百詩篇第10巻71番

原文

La terre 1 & l'air 2 gelleront si grand eau,
Lors qu'on viendra pour ieudi 3 venerer,
Ce qui sera 4 iamais ne feut 5 si beau,
Des quatre pars 6 le viendront honnorer.

異文

(1) terre : Terre 1672
(2) & l'air : & lair 1610, l'air 1644 1650Ri 1653 1665, & l'Air 1672
(3) ieudi : Ieudi 1590Ro 1597 1600 1610 1611 1627 1644 1650Ri 1653 1665 1672
(4) sera : fera 1605
(5) feut 1568A 1568B 1568C 1649Ca 1772Ri : fut T.A.Eds.
(6) quatre pars 1568 1590Ro 1628 : quatre 1772Ri, quatre parts T.A.Eds.

日本語訳

大地と大気は非常に大きな水を凍らせるだろう、
人々が木曜日を崇拝しに来るであろうときに。
(未来に起こるであろう)そのことは、(過去には)決して美しいものではなかった。
四方から、人々はそれを賞賛しに来るだろう。

訳について

 ほかの行はほとんど議論の余地のない平易なものであるのに対し、3行目が少々分かりづらい。3行目については時制の違いが分かりやすいようにカッコ書きで説明を補足した。

 山根訳の後半2行「これから訪れようとする者 / 彼を敬いに訪れる少数の仲間の公正さにはとうてい及ばぬだろう」は、「少数の仲間」と訳されているのが quatre pars であろうが、根拠が今ひとつ分からない。また、jamais ne feut は直説法単純過去なので、「及ばぬだろう」と未来形に訳すのも疑問である。

 五島勉の訳では2行目が「恐れの木曜日が訪れる時」 *1 となっているが、「恐れ」に対応する語はない。彼の訳は3、4行目もかなり強引である。

信奉者側の見解

 テオフィル・ド・ガランシエールは聖木曜日(復活祭前日の木曜日)の大寒波(great frost)の予言としていたが、時期や場所などには触れていなかった *2
 ヘンリー・C・ロバーツは、人類が低級な神々(lowly gods)を崇めていた頃の氷河期が再来すると解釈した *3

 五島勉は地球温暖化が問題となっていなかった1973年には、ロバーツの解釈をアレンジして、人為的な汚染物質が引き起こす人工氷河期が到来することの予言としていた *4

 ロバーツの娘婿夫妻らによるロバーツ本の改訂版では、イギリス植民地時代のアメリカで感謝祭(Thanksgiving Day)が行われるようになった予言とする解釈に差し替えられている *5ジョン・ホーグも11月の第4木曜日を感謝祭として祝うアメリカに関連した予言としている *6 。この時期のアメリカはひどい寒波に襲われることがある(1行目)。アメリカでは、イギリス植民地時代の1621年に最初の感謝祭が行われた(2行目)。そして、世界中から多くの移民が集まる国として(4行目)、大きく成長することになった(3行目)。

 エリカ・チータムは、金曜日=イスラム、土曜日=ユダヤ教、日曜日=キリスト教のいずれにも属さないアンテクリスト出現の予言とした *7

同時代的な視点

 16世紀は小氷期にあたっており、現在よりも若干気温が低かった。ノストラダムスの予言にはしばしば寒冷な気候やそれが引き起こす凶作・飢饉というモチーフが出現する *8 。1行目もそうした視点で捉える必要があるだろう。

 2行目の「木曜日を崇拝する者」は「ユピテル主義者」とほぼ同じ意味であり、このモチーフはノストラダムスの予言に何度も登場する。はっきり特定されているわけではないが、当時の偏見に基づく噂話では、プロテスタントが聖木曜日にいかがわしい儀式を行っていたとされていたため、プロテスタントを指している可能性が有力視されている *9
 ただし、それだと後半2行はプロテスタントが優れた存在として世界中から賞賛されると述べていることになり、『予言集』を貫いている王党派カトリックの姿勢と矛盾する。ピーター・ラメジャラーは後半2行を皮肉ではないかと推測している。確かにそう捉えるほかはないが、こうした読み方が説得的かというと疑問も残る。


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  • ピルグリム・ファザーズの米国到着と感謝祭の設定の予言 -- とある信奉者 (2010-03-07 23:20:28)
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