百詩篇第4巻92番

原文

Teste tranchee 1 du vaillant capitaine 2 ,
Sera 3 gettee 4 deuant son aduersaire:
Son corps pendu de la 5 classe 6 à l'antenne 7 ,
Confus 8 fuira par rames 9 à vent 10 contraire.

異文

(1) tranchee ou tranchée : trenchée 1605 1649Xa 1668A
(2) capitaine : Capitaine 1649Ca 1650Le 1660 1668 1672
(3) Sera : Seza 1610
(4) gettee : getté 1557B, gettée 1590Ro 1628 1772Ri, ietté 1588-89 1589PV 1649Ca 1650Le 1653 1665 1668 1840, iettee 1597 1600 1610 1611B 1627 1650Ri 1660, iettée 1644 1667 1672 1716, gette 1665
(5) la : sa 1557B 1568A 1568B 1568I 1588-89 1589PV 1590Ro 1649Ca 1668, sà 1650Le
(6) classe : Classe 1672
(7) antenne : ancienne 1600 1610 1627 1644 1650Ri 1653 1665 1716 1840, Antenne 1672, antemne 1588-89, entenne 1660
(8) Confus : Con fus 1610
(9) rames : rame 1627 1644 1650Le 1650Ri 1653 1665 1668 1840
(10) à vent : a vent 1589PV, avent 1672

日本語訳

勇敢な艦長の斬り落とされた首級は、
彼の敵の前に投げ棄てられるだろう。
彼の体は艦船の帆桁に吊るされる。
混乱した者は逆風に向かって櫂で漕いで逃れるだろう。

訳について

 山根訳は概ね問題ないが、4行目前半「周章狼狽 彼は櫂を使い」 *1 は、あたかも前の行までの「彼」と同一であるかのように読めてしまう点で、少々不適切ではないか(なお、山根訳はチータムの訳を忠実に訳しており、転訳としては誤訳ではない)。

 大乗訳1行目「頭は剛勇な大将に切り落とされ」 *2 は、そう訳せないわけではないが、不適切ではないだろうか。

信奉者側の見解

 五島勉は「強い中枢を持ち、細かく分けられる頭脳/櫂のようなアンテナによって保たれる」とかなり強引に訳した上で、これを現代のテクノロジーに関する予言と解釈した *3 。詩の内容それ自体よりも「アンテヌ」(アンテナ)という単語の使用を強調し、ラジオなどと関連付ける解釈は、ヘンリー・C・ロバーツエリカ・チータムにも見られる *4

 セルジュ・ユタンは「ある大将軍の悲劇的な運命か」 *5 というかなり漠然とした解釈しか付けていない。

同時代的な視点

 海戦で敗れた側の指導者の首が斬られ、頭も胴体も手酷い扱いを受けるという意味で、詩の情景はかなり分かり易い一方、特定性が高いとはいえないものである。ただ、エドガー・レオニジャン=ポール・クレベールのように、百詩篇第4巻83番に登場する「勇敢な艦長」と関連付ける者はいる *6

 信奉者は antenne という語をしばしば強調するが、当時は帆桁の意味で普通に使われていた。実際、ピエール・ブランダムールは、ジャン・ドータン(Jean d'Autun)の『ルイ12世年代記』から、ガレー船の帆桁(l'entenne)に吊るされた人物の記述を引用している *7


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