Volsques

 Volsques はウォルスキ人(Volsci)を意味するフランス語である*1
 ウォルスキ人(ヴォルサイ人)は、古代イタリアの民族で、ローマの少し南に住んでいた。
 ティトゥス=リウィウス(リーウィウス)の『ローマ建国史』にも言及がある。

【画像】リーウィウス『ローマ建国史・上』

異説

 ジャン=ポール・クレベールマリニー・ローズは辞書通りに上の意味で捉えているが、アナトール・ル・ペルチエエドガー・レオニミシェル・デュフレーヌピーター・ラメジャラーブリューノ・プテ=ジラールらは、よく似た綴りの Volques と理解している*2
 これは Volces と同じ意味で、ウォルカエ人(Volcae)を指す。
 ウォルカエ人(ウォルカエ・アレコミキ人/ウォルカエ・テクトサゲス人)は、フランス南部のラングドック地方に住んでいたケルト系の民族である。
 ユリウス・カエサルの『ガリア戦記』に言及がある。

【画像】カエサル『ガリア戦記』

登場箇所


付記

 五島勉は「このヴォルスク(Volsques)というのは、仏仏辞典ではヴァンダル族のことだという*3としているが、事実に反する。
 当「大事典」で参照している仏仏辞典のうち、30万語以上をカバーするプチ・ロベール(2016年版)には掲載されていないが、プチ・ラルース(2015年版)には掲載されている。
 しかし、その語義は明らかにウォルスキ人を指している


【画像】プチ・ラルース(画像は2021年版)

 五島のいうヴァンダル云々は、ヘンリー・C・ロバーツが Vandals という訳語をあてていたことから創作したものであろう。
 だが、ウァンダリ人(ヴァンダル族)はゲルマン系の民族で、ウォルカエ人やウォルスキ人とは全く別である。

 ロバーツの参照元のはずのテオフィル・ド・ガランシエールの解釈では、Volsi という綴りとともにローマ近くに住んでいた好戦的な民族と紹介されており、明らかにウォルスキ人が想定されている*4
 それに対し、ロバーツがウァンダリ人とした語学的根拠は全く不明で、単に自分の解釈に合わせるために曲解しただけの可能性もある。


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用語
最終更新:2021年09月11日 23:13

*1 『ロベール仏和大辞典』

*2 Rose [2002c], Clebert [2003], Le Pelletier [1867b], Leoni [1982], Dufresne [1989], Lemesurier [2003b], Petey-Girard [2003]

*3 五島『ノストラダムスの大予言』p.168

*4 Garencieres [1672]