原文比較の凡例【旧版】

校異(原文比較)の基本的なルール

 「大事典」では、百詩篇についての各記事では原文の比較を行っている。その時のルールは以下の通りである。
  • u と v、i と j、s と z 等の違いは原則として異文とは見做していない。また、c や l の挿入や、複数になった際の語末の t, d 等の脱落についても同様である。ただし、各版の系譜を考察する上で有益と判断した場合には一部取り入れた。
    • (例)vn と un、ioinct と joint、grands と grans などは基本的に区別しなかった。

  • 綴り字記号の有無は原則としてすべて異文とみなした。ただし、17世紀以降出版されたもので、単につづり方が現代式になっているだけの場合は採録していない。このケースには -ee が -ée となっているものや、-és が -ez になっているものも含む。
    • (例)a と à は区別したが、estre と être は同じものとみなした。なお、1672は à を a と表記しているケースが非常に多いので、この版のみ à と a の区別を原則として行っていない。

  • ou と o は当時はほぼ同じ発音であったと思われるが、異文として区別した場合が多い。語中の ai と ei については、発音が同じこともあり、ピエール・ブランダムールにならい基本的に割愛した。ただし、この点でも、各版の系譜を考える上で有益と見なせる事例については採録した。

  • 単語が「大文字のみで書かれている場合」「語頭が大文字の場合」「全て小文字の場合」の3通りはいずれも区別した。なお、ここでも、u と v などの綴り字については上記と同じ基準をとった。
    • (例)DVVMVIRAT と DUUMUIRAT は同じものとしたが、Duumuirat とは区別した。

  • 文章の区切り方は全て底本に依拠し、他の区切り方は(底本の4行目末尾にポワン〔ピリオド〕がない場合も含めて)特に採録しなかった。ただし、略号と思われるポワンが省略されていたりヴィルギュル〔カンマ〕に置き換えられている場合、並びに他の版に見られない「?」などについては採録した。
    • (例)Orl. に対する Orl, や Orl など。なお、異文にヴィルギュル等を含む場合は、どこまでが異文なのか分かりづらい場合があるので下線で示した場合がある。

  • 異文の欄で用いた記号・略号の意味は以下のとおり
    • T.A.Es.・・・Toutes Autres Editions(それ以外の全ての版)
    • sauf~・・・「~(年版)を除く」
    • A partir de~・・・「~年版以降」(その年以降の全ての版を指す)
    • conj.・・・conjecture(推測)。研究者たちによる正しい原文の推定を引用した際に用いた。なお、ここには各論者が可能性を示しただけのものも含まれている。研究者名は略号で示したが、それについては別記する(cf.後出「校訂に使用した研究書」)。

底本

異文の典拠は全て略号を用いている。各略号の示す典拠は以下の通り。なお、ブノワ・リゴー版の分類記号は、パトリス・ギナールの2008年の論文以降、それを踏襲する論者が散見されるようになっているが、当「大事典」ではそれ以前の区分を基準にしている。混同しないようにご注意願いたい。

(1)予言集テクスト
  • [1555A][1555V] Les Prophéties de M.Michel Nostradamus, A Lyon, Chés Macé Bonhomme, M.D.LV.
    • 初版本。1555A はアルビ市立図書館の伝本で、1555V はオーストリア国立図書館の伝本を指す。両者が同じ場合には単に「1555」としている。



  • [1568]Les Prophéties de M.Michel Nostradamus, A Lyon, Par Benoist Rigaud, 1568
    • ブノワ・リゴーによる最初の完全版。複数のエディションがあることが知られている。ここではダニエル・ルソの分類法に準じた。差異がないときは「1568」でひとまとめにしている。
      • [1568A]グラス市立図書館の伝本。ギナールの分類では1568X
      • [1568B]リヨン市立図書館ミシェル・ショマラ文庫の伝本。ギナールの分類では1568A
      • [1568C]シャッフハウゼン州立図書館の伝本。ギナールの分類では1568B
      • [1568I]ポール・アルボー博物館の伝本のうち、1568と明記されているもの (S.389)。ギナールの分類では1568C

  • [1591BR]Les Prophéties de M.Michel Nostradamus, A Lyon, Par Benoist Rigaud, s.d.
    • ブノワ・リゴー版のポール・アルボー博物館の伝本のうち、年号の記載のないもの (S.391)。ルソの分類法に準じれば1568G、ギナールの分類では1568Yとなるが、明らかに1568よりも後の時代の特色を示していることから、整理、分類の都合上、ルソの年代推定に従って1591BRとした。当然、「1568」とまとめる版には、これは含めない。入手時期の関係から、一部の詩でしか反映していない。





  • [1597]Les Prophéties de M.Michel Nostradamvs.., A Lyon, Par les heritiers de Benoist Rigaud
    • マリオ・グレゴリオ所蔵の伝本。ここでは比較的一般的な推定年代によった。


  • [1603Mo]Nouuelle Prophetie de M. Michel Nostradamus.., A Paris, Pour Sylvestre Moreau
    • フランス国立図書館の伝本。第二部(第8巻~第10巻)しか含んでいない版なので、第一部の比較には使っていない。また、入手時期の関係で、第8巻の全てと第9巻以降の一部の詩の原文比較にしか使っていない。


  • [1607PR]Les Prophéties de M.Michel Nostradamvs..., A Lyon, Chez Pierre Rigaud
    • フランス国立図書館の伝本。略号はブランダムールのものを踏襲したが、実際には直下の1610よりもこちらの方が後の刊行であろう。



  • [1627]Les Prophéties de M.Michel Nostradamvs., A Lyon, Par Iean Didier
    • 1627年のジャン・ディディエ版。リヨン市立図書館の伝本。同じ年のユグタンの版は全く同じなので区別していない。


  • [1630Ma]Les Prophéties de M.Michel Nostradamvs., A Lyon, Pierre Marniolles / Estienne Tantillon
    • ピエール・マルニオルらの版。オーストリア国立図書館の伝本。刊行年推定に異論はあるが、とりあえずダニエル・ルソのものに従った。入手時期の関係から、原文比較に使っているのはごく一部の詩についてのみである。






  • [1650Mo]Nouuelle Prophetie de M. Michel Nostradamus.., A Paris, Pour Sylvestre Moreau
    • フランス国立図書館の伝本。第二部(第8巻~第10巻)しか含んでいない版なので、第一部の比較には使っていない。また、入手時期の関係で、一部の詩の原文比較にしか使っていない。


  • [1660]→ [1981EB]




  • [1716]Les Prophéties de M.Michel Nostradamus.., A Lyon, Par Pierre Rigaud..., 1566
    • フランス国立図書館の伝本を基本とし、ほか2種の異本との区別は一部の版でしか行なっていない。


  • [1840]Nostradamus, par Eugène Bareste. I. Vie de Nostradamus. II. Histoire des Oracles et des Prophètes. III. Centuries de Nostradamus. IV. Explication des Quatrains prophétiques. Orné d’un portrait authentique de Nostradamus, par Aime de Lemud, Paris, Maillet, 1840

  • [1867LP] Les Oracles de Michel de Nostredame, Anatole Le Pelletier, Tome II, 1867
    • 底本はピエール・リゴー版なので網羅的には使用していないが、1610と異なる原文の場合、言及したものがある。

  • [1981EB]Elisabeth Bellecour, Nostradamus trahi, suivi du texte original et complet des dix Centurie, édition de 1605, Paris, Robert Laffont, 1981
    • 巻末の「1605年版」は諸状況から推して本来の1605年版ではなく、新刊書籍の商人たち版(1780年~1800年ごろ)であることはほぼ確実である。ピエール・ブランダムールの校定版では [1660] と表記されているが、支持できない。当「大事典」でも当初は [1660] を使用していたが、誤解を招かないようにするため、[1981EB] を使う(ある時期以前に立てられた記事で [1660] とあるのは同じ版の情報である。順次、修正していく予定)。なお、そのような事情から「新刊書籍の商人たち」版も当「大事典」では参照可能だが、別々に記載することはしていない。

(2)百詩篇を引用している古い文献

  • [1592Pi] (le Seigneur de) Cormopede, Almanach des Almanachs le plvs certain pour l’An bissextil M.D.XCII, l’An des merueilles & d’estrange remuement..., A Lyon, par Iean Pillehotte.
    • コルモペードによる1592年向けの暦本。ノストラダムスの詩篇が一部で剽窃されている。

  • [1593Ri] (le Seigneur de) Cormopede, Almanach des Almanachs le plus certain pour l’an M.D.XCIIII..., A Lyon, par Benoist Rigaud
    • コルモペードによる1594年向けの暦本で、1593年刊行と推測されている。

  • [1594JF] Jean-Aimé de Chavigny, La Premiere Face dv Ianvs François,...extraite et colligee des Centvries et avtres commentaires de M. Michel de Nostredame..., A Lyon, Par les heritiers de Pierre Rovssin, M.D.XCIV.
    • ノストラダムスの秘書シャヴィニーによる最初の註解書。




(3)校訂に使用した研究書


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