An Almanac for the Year 1564.

 『1564年向けの暦』(An Almonac for the Year 1564.)は、英語で書かれたノストラダムスの暦書。ただし、実際の1564年向けと推測されている内容からはかけ離れており、偽版であることが明らかである。タイトルページなどが失われているせいもあってか、出版地、出版業者名ともに不明である。

【画像】第二部にあたる『1564年向けの占筮』の扉*1

正式名

第一部
  • An Almonac for the Year 1564. Translated out of French into English
  • 1564年向けの暦。フランス語から英語へ翻訳された版。
第二部
  • A Prognostication for the yeare of our Lorde God. 1564. Made and sette forth by maister Mighel Nostradamus doctour in Phisicke, translated oute of French into English.
  • フランス語から英語に訳された医学博士ミシェル・ノストラダムス師によって作成、説明された紀元1564年向けの占筮

 この文献はタイトルページを含む一部ページが失われているので、上記の第一部の名称は厳密に言えば当時の正式名ではなく、現在一般に通用している題名にすぎない。

内容

 八つ折版で60ページほどの文献である。ただし、一部ページが失われているので、正確なページ数は分からない。

 第一部は暦書で、四行詩を添えた各月のカレンダーになっている。ただし、1月分は失われている。
 この四行詩はジャン=エメ・ド・シャヴィニーが転記していた正式な1564年向けの予兆詩とは全く異なるものである。ピエール・ブランダムールは、訳された単語をフランス語に戻したときに韻を踏んでいることなどから、おそらくはノストラダムス自身に遡るオリジナルのフランス語版が存在したと推測していた。
 第二部は散文の占筮である。ピエール・ブランダムールはいくつかの天体上の言及が1556年についてのものと推測できることから、偽作者の素材の一つに1556年向けの暦書が含まれていた可能性を示唆した*2

予兆詩

 以下では予兆詩の対訳を掲げる。
 上で触れたように、ブランダムールの推測からすれば、存在自体が全く確認できないでいる1556年向けの予兆詩が転用された可能性がある。突飛なようだが、類似の例として1555年向けの予兆詩がそのまま転用された英訳版『1562年向けの暦』を挙げておく。
 反面、バルブ・ルニョーその後継者は、1561年向け、1562年向け、1563年向け、1565年向けの暦書類を出していた(いずれも非正規版)。となれば、偽『1564年向けの暦』を作成していた可能性も否定すべきではなく、そこに載せられた偽の予兆詩が英訳されているだけの可能性もある。

 冒頭のページが途切れているので、何月向けかを正式に特定しきれない。ここでは最後の予兆詩を12月向けと想定し、そこから順次遡らせている。

2月向け?

Many manifest signes shalbe shewed
Yonger, colde, strife shalbe betwene frendes.
Suche acts following, shall so overcome,
That many people shalbe come enemies.

多くの明白な兆候が見られるだろう。
より若い者、寒さ、闘争が友人たちの間であるだろう。
続いてくるような法令があまりにも圧倒するので、
多くの人々が敵の方へ来ることになるだろう。

3月向け?

Many Cities would rise up,
Against the people of yͤ frenche shippes,
They cannot preuaile their power,
They shalbe so kept in pensife and melancolthe

多くの都市が蜂起するだろう、
そのフランスの船団の人々に対抗して。
彼らはその力に打ち勝つことはできず、
哀愁と憂鬱の状態にまさしくとどまるだろう。

  • yͤ(þͤ = the)はyͭ(þͭ = that)の可能性もあるが、不鮮明で判読できない。以下、yͤについては、一部、yͭと特定できる例を除いて同じ。

4月向け?

The banished shalbe at onemoment,
Quickly succoured of all their aduersaries
And monuments shalbe discouered
During the time of all their affayres.

罰せられた人々が一度に、
素早く、彼らの敵対者全体から救われるだろう。
そして、記念碑が発見されるだろう、
彼らの事情全体に関わる時期に。

5月向け?

Spaine in trouble, for the confusion
Of the best which shall make him self known
Or cast forth of many a Realme
Of their inhabsters wiche shall deny their maister.

スペインは困難に見舞われる、最良の者の混乱のせいで。
その者は自らを知らしめるであろう者であり、
あるいは多数の王国の前へと目を向けるであろう者である。
(その王国は)住民たちがその主人を否認するところのもの。

  • inhabsters は意味不明。とりあえず inhabitant と同一視した。

6月向け?

Sect heresy in the end shalbe left
By the wil of all the inhabitants
The citezins shall geue ouer, being ouer wery of the time
In their misdeeds seing the,

最後には異端派は去るであろう、
住民全体の意思によって。
市民は引き渡すだろう、その時代にうんざりとしながら、
彼らの悪事のなかで…を見つつ。

  • 4行目は不自然に途切れている。

7月向け?

The great bishop shalbe lift by on hye
Peace and unitye betweene the Infidels
The night being come the day shortly rising
There shalbe conceiuid a death moste cruel

大司教は高く持ち上げられるだろう。
異端者たちの間での平和と統一。
夜が来て、すぐに昼になる。
最も残酷な死がそこで想像されるだろう。

8月向け?

Very late shall come yͤ commaundement
Of one great lord which fyat cause him selfe to be hid
Never man saw suche putting down.
Of great labours yͭ shalbe caused to be in redynes.

その命令は非常に遅れてやってくるだろう、
ある偉大な主人の。彼の認可は彼自身に隠される。
誰一人としてそのような鎮圧は見なかった。
偉大な働き手たちにより、それは赤を身に纏う羽目になるだろう。

9月向け?

Sedition shall quickly be priuen away.
Of yͤ number of those whiche shall holde yͤ counsel.
The ship shalbe from aboue yͤ water driuen away
Towards the Turks it wilbe easy to fight

煽動は速やかに妨げられるだろう、
その協議を行うであろう多くの人々によって。
船は上流から航行するだろう。その水は追い払われる、
トルコ人たちに向けて。それは戦いやすくするだろう。

10月向け?

Turky in trouble, sorowe and disires,
For the fight, of enemies comberous
Shall be put to suche great oppression
That in fighting shalbe stroken of death.

トルコは困難、悲嘆、願望の中に。
戦いの間、敵の厳しさによって、
大抑圧に押さえつけられるだろう。
戦いの中でそれは死のひと撫でを受けるだろう。

11月向け?

The hail, rage, and the fierce torment
Shall do muche harme, in places nere by
A man of his owne parson would not trust
Of one great murder, yͭ yͤ neighbours wil make.

雹、猛威、そして猛烈な苦痛が、
至近の場所で大いに害をなすであろう。
彼が所有する牧師館の男は信頼できない。
一人の大殺人者を、隣人たちが判断するだろう。

12月向け?

By the agrement of Venus and Mercury
Shalbe both the mercurialistes.
Put ashore shalbe without thought or care.
Very nere by the Jouialistes.

ウェヌスメルクリウスの合意によって、
どちらもメルクリウス主義者になるだろう。
岸に置かれ、思考も配慮もなくなるだろう、
ユピテル主義者の至近には。

所蔵先

 イリノイ大学図書館に唯一現存しているが、上記の通り、タイトルページを含む一部ページは失われている。


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暦書
最終更新:2010年06月22日 23:18

*1 画像の出典:http://www.propheties.it/

*2 Brind’Amour [1993] p.489