ノストラダムス大予言原典・諸世紀

 『ノストラダムス大予言原典・諸世紀』は、1975年にたま出版から発売されたノストラダムス予言の原文対訳集である。
 ヘンリー・C・ロバーツThe Complete Prophecies of Nostradamusを翻訳したもので、2020年現在では日本語として唯一の原文対訳だが、信頼性は低い。
 大乗和子訳、内田秀男(未作成)監修。

【画像】現行のカバー写真。初期のカバーはAmazonのこのページを参照のこと。

構成

 ロバーツの英訳書の全訳である。
 最初にゲーテの『ファウスト』からの引用句がある。
 続いて息子セザールによるノストラダムスの肖像画が、ロバーツのコレクションとしてモノクロで転載されている(実際には、オリジナルはエクス=アン=プロヴァンスにある)。
 続いて「セザールへの手紙」の日本語訳が収録され、そのあとで、ロバーツによる端書きの訳と、日本語版監修者による解説(pp.17-43)が載せられている。

 本編にあたる詩百篇集では、原文対訳に解説が添えられている。
 この解説は、原書に載せられていた解説と注をもとに、手短にまとめなおしたものである。
 一方、詩によっては、編集者韮沢潤一郎らの解釈や、おそらく編集者らによって関連性があると判断されたジーン・ディクソンやエドガー・ケイシーの予言のフレーズが併記されている。

 第7巻と第8巻の間には、「アンリ2世への手紙」が収録されているが、ロバーツの英訳に比べても、一部で大幅な省略が行われている。

 なお、テーマごとに予言を分類した別添えの索引が挟み込まれている。

コメント

 原書がそもそも信頼性の低いものであることに加え、日本語訳の信頼性が低い。

 フランスの地名などの固有名詞を英語読みしたり、ローマ字読みしたりしている事例が目立つことからして、訳者はおそらくそれほどフランス語に通じていなかったものと考えられる。
 具体例として、第2巻60番第2巻90番第5巻57番第6巻100番第9巻20番などを挙げておく。

 また、単純な誤訳も多い。
 訳者あとがきによれば、ロバーツの英訳を余り意識しないようにしてフランス語原文の意味を汲み取ろうと努めたというが、実際には well と wall を取り違える類の、英訳を日本語に移しかえる際のミスと思しきものも少なくない。
 例として、第1巻26番第5巻32番第5巻39番第7巻80番第8巻43番第8巻番外詩6番第12巻65番第12巻71番などを挙げておく。

 そもそも冒頭に収録された『ファウスト』の引用句自体が、岩波文庫版などと見比べると誤訳とわかる。
 先行する訳が存在していた『ファウスト』の訳でさえそうなのだから、当時先行する訳がほとんど存在していなかった予言集の訳をそのまま受け入れることには、十分慎重になるべきだろう。

書誌

書名
ノストラダムス大予言原典・諸世紀
著者
ミカエル・ノストラダムス
編者
ヘンリー・C・ロバーツ
監修者
内田秀男
訳者
大乗和子
出版社
たま出版
発行日
1975年3月1日

海外の研究者向けの暫定的な仏語訳書誌

Titre
Nostradamus Daiyogen Genten - Syoseiki (traduction / Texte original des Grandes Prophetiés de Nostradamus - Les Siècles)
Langage
japonais et français
Auteur
Michael NOSTRADAMUS
Editeur
Henry C. ROBERTS
Directeur
UCHIDA Hideo
Traducteur
DAIJÔ Kazuko
Publication
Tama Shuppan
Lieu
Tokyo, Japon
Date
1er mars 1975
Page
(4), 318, (1)pp.
Note
Traduction en japonais du livre d'Henry C. Roberts, The Complete Prophecies of Nostradamus, New York, 1947/1949


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最終更新:2011年07月07日 14:27