予兆詩第78番(旧68番) 1562年2月について
原文
Chef pour razes ne parviendra à bout,
Edits changez, les serrez mis au large.
Mort grand trouvé maintes fois bas debout,
Dissimulé, transi, frappé à
bauge.
異文
(1) Chef pour razes conj.(BC) : Chef pour Rases 1562LN, Pour razes Chef 1589Rec, Pour Razes Chef T.A.Eds.
(2) à bout : about 1562LN
(3) serrez : secrets 1668P
(4) grand 1562LN 1589Rec : Grand T.A.Eds.
(5) maintes fois conj.(BC) : mains de foy 1562LN, moins de foy T.A.Eds.
(6) debout : debo 1605
校訂
1行目最後について、初出の about(古フランス語で「縁、境界」)よりも à bout を優先しているのは、ベルナール・シュヴィニャールの判断である。
4行目の
bauge について、
エドガー・レオニは韻の上からも barge(平底船)の誤植ではないかとしていた。
日本語訳
指導者は剃髪たちのために、すぐに達することはないだろう。
勅令は変えられ、閉じこめられた者たちは楽になる。
偉大な死が発見される。何度も低い場所に立ち、
巣窟において覆い隠され、凍えさせられ、打たれる。
訳について
1行目の bout は中期フランス語では「終わり」の意味だが、à bout で「すぐに」(tout de suite)を意味する成句とするシュヴィニャールの読み方に従った。DMF には à un bout で tout de suite とする用例は載っている。
2行目 au large は中期フランス語で à l'aise(気楽に)を意味する成句。
3行目の bas debout は、
エドガー・レオニの standing low という英訳に従った。debout は現代フランス語では確かに「立っている」を意味する副詞や形容詞だが、中期フランス語では extrémité(先端、窮地)の意味があった。また、estre bas(低い状態にある)という表現が中期フランス語では「重態である」の意味にも使われたことを踏まえれば、bas debout を「瀕死の状態に陥っている」の意味にも理解できるように思える。
信奉者側の見解
ジャン=エメ・ド・シャヴィニーは、2行目を1562年1月のサン=ジェルマン王令でプロテスタントに礼拝の自由が認められたこと、4行目を1562年3月にユグノー戦争が始まったことと解釈した。1行目は1563年にロレーヌ枢機卿がイタリアに赴き、ユグノーの壊滅を煽動しようとしたことを指し、3行目は同じ年にギーズ公がアングーモワの従者に殺されたことを指すという。
最終更新:2010年03月05日 23:00