予兆詩第2番

予兆詩第2番(旧3番)1555年1月について

原文

Le gros airain 1 qui les heures ordonne,
Sur le trespas du Tyran 2 cassera.
Pleurs, plaints & cris 3 , eaux, glace pain ne donne.
V.S.C. paix, l'armée 4 passera.

異文

(1) airain : Erain 1555Br
(2) Tyran : tyran 1555Br
(3) cris : riz 1555Br
(4) paix, l'armée : paix. L'armee 1555Br

(注記)1555Brは最初に公刊された『1555年向けの新占筮』での表記。

校訂

 ベルナール・シュヴィニャールの校訂版は、当時 1555Br が行方不明になっていたため、ジャン=エメ・ド・シャヴィニーの転記に従っていた。しかし、1555Br と比べて無視できないのは3行目の異文で、cris(叫び)とris(笑い)では大きく意味が異なる。どちらが正しいかについては何とも言えない。

英訳原文

The greatbrase vvhich obteined the houre
Ouer the trespas of the milhoud,
Shal bruse vvepings. mournings, and laughters
VVaters, ye shall gene paine,
V. S. C. peace, the army shall go avvay

(注記)この原文は英訳版『1562年向けの占筮』における英訳である。非正規版での訳ということもあり訳の信頼性は疑問だが、同時代に出された資料的価値を考慮し、掲載しておく。なお、5行に分かれているのは原文ママ。

日本語訳

時を告げる大きな青銅器は
暴君の最期に際し、壊れるだろう。
涙、嘆き、叫び。大水と氷はパンを生み出さない。
V.S.C. 平和。軍隊が通るだろう。

訳について

 airain は青銅の意味で、青銅で出来た道具類も指す。ここでは「青銅器」と訳したが、文脈から素直に考えれば「青銅の鐘」のことだろう。
 前掲の英訳では、1行目の qui が導く節を2行目の tyran までとし、cassserを他動詞として、3行目前半までを繋げている。その場合、3行目前半までは「暴君の最期の時を告げる大青銅器は、涙、悲しみ、叫び(笑い)を壊すだろう」となる。あるいは「暴君の最期の時を告げる大青銅器は、涙と悲しみを壊すだろう。そして笑い」と訳せないこともない。

信奉者側の見解

 ジャン=エメ・ド・シャヴィニーは、3行目前半までを1572年のサン=バルテルミの虐殺やコリニー提督の死と結び付けており、残りの部分を1556年のギーズ公の遠征と結び付けている。V.S.C.については何の読み方も示していない *1

 エリゼ・デュ・ヴィニョワ(未作成)はナポレオン3世の死と結び付けている *2

 ジョン・ホーグは1555年12月にフランスとローマ教皇が協約を結び、ハプスブルクへの圧力を強めた事と結び付ける一方で、V.S.C. をチャーチル(Winston Spencer Churchill)と解釈して、第二次世界大戦における暴君(ヒトラー)の死とも解釈している *3

同時代的な視点

 「暴君の最期の時を告げる大青銅器は、涙、悲しみ、叫びを壊すだろう」あるいは「暴君の最期の時を告げる大青銅器は、涙と悲しみを壊すだろう。そして笑い」と読むなら、暴君の死が期待されているようにも読める。出版された時期(1554年)を考慮するなら、神聖ローマ皇帝カール5世か、オスマン帝国のスレイマン1世あたりが想定されているのかもしれない。ただし、どちらも死ぬのはもう少し後である。

 いずれにしろ、予兆詩は近未来に関する断片的なイメージの羅列という側面が強いので、百詩篇集と違ってモデルを特定する作業は困難もしくは不可能だろう。

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