詩百篇第8巻補遺篇2番

詩百篇第8巻>2番(補遺篇)*

原文

Plusieurs viendront, & parleront de paix1,
Entre Monarques2 & seigneurs3 bien puissant4
Mais ne sera accordé de si pres,
Que ne se rendent plus qu’autres obeissans5.

異文

(1) paix: Paix 1672Ga
(2) Monarques: monarques 1981EB
(3) seigneurs: Seigneurs 1649Xa 1650Le 1667Wi 1668 1672Ga 1689Ma 1720To
(4) puissant 1588Rf : puissans T.A.Eds.
(5) obeissans: obeïssans 1667Wi 1689Ma 1981EB

(注記)この詩は全ての版に含まれているわけではないため、底本を 1588Rf とし、比較の対象に 1589Me, 1589Rg, 1605sn, 1611A, 1611B, 1628dR, 1649Ca, 1649Xa, 1650Le, 1667Wi, 1668A, 1668P, 1672Ga, 1689Ma, 1720To, 1981EB を用いた。

日本語訳

多くの者たちが来て、平和に関して語るだろう、
まさしく力のある君主たちや領主たちの間で。
だがすぐには合意に至らないだろう。
彼らが他の者より従順であろうとしない限り。

訳について

 大乗訳は2行目「君主国と公国は権力的で」*1を除けば、おおむね許容範囲である。
 1行目 plusieurs は「何人かの」だけでなく「多くの」の意味もあるため、指している範囲が広い。

信奉者側の解釈

 ジャック・ド・ジャン(1672年)は当時の英仏蘭の関係と解釈している*2

 アンドレ・ラモン(1943年)は、補遺篇の第8巻3番とともに、第一次世界大戦後について、粘り強く協調しないと再び戦争が起こると警告する詩だったと解釈した*3

 ヘンリー・C・ロバーツは、20世紀における大企業家と労働組合の代表者の交渉について的中させたと解釈した*4

 ジャン=シャルル・ド・フォンブリュヌは、米ソの対話についての予言と解釈していた。時期は明記していなかったが、「予言者篇」(=未来篇)のはじめの方に配置していた*5

同時代的な視点

 ユグノー戦争前夜の1561年頃の政治情勢を漠然と示しているようにも見える。

 ジョン・ホーグは偽作説に慎重だが、それでもこの詩を1550年代から1560年代のフランスの政治・宗教状況に当てはめうることも認めている*6


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詩百篇第8巻
最終更新:2020年07月05日 23:02

*1 大乗 [1975] p.256

*2 Jant [1672]

*3 Lamont [1943] pp.143-144

*4 Roberts [1949/1994]

*5 Fontbrune [1980/1982]

*6 Hogue [1997]