原文
De la partie de
Mammer1 grand Pontife
2,
Subiuguera les confins
3 du Dannube
4:
Chasser
5 les
6 croix
7 par fer raffe
8 ne
9 riffe,
Captifz
10, or
11, bagues
12 plus de cent mille
rubes13.
異文
(1) Mammer : Mammet 1644 1650Le 1650Ri 1653
(2) Pontife : pontife 1611B 1649Ca 1650Le 1660 1668
(3) confins : cofins 1611B 1660
(4) Dannube ou Danube : Danuube 1589PV
(5) Chasser : Chasier 1628
(6) les : la 1600 1610 1627 1644 1650Ri 1653 1665 1716 1840
(7) croix : crois 1611B 1660, Croix 1627 1644
(8) raffe : rasse 1589PV, raffé 1600 1627 1644 1650Ri 1653 1665
(9) ne : ni 1772Ri
(10) Captifz : Captif 1649Ca 1650Le 1668
(11) or : Or 1672
(12) bagues : bague 1600 1610 1627 1644 1650Ri 1653 1665 1716 1840
(13) rubes : Rubles 1672
(注意)1588-89では、3-4-1-2行目の順でV-8に差し替えられているため、この詩が収録されていない。
日本語訳
マメルに属する大祭司が
ドナウ川の両岸を支配するだろう、
鉄(武器)によって何が何でも十字架を駆逐するために。
捕虜たち、黄金、指輪、十万点以上のルビー
訳について
大乗訳はおおむね許容範囲内だが、3行目「鉄の十字架をひきずって混乱を起こし」は誤訳。
ヘンリー・C・ロバーツの英訳は They shall pursue crosses of iron, topsy-turvyとなっており、「十字架を引きずる」とはなっていない(
raffe ne riffeをどう訳すかは後述)。
大乗訳は
五島勉の「彼らはカギ形に曲がった鉄の十字架をひきずり」という訳に影響されたものだろう。
chasserは確かに海事用語としてなら「錨を引きずる」という意味がある。しかし、その場合は自動詞なので、その意味ならばles croixは何らかの前置詞をとるはずと考えられる。
raffe ne riffeを「カギ形に曲がった」と訳す事例は信奉者側にしばしば見られるが、適切なものとは考えられない。
信奉者側の見解
ヘンリー・C・ロバーツはナチスのカギ十字の予言と捉えた。この解釈は黒沼健によって日本でも紹介され、
五島勉もそれを踏襲した。五島は1行目の「党」や3行目の「カギ形に曲がった十字架」はナチスに非常に適合しているとした。
セルジュ・ユタンはナチスによるオーストリアやチェコスロヴァキアの併合と解釈した。
同時代的な視点
マメルが何を指しているのか明瞭でないため特定しきれないが、ドナウ川を征服し十字架(キリスト教)を追い払うというのなら、確かにオスマン帝国の侵攻を警戒したものと捉えることが可能であろう。
なお、そのように読む場合、raffe ne riffe は
テオフィル・ド・ガランシエールのように「あべこべに」と訳すと、文脈にはよく当てはまるように思う。キリスト教徒のノストラダムスにとっては、駆逐されるべきは異教徒であって十字架ではないからだ。ただし、ガランシエールがどのような根拠でそう訳したのかは明瞭でない。
- 魔女に関する論文『魔女に与える鉄槌』をベースにして槌が国旗に描かれたソ連によるドナウ川周辺の国家侵略とナチスによるユダヤ人狩りを予言 -- とある信奉者 (2010-03-28 23:13:59)
- ノストラダムスの念頭にある事件は1202年の第四回十字軍遠征であり、 大司教はイノケンティウス3世だろう。彼の呼びかけにより集まった 十字軍はキリスト教国の東ローマ帝国の首都は陥落し、 彼らは略奪・殺戮の限りを尽くした。ドナウ川は十字軍を運ぶのに使われた。 -- とある信奉者 (2011-08-08 11:41:21)
- 4行はスターリンによって10万ルーブルの賞金が掛けられた ナチスの戦車撃破王 ハンス・ウルリッヒ・ルーデルについても述べられている。。 -- とある信奉者 (2011-09-17 10:02:46)
最終更新:2011年09月17日 10:02