百詩篇第9巻17番

原文

Le tiers premier pys que ne feit Neron,
Vuidex vaillant que sang humain respandre:
R'edifier fera le forneron,
Siecle d'or, mort, nouueau roy grand esclandre.

異文

(1) feit 1568 1653 1772Ri : fait 1590Ro, fit T.A.Eds.
(2) Vuidex 1568A 1568B 1568I 1600 : Vuidez T.A.Eds. (sauf : Vuideux 1590Ro, Vnidex 1653 1665, Vindex 1691AB)
(3) R'edifier : Redifier 1672 1772Ri 1840, Reedifier 1611B 1660 1792La
(4) forneron : Forneron 1672, Forgeron 1690AB
(5) d'or : dor 1568A, d'ort 1627
(6) roy 1568A 1568B 1568C 1590Ro 1597 1772Ri : Roy T.A.Eds.
(7) grand : gtand 1650Ri

(注記)1691AB はアントワーヌ・ベソン版の異文、1792La はランドリオ出版社版の異文。

校訂

 2行目 Vuidex vaillant は何らかの誤植であろう(Vuidex という語はない)。ジャン=ポール・クレベールVuider vaillant と理解し、ピーター・ラメジャラーは Vu des vaillants と理解している。当「大事典」では前者を採った。

 ピエール・ブランダムールは3行目を「かまどが再び造られるだろう」(Reedifié sera le forneron)と校訂していた *1

日本語訳

第三の者は当初、ネロの行状よりも悪いだろう。
財産を蕩尽し、人の血を撒き散らす。
かまどを再び造らせるだろう。
黄金の世紀、死、新しい王、大騒動。

訳について

 1行目 premier は副詞と見なした。現代フランス語では形容詞と名詞の用法しかないが、中期フランス語では「最初に、第一に」(premièrement, d'abord)の意味があった *2 。tiers が形容詞で premier が名詞だとすれば「第三の第一人者」という訳も可能である。なお、1行目に見られる ne は比較表現における虚辞であって、当然否定語として訳さない。
 2行目は、ラメジャラーの校訂に従えば「人の血が流れるのが勇敢な者たちによって目撃される」となるだろうが、クレベールが指摘するように、ここでの vaillant は勇者ではなく財産の意味に理解すべきだろう。que は様々な接続詞句の代用となるが、クレベールの読みに従い、ここでは前後を並列的につないでいるものとして訳した。

 山根訳は2行目「行け 流れろ 勇敢なる人間の血」 *3 が微妙。「行け」は、vuider de が「~から出る」という意味だったことを踏まえているのだろうとしても、語順的な繋がりが不明瞭である。
 大乗訳1行目「三人のうち第一の者 かつてのネロ以上の悪き者」 *4 は、tiers を「三人のうち」と訳すのが不正確。2行目「英雄からでて彼は多くの人類の血を流す」は前半が誤訳。3行目「フォーヌロンを再建するもととなり」は「もととなり」に対応する語が原文にない。
 4行目「黄金の時代は死に 新しい王は大きな困難を」は、前半律が mort までなので、十分に可能な訳。

信奉者側の見解

 テオフィル・ド・ガランシエール(1672年)は、シャルル9世と結びつけた。「第三」とは、シャルルがアンリ2世の三男 *5 だったことを表し、彼がサン=バルテルミーの虐殺を引き起こしたことを予言しているとした。4行目については、虐殺のときにシャルル9世が「黄金時代は終わった」と発言したことや、すぐ後に即位した新王アンリ3世の時代に宗教戦争がさらに悪化したことを予言したという *6
 ヘンリー・C・ロバーツはこの解釈を支持していた。ただし、娘婿夫妻の改訂版では「第三」を第三帝国としてユダヤ人迫害などと結びつける解釈に差し替えられた *7

 アナトール・ル・ペルチエ(1867年)は、フランス革命の予言と解釈した。前半は平民、つまり第三階級が第一位になったあとに、恐怖政治によって多くの流血をもたらすことと解釈し、3行目はタイル焼き窯跡に建てられたチュイルリー宮殿に、貴族達を死に追いやる窯(処刑場)が設置されたこととした。4行目は共和政の到来が「黄金の世紀の死」と表現され、「新たな王」という表現でナポレオンの台頭が予言されているとした *8
 この解釈はチャールズ・ウォードアンドレ・ラモンエリカ・チータムらに引き継がれた *9

 マックス・ド・フォンブリュヌ(未作成)(1939年)は「第三の者」とは第三共和政のことで、それがパリの大火とともに近未来に崩壊し、新しい王政が誕生することと解釈していた *10
 ちなみに第三共和政はこの解釈の翌年に崩壊したが、言うまでもなく王政復古とはならなかった。そのためかどうか、のちの改訂版では「パリ崩壊」の章よりも大幅に前にずらされ、「第三共和政」「パリ大火」といった具体的な表現を削った漠然とした解釈に差し替えられた *11
 息子のジャン=シャルル・ド・フォンブリュヌは第三帝国の第一人者、つまりヒトラーの暴虐ぶりを予言したと解釈した *12
 セルジュ・ユタンもヒトラーと結びつけた *13

 飛鳥昭雄は近未来に現れる世界総統の恐怖政治の描写と解釈した *14

 加治木義博は国連が機能しなくなった後に三つの陣営が対立する大戦が起こることと、その後に来る偉大な新王の登場を予言しているとした。彼は他の詩との関連から、その新王の登場を2007年としていた *15

同時代的な視点

 恐怖政治を敷く暴君の存在が予言されているらしいことが読み取れる。ジャン=ポール・クレベールは「第三の者」は「3世」を名乗る君主だろうとしたが、具体的には特定していない。

 ルイ・シュロッセ(未作成)は好戦的な君主であったアンリ2世が想定されているとしたが、細かい語句との対照はしていなかった *16


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