The Prophecies of Nostradamus (Cheetham, 1973)

 『ノストラダムスの予言集』(The Prophecies of Nostradamus)は、1973年に出版されたエリカ・チータムの著書。テオフィル・ド・ガランシエール(1672年)、ヘンリー・C・ロバーツ(1947年)、エドガー・レオニ(1961年)に続く史上4例目の英仏対訳による詩百篇集の全訳である。


【画像】初版の表紙

書誌

 正式名は The Prophecies of Nostradamus. Translated, Edited and Introduced by Erika Cheetham. (エリカ・チータムによって翻訳、編集、紹介されたノストラダムスの予言集)である。

 著作権表示を信じる限りでは、初版はイギリスのネヴィル・スピアマン社(Neville Spearman Ltd.)によって、1973年に出版された。

 五島勉は1972年に初版が出されたと主張していた*1。確かに序文の日付は1972年1月となっているが、当「大事典」では今のところ出版も1972年だったとは確認できていない。五島自身、のちになしくずしに1973年出版としている。

 「全米で10週連続ベストセラー第1位」*2という話はどこまで事実かよく分からないが、初版以来、ロンドンやニューヨークの複数の出版社によってたびたび再版されているのは事実である。

構成

 ノストラダムスの簡単な伝記などを交えた序文に続いて、詩百篇集のフランス語原文と英語訳、それと解説が並ぶ。詩百篇集の難解な語句には語注がつけられている。

 詩百篇集の原文は1568年ブノワ・リゴー版から採られている。そのため、収録されているのは正篇である942篇のみで、補遺篇は一切含まれていない。
 また、序文(セザールへの手紙アンリ2世への手紙)も、長い上に曖昧であるからという理由で省かれている。

コメント

 原文は1568年版を使ったというが、正書法に関する配慮というレベルを超えた明らかな改変が含まれている。この点で、原文の信頼性を損ねている。

 また、チータムの語注はかなり多く親切といえるが、その多くはエドガー・レオニの語注をほぼそのまま真似たものである。

 解釈については、レオニの注釈を明らかに下敷きにしているほか、ジェイムズ・レイヴァーなどから借用していると思しきものもある。信奉者的な解釈ではあるが、レオニも利用しているためか、外れたと思われる予言についてもその結果を受け入れているものがある。

 ただし、そうした借用の際に一知半解なまま引き写したものがあるらしく、歴史の基本事項などにも誤りが散見され、ジェイムズ・ランディ(未作成)からもその杜撰さを酷評されたことがある*3

 なお、上記のように他の文献からほとんど引き写したような記述が散見されるにもかかわらず、参考文献の提示が一切ないのは大いに問題だろう。

 五島勉が21世紀になって、アメリカ同時多発テロ事件(2001年9月)を予言した本と主張しだしたが、まったく支持できない。詳しくは「恐怖の大王=アメリカ同時多発テロ事件」説を参照のこと。

他言語版

 日本語版として山根和郎訳『ノストラダムス全予言』(二見書房、1988年)が出されている。

 また、『ノストラダムスの予言集』(As Profecias de Nostradamus)という名でポルトガル語版が出されていたようである*4

 さらに、ペルシア語版のPishguyihayi Nostradamus : vaqaʻyi kih bih haqiqat payvast va dunya ra takan dadも2001年に出ていたらしいが*5、詳細な中身は未確認である。

その他

 1981年に改訂版が出された。

 チータムはこの本の続編として『続・ノストラダムスの予言集(未作成)』を出版した。これは全訳の形をとらず、いくつかの詩をピックアップして解釈を展開するという、関連書によくある形式が採用されている。

 原文を当時のままに再現し解釈も差し替えた『決定版ノストラダムスの予言集』(1989年)も出版されている。結果的には彼女の最後の作品となったその本の出現によって、チータム版の初代『ノストラダムスの予言集』は役目を終えたといえるだろう。


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最終更新:2015年03月09日 21:54