sedifrague

  sedifrague については、古くから二通りの読み方の可能性が指摘されてきた。
 一つ目はラテン語 sedem frangere のフランス語化で、「椅子(座、地位)の破壊者」とする読み方である。これはアナトール・ル・ペルチエが最初に提起した読み方だが、エドガー・レオニマリニー・ローズピーター・ラメジャラーブリューノ・プテ=ジラールといった学識ある研究者たちからも支持されている *1

 もう一つが「誓い(約束)を破る者」とする読み方である。
 この最初の例は、Covenant-Breakers と訳していたテオフィル・ド・ガランシエールの英訳であろう。ただし、彼は語源的根拠を挙げていなかった *2
 エヴリット・ブライラーは fidefragues と読み換えて「誓いを破る者」と読んだ *3
 ジャン=ポール・クレベールは1555年向けの暦書に登場していた foedifraga という表現と関連付け、fedifragues の誤植ではないかとした。 foedifraga はラテン語の foedi-fragus をイタリア語化したもので、「協約を破る者」の意味である *4 。現代のイタリア語にも「誓いを破る者、裏切り者」の意味の fedifrago という語が存在している。

登場箇所


付記

 加治木義博は、スディフラグの語源を「サデム・フレンジェ=縁どりを壊す」だとし、湾岸戦争で国境を破壊した 「サダム・フセインのフランス語発音『サデム・フジェ』に非常に近い」 と主張していたが *5 、明らかに誤り。sedem (sedes) に 「縁どり」 の意味はない。
 読みも不適切で、sedem frangere をそのままラテン語読みすれば 「セデム・フランゲレ」、フランス語読みすれば 「スダン・フランジュル」 *6 で、どちらも「サデム・フレンジェ」にはならない。また、サダム・フセイン (Saddam Hussein) をフランス語読みすれば 「サダン・ユサン」 で、「サデム・フジェ」 にはならない。
 後に加治木は sedifragues を 「サダフレジュ」 と読んで 「サダム・フセインのラテン語読みに近い」 と修正したが *7 、sedifragues も sedem frangere も「サダフレジュ」とは読めないし (フランス語の場合 gue は「グ」、ge は「ジュ」である。加治木の著書ではこの点がしばしば混同されている)、Saddam Hussein はラテン語読みしても「サダム・フセイン」とほとんど変わらないので、結局のところ不適切なことにかわりはない。

 本来詳しく検証する必要のない珍説だが、一応「言語学者」を名乗る人物の主張なので、フランス語学・ラテン語学的に支持できない主張である点を確認しておく。


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