予兆詩第10番

予兆詩第10番(旧11番) 1555年9月について

原文

Pleurer 1 le ciel 2 , a il cela fait faire? 3
La mer s'apreste, Annibal fait ses ruses.
Denys mouillé 4 , classe tarde, ne taire.
N'a sceu secret, & à quoy tu t'amuses? 5

異文

(1) Pleurer : Plorer 1555Br
(2) ciel : Ciel 1649Xa 1650Le 1668
(3) faire? : faire, 1555Br 1605 1649Xa
(4) mouillé : mouille 1605 1628 1649Xa 1650Le 1668
(5) t'amuses? : t'amuses. 1555Br 1605 1649Xa

英訳版原文

The heauen to vvepe he hath made,
The sea maketh her redy Annibal doth his toyes,
Dennys vvet ruell taried not to hold his peace,
Hath not knovven the secret and to vvhat thou dost bestovv.

(注記)この原文は英訳版『1562年向けの占筮』における英訳である。非正規版での訳ということもあり訳の信頼性は疑問だが、同時代に出された資料的価値を考慮し、掲載しておく。

日本語訳

天は涙する、それをなさしめたのか、と。
海は準備し、ハンニバル(未作成)は計略を実行する。
デニスは水浸しになる。艦隊は遅れ、鎮まらない。
彼は秘密を知らなかった。汝はそれを喜ぶのか。

信奉者側の見解

 ジャン=エメ・ド・シャヴィニーは、1行目を1555年冬にしばしば見られたセーヌ川の氾濫と結び付けている *1 。ハンニバル以降については、シャティヨン提督(L'Admiral Chastillon, ガスパール・ド・コリニーのこと)が1560年に計略をめぐらし、他の者たちとともにアンボワーズの陰謀を企んだこととしている *2

 アンリ・トルネ=シャヴィニーは、Denys を自らが主任司祭を務めていたサン=ドニ=デュ=パン(Saint-Denis-du-Pins)と解釈し、そこには自分が積み上げてきた解釈原稿のインクが溢れかえっている様を予言したと解釈したらしい *3

 ほかに、天が涙する事態を、1870年に手痛い敗戦を喫したセダンの戦いと解釈したエリゼ・デュ・ヴィニョワ(未作成)、ハンニバルが登場していることから百詩篇第2巻30番と関連付け、未来の北アフリカでのテロリストの潜水艦攻撃と解釈したジョン・ホーグなどがいる *4

同時代的な視点

 デニスがディオニュソスのことなら、マリニー・ローズが指摘するように、「デニスは水浸しに」というのは、収穫期のブドウが雨で台無しになることを示しているのだろう *5 。これは9月向けの予言としては自然なものである。

 この予言では、その雨が、何か地上での不穏な動きに対する涙雨であるかのように描写されているかのようにも読める。その地上での陰謀としてどのような事態を想定していたのかは今ひとつはっきりしない。


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