百詩篇第8巻30番


原文

Dedans Tholoze 1 non loing de Beluezer 2
Faisant vn puys 3 loing, palais 4 d'espectacle 5
Thresor trouué 6 vn chacun 7 ira vexer,
Et en deux locz 8 tout & pres 9 del 10 vasacle 11 .

異文

(1) Tholoze : Toloze 1568I, Tholouse 1597 1610 1650Ri 1650Le, Thoulouse 1600 1603Mo 1644 1668 1716, Tolose 1590Ro 1627, Tholose 1605 1628 1649Ca 1649Xa 1672
(2) Beluezer 1568A 1568B 1568I 1590Ro 1653 1665 : Beluzer T.A.Eds.
(3) puys : puy 1568I
(4) palais : Palais 1672
(5) d'espectacle : despectacle 1568A 1590Ro 1653 1665
(6) trouué : treuuà 1627
(7) chacun : chécun 1627
(8) locz : lotz 1590Ro, lots 1653, lors 1665
(9) & pres : pres 1644, aupres 1672
(10) del : de la 1627 1644 1650Ri, des 1605 1649Ca 1649Xa 1650Le 1668A 1672, de 1611 1660 1668P 1840
(11) vasacle : vesacle 1605 1628 1649Xa 1650Le 1668 1840, l'vsacle 1611 1660, Vesacle 1672

校訂

 1行目 Beluezer は初出である1568年版の段階で BeluezerBeluzer の二通りに分かれているが、後者は単なる誤植と考えられる。そして、Beluezer は Belvezer と読まねばならない(詳しくはBeluezer参照)。

 4行目 del はフランス語ではなく、プロヴァンス語やスペイン語の単語である。これは前置詞と男性名詞につく冠詞の縮約形なので、フランス語では du にあたる。ゆえに異文の de la, des, de はいずれも不適切である。プロヴァンス語では del Basacle と書かれることは確かにある *1
vasacle は Basacle となるべきで、単なる誤記か誤植であろうと考えられる。

日本語訳

トゥールーズのベルヴェデルから遠くない場所で
長い坑道を掘ると、瞠目すべき宮殿が。
財宝が発見され、誰もが悩むことになる。
そしてバザクルのすぐ近くの二つの場所で。

訳について

 2行目 loing は long と同一視して「縦長の、深い」の意味に取られるのが一般的なので、それに従った。
 4行目は tout の位置づけが非常に分かりづらい。 all in two places *2 と英訳したエドガー・レオニの読み方もひとつであろうが、前半律が locs までであることを考慮した場合、tout & pres を実質的に tout pres と理解しているらしいピーター・ラメジャラーの読みの方が良いように思えたので、それを採った。

 山根訳は1行目「ベルザー」という読みを除けば、おおむね許容範囲だろう。
 大乗訳は2行目「壁を掘っていると壮観な宮殿がでてきて」 *3 が誤訳。puits に「壁」の意味はない。坑道や井戸などの縦方向の穴を指す。
 4行目「二つの包みはバサクルの近くで」は、locs を parcels と英訳したテオフィル・ド・ガランシエールヘンリー・C・ロバーツの読み方を踏襲したものだろうが、この場合の parcel は「小包」ではなく「土地の区画」の意味で使われているはずなので、重訳が招いた誤訳だろう。
 細かい点だが、フランス語では母音に挟まれた s は [z] で発音するので、「バサクル」という表記は不適切である。

信奉者側の見解

 セルジュ・ユタンはトゥールーズで黄金が発掘されることになる予言と解釈した。エリカ・チータムも同じだったが、日本語版の『ノストラダムス全予言』では、Beluzer をブラジルと解釈し、インカ帝国の財宝が発見されるとする原秀人(未作成)の解釈に差し替えられた *4

同時代的な視点

 ジャン=ポール・クレベールは、直前の28番29番と連続して、カエピオの黄金の発掘について描いたものとしている。ピーター・ラメジャラーも、トゥールーズでの考古学的発見のモチーフとしている *5

 ベルヴェデルやバザクルといった細かい指定もあるが、現在までのところ特に発見があったわけではないようである。では信奉者たちが言うように未来に成就することになるかというと、それは不確かである。29番で挙げられていたサン=セルナン聖堂も含めて、手当たり次第にトゥールーズとその近郊で候補を挙げていた可能性なども考慮すべきだろう。


名前:
コメント: