六行詩2番

六行詩集>2番*

原文

Que1 d'or d'argent2 fera3 despendre4,
Quand Comte voudra Ville5 prendre,
Tant de mille & mille soldats6,
Tuez, noyez, sans y rien faire,
Dans plus7 forte8 mettra pied terre9,
Pigmée10 ayde11 des Censuarts12.

異文

(1) Que : Qui 1627Ma 1627Di 1644Hu
(2) d'argent : & d'argent 1600Mo
(3) fera : on verra lors 1600Au
(4) despendre : de pendre 1672Ga
(5) Ville : ville 1600Mo 1611 1627Ma 1627Di 1644Hu 1649Ca
(6) soldats : Soldats 1672Ga
(7) Dans plus : Dont le plus 1600Mo
(8) forte : fort 1600Mo
(9) pied terre : pied à terre 1600Au, le pied à terre 1600Mo
(10) Pigmée : Pigmee 1600Mo 1649Xa
(11) ayde : aydé 1600Au 1611Ac 1627Ma 1627Di 1644Hu 1672Ga
(12) Censuarts : Censurds 1600Mo

校訂

 最後の行の ayde はaydé の可能性がある。
 3行目 soldats と6行目 Censuarts は韻を踏んでいない。soldats は souldards などと綴られることもあったので、そういう形で韻を整えるべきなのかもしれないし、逆に意味がはっきりしない Censuartの方に、何らかの誤植が含まれているのかもしれない。

日本語訳

どれほど多くの金銀を費やさせるのだろうか、
伯爵が都市を手に入れようとする時には。
何千という兵士たちが
そこで何もしないまま殺され、溺死させられる。
より強い土地に足を踏み入れて、
ピュグマイオイは監察官たちに助けられる。

訳について

 最後の行は aydé として訳した。ayde だとすると、「ピュグマイオイは何人かの監察官たちを助ける」となる。なお、CensuartをCensuratと見なして、「監察官」と訳したのは暫定的な訳。
 PigméeはPygméeの綴りの揺れ。アフリカのピグミー族を意味するが、もとは古代ギリシアで遠くに住んでいると信じられた小人族を指す。

信奉者側の見解

 テオフィル・ド・ガランシエール次の詩とともに、1601年から1604年にかけてベルギーの港町オーステンデで繰り広げられた攻囲戦と解釈した。
 この攻囲で都市を守ったのはオランダ勢で、その指導者がオラニエ公マウリッツだった。マウリッツはその攻囲戦の際に、オーステンデよりも強固とされていたスペイン側の拠点スリュイス(オランダの港町)を陥落させていた。「より強い土地」はこのことだという。
 ピュグマイオイ(小人族)はマウリッツのことで、スペイン勢を指揮したアルブレヒト大公に比べて小さな存在としてそう呼ばれているとした。Censuarts は(根拠を示していないが)イングランドとフランスのことで、スペインに対抗するため、マウリッツに肩入れしたことを指すという。

同時代的な視点

 六行詩集が1605年までに偽作されたものである場合、ガランシエールの解釈は事後予言の一つの可能性を示すものだろう。
 ただし、最初の2行はむしろ「伯爵」がどこかの都市に攻囲戦を仕掛けるように読める。


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最終更新:2019年12月02日 00:02