Le sang du iuste à Londres fera faute
Bruslés par fouldres1 de vint trois2 les six3.
La dame4 antique cherra de place haute:
De mesme secte plusieurs seront occis.
異文
(1) fouldres : feu 1672
(2) vint trois : vinttrois 1557U 1557B, vingt-trois 1588Rf 1589Me 1644 1668P, vingt & trois 1589PV 1672
(3) les six : les Six 1672
(4) dame : Dame 1653 1672
2行目は1音節欠けている。
エヴリット・ブライラーは plus を補った上で les six(レ・シ(*1))を saisis(セジ)と読み替え、Bruslés par fouldres plus de vint trois saisis.(囚われた23人以上が雷で焼かれるだろう)と読んでいる(*2)。
ピエール・ブランダムールは一部の版に見られるように & を補い、vint trois を vint & trois と読み替えている。これは特に意味の変更につながらない(*3)。
山根訳の前半2行は解釈にかなり引きずられている。1行目「正義の血をロンドンは求めるだろう」(*5)は誤訳。faire faute は「不足している、欠く」を意味する熟語で、現代フランス語でも中期フランス語でも意味は同じである(*6)。「求める」はおそらく il faut(~を必要とする)に引き付けているのだろうが、強引過ぎる。
2行目「二十の三倍に加えること六の火に焼かれて」は有名な読み方だが、明らかにおかしい。「20かける3たす6」をフランス語で言えば、vingt fois trois et six となる。vingt(-)trois は「23」を意味する普通のフランス語表現である。もっとも、これについては後述するように 23 x 6 なら当時の表現として読めるとする説もある。
大乗訳も前半がおかしい。1行目「正義の血がロンドンにかわくとき」(*7)は「かわく」というのがよく分からない。2行目「三度の火事で二〇と六が」はさらに意味不明で数字の結びつき方があまりにも不自然である。これは、ヘンリー・C・ロバーツの英訳 Burnt by the fire of three times twenty and six(*8)を誤訳したのだろう。一見して明らかな通り、この場合の times は山根訳同様に掛け算を意味している。
テオフィル・ド・ガランシエール(1672年)は、おそらく最初に解釈を整備した人物である。
彼は1行目の「正義の血が欠ける」をチャールズ1世の処刑(1649年)に関連付け、その天罰としてロンドン大火が起こったと捉えた。
2行目についてはそのまま of three and twenty, the six と英訳し、火災で燃えた住居や建造物の数をおおよその比率で表現したものだとした。23分の6は約4分の1になるが、それはロンドンの4分の3が焼けたとされる比率に大体対応しているという。
また、three twenties and six とすれば66になり、大火が起こった1666年と理解できるかもしれないとしている(ジェイムズ・ランディは、ガランシエールが66を導く解釈を気に入らなかったらしいとしていたが(*9)事実ではなく、特に否定的なコメントはない)。
3行目の「古き貴婦人」(the ancient Dame)は、セントポール大聖堂のこととした。彼はその根拠として、その前身が古代のディアナ神殿であったことを持ち出し、「古き貴婦人」はディアナの隠喩とした。「高い場所」は高価さや建物の高さなどを複合的に表現したものだという。
4行目の「同じ派の多く」は、セントポール大聖堂以外にも多くの聖堂が燃えたことを表現しているという。