予兆詩第35番

予兆詩第35番(旧31番) 1558年10月について

原文

Pluye, vent, classe Barbare Ister, Tyrrhene
Passer olcades1 Ceres, soldats munies.
Reduits bienfaits2, par Flor. franchie3 Siene.
Les deux seront morts, amitiez unies. *1

異文

(1) olcades 1589Rec : holcades T.A.Eds.
(2) bienfaits : bien faicts 1605 1649Xa
(3) franchie : franchi 1589Rec

(注記)校訂に関する注意事項は予兆詩第26番の異文欄を参照のこと。

日本語訳

雨、風、バルバロイの艦隊、ヒステル、ティレニア海、
輸送船が通る、チェルヴェーテリ、配備された兵たち。
恩恵は削られ、シエーナフローラにより解放される。
二者は死ぬだろう。結ばれた友情。

訳について

 前半はほとんど名詞の羅列で、前置詞がひとつもない。どのような前置詞をどこに補って読むかによって、様々な可能性がありうるだろう。ここでは、ほとんどそのまま直訳した。その際、Ceres については、ピエール・ブランダムールらの読みに従った。
 ピエール・ブランダムールは、「ヒステル(ドナウ川河口)から出航し、兵を一杯に載せたバルバロイ(オスマン帝国)の艦船が、ティレニア海のチェルヴェーテリ沖合いを横切るだろう」といった意味だろうとしている *2

信奉者側の見解

 ジャン=エメ・ド・シャヴィニーは、1行目の「雨、風」は無視している。「バルバロイの艦隊、ヒステル」は1566年8月5日にドナウ川支流のシゲト(Sighet)*3がオスマン帝国に攻囲されたこととした*4
 「ティレニア海」から3行目冒頭までは、兵士と小麦を積んだ船団がティレニア海を渡ることを表現しており、1565年に教皇ピウス4世とスペイン王によってマルタ島へ救援物資が送られたこととマルタを死守した者たちに対する褒美が予言されているという。
 3行目後半からは1555年に遡る話となり、フィレンツェの公爵がシエナを解放するために、神聖ローマ皇帝カール5世に屈したこととした。「二者は死ぬだろう」というのは、カール5世とフランス王アンリ2世が1559年までに相次いで死んだことを指し、「結ばれた友情」というのは、それを踏まえてシエナとフィレンツェが盟邦関係になったことを指すとしている*5


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予兆詩
最終更新:2009年12月13日 12:03

*1 原文は Chevignard [1999] p.130による。

*2 Brind’Amour [1993] p.282, Brind’Amour [1996] p.416

*3 正確な位置不明。ドナウ支流ティサ川沿岸のセゲド(Szeged)か。

*4 Chavigny [1594] p.156

*5 Chavigny [1594] p.148