セザール・ド・ノートルダム

  セザール・ド・ノートルダム (César de Nostredame, 1553年12月18日-1630年?)は、ノストラダムスの長男で、詩人、歴史家として著作を残し、画家としてもいくつかの作品を手がけた。ノストラダムスの『予言集』の第一序文は、彼にささげられており、一般に「セザールへの手紙」といわれる。

 この記事では歴史的存在としてのセザール自身の足跡と作品を扱う。「セザール」を予言の最終解読者のコードネームとする俗説については最終解読者としてのセザール・ノストラダムスを参照のこと。

【画像】『プロヴァンスの歴史と年代記』に掲載された肖像画(1614年) *1

生涯

 1553年12月18日、プロヴァンス州サロン・ド・クロー(現在のサロン=ド=プロヴァンス。以下、サロンと略記)で、ノストラダムスとその再婚相手アンヌ・ポンサルドの間に長男(第2子)として生まれた。
 幼年期、青年期のことは余りよく分かっていない。ただし、後年の彼自身の記述によれば、サン・バルテルミーの虐殺の時にはパリに居合わせていたという。

 画才にもある程度恵まれ、青年期には、パリの画家エチエンヌ・デュモンストリエ(1520年頃-1603年)やフランソワ・ケネル(1545年頃-1616年)に師事していたことがあったようである。
 登場人物のポーズや情景の色彩といった、視覚的な美しさを丁寧に描き出すことを特徴のひとつとする彼の詩には、そうした画家としての蓄積が投影されているとする専門家もいる。なお、音楽の方面でも、当時リュートの名手として知られていたとの指摘がある。

 のち、サロンの名士として市政に携わり、1598年には筆頭執政官になっている。1600年11月に王妃マリー・ド・メディシスがサロンに入市した際に出迎えたのは、セザールであったという。

 その傍ら作詩を中心とする文芸活動を行っていた。セザールがいつ頃から作詩を行っていたかは定かではないが、1590年代半ばから、複数の著作に詩や序文を寄せている。最初の単著は1598年の『サロン市の廃墟と悲惨』であったと思われる。
 以降、セザールの著作は、エクス=アン=プロヴァンス(以下エクスと略記)の出版業者ジャン・トローザン(活動期間:1597-1628年)やトゥールーズの出版業者コロミエ家によって、次々と刊行されていった。

 また、具体的な期間は不明であるが、叔父ジャン・ド・ノートルダムの研究を引き継ぐ形で郷土史研究も行っていたものと推測され、その成果は1614年に1000ページを超える大著『プロヴァンスの歴史と年代記』として結実した。この文献は8部構成で、古代から16世紀末までのプロヴァンス史を扱っており、フレデリック・ミストラル(未作成)も歴史に題材を採った作品のいくつかで、この文献を出典として挙げている。公刊には至らなかったものの、続編にあたる草稿の一部がカルパントラ市立図書館に現存している。

 セザールの没年は1629年とされることが多かったが、現在では1630年1月23日付の遺言書が確認されている。なお、1604年にアダン・ド・クラポンヌの縁者に当たるクレール・ド・グリニャンと結婚したものの、子供はいなかった。

著作


 また、著作ではないが、次のような文献も19世紀に出されている。
 これは、エクス高等法院の参事官ニコラ=クロード・ファブリ・ド・ペーレスク(未作成)とセザールの往復書簡をまとめたものである。フィリップ・タミゼー・ド・ラロック(未作成)によって、1879年から1897年までに全21集出されたペーレスクの往復書簡の第2集にあたる。

絵画

 セザール自身による作品名はついていないようである(サイズの単位はセンチメートル)。

  • ノストラダムスの肖像画(銅板、18×16。1614年頃)
    • メジャヌ図書館(エクス)所蔵。左右の上隅に天使を一体ずつ配した、楕円形の枠に収まっている構図の肖像画。『ノストラダムス大予言原典・諸世紀』をはじめ、多くのノストラダムス関連の日本語文献で見ることが出来る、有名な肖像画のひとつ。
  • ノストラダムスの肖像画(銅板、38×29。作成時期未詳)
    • カルヴェ博物館(アヴィニョン)所蔵。伝えられるところによると、もともとこの絵は、墓銘碑とともに墓に掲げるために作成されたものであったという。ノストラダムスが58歳の時を描いているというが、その時セザールは8歳だったため、当時、もう一つの肖像画ともども、元になった肖像画があったのではないかと推測する論者もいる。
  • 自画像(銅版、18×16。1616年)
    • メジャヌ図書館所蔵。天使が持っている紋章など細かい違いはあるものの、構図そのものは同博物館所蔵のノストラダムスの肖像画と同じである。

参考文献

  • Ferdinando Gabotto, “Un poème inédit de César de Nostredame et quelques autres documents littéraires sur l'histoire de France au XVIe siècle.”, Revue des langues romanes, Tome 8, 1895, pp.289-315
  • Terence C. Cave, Devotional Poetry in France c.1570-1613, Cambridge University Press, 1969
  • Terence C. Cave,“Peinture et émotion dans la poésie religieuse de César de Nostredame”, Gazette des Beaux-Arts, Janv. 1970, pp.57-62
  • Jean Boyer, “Deux peintres oubliés du XVIe siècle: Etienne Martellange et César de Nostredame”, Bulletin de la Société de l'Histoire de l'art français, Année 1971 (1972), pp.13-20
  • Claude Mauron, “Mistral, César de Nostredame et la princesse Clémence”, Provence historique, Tome 23, 1973, pp.439-444
  • Y. Le Hir, “Sur un texte inédit de César de Nostredame (L'Hippiades)”, Bibliothèque d'Humanisme et Renaissance, Tome L-2, 1988, pp.373-380
  • Lance K. Donaldson-Evans(ed.), Oeuvres spirituelles, Genève ; Droz (TLF 541), 2001


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