リヨン

 リヨン(Lyon)はフランス中南部の都市。かつてのリヨネー州の中心であり、現在はローヌ県の県庁所在地。フランスで第3位の人口を持つ都市(約45万人)で、大都市圏(都市共同体)としてみれば、フランス第2位(約120万人)である。


地理

 ローヌ川ソーヌ川(未作成)の合流点に位置している。古代から中世にはソーヌ川の右岸に都市が発達したが、近世以降、川に挟まれた半島状の地域が中心となった。近現代にはさらにローヌ左岸に工業都市が発達した*1

 リヨンの周辺は、ワインの銘柄の一つ「コート・デュ・ローヌ」の産地でもある。


【画像】E.ギガル コート・デュ・ローヌ ブラン 2007

語源

 当初のラテン語名はルグドゥヌム(Lugdunum)であった。その語源は「リヨーグ(ケルト神話の神)の砦のある丘」もしくは「美しい砦のある丘」とされる*2。現在の名称リヨンはルグドゥヌムの転訛したもので、市の紋章に描かれているライオン(lion)とは、語源的な繋がりはない。

歴史

 紀元前43年にマルクス・ムナティウス・プランクスによって建設された都市で、中世から近世にかけては大市によってよく知られていた。

 16世紀には、遠隔地商業の一大拠点であるだけでなく、ヨーロッパにおける為替決済の中心地として栄えた*3
 また、文化的にも、モーリス・セーヴ(未作成)やルイーズ・ラベら、いわゆるリヨン派の詩人たちが活躍し、リヨンにおけるルネサンスを盛り立てた*4。 文化を支える印刷・出版業も多いに栄え、セバスチャン・グリフ、ジャン・ド・トゥルヌ父子ら著名な印刷業者が多く現れた*5


【画像】宮下志朗『本の都市リヨン』

 その後のリヨンは、16世紀に始まった絹織物工業や、19世紀以降、染料産業から発達した化学工業などがさかんになる。

 紀元前のローマ遺跡から19世紀末の大聖堂までを含む歴史的な建造物群や街区は、「リヨン歴史地区」としてユネスコの世界遺産に登録されている。

 また、サッカーのフランス1部リーグで、2000年代に入ってから7連覇を成し遂げた強豪オリンピック・リヨン(オランピック・リヨネ)のホームタウンである。


【画像】Cahier d'écriture: Couverture du logo olympiques lyonnais

ノストラダムスとの関わり

 ノストラダムスは『予言集』初版増補版、『化粧品とジャム論』初版といくつかの再版、暦書類のかなりの部分をリヨンで出版している。

 リヨンの出版業者ジャン・ブロトーと交わした私信には、いくつか現存しているものがある。

 また、ノストラダムスはリヨンを訪れた際に現地の有力者ガダーニュの屋敷に泊まったことがあるが、この館は旧市街に現存しており、マリオネット博物館になっている。



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地名
最終更新:2010年10月20日 13:19

*1 cf. コンサイス外国地名事典

*2 牧英夫『世界地名ルーツ事典』創拓社

*3 石坂昭雄ほか『商業史』有斐閣双書、pp.82, 140

*4 cf. V.-L. ソーニエ『十六世紀フランス文学』白水社、pp.85-87

*5 cf. 宮下志朗『本の都市リヨン』