百詩篇第7巻73番

原文

Renfort de sieges1 manubis & maniples
Changez2 le sacre & passe sus le prosne3,
Prins & captif4 n'arreste les prez triples,
Plus parfond5 mis, esleué, mis au trosne6.

異文

(1) sieges : Sieges 1672
(2) Changez : Changé 1660
(3) prosne : pronsne 1672
(4) captif 1588-89 : captifs T.A.Eds.
(5) parfond 1588Rf 1589Rg : par fond 1589Me, par fonds T.A.Eds.
(6) trosne : Trosne 1672

(注記)底本は1588Rf で、比較に用いたのは 1589Rg, 1589Me, 1605, 1611A, 1628, 1649Ca, 1649Xa, 1650Le, 1660, 1668, 1672 である。リヨンで出された版などには原則として掲載されていない。

日本語訳

攻囲の援軍、戦利品と歩兵中隊。
司祭が変えられ、日曜説教を通過する。
取られた物と囚われた者を、三倍の賠償金が止めない。
より深きへ置かれ、持ち上げられ、高座に就けられる。

訳について

 大乗訳1行目「包囲 略奪 獲得物の保給は」*1は、maniplesが訳されていないか、何か誤った訳し方がされているように見える。
 同2行目「聖なる日に変わり プロンスンは通過し」は、ヘンリー・C・ロバーツの英訳 Holy day shall be changed and passed over the Pronsne*2と比べても誤訳だろう。なお、大乗訳でprosne(prône, 日曜のミサに行われる説教)が「プロンスン」と表記されているのは、英訳を見ての通り、テオフィル・ド・ガランシエールの誤記をロバーツが引き継いだのが原因である。
 同3行目はおそらく許容範囲内。「三重の野」は当「大事典」の訳とずいぶん違うが、prezをどう捉えるかの違いであろう。
 同4行目「さらに底から一人の人物が王位をもちあげるだろう」は単純な誤訳。ロバーツの英訳 Moreover, one from the bottom shall be raised to the throne.と見比べても明らか。

信奉者側の見解

 アンドレ・ラモンは、第二次世界大戦前の国粋主義が勢いを持っている世界情勢と捉え、高く持ち上げられる人物をアドルフ・ヒトラーと解釈した*3

 ジャン=シャルル・ド・フォンブリュヌは、ナポレオンが引き起こした戦争や、カトリック教会と引き起こした摩擦についてと解釈した*4

同時代的な視点

 この詩はもともと1561年2月向けの詩だった。これを百詩篇に組み込んだのは、バルブ・ルニョーの非正規版『予言集』が最初であり、百詩篇としての正当性を持っていない。


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百詩篇 第7巻
最終更新:2009年09月21日 14:02

*1 大乗 [1975] p.213. この詩の引用は以下同じページから。

*2 Roberts [1949] p.229. 以下この詩の引用は同じページから。

*3 Lamont [1943] p.146

*4 Fontbrune [1980/1982]