百詩篇第4巻89番

原文

Trente de Londres secret coniureront,
Contre leur 1 Roy 2 sur le pont l'entreprise 3 :
Luy 4 , satalites 5 la 6 mort degousteront 7 ,
Vn Roy 8 esleu blonde 9 , natif 10 de Frize 11 .

異文

(1) leur : Leur 1672
(2) Roy : roy 1557B
(3) entreprise : entrrprinse 1665, Entreprise 1672
(4) Luy : Leuy 1600 1867LP 1627 1644 1650Ri 1653 1665, Les 1672
(5) satalites : satellites 1644 1650Le 1650Ri 1653 1665 1668 1840, Satellites 1672
(6) la : là 1867LP
(7) degousteront : de gousteront 1867LP 1716, desgousteront 1611, desgouteront 1605 1649Xa 1672
(8) Roy : roy 1557B
(9) blonde : blond 1650Le 1665 1668 1672 1840
(10) natif : & natif 1644 1650Le 1650Ri 1653 1665 1668 1840
(11) Frize : flize 1590Ro, Frixe 1627

日本語訳

ロンドンの三十人がひそかに企てるだろう、
彼らの王に対し、橋の上での陰謀を。
従者たちは彼の死を嫌うだろう。
フリースラント生まれの金髪の王が選ばれる。

訳について

 2行目 pont は、ラテン語 pontus からの借用だとするならば、「橋の上で」ではなく「海の上で」となる。

 大乗訳は後半が誤訳。3行目「予備軍は死を味わう」 *1 は、desgousteront(>dégoûter)に味わうという意味はない。これはヘンリー・C・ロバーツの英訳を直訳したものだが、それ自体が goûter(味わう)と混同したものと思われる。
 4行目「王はみごとに立てられ 低い国々が誕生するだろう」も誤訳。比喩的に訳したのだとしても、natif de Frize で Frize が主語になるのは不自然。ロバーツの英訳では born in the low countries *2 となっており、日本語版固有の誤訳であると分かる。ちなみにテオフィル・ド・ガランシエールの訳では Frize は Friezeland と英訳されている。

 山根訳3行目「彼も廷臣も死ぬのはいやだ」 *3 は、エドガー・レオニピーター・ラメジャラーもそう訳しているので、許容されるものと思われる。

信奉者側の見解

 テオフィル・ド・ガランシエールはチャールズ1世に向けられた陰謀に関する予言と解釈した。

 イギリスで名誉革命(1689年)がおこり、オランダ南部出身のウィリアム3世(オラニエ公ウィレム)が即位すると、そのこととする解釈が定説化していった。
 そうした解釈は、1689年ルーアン版『予言集』に掲載された「当代の一知識人」の解釈で早くも見られる。
 その後、D.D.チャールズ・ウォードによって解釈が整備されていったが、ウォードはウィリアムがフリースラント(オランダ北部)の生まれでなかったことをはじめ、詩の細部に適合しない部分があることを認めている *4

 ジェイムズ・レイヴァーは、フリースラントがオランダの一部であることを踏まえ、当時の地理区分からすれば許容される表現だとしている。ウィリアム3世が金髪でなかった点については、鬘を着用するのが一般的だった当時の習慣と関連付けて、判断を留保した *5
 ジョン・ホーグエリカ・チータムも支持しているが、チータムの場合、ウィリアム3世はフリースラント出身だったとした上で、見事な的中例として紹介している *6

同時代的な視点

 ピーター・ラメジャラーは、デンマーク王だったカヌート1世が、イングランド人の王エドマンド2世の死後(1016年)、イングランド王にもなったことがモデルになっているとしている *7


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