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ジャスリーさまのいない、静かな千年城。 今日も今日とてヴァレフォールという新しい世界で手に入れた辞書たちと戯れる平和なひと時のこと。 誰かが来た。いや、誰かはわかる。 噂には聞いている。ジャスリーさまのお気に入り。 私の故郷なんかより遥かに多くの人を抱える一国の主にして、それだけの責任を持つ。 私の生きた時代なんかより遥かに多くの情報を手に入れられる時代における事情通にして、それだけの聡明さを持つ。 でも私と同じようにその渦中にいながら何もできない無力さも知っている。 そんな彼女はそうそうのことで絶望はしないだろうけれど、全く常識の違う世界に放り込まれればもしかしたら。 そしてそうなればそれはとても深く濃く甘い。 でも私は全く違う期待をしている、きっと彼女は五十年前に私の目の前で灰になった「あの問題」の解答を知っている。 そう思った次の瞬間には私は、彼女の背後に立って呼びかけていた。 今思うと、むしろ私がこう聞かれたかったのだろうけれど。 「何か、お探しですか?」 それが、私と彼女の最初の出会いだった―

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