百詩篇第4巻100番

原文

De 1 feu celeste 2 au Royal 3 edifice,
Quant 4 la lumiere de Mars 5 deffaillira:
Sept moys grand guerre 6 , mort 7 gent 8 de malefice,
Rouen 9 , Eureux 10 au Roy ne faillira.

異文

(1) De : Du 1627 1644 1650Ri 1653 1665 1672 1840 1867LP
(2) celeste : Celeste 1672
(3) Royal : royal 1557B 1590Ro 1627 1644 1650Ri 1653 1665 1840, nouueau 1611B 1660 1792La
(4) Quant 1557U 1557B 1568A 1568B 1568C 1590Ro 1668 1772Ri : Quand T.A.Eds.
(5) de Mars : du Mars 1650Le 1668, ne 1588-89
(6) grand guerre : grand guer 1557B, grand guer. 1589PV, grand guerre ?[sic.] 1627, grand'guerre 1649Ca 1650Le 1668, grand Guerre 1672
(7) mort : morr 1653
(8) gent : gens 1588-89 1610
(9) Rouen : Rouan 1557B, Roüan 1597 1600 1610 1611 1627 1644 1650Ri 1653 1660 1716 1792La, Roüen 1605 1628 1665 1772Ri 1840, Rouën 1649Xa, Roven 1650Le 1668
(10) Eureux : heureux 1644 1650Ri 1653 1665

(注記)1792La はランドリオ出版社版の異文。

校訂

 1行目が「王家の建物に」(au Royal edifice)なのか「新しい建物に」(au nouveau edifice)なのかでずいぶん意味が異なるが、前者と理解して問題はないだろう。
 後者は1610年代に登場したと思われる異文であり、アンリ4世暗殺(1610年)などを踏まえて、反ブルボン家ととられないように業者(ピエール・シュヴィヨ(未作成))が改変したものだろう。
 なお、加治木義博は edifice を editice として「勅令」と訳しているが *1 、当「大事典」の調査の範囲では、古い版にもヘンリー・C・ロバーツをはじめとする20世紀以降の版にも、そういう異文は見当たらない。

日本語訳

天の火が王家の建物へと、
マルスの光が弱まるであろう時に。
七か月間の大戦、悪事によって死んだ人々。
ルーアンエヴルーは王に背かないだろう。

訳について

 3行目前半の直訳は「七か月、大戦」である。高田・伊藤訳で「大戦争は七ヶ月続き」 *2 となっていることを踏まえて若干言葉を補った。

 山根訳はおおむね問題はない。

 大乗訳3行目後半「人々は魔力で死に」 *3 は誤訳といえないにしても、必要以上に超自然的に読もうとするもので、不適切だろう。
 同4行目「ルーエンとエウレックスは王に負けないだろう」は、固有名詞の読みの不適切さを棚上げするとしても、faillir を「負ける」と訳すのは不適切。

 加治木義博の訳では4行目が「ルーアン・エブルースに王は背かない」 *4 となっているが、前置詞の位置と前半律の区切れ目からいって、そういう訳はありえない。

信奉者側の見解

 アナトール・ル・ペルチエは、未来においてマルスに喩えられる人物の財産が失われるときに、チュイルリー宮殿に天から火が降る一方、ノルマンディ地方はユピテルに喩えられる人物に従っていることの予言とした *5

 セルジュ・ユタンは、フランス革命中にチュイルリー宮殿が陥落し、1793年にはノルマンディ地方で反ジャコバン派の暴動が起こったことを予言したと解釈した *6

 エリカ・チータムは普仏戦争の予言として、チュイルリーが砲撃で破壊されたことや、ボナパルト家が没落したこと、その期間は1870年7月から1871年2月の7ヶ月だったこと、北フランスには王政の復興を願う党派が残存していたことなどを見事に言い当てたとしている *7 。同じ解釈はジョン・ホーグもしている *8

 ジャン=シャルル・ド・フォンブリュヌは、第三次世界大戦の一場面と解釈していた *9

 加治木義博は1945年に日本がポツダム宣言を受諾したことの予言として、ルーアン、エヴルーは、ルーズベルトと発音が近いと主張している。

同時代的な視点

 ピーター・ラメジャラーは、ユリウス・オブセクエンス(未作成)の『驚異について』の中に、紀元前163年に起きたパラティーノの丘での落雷が記録されていることから、「王家の建物」は「宮殿」(palace)のことで、パラティーノ(Palatino)が不正確に投影されたものとする。
 「マルスの光が弱まる」というのは354年4ヶ月(未作成)の周期におけるマルスの時代の終わりを意味し、再びそれが巡ってくるとき(西暦3569年)に大きな戦いがあることを予言したものとしている *10

 ピエール・ブランダムールは、王宮に落雷があるという驚異は古代ローマではありふれたものであったとした上で、2行目と3行目は「火星から大地に光が落ちるであろう時、戦争の七ヶ月が続くだろう」という意味だろうとしている *11

 なお、しばしば指摘されるように、ルーアンとエヴルーの組み合わせは百詩篇第5巻84番にも見られる。


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