしいので、一般名詞として理解した訳としてはありうる。しかし、ロバーツ訳でさえ受動態になっているように、能動態で訳すのは意味が逆になってしまう。
信奉者側の見解
テオフィル・ド・ガランシエール(1672年)は、シャヴィニーほど細かく時期を絞り込まなかったが、国王とカトリック同盟の間での「内戦」(Civil Wars)、すなわちユグノー戦争に関する詩と解釈した。
ヘンリー・C・ロバーツ(1947年)もフランスの「内戦」(Civil war)と解釈したが、彼の場合はそれを未来形で叙述していた。なお、ロバーツの日本語版(1975年)では、その解釈が「フランス革命期の市民戦」と訳されているが、原文にフランス革命という単語はなく、未来形であることとも整合しないので誤訳と思われる。
ジョン・ホーグ(1997年)は、ヴィルフランシュ(ヴィルフランシュ=シュル=ソーヌ)、マコン、シャロン(シャロン=シュル=ソーヌ)がいずれもソーヌ川流域にあり、第二次世界大戦時にはソーヌ川を行き来する船の貨物などにレジスタンスが隠れて移動したことと結び付けている。
同時代的な視点
第11巻と第12巻の詩をノストラダムスが書いたという確たる証拠はなく、シャヴィニーによる偽作の可能性も疑われている。シャヴィニーの解釈は、逆にそれらの事件を基に詩が偽造された可能性も示すものである。
なお、ムーランは
詩百篇集の中で、この詩にしか登場していない(moulins / molins は
第9巻37番にも登場するが、そちらは一般名詞として「水車小屋」の意味)。
その他
1627Ma では97番(XCVII)が117番(CXVII)になっている。
1780MN では六行詩集からの通しで番号が振られている都合上、60番になっている。
また、18世紀終わりごろにリオン(Riom)で出された版では、92番になっている。
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最終更新:2018年11月10日 00:38