詩百篇第8巻10番


原文

Puanteur1 grande sortira de Lausanne,
Qu'on2 ne saura3 l'origine4 du fait,
Lon5 mettra6 hors toute7 la gent loingtaine8
Feu veu au ciel9, peuple estranger deffait10.

異文

(1) Puanteur : Puanreur 1568C, Puantur 1607PR
(2) Qu’on : Quand 1716PRc
(3) saura 1568X 1568A 1568B 1590Ro : scaura 1672Ga, sçaura T.A.Eds.
(4) l'origine : lorigine 1606PR 1607PR 1716PR(a c)
(5) Lon 1568 1590Ro 1591BR 1597Br 1611A 1628dR 1649Ca 1650Le : L'on T.A.Eds.
(6) mettra : mettera 1650Mo
(7) toute : tout 1649Ca
(8)la gent loingtaine : loingtaine 1665Ba 1697Vi, longtaine 1720To
(9) ciel : Ciel 1605sn 1649Xa 1672Ga 1697Vi 1712Guy 1720To
(10) deffait : desfait 1591BR 1597Br 1603Mo 1606PR 1607PR 1610Po 1611 1644Hu 1650Ri 1653AB 1981EB, défait 1627Ma 1627Di 1697Vi 1720To, defait 1650Mo 1772Ri, des fait 1716PR

(注記1)1712Guy はバルタザール・ギノーの異文。
(注記2)版の系譜の考察のために1697Viも加えた。

日本語訳

ひどい悪臭がローザンヌから発するだろう。
その出来事の起源が知られることはないだろう。
隔たった一団は外に置かれるだろう。
火が空で見られ、異国の人々が打ち倒される。

訳について

 山根訳、大乗訳とも、かなり細かい点を除けば問題ない。

信奉者側の見解

 テオフィル・ド・ガランシエールバルタザール・ギノーは、そのまま敷衍したような具体性にかける解釈しかしていなかった*1

 アンドレ・ラモン(1943年)はローザンヌを国際連盟の喩え、打ち倒された人々はナチス、空の火は第二次世界大戦の情景と解釈した*2

 セルジュ・ユタンは、詩百篇第9巻44番などとともに近未来のスイスが脅威にさらされる予言とした*3

 ヴライク・イオネスクは Lausanneをアナグラムして USA LANDEを導き、アメリカによる広島、長崎の原爆投下と解釈した*4
 パトリス・ギナール(未作成)竹本忠雄もこれを踏襲した*5

同時代的な視点

 ローザンヌはジュネーヴと同じくレマン湖そばに発達した都市であり、1536年以降プロテスタントになっていた。

 ジャン=ポール・クレベールはここでの「悪臭」は「悪疫」(pestilence)の同義語でなおかつプロテスタントの喩えとしている。彼はプロテスタント内部の動きと驚異(天の火)が結び付けられているとした*6

 ピーター・ラメジャラーは、カルヴァン主義の崩壊の予言と、『ミラビリス・リベル』においてイスラーム勢力の侵攻からヨーロッパが解放される予言とが重ねあわされていると推測した*7




※記事へのお問い合わせ等がある場合、最上部のタブの「ツール」>「管理者に連絡」をご活用ください。

タグ:

詩百篇第8巻
最終更新:2020年05月15日 20:40

*1 Garencieres [1672], Guynaud [1712] pp.336-337

*2 Lamont [1943] p.251

*3 Hutin [1981] p.74

*4 Ionescu [1976] pp.593-595

*5 Guinard [2011], 竹本[2011] pp.715-718

*6 Clebert [2003]

*7 Lemesurier [2003b]