詩百篇第8巻2番


原文

Condon & Aux1 & autour2 de Mirande
Ie voy du ciel3 feu qui les enuironne.
Sol Mars conioint au Lyon4 puis marmande5
Fouldre, grand gresle6, mur tombe dans Garonne.

異文

(1) Aux : aux 1591BR 1597Br 1603Mo 1606PR 1607PR 1610Po 1611A 1650Mo 1716PR, aus( ) 1590Ro
(2) autour : tour 1716PRc
(3) ciel : Ciel 1605sn 1649Xa 1650Mo 1672Ga
(4) Lyon : Dyon 1653AB 1665Ba 1840
(5) marmande 1568 1591BR 1772Ri : Marmande T.A.Eds.
(6) gresle : gresse 1650Ri, guerre 1672Ga

(注記)1590Ro の1行目の aux に対応する部分(下の画像参照*1)は異文が読み取れない。数文字ぶんの読めない文字は ( ) で表現した。

校訂

 marmande は当然 Marmande となっているべき。

日本語訳

コンドンとオーシュとミランド周辺、
私はそれらを取り囲む天からの火を見る。
太陽と火星は獅子宮で合となる。そしてマルマンド、
雷、大きな雹、ガロンヌ川に壁が落ちる。

訳について

 3行目は前半律(最初の4音節)で意味が区切れるとすると、「太陽と火星が会合するとき、リヨンで、次いでマルマンドで」と読むことが一応可能である。
 ただし、リヨンはこの詩に出てくる他の都市や川とは大きく離れており、適切な読みとは考えづらい。

 3行目後半から4行目前半は、意味が通るように前置詞等を補って訳すなら「そしてマルマンドでは雷と大きな雹があり」といった意味だろう。

 既存の訳についてコメントしておく。
 山根訳はほぼ問題ない。

 大乗訳は「コンドン オウ ミランデ」「マーマンド」と不適切な読み方が目立つ。
 また、3行目後半から4行目にかけてを「マーマンドはかがやき/城壁はガロンヌに落ちる」*2としたのでは、ロバーツの英訳と比べても、grand gresle(ロバーツの原文では grand guerre)に対応する訳が欠落していて不正確である。

信奉者側の見解

 テオフィル・ド・ガランシエール(1672年)は、挙げられている地名がギュイエンヌ地方やボルドー近郊のものである点を指摘しただけだった。

 エリカ・チータム(1973年)は該当する史実を見出せないとした上で、未来の情景とする可能性にも懐疑的だった*3

 セルジュ・ユタン(1978年)はフランス宗教戦争の様子を象徴的に描いたものではないかとした*4
 ボードワン・ボンセルジャン(2002年)は、マルマンド周辺に核兵器が落ちるのではないかと解釈している*5

 ジャン=シャルル・ド・フォンブリュヌ(1980年)は、2行目の「太陽と火星は獅子宮で合となる」を、「『太陽の労働』(=聖マラキの予言でヨハネ・パウロ2世と解釈される)がリヨンで戦火に見舞われる」といった意味に解釈し、近未来の第三次世界大戦の一場面と解釈していた*6

 パトリス・ギナール(未作成)(2011年)は3行目の星位の候補をいくつか挙げ、その中でも2064年7月22日を有力候補としていた*7

同時代的な視点

 詩百篇第1巻46番とよく似たモチーフであることはしばしば指摘されている。
 そちらとは違い、星位への言及がある分特定しやすいようにも見えるが、この星位は約2年おきに見られるものでそれほど特定性が高いわけではない*8

 しかし、ロジェ・プレヴォは1560年代にヨーロッパで流星が頻繁に観測されたことから、ここでの星位を1560年7月14日と1562年8月28日に結び付けている。
 この前後の時期には、1561年のガロンヌ川の大増水、テオドール・ド・ベーズが記録している1563年5月に3度降った激しい雷雨、1564年の南仏地震など、詩の情景に合う災害が頻発していたからである*9
 この解釈は十分に説得的だが、1558年版予言集が実在したのだとすれば、これらの出来事を下敷きにして書いたと見るのは難しくなるだろう。

 ピーター・ラメジャラーは、1536年12月のトゥールーズでの洪水と関連づけている*10


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詩百篇第8巻
最終更新:2020年05月12日 01:29

*1 画像の出典は Propheties on Lineによる。

*2 大乗 [1975] p.230

*3 Cheetham [1990]

*4 Hutin [1978]

*5 Hutin [2002/2003]

*6 Fontbrune [1980/1982]

*7 Guinard [2011]

*8 Brind’Amour [1993] p.265

*9 Prevost [1999] pp.130-131

*10 Lemesurier [2003b], id.[2010]