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国名:立憲王政アーカルソン=リペルニア(合同立憲王政アトリオン) 英名:Constitutional Kingdoms of Arkalson-Lipernia (Atrionish Union of Constitutional Kingdoms) 地域:北方大陸 国歌:アトリオンの民は大洋を行く 国花:紫露草 通貨:アトリオン・リブラ 公用語:アトリオン語 首都:スタックバラ 政体:複合君主政、立憲主義議会王政、混合政体 元首:アーカルソン=リペルニア女王アン4世 宗教:アトリオン国教会 気候:冷涼湿潤 民族:アーカルソン人、リペルニア人 経済:商工業国 農業:牧畜、混合農業 工業:機械産業、特に精密機械工業において優れた競争力を有する 鉱業:良質な鉄鉱と炭鉱が所在 商業:伝統的に海運業が発達 軍事:海洋国家らしく海軍主体の軍容を備える *地理 イクファターナの東に浮かぶアトリオン諸島(アーカルソン島とリペルニア島)全土、さらにその東のグリット諸島北部を領有する。 植民地として海の向こうにグラニツァ南部、ゴーシュ北部を領有する。 |地域名|中心都市名|番号|政体|気候|特産品|工場| |アーカルソン王国|スタックバラ|19|合同立憲王政構成王国|Cfb|畜牛、羊毛、魚|鋼鉄、セメント、弾薬、小火器、汽船団、機械部品、飛行機、電気部品、電話、衣料品、ラジオ| |リペルニア王国|ホイーリントン|23|合同立憲王政構成王国|Cfb|石炭、鉄|鋼鉄、ガラス、機械部品、蒸留酒、缶詰| |グリット諸島|セント・ミカエル|58,59,60|(多様)|Cfb~ET|硫黄、貴金属、木|木材、紙、家具、高級家具| |ニューリペルニア諸島|ポート・エンジェ|11|王室属領|Cfa|魚、果実|缶詰、ワイン| |北ゴーシュ|エリファネス|35,36|自治領|Am~H|畜牛、穀物、茶、熱帯木材、ゴム、茶葉|缶詰| |レイズフィル|エイレンフィス|72,73,76,77,78|自治領|Dfb~H|畜牛、魚、穀物、木材|木材、紙、家具、蒸留酒| |ヴェルレニース|ネイフフォード|70,74,79|自治領|Dfb~Cfb|果実、穀物、石炭|セメント、家具、高級家具| |ニューアーカルソン|ハリントン|69,71,75|自治領|Cfb|綿花、穀物、石油|燃料、機械部品、飛行機、電気部品、電話、衣料品、ラジオ| |サウスセレントス島|サウスベレエイス|80|王室属領|Cfc/ET|魚、畜牛、石油|燃料| **アーカルソン王国領(19) 合同立憲王政の中心となっている王国。商工業が発展し、国内外に広く様々なネットワークが行き渡っている。 ***主要都市 ****スタックバラ アーカルソン王国の首都であり、合同立憲王政全体にとっても首都である。 この地域にアトリオン島の交通網・情報網の結節点が集中しており、商工業の中心地。 機械部品・電気部品といった部品産業、汽船や飛行機といった輸送機械、電話やラジオといった電気製品の製造業に優れており、世界の機械工業を主導している。 ****ウィルミンガム 工業都市。近隣に大規模な炭田が存在することから産業革命期に工業化が進んだ。現在は炭田は枯渇気味だが機械産業を中心に今でも世界有数の工業都市である。 ****ベレエイス 最初にイスティングが到達した地。リンディスヴァート対岸の都市で、大戦では何度かこの街の付近で海戦・空戦が戦われた。 ***気候 北限海に近く冷涼だが、サルヴェリア海から北上する暖流が西岸境界流のため近辺を通り緯度のわりには温暖。夏にはしばしば移流霧に覆われる。 ***政治・法制 合同立憲王政の中心地。 ***経済・産業 世界有数の工業地帯の一つで、重工業・機械産業が集積している。また、この地域で産出される石炭は無煙炭であり、王立海軍の作戦上も重要な役割を果たした。 農業としては酪農業、混合農業。羊毛生産でも有名。漁業ではサケやタラなどが知られる。 ***交通 スタックバラを中心に鉄道網が広くいきわたっており、高規格の幹線も多数存在する。海路・空路においても要衝である。 また大戦中に建設された飛行場が無数に点在し、そのうちいくつかは戦後になっても拡張が続けられ国際空港に発展しつつある。 ***住民 アーカルソン人はもともとこの島に住んでいたアストラ系と外来の征服者であるイスティングの混血によって成立した民族。 ***文化・宗教 世俗主義が次第に影響力を増しつつあるが、現在でも大多数のアーカルソン人は国教徒を自認する。 **リペルニア王国(23) 合同立憲王政を支えるもう一方の王国。合同以来のアーカルソン資本投下の結果、鉱工業はアーカルソンと同程度まで発展している。 ***主要都市 ****ホイーリントン リペルニア王国の首都。近郊に良質な炭田と鉄山が所在し、鉱工業は盛んだが、海運・金融業はスタックバラ系資本がほとんど支配している。 伝統産業としてガラス製造が広く行われるほか、鉱物資源を活かした製鉄業が発達している。 ***気候 南にアーカルソン島よりも当然ながら温暖。しかし真夏にも暑いと感じるほど温度が上がることは少ない。 ***政治・法制 合同によって独自の議会は廃止されたが、慣習法の差異は現在も認められており、法域はアーカルソンとは今でも別である。 ***経済・産業 鉄と石炭を産出する。アーカルソン資本の投資が続き、重化学工業はアーカルソンに近い水準まで発達している。 混合農業により穀物もよく栽培されており、それを加工したリペルニアウイスキーも有名。 ***交通 アーカルソンに比べると鉄道交通よりも若干道路交通に力点が置かれている。大戦中に多数整備された飛行場が残るのはアーカルソンと変わらない。海運はネットワークの結節点というよりは中継拠点の感が強い。 ***住民 リペルニア人はリンディシャン・コンクェストの影響をあまり受けておらず、アストラ系の系譜が強い。 ***文化・宗教 アストラ系の星詠み文化を現在でもよく保存している。リペルニア教会は円十字教を逸脱しない範囲で天界の秩序や自然法といった観念を発達させていった。 リペルニアでは現在でも国教会・普遍教会・改革教会が共存している。 **アトリオン領グリット諸島 近世以降のアトリオンの拡大により最初に合同立憲王政の属領となった地域。先住民としてゲアファルと呼ばれる人々がいる。様々な地下資源が賦存するとされている。 ***主要都市・地域 ****ハリエヤール島(58) グリット諸島の北端の島。島の内側は急峻な山岳地であるため、外周の狭い陸地に張り付くように入植者が住んでいる。主要産業は漁業。 ****ヴェザンランド島(59) アトリオン領グリットの西側の島。ハリエヤールに比べると平地の割合が広いが、北方に位置し冷涼なため農業よりは畜産が主産業。 ****セント・ミカエル海上城砦(60) アトリオン領グリットのとある島に建造された巨大な城塞都市。大型船の造船も可能な軍港でもあり、大洋における合同立憲王政海軍のプレゼンスの源となっている。 ***気候 アトリオン諸島と異なり西岸強化の恩恵を受けられないこの地域はより寒冷で多雪。 ***政治・法制 一つの島が一つの広域自治体。グリット法はアーカルソン法・リペルニア法・ゲアファル法が重層的に折り重なり、アトリオンの法曹にとっての悩みの種。 ***経済・産業 現在までに白金族・石油・アルミニウム・ウラン・錫・チタンなどの賦存が確認されており、「アトリオンの元素博物館」と呼ばれるほど多様な鉱産資源が発見されている。産業的にはみるべきは今のところ白金族と石油が中心。 気候条件から農業にはあまり適しておらず、林業と粗放的な放牧が中心。漁場としては好漁場で、アトリオンの膨張も好漁場を求めて中世アトリオン人が東へ進んでいったことに端緒を持つともいわれる。 工業化は木材の加工や精錬、軽工業を中心に緩やかに進展している。 ***交通 陸上交通事情はよいとはいえず、主に鉱山から港までの鉄道を除いては整備が進んでいるとはいえない。グリットの中流階級が自らの集落から外へ出るときに使われる移動手段は大抵の場合自家用水上機である。 ***住民 この地域の先住民であるゲアファルは少なく見積もっても十数万程度存在している。アトリオン人入植者との混血も加えるとアトリオン領グリットの半分近くはゲアファル系である。 ***文化・宗教 長い同化への抵抗を経ながらも現在ではゲアファルは国教会とアトリオン語を受け入れている(受け入れた者しか生き残らなかったともいう)。しかしリペルニアがそうである以上に独自の風習を今でも保っている。 **アトリオン領ニューリペルニア諸島(11) 礼王朝からの租借地であったが、革命により礼王朝が倒れ、軍閥内戦時代になると清河におけるアトリオン人の安全が保障できていないことを理由に自称大統領を主張する清河の親アトリオン地方政権に併合を認めさせた属領。当然のことながら清河人民社会主義共和国は併合を認めていないものの、合同立憲王政も人民社会主義共和国を認めていないのでそのままにされている。 アトリオン船の蒼海洋航路の拠点、シンガ・西イクファターナ・ゴーシュの交通の結節点であり、港湾や空港がよく整備され、蒼海洋におけるアトリオンの海空軍戦力のプレゼンスもゴーシュ大陸よりもこちらに集中している。 産業的にはみるべきものは少なく、ニューリペルニア経済は交易と軍需に依存しているが、一応魚と果物は割と生産されている。 ***ポート・エンジェ 蒼海洋有数の要港でありニューリペルニアの首都。 **アトリオン自治領北ゴーシュ(35,36) ゴーシュ北部の高原地帯に存在するアトリオン人入植地。そのためアトリオン人の居住地は主に内陸に集中しており、沿岸部はあまり開発されていない(地形的にも良港に乏しいという事情もあるが)。 ***気候 赤道に近いゴーシュ大陸はアトリオン人には過酷な地であったが、北部の高原地帯は常春気候で過ごしやすい。 ***政治・法制 入植者による自治政府が発足しており、現地におけるアトリオン王の儀礼的な代理人を総督が、実際の統治を首相が務める。王権は本国よりもさらに形式的で、より民主的な体制を持っており、大戦前に既に婦人参政権を認めている。一方で人種意識はザルバチほどではないが本国よりも強い。 ***経済・産業 穀物生産や畜産業で合同立憲王政の食料事情を支えている。工業化はあまり進んでいないが、近年は食品加工を中心にその萌芽はみられ、近年の冷凍船の発達により畜産部門は成長を続けている。また高地と海に挟まれた傾斜地にはゴムノキ、茶葉のプランテーションが散在しており、本国から流入したアトリオン人が年季奉公人として働いている。 ***外交 |国名|所感| |[[ジャーガルク・シャー国]]|アトリオン領を除くと最大の交易相手。| |[[清河人民社会主義共和国]]|目下最大の脅威。| |[[スルガ]]|シンガでは最先進国。住民意識としては微妙なライバル心がある。経済的にはスルガ製品の存在感は大きい。| |[[レオネッサ王国]]|最も近くに位置するイクファターナ諸国。| |[[ハダカンボ王国]]|地理的には近いのだが、あまり交流がない。| **ニューアーカルソン自治領(69,71,75) 「アトリオン諸島が世界で最も教養ある貴族のいる場所なら、ニューアーカルソンは世界で最も教養ある農民のいる場所だ」 国教会よりも厳格に聖典のみを参照すべきと主張し、国王からの勅許を得て旧世界の欲と罪から逃れようと新天地へ向かったアトリオン人の一派に由来する自治領。 ***主要都市 ****ハリントン(71) ニューアーカルソン最初の都市の一つで、ニューアーカルソンの中心地。ハリントン大学はニュースタックバラ大学と並んでアトリオン勅許大学に匹敵する教育水準にあるといわれる。 ***気候 概ねアーカルソン王国と同じ気候地域であり、文字通り「新しいアーカルソン」。 ***政治・法制 アトリオン領の全地域で最も民主的で、完全普通選挙が実施されており、活発にタウンミーティングやレファレンダムを行う直接民主制の伝統もある。もっともその前提としては極端な民族的・宗教的・文化的同質性があるため、政治学者からは例外的地域と捉えられている。 法制度は基本的にアーカルソン法から国王大権を除去する方向に発展した形態をとっている。なお、新大陸における国王による裁判権の不存在は国王自身によってニューアーカルソン植民地創建の勅許で認められたものである。 ***経済・産業 その知的水準から、南グラニツァにおいて教育水準で卓越しており、精密機械製造技術すら本国に迫る水準にある。旧大陸製の機械を自ら修理するのもお手の物。 一人当たり所得も近年は本国を追い越しつつある。 ***交通 既に高速道路網の整備が始まっており、モータリゼーションの気配が高まっている。 ***住民 ニューアーカルソン人は基本的にアトリオン人である。最もゲアファルに対し円十字教が苛烈であった時期に入植を行ったためゲアファルすらも少数。 ***文化・宗教 改革教会の分派が支配的。普遍教会も国教会もほとんど存在感を持っていない。入植してまず行ったことは何よりも教会・集会場・学校を建てることであったニューアーカルソンの民は、現在でも入植当時の知性主義を失っていない。 それゆえ、アトリオン本国のアカデミズムに対抗する新大陸の知的中心となっている。さらには、一般民衆の教育水準はアトリオン本土よりも高く、論理的文章を書ける農民・労働者が普通に見られる社会である。 ***外交 |国名|所感| |本国以外の旧大陸全て|我々は新天地に我々の望む国を作り上げる。旧世界が何をしていようと問題ではない。| |[[アババニスタン>ムスルマーネン=カリフ国]]|邪教の民。いずれ新大陸から駆逐する必要がある。| |[[ピスカ・ハウイカウサイ部族連合]]|アニミスト。放っておいてもよかろう。| |アーカルソン=リペルニア本国|我々の自由と安全を保障するのであれば、彼らの王冠を認めておこう。| |ヴェルレニース自治領|多様性と共存、それは要するに無節操と不純という意味なのだが…。| |レイズフィル自治領|独立独歩の精神は認めるが、もっと学問に裏打ちされた行動をとるべきだ。| |北ゴーシュ自治領|彼らの民主政には学ぶべきところもある。| **ヴェルレニース自治領(70,74,79) 「アトリオン人もヤード人もソフィア人もジャーガルク人も、生きていくには資金が必要。自由意思による取引、すなわち商業は全ての人々に恵沢をもたらす。」 ゴーシュ海に面する、アトリオン領グラニツァでは最も商業的に繁栄している地域。古くよりリエナやクラリッサからの入植者による入植地も存在し、アトリオン自治領となった現在でも民族的多様性を残している。 ***主要都市 ****ネイフフォード(74) リエナからの入植者によって建設された都市。ヴェルレニースでも最も民族的・宗教的に多様で、商業主義的に繁栄している地。都市人口はアトリオン領グラニツァでは最大で、南グラニツァの経済的中心。 ***気候 概ね温暖だが、南には一部冷帯もある。海に面しており、基本的に年中湿潤。 ***政治・法制 リエナ系の自治都市の伝統にアトリオンの議会主義・混合君主政を接合して成立した代議政体。法系もリエナ法とアーカルソン法の混合した混合法系。 ***経済・産業 自由移民のもたらす安価でほどほどの質の労働力により加工業が発達しており、グラニツァの諸産品がここで加工され旧大陸に輸出される。レイズフィルからくる材木を加工した木製家具が有名で、いくつかはブランド化しており本国でも人気。 ***交通 都市圏の鉄道網は次第に整備が進んでおり、アトリオン領グラニツァでは珍しく通勤ラッシュの光景がみられる。 ***住民 古くよりリエナやクラリッサからの入植者による入植地も存在し、アトリオン自治領となった現在でも民族的に極めて多様。移民政策もアトリオン領グラニツァでは最も寛容。 アーカルソン系とリペルニア系を足すとアトリオン系が最も多数派だが、分けるとリンディス系のほうが多い。その他、クラリッサ系やヤード系も一定程度おり、さらにはジャーガルク系・清河系・スルガ系などのコミュニティもある。 亜人もゲアファルを筆頭に多数存在し、アトリオン諸島にいるゲアファルよりもヴェルレニースにいるゲアファルのほうが多いという推計もある。 ***文化・宗教 宗教的には極めて多様。一応改革教会が最も多数派だが、この改革教会はニューアーカルソン系ではなくリンディス系が中心。国教会・普遍教会はもちろんのこと、メトラや浮屠教、礼教も存在している。 ***外交 |国名|所感| |[[清河人民社会主義共和国]]|革命から逃げてきた清河人も結構うちにはいる。| |[[リンディスヴァート制憲諸邦同盟]]|リンディス系ヴェルレニース人は多い。とはいえ、もはやリンディス語を話せない二世三世だらけだが…。| |[[レオネッサ王国]]|レオネッサ系ヴェルレニース人はリンディス系に次いで多い。| |[[アババニスタン>ムスルマーネン=カリフ国]]|奴隷解放運動家がこの地域に対して熱心に干渉しようとしている。無理だとは思うが…。| |[[ピスカ・ハウイカウサイ部族連合]]|あまり商業的に熱心ではないが、熱帯木材や天然ゴムを売ってくれる。それに彼らの憲法と多民族共存はなかなか良いものだ。| |アーカルソン=リペルニア本国|本国が拡大すれば我々の商業圏も広がるというもの。| |ニューアーカルソン自治領|確かに学問も技術も進んではいるが、誰も彼も似たような顔、似たような考え、気味が悪くはならないかね?| |レイズフィル自治領|彼らのスノビズムは商売相手としては大いに結構なことだ。| |北ゴーシュ自治領|まだニューリペルニア経由の船便のほうが多いが、いずれはここもうちの経済圏に組み込みたい。| **レイズフィル自治領(72,73,76,78,79) 「美しきアトリオンの空中庭園。あるいは真の自由の地。」 ニューアーカルソンやヴェルレニースと異なり、南のホーコンソン湾会社と北のリペルニア・エリアン会社という勅許会社によってこの地域の入植は始められた。 リペルニア・エリアン会社はヴェルレニースの現地資本との競争に敗れて拡大に失敗。一方ホーコンソン湾会社は毛皮と木材の輸出で利益をあげ、更なる毛皮を求めて河川を遡上し内陸へ拡大していった。 ***主要都市 ****エイレンフィス(76,77) ホーコンソン湾会社によって建設された都市。典型的な港湾都市。内陸部への統治が行き届いていないため、領域の広さに反して政治都市としての役割は意外と小さい。 ***気候 沿岸部は典型的な針葉樹林気候の冷帯。内陸部は冷涼で日較差が激しいが年較差の少ない高地性の気候。 ***政治・法制 沿岸部はヴェルレニースに似てアトリオン議会政治を模倣した代議制。内陸部では統治はいきわたっておらず、農園主による王国が散在している状態と表現される。 ***経済・産業 沿岸部は針葉樹と毛皮・魚が主産物で、加工もそのままか燻製にするとか製材・製紙といった程度のものを行ってヴェルレニースやニューアーカルソンに輸出することがほとんど。製造業はあまり発達していない。 この内陸部ではアトリオン人は散発的に入植してそれぞれが水運で結ばれつつも孤立し粗放的な大農場と大牧場を構えていった。 しかし近年の農業機械と飛行機械の発展は少ない労働力で広大な農場を経営することを容易にし、レイズフィル内陸の大農場・大牧場は急速に拡大。巨大飛行船による定期航路が開設され、ニューアーカルソンやヴェルレニースとの取引が増加している。 ***交通 特に内陸部ではほとんど公的インフラの整備は行われていない。小河川が多く水利には恵まれており、各農園ごとに河港や飛行場を備えられ、水運と空運が主体となっている。 ***住民 アトリオン人が中心だが、イクファターナ人も一定数存在する。また、住民の間でも農園主と年季奉公人の差が厳然と存在しており、本国の階級以上に明確な階層がある。もっとも、奉公が明けると奉公人もその稼ぎで土地を買い、小農園の農園主になるのが普通。 ***文化・宗教 リバタリアニズムの土地。一応宗教的には国教会と改革教会が中心で、国教会が最も多数派。 ニューアーカルソンの宗教的信条もヴェルレニースの都市的性格もないこの地域は、独立独行の民の土地であり、彼らは入植して自らの農場を開拓し豊かになることしか考えていない。大抵の場合成功したレイズフィル農場主は巨大飛行船を作らせるが深い意味はない。それが成功の証なのである。 ***外交 |国名|所感| |[[アババニスタン>ムスルマーネン=カリフ国]]|新大陸では自らの土地を力によって守れる者こそ正義。そうであろう、なあ?| |[[ピスカ・ハウイカウサイ部族連合]]|土地を私有するという概念は彼らにはないらしい。| |アーカルソン=リペルニア本国|ここは我々の土地だ、なぜならこの勅許状にそう書いてあるから。| |ニューアーカルソン自治領|鬱陶しい頭でっかちの連中。| |ヴェルレニース自治領|色々売ってる便利なデパート。| **サウスセレントス島(80) 王室属領。南限海に位置する亜南極の島。吹き付ける強風と涼しすぎる夏のため穀物栽培すらも困難。放牧と漁労が主産業の最果ての島だが、遠洋漁業の基地としては重要。 *政治 アーカルソン王国、リペルニア王国、その他自治領・属領からなる立憲君主国による物的同君連合。 全土から送られる議員による合同立憲王政議会と君主たるアーカルソン=リペルニア王による混合政体であるというのが伝統的な理解。 保守党と自由党による二大政党制であり、思想的には夜警国家が広く支持されている。 **政策スライダー(アトリオン本国) |地方分権|----◆---|中央集権|合同立憲王政の体制は諸邦の民にその慣習と権利に基づきつつも議会を中心に緩やかに統合している。| |貴族中心|----◆---|富豪中心|近代以来発展を遂げた金融利害は伝統的な土地利害と連続体を成しつつアトリオンの繁栄を支えている。| |農奴制|-------◆|自由農民|自由の伝統長き国、アトリオンの民よ!世界に汝らの自由を奪いうる者なしと知らしめよ!| |保守主義|----◆---|革新主義|漸進的に改良せよ。そうして積み上げられたもの、歴史に裏打ちされた理性こそ、社会の繁栄をもたらす。| |重商主義|------◆-|自由貿易|世界の港から原料を買い、世界の港へ加工品を売る。アトリオンの製造業に支えられ、通商の効用はますます増大する。| |攻撃主義|----◆---|防御主義|大戦後の厭戦感情の中で、戦いに積極的であることは必ずしもよしとはされなくなっている。| |陸軍重視|-------◆|海軍重視|世界の全ての海は我らの濠であり、そして我らの道である。| |精鋭|--◆-----|大軍|アトリオン人の血はそんなに安いものではないはずだ。そして女王陛下の軍人は鍛錬を怠ることを許されない。| **合同議会 アーカルソン議会がリペルニア議会を吸収して成立した合同立憲王政の議会。貴族院と庶民院の二院制。 アトリオン政体では厳密に三権分立はしておらず、最高裁判所は貴族院の付属機関である。 **政党 ***保守党 保守主義。伝統的なアトリオン政体の維持と夜警国家の継続を掲げる。現在の与党。 ***自由党 自由主義。党内には古典的自由主義と社会自由主義の間で不一致がある。現在の野党第一党。 ***リペルニア自主党 地方分権主義。リペルニア王国独自の議会の再建と自治権の拡大を求める政党。 ***労働党 社会改良主義。議会での勢力は必ずしも大きくはないが、民間団体として様々な社会改良運動を行っており、草の根では一定の存在感がある。 ***王冠合同党 反動主義。合同直後の、まだ海外との交流も進んでおらず、議会による君主権の掣肘も不十分だった時期を理想とし、その時代への回帰を求める党。 なお、流石に王国分立時代以前への回帰を求める反動派は極端なリペルニア至上主義者くらいしかいないらしい。 *経済 **産業 ***農業 伝統的に牧羊が活発。産業革命以来の人口爆発で食料需給は悪化していたが、近年開発の進むアトリオン領北ゴーシュで大規模な農園で穀物が栽培されるようになり、合同立憲王政全体では食糧事情は改善傾向にある。 ***漁業 主にタラ漁を中心に広く行われている。アトリオン近海は世界的にも漁場に恵まれており、これは船乗りの文化もはぐくんできた。 ***鉱業 本土で良質な鉄鉱石と石炭(無煙炭)が産出する。グリット諸島では貴金属や硫黄といった資源が発見されている。 ***製造業 アトリオンは実用的な外燃機関(蒸気機関)の発明国であり、その長い伝統から重工業が発達している。伝統工業としては繊維産業やガラス産業があるが、これらの分野でも機械技術の導入が進んでいる。 洗練された工作技術により、アトリオン製の工作機械・光学機器・精密部品等は国際的にもトップクラスとされる。 化学工業では大戦前には技術水準においてリンディスヴァートに追い抜かれつつあったが、大戦後の技術賠償によりいくらか息を吹き返した。 大量生産の導入に関しては流れ作業化は進んでいるものの製品の標準化は東ヤードなどに比べて後れをとっており、生産技術の改善が進められている。 ***商業 海運業が発達しており、アトリオンの船会社により運行される客船・貨物船は世界各地で見かけられる。 また、スタックバラは資本主義の中心地として世界中の富の行き交う金融センターの一つである。 **企業 ***アールカース・コングロマリット ウィルミンガムに広大な工場群を構える、アトリオン最大の重工業コングロマリット。自動車や飛行機、ラジオに銃砲まで製造ラインを抱え、製鉄から軍艦までを内製できる大企業で、アトリオン艦の6割はアールカース製。 ***ライスティン時計工業 リペルニアの精密機械メーカー。もとは時計工房で、現在も時計メーカーとして知られる。しかしこの会社の本領は計量機器にあり、温度計・圧力計・速度計といった部門における世界トップクラスメーカー。 ***プリンスフィールド王立科学機械製造所 Princefield Royal Instrument for Science Manufacturer、略称PRISM社。リンディスヴァートのリエナオプティークと双璧を成す世界有数の光学機器メーカー。 国王アダムズ3世が王位継承権二位の王太子であった時期にスタックバラ郊外の工房で行っていた手作業でのレンズ製造に端を発し、現在の本工場も同じ位置に立地している。 ***ディルミナー機械 アーカルソンの工作機械メーカー。リペルニアやニューアーカルソンにも工場があり、ニューアーカルソン工場では工作機械以外にも割と手広く精密機械を扱っている。そのため南グラニツァではアトリオン本国よりもはるかに知名度が高い。 ***ヴェルニッツァ輸送機械 ヴェルレニース発祥の輸送機械メーカー。リペルニア・グリット・ヴェルレニースに生産拠点があり、自動車・飛行機等を製造している。航続距離と燃費に優れた飛行機で知られ、グリット諸島ではヴェルニッツァ製水上機がよく用いられている。 ***メインヘルナ 化学メーカー。アトリオンでは最大の化学工業であったが、近年はリンディスヴァートの化学工業によって斜陽化しつつあった。戦後賠償によりリンディスヴァートの特許と製造技術を手にし、再建を図っている。 *交通 **陸運 産業革命発祥の地として、アトリオン諸島では全土に鉄道網が張り巡らされている。現在では蒸気機関車は姿を消し、電化が急速に進んでいる。 **海運 スタックバラを中心に、ヤーディア各地の港へ向かう航路が開設されている。 **空運 大戦初期、リンディス軍の空襲を受けてパニック的にアトリオン諸島各地(主に貴族の荘園など)に整備された多数の飛行場と戦後払い下げられた無数の飛行機・飛行船により、過剰ともいえるほど空運産業の下地が用意されていたが、次第に統廃合されつつも主要都市近辺のハブ空港や定期便に集約されアトリオンの航空ネットワークを形成しつつある。 また、元々一家で一隻は小型船を持つのが一般的なグリットやニューリペルニアでは払い下げられた水上機を中流家庭が保有することが一般化し、この文化に本土も影響を受けて量産小型機が次第に中流層に普及しつつある。 アトリオン領グラニツァではヘリウムが産出することから飛行船が主流。 *軍事 **議会陸軍 アトリオンの陸軍は議会合同によって実質的な統一はなされているが、形式的にはそれぞれの領邦ごとに陸軍が存在することになっている。合同以降大きな戦争に参加したことがなく、近年は士気が今一つ。 **王立海軍 アーカルソン=リペルニア王の下に存在する海軍。ブルーウォーターネイビーとしての実力を備え、潤沢な予算と装備を持ち、アトリオンのシーレーンを支えている。 **王立海兵隊 広義の王立海軍の一部をなす陸戦隊(由来的には敵船への乗り込みが海戦術における王道であった時代の部隊)。大戦においても積極的に作戦に参加している。 **王立空軍 アーカルソン=リペルニア王の下に存在する空軍。先王の意向で創設されたもので、陸海軍からは微妙な目を向けられているが、マニアックな技術者たちが空中艦隊計画の実現に日々邁進している。未だ発展途上ではあるが、防空体制は比較的よく整備が進んでいる。 *外交関係 伝統的に他大陸との通商と勢力均衡を外交政策の主軸としている。ゴーシュ大陸への入植も他大陸との通商の一環である。 目下のアトリオンにおいて脅威と認識されている勢力は[[リントヴルム朝ヤード帝国]]の集権化の進展と[[清河人民社会主義共和国]]の社会主義であり、リント朝の地方勢力・[[ソフィア王国]]・[[シャルフェンメリア共和国]]・[[ザルバチ海岸共和国]]によって前者を、[[ジャーガルク・シャー国]]・[[スルガ]]・[[角]]・[[ユルキア王国]]によって後者を封じ込めようとしている。 |国名|所感| |[[ジャーガルク・シャー国]]|シンガの大国。この国からの物産はアトリオンを大いに富ませた。[[ムスルマーネン=カリフ国]]をどうにかしてもらいたいのだが。| |[[角]]|果たして彼らには清河から自衛できる力があるだろうか?| |[[清河人民社会主義共和国]]|我々は永久の敵がいるなどと思ってはいない。だが君たちが我々のことを永久の敵とみなす理屈を信奉しているのであれば、君たちは我々の当座の敵だ。| |[[スルガ]]|小国だが、進取の精神はある。そして小国ならば、伸びすぎるということもあるまい。| |[[ユルキア王国]]|シンファナの境に存在する国家。民族自決の理念が清河の抑え込みに使えるならば、それは結構なことだ。| |[[シャルフェンメリア共和国]]|熱烈な反リンディスの精神は、うまく御せればイクファターナ安定に有用である。問題は、それが有用でなくなった時には古き自由の否定という決定的な対立の原因があるということだ。| |[[リンディスヴァート制憲諸邦同盟]]|戦塵の中に沈んだ対岸の民もやがては自然の秩序のうちにあるべき地位に戻るだろう。今度は敵にならぬよう、手を打ちたいものだ。| |[[フォンタニエ辺境伯国]]|運命に翻弄される小国。少なくとも彼らがヤードに飲み込まれることは望まない。だがそれを阻止することに全力をかける価値があるかというとそれは別の話だ。| |[[カラシュ公国]]|オブスキュアな夜の国。しかし我々もランタンを持って押し入るほど無作法ではない。| |[[レオネッサ王国]]|このファシストという連中は敵とも味方ともつかないな。本国はともかく、南タヴェリアを統治はできるのだろうか?| |[[ソフィア王国]]|前大戦の戦友には、傷が癒えるときまで必要な手助けをしよう。| |[[トルカーナ公国]]|彼らにとってソフィア王国は憎むべき相手かもしれない。だが、彼らが世界の全てを憎んで生きるようになってもらっては困る。| |[[リントヴルム朝ヤード帝国]]|巨大で集権化された隣国というのは落ち着かないものだ。だからといってもう一度大戦をすることを望みはしないが。| |[[ザルバチ海岸共和国]]|かの国の共和主義はアトリオンの右派、白人至上主義はアトリオンの左派に評判が悪い。とはいえ、地政学上敵の敵たる彼らの存在は有益だ。| |[[ハダカンボ王国]]|リンディスヴァート領から独立したタヴェリアの部族国家。敵の敵の敵…ということになるのだろうが、ここまでくるともはや敵対ともいえまい。| **大使派遣国 以下にある国には大使を派遣している(それ以外は公使)。 ***リンディスヴァート制憲諸邦同盟 隣国。イスティング人に由来するとされ北部イクファターナの共通の政治文化を構成した「古き自由」を守るという点で長らく友好関係にあったが、大戦直前のほんの一時期だけこじれた、というようにアトリオンでは理解されている。 ***スルガ 礼王朝の近代化政策により招請され清河の地を踏んだアトリオン人の主な勤務の場は二つあり、一つは礼王朝の首都であり、もう一つは海に面し進取の気性の強いスルガ藩である。 礼王朝で内乱が起こるとアトリオン人は都では影響力を失っていったが、スルガ藩ではこの時期までにアトリオン的な学問は広く受容されており、「冷笑派」と呼ばれる勢力が力を持っていた。清河での反アトリオン政権出現の可能性を憂慮したアトリオン人は冷笑派と協力関係を結び、清河における近代化支援のプロジェクトはスルガにおける国家建設支援のプロジェクトへと変わっていった。 独立達成後は通商関係を中心に安定した二国間関係を築いており、清河が社会主義化したことを契機に7614年に防衛同盟を結んでいる。 ***ソフィア王国 [[ソフィアの聖女]]、多数の図書館の存在などの要素がアトリオン人の好感を呼んでいる。一方で、ソフィア社会の抱える様々な社会問題もまたセンセーショナルに報じられてもいる。 ***ジャーガルク・シャー国 近世に大海原に乗り出したアトリオン人がたどり着いた異国の地。異国の地には当然異国の物産があふれており、イクファターナ東部にこれらの物産を持ち込んだことでアトリオン商人は大きな利益を上げた。 ***リントヴルム朝ヤード帝国 地政学的理由から公然たる仮想敵国ではあるが、その経済規模の大きさから、アトリオン有数の貿易相手国であるのは確かである。 ***レオネッサ王国 *歴史 **古代 ***上古アトリオン アトリオン諸島にもともといた人々は、アストラヴィチャニン(よく「アストラ系」と呼ばれる。ヤード語で「島の民」の意。往々にしてアトリオン語の通俗語源で「星詠みの民」と解釈されがち)と呼ばれる人々である。 彼らはグリット島に住んでいた先住民ゲアファルから文化的な影響を受けて占星術的な信仰文化を発達させ、自然と共存した農耕生活を送っていた。この時代の史料には石碑がいくつか残っており、上古アストラ語の解読も進んでいるが、記録は断片的であり、今なお研究が進められている。アストリック・デバイスと呼ばれるアストロラーベ的な機能を持つと考えられているオーパーツも発見されており、一定の機械技術の発達を見ていたという見解もある。 **大陸からの征服の波の中で アトリオン諸島は古代から度々大陸勢力の拡大の目標として征服の対象とされた。特に北部地域には古代ヤード帝国の属州が置かれたことから遺跡が複数存在する。とはいうもののそれらの征服者はアストラ系を支配しつつも彼らの慣習を改変しようとまではしなかった。 しかし現在のリンディスヴァート北西部を根拠地とするとされるイスティング人の大規模な入植はこの状況を大きく変化させた。次第にアストラ系の勢力は山がちで土地の貧しい南東部に追いやられた。イスティング人は勢力を拡大しつつも内紛を繰り広げていたが、ある時アルカルという人物がイスティング人を糾合し、以てアトリオンを完全に平定しようとした。彼はアーカルソン島全土を支配下においた後リペルニア島への遠征を行ったが陣中で没し、その後しばらくアトリオン諸島は多数の小王国が分立する状態となった。 **中世 ***二王国の成立 イスティング系入植者に抵抗しつづけたアストラ系の諸侯は連合して自分たちの中で最も名声の高かったウィラード1世を推戴し、自分たちの王国を建設した。これがリペルニア王国の成立である。 彼らはイスティング系の内紛に介入し漁夫の利を得ることで勢力均衡を図ったが、ある時リペルニアの同盟者のとある小王国の新王に即位した人物が即位早々に電撃的にほかのイスティング勢力を征服し、自らをアルカルの再来としてアルカル2世を名乗った。アルカル2世はその後すぐに病没するが、彼の長男アーカルソン(アルカルソン)は征服地を安定させることに成功し、アーカルソン王国を建てた。 リペルニア王国にとってこのアーカルソン王国成立は歓迎すべきことではなかったが、国内の安定を実現したアーカルソンに対抗するのは困難と判断したリペルニア王ウィラード2世は自らの娘をアーカルソンの王妃として迎えさせた。以後、アーカルソン王国とリペルニア王国は何度かの王朝交代を経ながらもそのたびごとに姻戚関係を結ぶようになった。 この二王国分立の時代は500年以上にわたって続いたが、時折アーカルソン=リペルニアの人的同君連合を形成することもあった。しかしタニストリー的な選挙王制の伝統を持つリペルニア王国と長子相続であるアーカルソン王国という建国以来の王位継承法の違いからこの時代に同君連合が長続きすることはなかった。 ***ダルキアンとプロト啓蒙 ソフィア王国の聖女、マリー・ダルクとその事績がアトリオンに伝わったのは、彼女の著書を全て焼くようにという指示によってであった。 これをもとにアンゼロット記念大学で地動説の理論的検証がなされ、得られた結論である「近似計算としては有用である」は、リペルニアでダルキアンな天文学計算を普及させるに十分なものであった。リペルニア文化では天文学計算とはごく日常的に要求されるものであり、複雑化し精緻だが煩瑣な天動説理論は、計算力に優れた人間にはともかく普通のリペルニア人にとっての苦労のもとであったのである。 とはいえ、この時伝わったのは地動説と天体運動理論のみであり、万有引力は伝わっていないとされる。 ***議会合同と合同王政の成立 (設定調整中) 王国分立を終わらせた契機はリペルニア王国でのクラリッサ王国との継承戦争である。リペルニア王ヘンリー3世は苦戦の末に諸侯の活躍によってクラリッサ王アドルフ1世を捕虜とし、この戦争に勝利したが、この勝利はピュロスの勝利であり、賠償金は諸侯への報奨に消えた。こうしてリペルニア王はこの時期には次第に北方大陸の通商で存在感を示しつつあったアーカルソン王国に対して劣位に置かれた。 継承戦争の数年後、当時のアーカルソン王ジョン2世が崩御するとヘンリー3世はアーカルソン王位を継承したが、彼は荒廃し諸侯の専横が甚だしいリペルニアに倦んでおり、伝統的にアーカルソン王にしてリペルニア王となった者の王座は両王国の国境付近の街に置かれるという慣習を無視してアーカルソン最大(そしてアトリオン最大)の都スタックバラを居とした。 リペルニア諸侯は次第にこれに不満を募らせ、ついには反乱を起こすが、この反乱はアーカルソン軍によって鎮圧された。ヘンリー3世は反乱の発端となったリペルニア王国議会(国王選出権を持つ)を解散しアーカルソン議会に統合させた。この合同議会の最初の仕事はリペルニアの王位継承法をアーカルソンと同じものにすることであり、この議会合同を以って歴史学的には合同立憲王政アトリオンが成立したとされるが、法的にはこの次の代に女王となるシャーロット1世の即位を巡る混乱に対処するためアーカルソン=リペルニア王位が宣言された時点が合同立憲王政の成立とされている。 **近世 ***シンガ大陸航路と新大陸の発見 合同が実現した後、島内の争いが沈静化したアトリオン人は、海外に目を向けるようになり、大陸間の通商に積極的に乗り出した。 ジャーガルクを初めとするシンガ諸国の物産はアトリオン経済のあらゆる分野に富をもたらした。 ***初期啓蒙と立憲王政の確立 リペルニアで地動説が計算手法として用いられていることは公然の秘密であり、アーカルソン人もそれが異端の係累に属すると知りつつもひそかにこれを活用してはいたが、教会中央からはアトリオンは辺境の地であり、大きな問題にはならなかった。 しかし、この時期にアンゼロット記念大学の哲学教授ランキンが裁判記録を発見、知り合いでリニス大学の数学教授であるアーシャに見せ、彼女が自ら創始した微積分学によって定式化したことにより、解析力学の体系を作り上げた。 ランキンは彼女の成果を称賛、彼女の方法論を人間知性の研究に適用し、生得観念を否定、アトリオン観察主義哲学を創始し、さらには最初期の自由主義思想を唱え、アーカルソン=リペルニア合同時に締約された権利憲章を自然権論により正当化した。 ランキンとアーシャの考えはアトリオンで広く受容され、最初期の啓蒙を形作った。とくにランキンの立憲自由主義は次第に政府にも受容され、立憲王政の確立につながった。 ***グリットの統合 (執筆中) 伝統的に家族より大きな共同体の観念が薄いゲアファルは、アーカルソン王が掲げる「グリットの領主にしてゲアファルの君主」という称号を是認しており、グリット諸島に進出するアトリオン人に対しても住処や漁場を荒らされない限りは特に抵抗してこなかった。アーカルソン王の側も庇護民に過ぎないゲアファルに対しては自らの信仰や文化を押し付けることを目標とはしていなかった。 合同王政の確立もこれをすぐに変化させることはなく、むしろ合同王政がリペルニアの信仰や文化を維持することによって成り立っているために維持する方向をさらに強めた。 しかしながら、シンガ航路の利益がますます増大する中、道中の島嶼に補給基地を設置する必要性がますます増大しつつあった。 ここで登場する「無色透明の王」アダムズ3世は、兄であるアダムズ2世が即位して1年足らずで急死したため、急遽王位についたアーカルソン=リペルニア王である。彼は幼少時から勃興しつつある科学に対して関心を持ち、長男ではない(つまり跡継ぎではない)のをいいことにアンゼロット記念大学で光学を学び、顕微鏡と望遠鏡に関する最新の知識を身につけた、「史上最も高貴なレンズ職人」である。彼の下で世界初の学会といわれる王立学会が設置、それ以外にもさまざまな学術組織が国王の支援を受け設置されるなど最初期の科学革命のアトリオンにおける基盤が整備された。 アダムズ3世は即位以降も統治に対してはほとんど関心を持たず、議会・宮廷・国教会の三者による勢力均衡のなすがままにしていたが、友人の天文学者が異端審問により自説の撤回を余儀なくされたことに衝撃を受け、彼は異端審問の力を弱めるべく行動を起こす。これにより学者の学説への異端審問が厳しく戒められた結果、国教会の異端審問部門はグリットのゲアファルに対し改宗活動を強化していくことになる。 この布教活動は一定の成果をあげたが、次第にゲアファルからの反発も強まり、ついにはゲアファルはグリット諸島近辺を航行するアトリオン船を襲うようになる(第一次ゲアファル戦争)。当時の軍艦はゲアファルの襲撃に対して無力であったため、ゲアファルの襲撃への対応には改宗したゲアファル兵が用いられた。 この戦いが激化すると通商活動への損害も大きくなり、見かねた商人勢力中心の議会はアダムズ3世の暗黙の支持のもとに国教会を封じ込め、異端審問を事実上骨抜きにすることに成功した。第一次ゲアファル戦争はこれにより終息したが、この時抵抗したゲアファルと改宗したゲアファルの対立は後の争点となった。 アダムズ3世の没後、彼の孫であるアダムズ4世が即位した。アダムズ4世は絶対主義を奉じ、統治、信仰、そして家庭をほとんど顧みず学究的生活に身を投じた祖父を国王の模範たりえないとして厳しく否定し、そして「国教会の首長」としての自らの地位を重視していた。アダムズ4世は祖父が骨抜きにしていた異端審問を復活させ、アトリオンとグリット双方で積極的に活動させた。 この政策に関しては、本土での支持は実際のところ悪いものではなかったが、当然のことながらゲアファルからは激烈な抵抗を招いた(第二次ゲアファル戦争)。戦いが長期化すると、第一次ゲアファル戦争と異なりゲアファルは組織化の方向へと向かった。 **近現代 ***工業化の進展 通商の発展が進む中で、アトリオン島から輸出できる物産をさらに多様化すべく、製造業を発展させた。 まず外燃機関の発展により鉄道と汽船が実用化され、陸運と海運が急速に成長した。 ***大戦の時代 *文化 **大学 アトリオンに存在する大学は中世の間に設立され法的根拠を国王の勅許による大学と近代以降に作られた大学の二種類ある。 ***勅許大学 儀礼的にはその教員には学問と研究の自由、組織としては不輸不入の特権をアーカルソン=リペルニア国王から認められた大学。アーカルソンに2つ、リペルニアに1つある。全て中世に由来を持つ大学である。 ****リニス大学 中世盛期アーカルソン王国において、宮廷の貴族が貴族院の円滑な運営のため共同で出資し著名な法学者を招いて自らの子弟に教育させたことを由来とし、その数十年後にはそれまでの貢献によってアーカルソン王から勅許によりアトリオン初の大学として設置されたアーカルソンの勅許大学。 自然法や海洋法を中心に法学研究がよく知られる一方、自然神学的な学問を契機として近世における初期の古典力学発展の舞台にもなった。 ****エタブリッシェ大学 中世後期のアーカルソン王国で、絶対主義の導入を目指す国王が自らに忠誠な官僚を欲してリニス大学の一部の教員と学生を引き抜いて作った勅許大学。 当時のアーカルソン王がヤード皇帝に対し自らの格を主張するため古典古代研究に力を注いだこともあり、ヤード国外ではトップクラスの古典学研究がなされている。西ヤード分裂時代やイスティングといった歴史に関しても研究が進んでいる。 アトリオン語研究の中心でもあり、エタブリッシェのアトリオン語辞典はアトリオン語辞典の中でも最も精緻な記述で知られる。 中世以来伝統的に天文学研究も活発であるが、これはリペルニアの星詠み文化への対抗の意味が強い。リペルニアにおける国王とは、星を詠み、それに基づいて地上世界で政治・軍事を司る力量の最も高い者であり、天文現象を精緻に予測できない者は権威を認められないからである。 ****アンゼロット記念大学 系譜的には中世初期の普遍教会修道院である聖天使修道院(リペルニアの修道院文化は円十字教でも特に古い由来を持つ)の付属学校、大学としての成立はその修道院長を務めたとある教会博士の尽力のもとでリニス大学をまねてリペルニア王の勅許を受けたことに由来するリペルニアの勅許大学。 合同後、国教会が圧倒的に優位なアーカルソンと異なり、改革教会が優位を持ち普遍教会の勢力も残るリペルニアにあって、アーカルソン=リペルニア王による改めての勅許により円十字教徒であれば宗派を問題としない姿勢をとった。 リペルニアの周縁的な地位ゆえ、アーカルソンの勅許大学に比べると官界・政界への影響力は見劣りする一方で、本学の卒業生の中には望遠鏡を発明し科学革命への道を開いた者、重商主義を否定し経済学という学問領域を作った者、蒸気機関を初めて実用化し産業革命の端緒を築いた者などがおり、科学技術の分野においてはアーカルソンの勅許大学に勝るとも劣らない存在感を持つ。 **階級社会 ***貴族 アトリオンの貴族は制度的には世襲貴族と一代貴族、法的には依拠する慣習法の異なるアーカルソン貴族とリペルニア貴族の区分がある。ただし大貴族や古い由来を持つ貴族はアーカルソン貴族かリペルニア貴族かはっきりしているものの、中小貴族に関してははっきりしないものも多く、それらは合同立憲王政貴族と呼ばれることも多い。ただしアトリオンの貴族は異なる種類の身分との通婚をあまり忌避しないため、社会的にはアトリオン貴族という一体の存在をなしていると考えられることも多い。 アトリオン貴族たる者の資格は、伝統的に学識と資産であると考えられてきた。これは貴人とは天界の秩序を学び、自然の法則を理解し、それに従って地上を統治する者であるというリペルニアの伝統的価値観と、自らの土地を求めて自弁の武器と共にアトリオンの地を踏んだイスティングの戦士たちの慣習が複合して生じたものである。 一代貴族に叙される目安も勅許大学の教授が務まる程度の学識とカントリーハウス(もちろんある程度の田園を備えることが望ましい)を持てる程度の資産であるとされる。慣習的には一代貴族に叙されることが三代続けば世襲貴族号を付与されるとされる。逆に何の学術的成果もあげずに代替わりした場合、戦死や短命といった事情がない限りは保持する最上位の爵位の継承は認められないことが多い。 現在存在する貴族の特権は「貴族を名乗れること」と「貴族院における参政権」のみである。アトリオンの貴族が持つ爵位は形式的なものであり、実際にはその土地は地域共同体が統治するため、統治権や徴税権は持たない。 **学者の国、啓蒙の国 アトリオン人は伝統的に学問を好む文化を持ち、自ら新しい学問的成果を作り出すことが貴人の条件とされてきた。近代以降中流階級が台頭すると彼らはより実学を重視するようになるが、実学といっても100年後に役に立つような基礎科学もまたアトリオン人中流階級にとっての実学である。 **治安・衛生 アトリオン領の治安・衛生状況は比較的安定しており、本国はイクファターナ随一の低い犯罪率となっている。階級社会ではあるが、民衆の間での疫病の伝播に対する警戒心は強く、行政機関は衛生環境の向上に関しては貧民街であっても積極的に取り組んでいる。 グリット諸島、北ゴーシュ、ニューリペルニア、ヴェルレニースは本国ほどではないが警察機構は有効に機能している。なおニューアーカルソンは重犯罪を見ると本国並みに低いが愚行権を認めず何でも軽犯罪にするため統計上の犯罪率は他のアトリオン植民地と大きく変わらない。レイズフィル内陸部では警察機構が機能していないため統計がないが、沿岸部ではヴェルレニース並みの状況と報告されている。 アトリオンの入国管理や税関は密輸や密航だけでなく防疫にも注意を払っており、特に本国の入国手続の煩瑣さは有名である。 ***二十則委員会 リペルニア王国に存在する公安組織。内赦執行機関。「外法から自然法を防衛する」ことを趣旨とし、中世リペルニアにおいて聖ルーアンの事件に衝撃を受けたリペルニア王が竜大公の助言に基づき創設した組織。大陸からの吸血鬼や人さらいの類に対する侵入阻止を主な活動目的とし、法運用の厳格さから恐れられてきた。一般には合同以降は形式上の存在に過ぎないとされる。 **人名の命名規則 原則として、男性にはミドルネームがなく、女性にはミドルネームがある。アトリオンでは貴人は爵位や称号が長くなる傾向にあり、貴人も複雑で長大な名前を付ける習慣を持たなかった。そのため4単語以上の名前を持つのは基本的に移民のみである。 ゲアファルに関してはもともと古代には個人の名前が希薄で、アトリオン諸島を超えて東進したイスティングから名前の概念を受け取ったとされる。現在でもその名残で名前はイスティング系であり、姓の代わりに父称を用いる。 *国民 **民族・人種 ***アーカルソン人 アトリオン諸島に入植したイスティング系に由来を持つ主にアトリオン諸島北部の民。大陸からの優れた戦闘技術・農業技術を持って中世アトリオンを席捲した。外見は銀髪碧眼の典型的な北方系。 古くから子は成人すると親元を離れるのが普通であり、比較的家族単位の独立性が高く、個人主義的な土壌を育んだ。継承法は基本的に長子相続。 ***リペルニア人 イスティング系に抵抗したアストラ系を由来とするアトリオン諸島南部の民。独特の星詠みの文化とウイスキー醸造などで有名。 タニストリー的な、親族会議により家督相続を決定する慣習がある。 ***ゲアファル(ゲアファオル) グリット諸島の先住民族たる[[有翼亜人]]。彼らは水面効果を活かして海面上を滑空し、また翼を巧みに使って水中でも機動的に動くことができる。また、視力(特に暗闇や動体、立体)に優れ、磁覚をはじめ、人間の持たない知覚能力をいくつか持つ。小家族的な集団で暮らし、きわめて家族に対する情愛は深いと言われる。 本来はノマド的な生活を送っており、南北に広がるグリット諸島を季節に応じて渡り、アニミズム的な信仰の中で海洋と気象に関する優れた理解をもって漁労を中心とした暮らしを営んでいた。 古くよりアトリオン諸島に流れ着いた彼らが自らの地学的知見をアトリオン人に提供することも多く、リペルニア神話によるとリペルニアの星詠み文化も彼らの系譜上にあるとされ、リペルニア貴族の出自の逸話として流れ着いたゲアファルを祖先に持つというモチーフは多くみられる。 しかし、近世以降になるとアトリオン人の勢力拡大のなかで飲み込まれ、異端審問によりアトリオン国教会に改宗させ定住化させるなど同化が推し進められ、ゲアファルの文化は大きな打撃を受けた。 近代以降は彼らの漁業はもはやアトリオン人の近代的漁業に太刀打ちできなくなっており、定住化を受け入れて農耕生活を行う者や近代的漁業を受け入れてアトリオン漁民と変わらない生活を送る者が多いが、高級魚の分野では今でも伝統的なゲアファル漁法を続ける者もわずかながら存在する。 また、その能力を活かして偵察兵・水兵・航空兵などの分野で軍務につくことも多く、家族を養うためなら何でもする習慣もあってアトリオン軍人として戦史に名を残すゲアファルも多数存在する。軍人・学者・貴族仕えなどの道から一代貴族の地位を得るゲアファルは多く、人口比で考えると一代貴族のうちゲアファルの比率は突出している。 **宗教 アーカルソン国王を首長とする円十字教の宗派であるアトリオン国教会が主流。公職に就くには国教徒が望ましいとされるものの、信仰の自由は保障されている。 リペルニアでは古代から続く星詠みの文化が残っているが、円十字教自体はどこでも受け入れられている。 *人物 **王族 ***アン4世 神と自然法の恩寵によるアーカルソン=リペルニア女王にしてゴーシュ女王、グラニツァ大陸およびグリット諸島およびニューリペルニア諸島の領主、アトリオンの古き法と自由の擁護者、アトリオン国教会の首長。今代の合同立憲王政の女王。 【魅力的な交渉人/Charismatic Negotiator】【強硬な孤立主義者/PIG-HEADED Isolationist】【広い人脈/Well Connected】【厳格/Strict】【慈善家/Benevolent】【貞節/Chaste】【充足感/Content】【公正/Just】 **政界 ***エドワード・バード 現在の首相。保守党。リペルニア貴族の出身で、家柄としては中堅程度。質実剛健を旨とし、その私生活においては簡素。人間・国家のいずれにせよ関係性の分析に長けた策略家。 【稀代の黒幕/Elusive Shadow】【寡黙な勤勉家/SILENT WORKHORSE】【政治家/Statesman】【盤戯の達人/Game Master】【節制/Temperate】【冷笑的/Cynical】 ***ウィリアム・スミッテン 自由党党首。父はセント・ミカエル海上城塞生まれ、母はニューリペルニア生まれで本人は船上生まれという海洋国家アトリオンらしい出自の人物。彼自身も海上保険会社を創業したことをはじめ、金融業で財をなした資本家上がり。彼自身は既に経営から手を引いていたものの、世界大戦で彼の興した会社の事業が一時危機に陥ったこともあり、総力戦を嫌っている。ただし平和主義者といえるかと言えば必ずしもそうではなく、植民地戦争には肯定的で、彼の手掛けた事業の中には海軍とのかかわりが深いものも多い。 【金儲けの達人/Fortune Builder】【レッセ・フェール資本主義者/LAISSEZ FAIRES CAPITALIST】【交易商人/Trader】【大食/Gluttonous】【勤勉/Diligent】【社交的/Gregarious】 **外交官 ***クレア・マリー・ウィルソン 駐リンディス大使。文学修士(エタブリッシェ大学)。庶民の出でありながら語学の才能と超人的な努力によって本来貴族の職である大使に上り詰めた才女。 【魅力的な交渉人/Charismatic Negotiator】【イデオロギーの闘士/IDEOLOGICAL CRUSADER】【外交官/Diplomat】【端麗/Attractive】【明敏/Quick】【社交家/Socializer】【貞節/Chaste】【勤勉/Diligent】【謙虚/Humble】【臆病/Craven】【社交的/Gregarious】【冷笑的/Cynical】 ***リチャード・マクダウェル 駐スルガ大使。法学博士(リニス大学)。スルガ人の期待するアトリオン人イメージを崩さぬ教養ある紳士で、スルガ独立以前から外務省で清河政策に携わり、スルガ独立後はアトリオン=スルガ同盟の成立を主導してきた。 彼も天文学の学識と学究的性格を持った典型的アトリオン貴族で、彼の場合はその関心は西方の社会と文化に向かっている。本来の専門は比較法学であるが、しばしばその分析手法は社会人類学的と言われる。冷笑派にとってはアトリオン法学のスルガにおける紹介者の一人でもある。 【影の実力者/Gray Eminence】【偏見ある知識人/BIASED INTELLECTUAL】【端麗/Attractive】【明敏/Quick】【社交家/Socializer】【盤戯の達人/Game Master】【学者/Scholar】【貞節/Chaste】【慈善/Charitable】【忍耐/Patient】【社交的/Gregarious】【冷笑的/Cynical】 ***スタンリー・ハクスリー 駐ジャーガルク大使。経営管理修士(ニュースタックバラ大学)、経済学博士(アンゼロット記念大学)。ヴェルレニース生まれでニューリペルニアを拠点に貿易会社を経営してきた経済人。大戦で中央海航路が使えなくなったため東西の大航路の重要性がさらに高まったことからアトリオン政府から招聘を受けて以降スタックバラで通商政策に関与するようになる。 【金儲けの達人/Fortune Builder】【偉大な調停者/GREAT COMPROMISER】【レッセ・フェール資本主義者/LAISSEZ FAIRES CAPITALIST】【交易商人/Trader】【行政家/Administrator】【勤勉/Diligent】【社交的/Gregarious】 ***キャロライナ・ジュリエット・チャットウィン 駐ヤード大使。文学博士(エタブリッシェ大学)、経済学博士(アンゼロット記念大学)。経済学という学問自体の成立を哲学的に検討すること目的に古代ヤード哲学と近世アトリオン哲学と近代経済学を修めた教養人で、リントヴルムポリス留学経験者。古典哲学の世界から出てきたかのような懐疑主義と禁欲主義の実践者。 戦後のヤードへの外交官に誰を送るかということは大きな問題で、策士、商人、軍縮交渉の実務家、様々な候補があったが選ばれたのは彼女であった。これはアトリオン人の理解では結局のところ問題はヤード帝国の歴史がもたらす彼らの傲慢さにあり、ヤード人に対して外に学ぶべきものがあると知らしめることは戦後体制の延命につながると考えられた、ということを意味する。 【博識な古典学者/Scholarly Classicist】【懐疑主義者/Skeptic】【偏見ある知識人/BIASED INTELLECTUAL】【端麗/Attractive】【学者/Scholar】【禁欲主義/Celibate】【詩人/Poet】【貞節/Chaste】【忍耐/Patient】【謙虚/Humble】【公正/Just】 ***ノエル・ブライトウェル 駐ソフィア大使。工学博士(ハリントン大学)、数学修士(エタブリッシェ大学)。法的には庶民だが、6代遡るとクラリッサ皇帝に繋がる家系の持ち主で、祖父は信仰のために相続権を放棄しニューアーカルソンに移住したアーカルソン貴族。彼自身も一代貴族の候補になったことがあるが、これは本人が拒絶した。 敬虔なニューアーカルソン改革教会信徒の両親に育てられたが、次第にその価値観に疑問を抱くようになり、技師となるべく入学したハリントン大学で社会工学に出会い、信仰ではなく科学的方法による社会の改良という発想に魅せられ革新主義者となった。両親とも当初は対立したが、現在では彼のよき理解者となっている。以来、アトリオン各地で行政官として働き、社会改良に努めてきた。このように信仰を疑い合理的方法によってではあるものの社会の非道徳は解決されなければならないという態度からは典型的なニューアーカルソン人であると言え、近年のニューアーカルソン革新主義・進歩主義派の旗手である。 如何に行政官として社会問題に向き合ってきたとはいえ、アトリオンのアカデミズムとニューアーカルソンの知性主義の世界で生きてきた彼はソフィア大使に任ぜられて初めて想像を絶する無知・不衛生・貧困の中で暮らすソフィア貧民の生活を知り大変に驚愕している。しかし、彼はそれでもこれまでのキャリアでしてきたのと同じようにソフィア社会の実情を合理的に分析し、彼らの待遇が改善される方策を考え続けている。本国ではあまり主流ではない彼が大使を務めているのは、本国外務省にとってもソフィアの貧困は共産主義者の絶好のプロパガンダ素材とされることが問題視されていることを意味する。 自由党の社会自由主義側の中心的人物の一人。誤解する保守主義者も多いが明確な反共主義者。万人が同じ生活水準を享受できるところまで民衆の生活を引き上げねばならないと考えながらも民衆が自らの力だけで自らを救済できる可能性を否定する、この点でも典型的ニューアーカルソン人。 【真面目な官僚/Dutiful Bureaucrat】【革新主義者/Progressive】【明敏/Quick】【行政家/Administrator】【慈善/Charitable】【勤勉/Diligent】【公正/Just】【狂信的/Zealous】 ***アーチボルド・ランフランク 駐角公使。神学博士(エタブリッシェ大学)。 礼王朝の首都栄都でアトリオン国教会の宣教師をしていた元聖職者。韓語、スルガ語、ジャーガルク語などのシンガ諸言語を流暢に操り、また天文学・数学・機械工学などで教職が務まる程度の学識を持った国教会随一の秀才。清河人、特に対アトリオン取引をする商人に広く人気があった。革命後も親アトリオン軍閥下で布教活動を続けていたが、社会主義者が勢力を増すと、当然のことながら外国勢力で商人と親しい聖職者の居場所はなくなり、少数の信徒と共にどうにか逃げ延びることに成功した。しかし、信徒の多くを守れなかったことがトラウマになり、宣教の際の滑らかな弁舌は失われ、信仰に対しても懐疑的になって聖職者を辞する。その後知り合いの官僚に招かれ西方言語の語学力のある人材を求めていた外務省に入り、対清河封じ込め外交の一翼を担うようになった。 【魅力的な交渉人/Charismatic Negotiator】【ストレス/Stressed】【端麗/Attractive】【明敏/Quick】【社交家/Socializer】【神学者/Theologian】【禁欲主義/Celibate】【貞節/Chaste】【慈善/Charitable】【社交的/Gregarious】【公正/Just】【冷笑的/Cynical】 ***スティーヴ・ティレット 駐トルカーナ公使。陸軍退役大佐。法学博士(リニス大学)。大戦中にソフィア大使館駐在武官を務めていた人物。実直で厳格かつ勤勉な性格、「古き自由」とアトリオンを中心とした世界の安定を奉じる保守主義者、という典型的アーカルソン貴族出の陸軍軍人であったが、航空戦力の導入や海軍・海兵隊との連携によってアトリオンの安全は保障されると考える柔軟さも持ち合わせた人物で、そのために海軍軍人との協力を求められるソフィア駐在武官に任じられた。 大戦中、地中海に派遣されたアトリオン軍のネットワークの結節点ともいえる役割を果たすと同時に、戦線で度々観戦武官としてソフィア戦線の戦場に出るが、毎度ソフィア軍の過剰な民間人への暴力をめぐって指揮官と言い争うため本国からは何度も左遷を検討されていた。しかし彼の周囲の軍人から「大戦が終わるまで絶対に彼はここに必要」との声もあり、大戦が終わるまでその職にとどまる。大戦後期には何があったか国際法について学びだし、ソフィア休戦協定が結ばれた直後に陸軍を退役、本国に戻りリニス大学で法学を学び、国際法と人道主義に関する論文で博士号を取得する。その後は外務省に勤め、リンディスヴァートの武装解除などで活躍した後、駐トルカーナ大使に就任。トルカーナ人には「よきアトリオン人スティーヴ」として知られるが、本人はそう呼ばれると何とも微妙な顔をする。本人曰く、「自分には何もできなかった無力者」。 【熟練の戦術家/Skilled Tactician】【偉大な調停者/GREAT COMPROMISER】【心理戦科/SCHOOL OF PSYCHOLOGY】【陸空共同作戦論/ARMY AVIATION DOCTRINE】【市街戦/Urban Warfare Specialist】【包囲戦/Encircler】【規律/Disciplined】【ストレス/Stressed】【うつ/Depressed】【行政家/Administrator】【慈善/Charitable】【勤勉/Diligent】【臆病/Craven】【公正/Just】【冷笑的/Cynical】【疑心暗鬼/Paranoid】 研究スキル7:集中実行・諸兵科連合部隊重視・大規模部隊戦術・訓練 **学界 ***エミー・アイザック・ケーニヒスベルガー 物理学者・数学者。物理学博士(アンゼロット記念大学)。リニス大学教授。アトリオンの才媛。波動方程式と相対論的収縮を発見した物理学者であり、量子力学と相対論の双方への扉を開いた。 科学者として天才的であるだけでなく、後進の育成には学界に金を引っ張ってこなければならないことをよく理解し、政財界にも広いコネクションを有している。しかし外面では良識ある人間のようにふるまう一方で、その内実は数学と物理学の進歩以外のあらゆるもの、常識的観念や道徳規範や人間関係の何から何まで無意味であると考えている懐疑主義者で虚無主義者。彼女の下で学ぶ学生いわく、「彼女に常識的にふるまえる能力があることがまず非常識」。本人いわく、「何をすれば他人が自分と同類であると誤解するのか観察するのが趣味」。 【並ぶ者なき物理学者/Mastermind Physicist】【操作可能性の操作者/Handler of Handling】【懐疑主義者/Skeptic】【虚無主義者/Nihilistic】【管理の天才/Administrative Genius】【自然科学者/Natural Scientist】【天才/Genius】【傲慢/Proud】【気まぐれ/Arbitrary】【冷笑的/Cynical】 研究スキル10:電子工学・産業工学・数学・機械工学・核工学・核物理学・航空電子工学 ***ヘンリー・ウィルミントン 神学者・歴史学者・言語学者。神学博士(エタブリッシェ大学)。エタブリッシェ大学教授。聖書翻訳の歴史を研究している。 人当たりのよい紳士で、多言語能力もあって特に留学生には話しかけやすいと人気。なお、非円十字教徒にも表面上取り繕うだけの度量はあり、高等批評をする自由主義神学者でもあるものの、あくまでも彼自身は敬虔な円十字教徒であることは忘れてはならない。 【博識な人文学者/Scholarly Humanist】【偏見ある知識人/Biased Intellectual】【神学者/Theologian】【禁欲主義/Celibate】【貞節/Chaste】【慈善/Charitable】【公正/Just】 ***シンシア・エイミー・オブライエン 気象学者・雪氷学者。探検家・飛行船航法士。理学博士(アンゼロット記念大学)。リペルニア最大の貴族グウィンドル公爵家分家の当主。アトリオン空軍創設の主導者の一人。ただし本人が持っている軍歴は大気海洋庁士官部隊で観測気球を扱っていただけで、直接空軍軍人となったことはなく、大気海洋庁で航法士になるのは士官部隊を外れてからである。空軍創設後は熱心に空中艦隊構想を推進していたが、近年は空対地攻撃よりも防空に主眼が置かれ、彼女のプロジェクトは下火になっている。そのような状況下で注力する方向を変えた彼女は払い下げられた空中戦艦に自ら乗り込み各地で探検飛行を行うようになる。最も有名な実績として、北極点に着氷して世界初の北極点到達者となったことが挙げられる。 なお、学者としてはケーニヒスベルガー女史を熱烈に崇拝するケーニヒスベルガー主義者。専門は違うものの、どんなに忙しい時でも彼女の最新の研究はフォローしている。 【熟練の航法士/Skilled Navigator】【陸空共同作戦論/ARMY AVIATION DOCTRINE】【端麗/Attractive】【明敏/Quick】【傲慢/Proud】【勇敢/Brave】【野心的/Ambitious】【狂信的/Zealous】 研究スキル6:航空学・産業工学・機械工学・沿岸航法・操船術・技術効率・空挺訓練・空母設計 ***ナタリア・ユージェニー・カーライル 数学者・暗号学者。レイズフィル在住の農園主を自称する在野の数学者であり、大学に通ったことすらないらしいが、彼女の暗号理論はケーニヒスベルガー女史にも認められ、リニス大学で数学の博士号を与えられた。 あらゆる政治権力を完全に否定するアナキストに近いリバタリアン。表現の自由戦士であれば最も急進的な層、レイズフィル人でも50人に1人いるかいないかという水準の急進的自由至上主義者。 当然、国家が人々の通信の秘密を侵害することを一切容認せず、それがために自らの最先端の研究成果を実際の使い方を含めて公開するため、各国の諜報関係者には随分嫌われている。特に国内情勢の混乱の続くリンディスヴァートでは過激派同士のやり取りに彼女の成果が使われており、混乱に拍車をかけている。暗殺したいと思っている諜報関係者も数知れないが、彼女の住所どころか正体は誰なのかすらケーニヒスベルガー女史ほかごく数人しか知らず、そのやりとりも彼女一流のインテリジェンスを駆使して行われており現在まで追跡されていない。 【不世出の暗号学者/Brilliant Cryptographer】【天才/Genius】【学者/Scholar】【憤怒/Wroth】【嘘つき/Deceitful】【臆病/Craven】【内向的/Shy】【冷笑的/Cynical】【疑心暗鬼/Paranoid】 研究スキル0:(彼女は一国に対して役に立つことを一切拒否する) ***シグリズル・ベッティドッティル 西岸強化のメカニズムを明らかにした、ゲアファルの海洋学者。理学博士(アンゼロット記念大学)。他のゲアファルからはアトリオン本国で成功した人物として敬意を以て遇されているが、本人の内心では(統計上ゲアファルが知識においてアーカルソン人・リペルニア人に劣るということは特にないのだが)無学な同胞を冷笑している。もっとも、アトリオン人で無学な者に対しても冷笑しているのはほかのリペルニア人学識者とそう変わらないので、その点、もはや典型的なリペルニア学識者である。ただ、夫に対しては人間味のある態度をとるので、そこに関してのみゲアファルらしさを残している。 【博識な海洋学者/Scholarly Oceanographer】【貞節/Chaste】【忍耐/Patient】【内向的/Shy】【冷笑的/Cynical】 ***ウィリアム・グレイ 分析化学者。化学博士(エタブリッシェ大学)。本業は分光法だが、クロマトグラフィーの発明者でもある。化学者として大戦中の化学戦に心を痛め、毒ガスの成分分析を容易にするキットを開発しアトリオン側の化学戦防護能力を大いに高めた。ただし、彼のキットは新しい化学兵器の開発にも応用されることになったのではあるが。 【真面目な化学者/Dutiful Chemist】【明敏/Quick】【貞節/Chaste】【慈善/Charitable】【勤勉/Diligent】【正直/Honest】【公正/Just】 研究スキル7:化学・産業工学・技術効率・医療科学 **財界・実業界 ***アンドリュー・フィールズ 鉄道技術者。工学博士(アンゼロット記念大学)。鉄道の高速化を追求し、高速輸送による動員迅速化のメリットを説いて弾丸列車計画の実現に邁進、既にホイーリントン郊外に実験線を敷設している。 【経済の錬金術師/Midas Touched】【鉄道ロマンチシスト/Railway Romanticist】【資源産業家/RESOURCE INDUSTRIALIST】【軍事技術者/Military Engineer】【悪魔つき/Possessed】【建築家/Architect】【勤勉/Diligent】【忍耐/Patient】【野心的/Ambitious】【狂信的/Zealous】 研究スキル8:産業工学・管理・機械工学・ロケット工学・技術効率・車両工学 **貴族 ***ニューコーム侯リチャード・ホワイトヘッド アーカルソン貴族の中でも貴族中の貴族といわれるアトリオン最大の大貴族ストックトン公爵家の長男であり、ニューコーム侯爵号は伝統的にストックトン公継承者の証である。既に三十路にある跡取り息子、本来であれば更なる家の発展のために結婚して家の管理を担い社交界でも積極的に活動しなければならない身にありながら、異性と交際することすらせず、ただリペルニアウイスキー醸造所を訪れるだけの旅行を繰り返し、そうでないときには自らのカントリーハウスに引きこもって文芸やら庭の手入れやらにだけ注力する放蕩息子。人間の好き嫌いが激しく、側仕えにも気の許せるごくわずかな人間しか置かない。 人間嫌いが高じて、ケーニヒスベルガー女史に吹き込まれた「機械化がますます進展すれば引きこもりながらできる生活の水準はますます向上する」というアイデアを気に入り、機械工学や計算機工学をはじめとした工学の諸分野に対し家が傾きかねないほどの出資を続けており、アトリオン各地の工学教育機関には彼の名を冠した講座や奨学金が多数設置されている。 【世間知らずの甘ちゃん/Indulgent Wastrel】【酒浸り/Drunkard】【庭師/Gardener】【詩人/Poet】【慈善/Charitable】【怠惰/Slothful】【内向的/Shy】【冷笑的/Cynical】【疑心暗鬼/Paranoid】 ***ペンドラゴンシャー大公/リペルニアの竜大公イグナティウス 竜族。性別は不明(以下では暫定的に「彼」)。アトリオンの象徴として広く知られた竜で、アトリオンの国章にも使われている(国旗そのうち手直しします)。様々な言語で様々な名がついており、神話好きの間では「百の名を持つ竜」「竜大公」だけで通じる。伝承ではアストラ系がアトリオンに住まう遥か以前からリペルニアの空を自由に飛び、火を吐いて敵を焼き殺し、火山と大地を意のままに操っていたといわれるが、実際に空を飛んだり火を吐く姿は今のところ目撃されていない。各地で確認されている竜族の中でも突出して大きく、それだけの年かさを重ねていると推定されている巨竜で、現在はリペルニアの火山の火口に住み、そこからはほとんど外に出ない。彼は自分以外の翼ある者を嫌うので、基本的に彼の下にたどり着くには火山の洞窟を通って火口に向かうことになる。耐久力は高くうろこは銃砲撃を跳ね返してほぼ無傷、寒いときにはマグマに浸かっていることもあるがそれでうろこが融けたりはしない程度の耐熱性も持つ。知性に関しても長い年齢からくる知識、アトリオン語など人語を解する語学力などからは人間と同等以上のものを持っていると考えられている。 性格は傲慢で気まぐれ、特に古代の伝承では理由なく人間を襲ったとされ、中世アトリオンの騎士道物語でも竜を討伐する騎士というモチーフは頻出である。一方でリペルニア的な学識ある権威への敬意は持っており、中世リペルニア王国においてはリペルニア王の権威を認め、形式的には彼に臣従し、大公位を授けられた歴としたリペルニア貴族。リペルニアの守護者を自認し、リペルニア島への侵略者に対してはリペルニア人と共に戦ったこともある。アルカルのリペルニア征服の挫折も彼を避けるため無理な作戦機動をとったためであり、以後アーカルソン王国のリペルニア征服事業が功を奏さなかったのも同じ理由である。リペルニア生まれでないリペルニア王を認めないという理由でシャーロット1世以降しばらく臣従を拒否していた。しかし第二次ゲアファル戦争でのアトリオン国教会のゲアファルへの苛烈な取り扱いを聞いて満足しアーカルソン=リペルニア王を再び認めたという(そしてその際に合同立憲王政は彼に対してのみ特例的に合同以前の特権を認めた)。そのため彼に関しては領地の不輸不入特権・免税特権・国王の親裁なしに処罰されない(現実的には処罰自体困難だが)特権など、百年以上前に一般のアトリオン貴族が失った特権を未だに有している。それほどゲアファルを嫌う理由として何らかの古い確執があるらしく、単に有翼亜人のみならず亜人一般を嫌い、航空機も彼の領地の上空を飛ぶことは許されていない(…が、金を積むと許してくれる)。なお、ゲアファルの神話においてもこの巨竜によってアトリオン諸島にいたゲアファルは滅ぼされたと伝わっている。 彼の領地ペントラゴンシャーは一応彼の許可がないと入れない(通常の貴族において爵位にある土地が実際には統治権がないのとは対極であり、ある意味では彼のための保護区である)が、地代を払えば耕作等も認められる。地代にはかなりがめつく、基本的に金貨など貴金属を求めるが、たまに書物を求めることもある。その巨体で人間の本をどうやって読むのかは謎に包まれているが、内容について話したり、さらに関連する書物を求めたりするので実際に読んでいるらしい。最近は新聞を定期購読したり、ラジオを聴いたり(電波の知覚能力もあるらしい)もしている模様で、時には女王に手紙を出して国政への意見も行う(貴族であると考えると特段変なことではないのだが)。なお、産業技術の振興や勢力均衡の外交政策など、意外にその内容はまともであるため政府も時に参考にしているが、亜人に対する徹底的に酷薄な待遇を毎回必ず要求することには流石のアトリオン紳士たちも微妙な顔をしている。 【竜大公/Grand Duke of Dragon】【竜族/Dragon】【明敏/Quick】【極めて屈強/Very Strong】【盤戯の達人/Game Master】【狩人/Hunter】【学者/Scholar】【貞節/Chaste】【強欲/Greedy】【憤怒/Wroth】【傲慢/Proud】【勇敢/Brave】【気まぐれ/Arbitrary】【冷笑的/Cynical】 **軍人 ***アリソン・ルイーズ・シュテファン 王立海軍大将。アトリオン本国艦隊提督。アーカルソンの零落した貴族上がりで、家格と国威の向上に熱烈な精力を注ぐ。 大戦に際してはミネルヴァスハーフェン上陸作戦と三度のリントヴルムポリス強襲作戦に参加し、特にアトリオン艦隊が大損害を受けた第一次リントヴルムポリス強襲作戦では巧みな機動を指揮し自らの艦をほぼ損傷なく帰投した数少ない艦長として知られる。 なお、自らの家に(一般家庭には容易に手が届かない程度に高価なはずの)機械式計算機を置いて暇があれば最新の弾道学論文の内容を検証し、時には自ら学会で射爆理論について発表する弾道学マニアの側面もある。しかし、そんなものはアトリオン中流階級のありふれた余暇の過ごし方に過ぎない。 【熟練の戦術家/Skilled Tactician】【基地制圧論/BASE CONTROL DOCTRINE】【卓越した戦術家/Superior Tactician】【海軍改革者/Naval reformer】【屈強/Strong】【学者/Scholar】【戦術家/Strategist】【忍耐/Patient】【勇敢/Brave】【野心的/Ambitious】【狂信的/Zealous】 ***クリストファー・ミドルトン 王立海軍大将。蒼海洋艦隊提督。アッパーミドル家庭の出身で、愛国者である両親の勧めで海軍兵学校の門をくぐり、航海術や語学・軍事史・地理学などではいつも最優等、その他の科目でも五本の指に収まる成績を修め首席で卒業した秀才。 長年にわたりゴーシュやグラニツァの植民地艦隊で大きな問題を起こすことなく勤務を続けてきた。しかしそろそろ老後設計を考えだす頃になって大戦が起こり、リントヴルムポリス強襲作戦などで海軍軍人が死亡や負傷により退役した結果、中央海艦隊に戦力を抽出され残滓のような有様となったニューリペルニア艦隊を突如任される。さらにヤード艦隊は西海峡を越えて大艦隊を送ることはなかったためにすることもなく臨検により中央同盟側への密輸を摘発していたところ、ムスルマーネンに送られる奴隷の中からアトリオン人捕虜を発見、解放させたり、礼王国での革命ではいち早くスルガに艦隊を派遣し在留アトリオン人を保護するなどした結果本国での評価が本人の知らないうちにうなぎ登りになってしまった。そんなこんなで人間の評価の当てにならなさをこの歳で改めて実感している。 本人は妻と平穏無事な老後を過ごすことだけを望んでいる。しかし、蒼海洋の航路を預からせると彼の右に出る者はいないというのは国内外の共通理解であり、本国は彼が働ける限り働くことを望んでいる。とはいえ、艦上ではなくニューリペルニアに置かれた司令部での地上勤務ではあるため、軍人としての職務における勤勉さと同じ生真面目さで海軍軍人であるために長年あまり傍にいてやることのできなかった妻との時間を過ごすことはできているようではある。 【気弱な仲介者/Naive Appeaser】【外洋理論/OPEN SEAS DOCTRINE】【封鎖線突破の達人/Blockade-Runner】【索敵/Spotter】【古典派/Old Guard】【海洋探検家/Navigator】【端麗/Attractive】【明敏/Quick】【禁欲主義/Celibate】【貞節/Chaste】【勤勉/Diligent】【親切/Kind】【謙虚/Humble】【臆病/Craven】【充足感/Content】【冷笑的/Cynical】 ***ウィルステッド侯アルカン・ラースティン アーカルソン最大の貴族ストックトン公爵、リペルニア最大の貴族グウィントル公爵と並ぶアトリオンの三大貴族、フリーディル公爵家の跡取り。アーカルソン陸軍中将。「ミネルヴァスハーフェンの肉屋」として知られるミネルヴァスハーフェン上陸戦の総司令官。 自らも内心では認める無能、お飾りである。個人としては優れた鷹匠であるなど戦士らしい素質も持ち合わせているのだが、多対多の戦いではその意志薄弱が浮き出てくる。しかし性格は抑制がとれており、能力的な問題は副官のアシュリーをはじめとする側近の助けでカバーし、参加した兵卒には内心はともかく表向きのストイックさから敬意を持って遇された。一方でアシュリー大佐やローズマリー野戦病院院長のように有能な側近たちにとっては状況によっては使いつぶせばよい程度の存在(アトリオンでは大貴族すらも伝統的にそうである)と認識され、ささやかな心の均衡は幼少時から自らと共にあったメイドとの手紙のみによって辛うじて保たれていたという。 戦後には「ミネルヴァスハーフェンの肉屋」の悪名で知られつつも、大戦中数少ない上陸戦と橋頭堡防衛の成功者という戦果は一定の評価がなされ、後方勤務にまわった。この状況は適職であると本人も納得し、心の平穏を取り戻せたようである。 【将才なき戦士/Misguided Warrior】【銃とバター理論/GUNS AND BUTTER DOCTRINE】【鷹匠/Falconer】【忍耐/Patient】【臆病/Craven】【内向的/Shy】【野心的/Ambitious】【冷笑的/Cynical】 ***アシュリー・グラウクス・ニコルソン アーカルソン陸軍大佐。ミネルヴァスハーフェンの梟。眼鏡で未来を占う預言者。ミネルヴァスハーフェン上陸戦における総司令副官。現在は参謀本部勤務。 一度見たものを細部に至るまで描き起こせる完全記憶能力・11ヶ国語をネイティヴと見分けのつかないレベルで操る言語的能力・断片的な情報から大戦全体の戦局を的確に把握する分析力を備えた天才。その驚異的な才能から、家格を重視する陸軍にありながら庶民としては初めて士官学校に首席で入学、卒業まで常に席次は首席であった。 兵を鼓舞することにも長け、「総司令官殿は望んでおられる」から始まる彼女の演説は厳しい戦局の中でも兵を魅了し、最後まで士気を維持した。 【緻密な策略家/Intricate Webweaver】【兵站の専門家/LOGISTICS SPECIALIST】【心理学科/SCHOOL OF PHYCHOLOGY】【兵站管理/Logistics Wizard】【防勢ドクトリン/Defensive Doctrine】【伏撃/Trickster】【工兵/Engineer】【特殊戦/Commando】【反撃戦/Counter Attacker】【規律/Disciplined】【弾性防御/Elastic Defence Specialist】【陸軍組織者/Army Organiser】【天才/Genius】【盤戯の達人/Game Master】【貞節/Chaste】【勤勉/Diligent】【忍耐/Patient】【勇敢/Brave】【野心的/Ambitious】 研究スキル8:集中実行・諸兵科連合部隊重視・一般装備・各自の勇気・管理・小規模部隊戦術・技術効率・訓練・機動戦術・弾薬 ***グレアム・モーズリー 王立海兵隊少将。「議会に属する陸軍だと王のために死ねないが王立海兵隊なら王のために死ねる」という理由で王立海兵隊に入ったアーカルソン小貴族の次男。イスティング時代の武勲詩を愛するあまり現代においてそれを実行しようとした狂人。 しかしながらミネルヴァスハーフェン橋頭堡の確保には彼の(剣と弓を携えての)鬼神のような戦いぶりが大きく貢献し、「彼なしには橋頭堡の確保はなかった」(総司令)、「銃弾はまるで当たらず、弾幕にはまるでひるまずに飛び込んできた」(ミネルヴァスハーフェン防衛にあたったリンディスヴァート軍人)と言われる。 【不屈の軍人/Tough Soldier】【決戦論/DECISIVE BATTLE DOCTRINE】【攻勢ドクトリン/Offensive Doctrine】【伏撃/Trickster】【特殊戦/Commando】【古典派/Old Guard】【レンジャー/Ranger】【奇襲戦/Ambusher】【狂気/Lunatic】【屈強/Strong】【狩人/Hunter】【詩人/Poet】【貞節/Chaste】【憤怒/Wroth】【勇敢/Brave】【野心的/Ambitious】【狂信的/Zealous】【軽歩兵リーダー/Light Foot Leader】 研究スキル7:分散実行・各自の勇気・歩兵重視・訓練・海兵訓練 ***ハルドル・アルナルソン ゲアファル飛行士による空母飛行隊である第6飛行隊の隊長。大戦においては海軍航空隊である第15航空隊に所属、リンディス海軍やヤード海軍との交戦のため度々出撃し、敵艦21隻と敵機6機を撃破したエース。そのために左足を負傷しているが、本人の弁では「ゲアファルの足は飛行機の足。それを使って歩くわけじゃないんだから、思うように動かなくてもとにかく操縦席に座れさえすればいい」とのこと。 【不屈の軍人/Tough Soldier】【海空共同作戦論/NAVAL AVIATION DOCTRINE】【索敵/Spotter】【夜間航空作戦/Night Flyer】【対艦攻撃/Fleet Destroyer】【海軍改革者/Naval reformer】【傷痕/Scarred】【狩人/Hunter】【貞節/Chaste】【勇敢/Brave】 研究スキル7:航空学・爆撃機戦術・空母戦術・諸兵科連合部隊重視・戦闘機戦術・大規模機動部隊戦術・海軍訓練・操船術・戦闘機設計 ***ローズマリー・アッカーソン・ヘイソーンスウェイト 陸軍軍医少将。医学者・薬学者・疫学者・衛生学者。医学博士(リニス大学)。リニス大学公衆衛生大学院の創設者。ミネルヴァスハーフェンの女神。白衣の聖母。大戦中のリンディス上陸作戦における橋頭堡であるミネルヴァスハーフェンの野戦病院の院長(実際は前半は副長)に任命されたが、保守的で不衛生な野戦病院の実情に驚愕、その疫学知識をもとに本国に告発した。陸軍省・海軍省・医学界を丸ごと巻き込んだ大論争の末、衛生環境を劇的に改善させることに成功。その功績は非常に有名で、ミネルヴァスハーフェンにおける軍人の誰よりも優れた英雄であるとして賞賛されるが、側近は彼女が自らの超人的な努力を他者にも平然と要求する存在であることをよく理解している。 【不世出の軍医/Brilliant Surgeon】【衛生学の天才/Hygienic Genius】【ミネルヴァスハーフェンの女神/Goddess of Minervashaven】【疫学者/Epidemiologist】【陸軍改革者/Army Reformer】【需品将校/Quartermaster】【明敏/Quick】【社交家/Socializer】【行政家/Administrator】【貞節/Chaste】【勤勉/Diligent】【忍耐/Patient】【正直/Honest】【勇敢/Brave】【狂信的/Zealous】 研究スキル9:分散実行・各自の勇気・管理・数学・小規模部隊戦術・訓練・医療科学 ***トレイシー・アイアトン 陸軍退役大佐。リペルニア出身の測量家・地図製作者。地学博士(エタブリッシェ大学)。愛国者の両親のもとに生まれ、彼自身も日の沈まぬ国アトリオンの繁栄を奉じる帝国主義者で反共主義者、反共和主義者。 エタブリッシェ大学で地質学と測地学を修めた後、アトリオン陸軍の一員として北ゴーシュやグラニツァ各地で測量に携わり、セント・ミカエル海上城砦の拡張工事にかかわるなど築城にも関与する。その後礼王朝に派遣され清河各地の地図を制作した。清河革命が勃発すると流れに流れてスルガにたどり着き、斎藤ダガタールに招かれスルガ国境付近の要塞線の建設と防衛戦術の教授に尽力した。本国では清河革命でアトリオン大使館を守って戦死したと伝わっており、彼を雇った斎藤ダガタールはアトリオンに彼を雇う旨連絡を入れたものの大戦の混乱下で正しく伝達されなかった(元々スルガに派遣していた者を雇い入れる話だと本国は誤解していた)が、戦後に生存が明らかになると帰国。戦死による二階級特進は清河の地図を持ち帰った功績と友好国スルガの防衛に貢献した功績に読み替えられて大佐として名誉除隊した。清河=スルガ戦争でスルガが清河軍を撃滅したと聞いた時には大いに喜んだという。現在はリペルニアで地図会社を営んでいる。 地図を作る傍ら趣味でプラントハンターもしており、清河奥地で生息する植物の学名にはいくつか彼の名前のついたものがある。現在の彼の家にある温室では彼が各地で採取した植物がいくつも花を咲かせているという。 【熟練の測量技師/Skilled Geodesist】【防衛戦科/SCHOOL OF DEFENCE】【静的防御論/STATIC DEFENCE DOCTRINE】【伏撃/Trickster】【工兵/Engineer】【山岳戦/Mountainer】【高地戦/Hills Fighter】【地図製作者/Cartographer】【屈強/Strong】【植物探検家/Plant Hunter】【庭師/Gardener】【勤勉/Diligent】【忍耐/Patient】【傲慢/Proud】【狂信的/Zealous】 研究スキル7:火砲・分散実行・一般装備・管理・小規模部隊戦術・技術効率・静的防御戦術・弾薬 *参考文献 Slack参照。
国名:立憲王政アーカルソン=リペルニア(合同立憲王政アトリオン) 英名:Constitutional Kingdoms of Arkalson-Lipernia (Atrionish Union of Constitutional Kingdoms) 地域:北方大陸 国歌:アトリオンの民は大洋を行く 国花:紫露草 通貨:アトリオン・リブラ 公用語:アトリオン語 首都:スタックバラ 政体:複合君主政、立憲主義議会王政、混合政体 元首:アーカルソン=リペルニア女王アン4世 宗教:アトリオン国教会 気候:冷涼湿潤 民族:アーカルソン人、リペルニア人 経済:商工業国 農業:牧畜、混合農業 工業:機械産業、特に精密機械工業において優れた競争力を有する 鉱業:良質な鉄鉱と炭鉱が所在 商業:伝統的に海運業が発達 軍事:海洋国家らしく海軍主体の軍容を備える *地理 イクファターナの東に浮かぶアトリオン諸島(アーカルソン島とリペルニア島)全土、さらにその東のグリット諸島北部を領有する。 植民地として海の向こうにグラニツァ南部、ゴーシュ北部を領有する。 |地域名|中心都市名|番号|政体|気候|特産品|工場| |アーカルソン王国|スタックバラ|19|合同立憲王政構成王国|Cfb|畜牛、羊毛、魚|鋼鉄、セメント、弾薬、小火器、汽船団、機械部品、飛行機、電気部品、電話、衣料品、ラジオ| |リペルニア王国|ホイーリントン|23|合同立憲王政構成王国|Cfb|石炭、鉄|鋼鉄、ガラス、機械部品、蒸留酒、缶詰| |グリット諸島|セント・ミカエル|58,59,60|(多様)|Cfb~ET|硫黄、貴金属、木|木材、紙、家具、高級家具| |ニューリペルニア諸島|ポート・エンジェ|11|王室属領|Cfa|魚、果実|缶詰、ワイン| |北ゴーシュ|エリファネス|35,36|自治領|Am~H|畜牛、穀物、茶、熱帯木材、ゴム、茶葉|缶詰| |レイズフィル|エイレンフィス|72,73,76,77,78|自治領|Dfb~H|畜牛、魚、穀物、木材|木材、紙、家具、蒸留酒| |ヴェルレニース|ネイフフォード|70,74,79|自治領|Dfb~Cfb|果実、穀物、石炭|セメント、家具、高級家具| |ニューアーカルソン|ハリントン|69,71,75|自治領|Cfb|綿花、穀物、石油|燃料、機械部品、飛行機、電気部品、電話、衣料品、ラジオ| |サウスセレントス島|サウスベレエイス|80|王室属領|Cfc/ET|魚、畜牛、石油|燃料| **アーカルソン王国領(19) 合同立憲王政の中心となっている王国。商工業が発展し、国内外に広く様々なネットワークが行き渡っている。 ***主要都市 ****スタックバラ アーカルソン王国の首都であり、合同立憲王政全体にとっても首都である。 この地域にアトリオン島の交通網・情報網の結節点が集中しており、商工業の中心地。 機械部品・電気部品といった部品産業、汽船や飛行機といった輸送機械、電話やラジオといった電気製品の製造業に優れており、世界の機械工業を主導している。 ****ウィルミンガム 工業都市。近隣に大規模な炭田が存在することから産業革命期に工業化が進んだ。現在は炭田は枯渇気味だが機械産業を中心に今でも世界有数の工業都市である。 ****ベレエイス 最初にイスティングが到達した地。リンディスヴァート対岸の都市で、大戦では何度かこの街の付近で海戦・空戦が戦われた。 ***気候 北限海に近く冷涼だが、サルヴェリア海から北上する暖流が西岸境界流のため近辺を通り緯度のわりには温暖。夏にはしばしば移流霧に覆われる。 ***政治・法制 合同立憲王政の中心地。 ***経済・産業 世界有数の工業地帯の一つで、重工業・機械産業が集積している。また、この地域で産出される石炭は無煙炭であり、王立海軍の作戦上も重要な役割を果たした。 農業としては酪農業、混合農業。羊毛生産でも有名。漁業ではサケやタラなどが知られる。 ***交通 スタックバラを中心に鉄道網が広くいきわたっており、高規格の幹線も多数存在する。海路・空路においても要衝である。 また大戦中に建設された飛行場が無数に点在し、そのうちいくつかは戦後になっても拡張が続けられ国際空港に発展しつつある。 ***住民 アーカルソン人はもともとこの島に住んでいたアストラ系と外来の征服者であるイスティングの混血によって成立した民族。 ***文化・宗教 世俗主義が次第に影響力を増しつつあるが、現在でも大多数のアーカルソン人は国教徒を自認する。 ***対外関係 |国名|所感| |リペルニア王国|伴侶への敬愛の念をもって、あるいは貴人に対する騎士的忠誠をもって。貴方の学識と理性が守られるに値するものだと、私は良く知っています。| |[[ジャーガルク・シャー国]]|海の向こうの国。いい物産と産業を備えた交易相手。| |[[清河人民社会主義共和国]]|共産主義が世界に広まるのを阻止せねばな。| |[[スルガ]]|シンガにおける戦力投射の要であり、蒼海洋における拠点。| |[[リンディスヴァート制憲諸邦同盟]]|古き紐帯を回復し、北イクファターナを叡智と繁栄の代名詞としよう。| |[[ソフィア王国]]|南方へ向かった同郷人は、我々とは違う方向のイスティング文化を今でも継承しているようだ。| |[[リントヴルム朝ヤード帝国]]|神さびた帝国よ、その古さに敬意を表明しよう、そしてその豊かさに驚嘆しよう。その価値は、彼らが失った物よりも高価だと理解している限り、彼らは敵にはならない。| |[[ザルバチ海岸共和国]]|白人というだけで偉いのでもない、共和政を再現したからといってよい政治なのでもない。| **リペルニア王国(23) 合同立憲王政を支えるもう一方の王国。合同以来のアーカルソン資本投下の結果、鉱工業はアーカルソンと同程度まで発展している。 ***主要都市 ****ホイーリントン リペルニア王国の首都。近郊に良質な炭田と鉄山が所在し、鉱工業は盛んだが、海運・金融業はスタックバラ系資本がほとんど支配している。 伝統産業としてガラス製造が広く行われるほか、鉱物資源を活かした製鉄業が発達している。 ***気候 南にアーカルソン島よりも当然ながら温暖。しかし真夏にも暑いと感じるほど温度が上がることは少ない。 ***政治・法制 合同によって独自の議会は廃止されたが、慣習法の差異は現在も認められており、法域はアーカルソンとは今でも別である。 ***経済・産業 鉄と石炭を産出する。アーカルソン資本の投資が続き、重化学工業はアーカルソンに近い水準まで発達している。 混合農業により穀物もよく栽培されており、それを加工したリペルニアウイスキーも有名。 ***交通 アーカルソンに比べると鉄道交通よりも若干道路交通に力点が置かれている。大戦中に多数整備された飛行場が残るのはアーカルソンと変わらない。海運はネットワークの結節点というよりは中継拠点の感が強い。 ***住民 リペルニア人はリンディシャン・コンクェストの影響をあまり受けておらず、アストラ系の系譜が強い。 ***文化・宗教 アストラ系の星詠み文化を現在でもよく保存している。リペルニア教会は円十字教を逸脱しない範囲で天界の秩序や自然法といった観念を発達させていった。 リペルニアでは現在でも国教会・普遍教会・改革教会が共存している。 ***対外関係 |国名|所感| |アーカルソン王国|世界を股にかけるビジネスに現を抜かすとよい、そうすれば自らの魂の支配者が誰か忘れていられるだろう。…貴方がどこを見ていようと、私は貴方を見ています。| |[[清河人民社会主義共和国]]|確かに合理的方法や社会改良の精神の重要性を我々は伝えようとした。だが、そういう意味ではない。| |[[スルガ]]|シンガ第一の文明の使徒。しかし、シンガの混沌を昼と夜に分け、輝かしい光の成果を手にするには夜の闇も致し方なし…いや、それでいいのだろうか?| |[[リンディスヴァート制憲諸邦同盟]]|世界の複雑さを知る者、応用と技術に長けた職人よ、人間の複雑さは技術によって御せるものだったかね?| |[[カラシュ公国]]|闇とは光の不在に過ぎぬものなれば、それは消えていくことを自然の理法に運命づけられた夜露に過ぎない。| |[[レオネッサ王国]]|自らを頼みとするのではなく自然法に従う者こそが最も強いということを分からずにいる。| |[[ソフィア王国]]|読書を好むその精神やよし。灯台下暗し、という言葉を思い出してくれればなおよいのだが。| |[[リントヴルム朝ヤード帝国]]|一つの灯篭で四隅を照らすには広大すぎる部屋のように見えるが。| **アトリオン領グリット諸島 近世以降のアトリオンの拡大により最初に合同立憲王政の属領となった地域。先住民としてゲアファルと呼ばれる人々がいる。様々な地下資源が賦存するとされている。 ***主要都市・地域 ****ハリエヤール島(58) グリット諸島の北端の島。島の内側は急峻な山岳地であるため、外周の狭い陸地に張り付くように入植者が住んでいる。主要産業は漁業。 ****ヴェザンランド島(59) アトリオン領グリットの西側の島。ハリエヤールに比べると平地の割合が広いが、北方に位置し冷涼なため農業よりは畜産が主産業。 ****セント・ミカエル海上城砦(60) アトリオン領グリットのとある島に建造された巨大な城塞都市。大型船の造船も可能な軍港でもあり、大洋における合同立憲王政海軍のプレゼンスの源となっている。 ***気候 アトリオン諸島と異なり西岸強化の恩恵を受けられないこの地域はより寒冷で多雪。 ***政治・法制 一つの島が一つの広域自治体。グリット法はアーカルソン法・リペルニア法・ゲアファル法が重層的に折り重なり、アトリオンの法曹にとっての悩みの種。 ***経済・産業 現在までに白金族・石油・アルミニウム・ウラン・錫・チタンなどの賦存が確認されており、「アトリオンの元素博物館」と呼ばれるほど多様な鉱産資源が発見されている。産業的にはみるべきは今のところ白金族と石油が中心。 気候条件から農業にはあまり適しておらず、林業と粗放的な放牧が中心。漁場としては好漁場で、アトリオンの膨張も好漁場を求めて中世アトリオン人が東へ進んでいったことに端緒を持つともいわれる。 工業化は木材の加工や精錬、軽工業を中心に緩やかに進展している。 ***交通 陸上交通事情はよいとはいえず、主に鉱山から港までの鉄道を除いては整備が進んでいるとはいえない。グリットの中流階級が自らの集落から外へ出るときに使われる移動手段は大抵の場合自家用水上機である。 ***住民 この地域の先住民であるゲアファルは少なく見積もっても十数万程度存在している。アトリオン人入植者との混血も加えるとアトリオン領グリットの半分近くはゲアファル系である。 ***文化・宗教 長い同化への抵抗を経ながらも現在ではゲアファルは国教会とアトリオン語を受け入れている(受け入れた者しか生き残らなかったともいう)。しかしリペルニアがそうである以上に独自の風習を今でも保っている。 **アトリオン領ニューリペルニア諸島(11) 礼王朝からの租借地であったが、革命により礼王朝が倒れ、軍閥内戦時代になると清河におけるアトリオン人の安全が保障できていないことを理由に自称大統領を主張する清河の親アトリオン地方政権に併合を認めさせた属領。当然のことながら清河人民社会主義共和国は併合を認めていないものの、合同立憲王政も人民社会主義共和国を認めていないのでそのままにされている。 アトリオン船の蒼海洋航路の拠点、シンガ・西イクファターナ・ゴーシュの交通の結節点であり、港湾や空港がよく整備され、蒼海洋におけるアトリオンの海空軍戦力のプレゼンスもゴーシュ大陸よりもこちらに集中している。 産業的にはみるべきものは少なく、ニューリペルニア経済は交易と軍需に依存しているが、一応魚と果物は割と生産されている。 ***ポート・エンジェ 蒼海洋有数の要港でありニューリペルニアの首都。 **アトリオン自治領北ゴーシュ(35,36) ゴーシュ北部の高原地帯に存在するアトリオン人入植地。そのためアトリオン人の居住地は主に内陸に集中しており、沿岸部はあまり開発されていない(地形的にも良港に乏しいという事情もあるが)。 ***気候 赤道に近いゴーシュ大陸はアトリオン人には過酷な地であったが、北部の高原地帯は常春気候で過ごしやすい。 ***政治・法制 入植者による自治政府が発足しており、現地におけるアトリオン王の儀礼的な代理人を総督が、実際の統治を首相が務める。王権は本国よりもさらに形式的で、より民主的な体制を持っており、大戦前に既に婦人参政権を認めている。一方で人種意識はザルバチほどではないが本国よりも強い。 ***経済・産業 穀物生産や畜産業で合同立憲王政の食料事情を支えている。工業化はあまり進んでいないが、近年は食品加工を中心にその萌芽はみられ、近年の冷凍船の発達により畜産部門は成長を続けている。また高地と海に挟まれた傾斜地にはゴムノキ、茶葉のプランテーションが散在しており、本国から流入したアトリオン人が年季奉公人として働いている。 ***外交 |国名|所感| |[[ジャーガルク・シャー国]]|アトリオン領を除くと最大の交易相手。| |[[清河人民社会主義共和国]]|目下最大の脅威。| |[[スルガ]]|シンガでは最先進国。住民意識としては微妙なライバル心がある。経済的にはスルガ製品の存在感は大きい。| |[[レオネッサ王国]]|最も近くに位置するイクファターナ諸国。| |[[ハダカンボ王国]]|地理的には近いのだが、あまり交流がない。| **ニューアーカルソン自治領(69,71,75) 「アトリオン諸島が世界で最も教養ある貴族のいる場所なら、ニューアーカルソンは世界で最も教養ある農民のいる場所だ」 国教会よりも厳格に聖典のみを参照すべきと主張し、国王からの勅許を得て旧世界の欲と罪から逃れようと新天地へ向かったアトリオン人の一派に由来する自治領。 ***主要都市 ****ハリントン(71) ニューアーカルソン最初の都市の一つで、ニューアーカルソンの中心地。ハリントン大学はニュースタックバラ大学と並んでアトリオン勅許大学に匹敵する教育水準にあるといわれる。 ***気候 概ねアーカルソン王国と同じ気候地域であり、文字通り「新しいアーカルソン」。 ***政治・法制 アトリオン領の全地域で最も民主的で、完全普通選挙が実施されており、活発にタウンミーティングやレファレンダムを行う直接民主制の伝統もある。もっともその前提としては極端な民族的・宗教的・文化的同質性があるため、政治学者からは例外的地域と捉えられている。 法制度は基本的にアーカルソン法から国王大権を除去する方向に発展した形態をとっている。なお、新大陸における国王による裁判権の不存在は国王自身によってニューアーカルソン植民地創建の勅許で認められたものである。 ***経済・産業 その知的水準から、南グラニツァにおいて教育水準で卓越しており、精密機械製造技術すら本国に迫る水準にある。旧大陸製の機械を自ら修理するのもお手の物。 一人当たり所得も近年は本国を追い越しつつある。 ***交通 既に高速道路網の整備が始まっており、モータリゼーションの気配が高まっている。 ***住民 ニューアーカルソン人は基本的にアトリオン人である。最もゲアファルに対し円十字教が苛烈であった時期に入植を行ったためゲアファルすらも少数。 ***文化・宗教 改革教会の分派が支配的。普遍教会も国教会もほとんど存在感を持っていない。入植してまず行ったことは何よりも教会・集会場・学校を建てることであったニューアーカルソンの民は、現在でも入植当時の知性主義を失っていない。 それゆえ、アトリオン本国のアカデミズムに対抗する新大陸の知的中心となっている。さらには、一般民衆の教育水準はアトリオン本土よりも高く、論理的文章を書ける農民・労働者が普通に見られる社会である。 ***対外関係 |国名|所感| |本国以外の旧大陸全て|我々は新天地に我々の望む国を作り上げる。旧世界が何をしていようと問題ではない。| |[[アババニスタン>ムスルマーネン=カリフ国]]|邪教の民。いずれ新大陸から駆逐する必要がある。| |[[ピスカ・ハウイカウサイ部族連合]]|アニミスト。放っておいてもよかろう。| |アーカルソン=リペルニア本国|我々の自由と安全を保障するのであれば、彼らの王冠を認めておこう。| |ヴェルレニース自治領|多様性と共存、それは要するに無節操と不純という意味なのだが…。| |レイズフィル自治領|独立独歩の精神は認めるが、もっと学問に裏打ちされた行動をとるべきだ。| |北ゴーシュ自治領|彼らの民主政には学ぶべきところもある。| **ヴェルレニース自治領(70,74,79) 「アトリオン人もヤード人もソフィア人もジャーガルク人も、生きていくには資金が必要。自由意思による取引、すなわち商業は全ての人々に恵沢をもたらす。」 ゴーシュ海に面する、アトリオン領グラニツァでは最も商業的に繁栄している地域。古くよりリエナやクラリッサからの入植者による入植地も存在し、アトリオン自治領となった現在でも民族的多様性を残している。 ***主要都市 ****ネイフフォード(74) リエナからの入植者によって建設された都市。ヴェルレニースでも最も民族的・宗教的に多様で、商業主義的に繁栄している地。都市人口はアトリオン領グラニツァでは最大で、南グラニツァの経済的中心。 ***気候 概ね温暖だが、南には一部冷帯もある。海に面しており、基本的に年中湿潤。 ***政治・法制 リエナ系の自治都市の伝統にアトリオンの議会主義・混合君主政を接合して成立した代議政体。法系もリエナ法とアーカルソン法の混合した混合法系。 ***経済・産業 自由移民のもたらす安価でほどほどの質の労働力により加工業が発達しており、グラニツァの諸産品がここで加工され旧大陸に輸出される。レイズフィルからくる材木を加工した木製家具が有名で、いくつかはブランド化しており本国でも人気。 ***交通 都市圏の鉄道網は次第に整備が進んでおり、アトリオン領グラニツァでは珍しく通勤ラッシュの光景がみられる。 ***住民 古くよりリエナやクラリッサからの入植者による入植地も存在し、アトリオン自治領となった現在でも民族的に極めて多様。移民政策もアトリオン領グラニツァでは最も寛容。 アーカルソン系とリペルニア系を足すとアトリオン系が最も多数派だが、分けるとリンディス系のほうが多い。その他、クラリッサ系やヤード系も一定程度おり、さらにはジャーガルク系・清河系・スルガ系などのコミュニティもある。 亜人もゲアファルを筆頭に多数存在し、アトリオン諸島にいるゲアファルよりもヴェルレニースにいるゲアファルのほうが多いという推計もある。 ***文化・宗教 宗教的には極めて多様。一応改革教会が最も多数派だが、この改革教会はニューアーカルソン系ではなくリンディス系が中心。国教会・普遍教会はもちろんのこと、メトラや浮屠教、礼教も存在している。 ***対外関係 |国名|所感| |[[清河人民社会主義共和国]]|革命から逃げてきた清河人も結構うちにはいる。| |[[リンディスヴァート制憲諸邦同盟]]|リンディス系ヴェルレニース人は多い。とはいえ、もはやリンディス語を話せない二世三世だらけだが…。| |[[レオネッサ王国]]|レオネッサ系ヴェルレニース人はリンディス系に次いで多い。| |[[アババニスタン>ムスルマーネン=カリフ国]]|奴隷解放運動家がこの地域に対して熱心に干渉しようとしている。無理だとは思うが…。| |[[ピスカ・ハウイカウサイ部族連合]]|あまり商業的に熱心ではないが、熱帯木材や天然ゴムを売ってくれる。それに彼らの憲法と多民族共存はなかなか良いものだ。| |アーカルソン=リペルニア本国|本国が拡大すれば我々の商業圏も広がるというもの。| |ニューアーカルソン自治領|確かに学問も技術も進んではいるが、誰も彼も似たような顔、似たような考え、気味が悪くはならないかね?| |レイズフィル自治領|彼らのスノビズムは商売相手としては大いに結構なことだ。| |北ゴーシュ自治領|まだニューリペルニア経由の船便のほうが多いが、いずれはここもうちの経済圏に組み込みたい。| **レイズフィル自治領(72,73,76,78,79) 「美しきアトリオンの空中庭園。あるいは真の自由の地。」 ニューアーカルソンやヴェルレニースと異なり、南のホーコンソン湾会社と北のリペルニア・エリアン会社という勅許会社によってこの地域の入植は始められた。 リペルニア・エリアン会社はヴェルレニースの現地資本との競争に敗れて拡大に失敗。一方ホーコンソン湾会社は毛皮と木材の輸出で利益をあげ、更なる毛皮を求めて河川を遡上し内陸へ拡大していった。 ***主要都市 ****エイレンフィス(76,77) ホーコンソン湾会社によって建設された都市。典型的な港湾都市。内陸部への統治が行き届いていないため、領域の広さに反して政治都市としての役割は意外と小さい。 ***気候 沿岸部は典型的な針葉樹林気候の冷帯。内陸部は冷涼で日較差が激しいが年較差の少ない高地性の気候。 ***政治・法制 沿岸部はヴェルレニースに似てアトリオン議会政治を模倣した代議制。内陸部では統治はいきわたっておらず、農園主による王国が散在している状態と表現される。 ***経済・産業 沿岸部は針葉樹と毛皮・魚が主産物で、加工もそのままか燻製にするとか製材・製紙といった程度のものを行ってヴェルレニースやニューアーカルソンに輸出することがほとんど。製造業はあまり発達していない。 この内陸部ではアトリオン人は散発的に入植してそれぞれが水運で結ばれつつも孤立し粗放的な大農場と大牧場を構えていった。 しかし近年の農業機械と飛行機械の発展は少ない労働力で広大な農場を経営することを容易にし、レイズフィル内陸の大農場・大牧場は急速に拡大。巨大飛行船による定期航路が開設され、ニューアーカルソンやヴェルレニースとの取引が増加している。 ***交通 特に内陸部ではほとんど公的インフラの整備は行われていない。小河川が多く水利には恵まれており、各農園ごとに河港や飛行場を備えられ、水運と空運が主体となっている。 ***住民 アトリオン人が中心だが、イクファターナ人も一定数存在する。また、住民の間でも農園主と年季奉公人の差が厳然と存在しており、本国の階級以上に明確な階層がある。もっとも、奉公が明けると奉公人もその稼ぎで土地を買い、小農園の農園主になるのが普通。 ***文化・宗教 リバタリアニズムの土地。一応宗教的には国教会と改革教会が中心で、国教会が最も多数派。 ニューアーカルソンの宗教的信条もヴェルレニースの都市的性格もないこの地域は、独立独行の民の土地であり、彼らは入植して自らの農場を開拓し豊かになることしか考えていない。大抵の場合成功したレイズフィル農場主は巨大飛行船を作らせるが深い意味はない。それが成功の証なのである。 ***対外関係 |国名|所感| |[[アババニスタン>ムスルマーネン=カリフ国]]|新大陸では自らの土地を力によって守れる者こそ正義。そうであろう、なあ?| |[[ピスカ・ハウイカウサイ部族連合]]|土地を私有するという概念は彼らにはないらしい。| |アーカルソン=リペルニア本国|ここは我々の土地だ、なぜならこの勅許状にそう書いてあるから。| |ニューアーカルソン自治領|鬱陶しい頭でっかちの連中。| |ヴェルレニース自治領|色々売ってる便利なデパート。| **サウスセレントス島(80) 王室属領。南限海に位置する亜南極の島。吹き付ける強風と涼しすぎる夏のため穀物栽培すらも困難。放牧と漁労が主産業の最果ての島だが、遠洋漁業の基地としては重要。 *政治 アーカルソン王国、リペルニア王国、その他自治領・属領からなる立憲君主国による物的同君連合。 全土から送られる議員による合同立憲王政議会と君主たるアーカルソン=リペルニア王による混合政体であるというのが伝統的な理解。 保守党と自由党による二大政党制であり、思想的には夜警国家が広く支持されている。 **政策スライダー(アトリオン本国) |地方分権|----◆---|中央集権|合同立憲王政の体制は諸邦の民にその慣習と権利に基づきつつも議会を中心に緩やかに統合している。| |貴族中心|----◆---|富豪中心|近代以来発展を遂げた金融利害は伝統的な土地利害と連続体を成しつつアトリオンの繁栄を支えている。| |農奴制|-------◆|自由農民|自由の伝統長き国、アトリオンの民よ!世界に汝らの自由を奪いうる者なしと知らしめよ!| |保守主義|----◆---|革新主義|漸進的に改良せよ。そうして積み上げられたもの、歴史に裏打ちされた理性こそ、社会の繁栄をもたらす。| |重商主義|------◆-|自由貿易|世界の港から原料を買い、世界の港へ加工品を売る。アトリオンの製造業に支えられ、通商の効用はますます増大する。| |攻撃主義|----◆---|防御主義|大戦後の厭戦感情の中で、戦いに積極的であることは必ずしもよしとはされなくなっている。| |陸軍重視|-------◆|海軍重視|世界の全ての海は我らの濠であり、そして我らの道である。| |精鋭|--◆-----|大軍|アトリオン人の血はそんなに安いものではないはずだ。そして女王陛下の軍人は鍛錬を怠ることを許されない。| **合同議会 アーカルソン議会がリペルニア議会を吸収して成立した合同立憲王政の議会。貴族院と庶民院の二院制。 アトリオン政体では厳密に三権分立はしておらず、最高裁判所は貴族院の付属機関である。 **政党 ***保守党 保守主義。伝統的なアトリオン政体の維持と夜警国家の継続を掲げる。現在の与党。 ***自由党 自由主義。党内には古典的自由主義と社会自由主義の間で不一致がある。現在の野党第一党。 ***リペルニア自主党 地方分権主義。リペルニア王国独自の議会の再建と自治権の拡大を求める政党。 ***労働党 社会改良主義。議会での勢力は必ずしも大きくはないが、民間団体として様々な社会改良運動を行っており、草の根では一定の存在感がある。 ***王冠合同党 反動主義。合同直後の、まだ海外との交流も進んでおらず、議会による君主権の掣肘も不十分だった時期を理想とし、その時代への回帰を求める党。 なお、流石に王国分立時代以前への回帰を求める反動派は極端なリペルニア至上主義者くらいしかいないらしい。 *経済 **産業 ***農業 伝統的に牧羊が活発。産業革命以来の人口爆発で食料需給は悪化していたが、近年開発の進むアトリオン領北ゴーシュで大規模な農園で穀物が栽培されるようになり、合同立憲王政全体では食糧事情は改善傾向にある。 ***漁業 主にタラ漁を中心に広く行われている。アトリオン近海は世界的にも漁場に恵まれており、これは船乗りの文化もはぐくんできた。 ***鉱業 本土で良質な鉄鉱石と石炭(無煙炭)が産出する。グリット諸島では貴金属や硫黄といった資源が発見されている。 ***製造業 アトリオンは実用的な外燃機関(蒸気機関)の発明国であり、その長い伝統から重工業が発達している。伝統工業としては繊維産業やガラス産業があるが、これらの分野でも機械技術の導入が進んでいる。 洗練された工作技術により、アトリオン製の工作機械・光学機器・精密部品等は国際的にもトップクラスとされる。 化学工業では大戦前には技術水準においてリンディスヴァートに追い抜かれつつあったが、大戦後の技術賠償によりいくらか息を吹き返した。 大量生産の導入に関しては流れ作業化は進んでいるものの製品の標準化は東ヤードなどに比べて後れをとっており、生産技術の改善が進められている。 ***商業 海運業が発達しており、アトリオンの船会社により運行される客船・貨物船は世界各地で見かけられる。 また、スタックバラは資本主義の中心地として世界中の富の行き交う金融センターの一つである。 **企業 ***アールカース・コングロマリット ウィルミンガムに広大な工場群を構える、アトリオン最大の重工業コングロマリット。自動車や飛行機、ラジオに銃砲まで製造ラインを抱え、製鉄から軍艦までを内製できる大企業で、アトリオン艦の6割はアールカース製。 研究スキル7:航空機試験・火砲・電子工学・一般装備・産業工学・機械工学・艦砲・海軍工学・ロケット工学・弾薬・車両工学・空母設計・爆撃機設計 ***ライスティン時計工業 リペルニアの精密機械メーカー。もとは時計工房で、現在も時計メーカーとして知られる。しかしこの会社の本領は計量機器にあり、温度計・圧力計・速度計といった部門における世界トップクラスメーカー。 研究スキル8:化学・産業工学・数学・機械工学・技術効率 ***プリンスフィールド王立科学機械製造所 Princefield Royal Instrument for Science Manufacturer、略称PRISM社。リンディスヴァートのリエナオプティークと双璧を成す世界有数の光学機器メーカー。 国王アダムズ3世が王位継承権二位の王太子であった時期にスタックバラ郊外の工房で行っていた手作業でのレンズ製造に端を発し、現在の本工場も同じ位置に立地している。 研究スキル9:化学・電子工学・一般装備・産業工学・数学・機械工学・技術効率 ***ディルミナー機械 アーカルソンの工作機械メーカー。リペルニアやニューアーカルソンにも工場があり、ニューアーカルソン工場では工作機械以外にも割と手広く精密機械を扱っている。そのため南グラニツァではアトリオン本国よりもはるかに知名度が高い。 研究スキル8:産業工学・管理・数学・機械工学・技術効率 ***ヴェルニッツァ輸送機械 ヴェルレニース発祥の輸送機械メーカー。リペルニア・グリット・ヴェルレニースに生産拠点があり、自動車・飛行機等を製造している。航続距離と燃費に優れた飛行機で知られ、グリット諸島ではヴェルニッツァ製水上機がよく用いられている。 研究スキル7:航空学・航空機試験・産業工学・ロケット工学・航空電子工学・車両工学・戦闘機設計・爆撃機設計 ***メインヘルナ 化学メーカー。アトリオンでは最大の化学工業であったが、近年はリンディスヴァートの化学工業によって斜陽化しつつあった。戦後賠償によりリンディスヴァートの特許と製造技術を手にし、再建を図っている。 研究スキル6:化学・産業工学・弾薬 *交通 **陸運 産業革命発祥の地として、アトリオン諸島では全土に鉄道網が張り巡らされている。現在では蒸気機関車は姿を消し、電化が急速に進んでいる。 **海運 スタックバラを中心に、ヤーディア各地の港へ向かう航路が開設されている。 **空運 大戦初期、リンディス軍の空襲を受けてパニック的にアトリオン諸島各地(主に貴族の荘園など)に整備された多数の飛行場と戦後払い下げられた無数の飛行機・飛行船により、過剰ともいえるほど空運産業の下地が用意されていたが、次第に統廃合されつつも主要都市近辺のハブ空港や定期便に集約されアトリオンの航空ネットワークを形成しつつある。 また、元々一家で一隻は小型船を持つのが一般的なグリットやニューリペルニアでは払い下げられた水上機を中流家庭が保有することが一般化し、この文化に本土も影響を受けて量産小型機が次第に中流層に普及しつつある。 アトリオン領グラニツァではヘリウムが産出することから飛行船が主流。 *軍事 **議会陸軍 アトリオンの陸軍は議会合同によって実質的な統一はなされているが、形式的にはそれぞれの領邦ごとに陸軍が存在することになっている。合同以降大きな戦争に参加したことがなく、近年は士気が今一つ。 **王立海軍 アーカルソン=リペルニア王の下に存在する海軍。ブルーウォーターネイビーとしての実力を備え、潤沢な予算と装備を持ち、アトリオンのシーレーンを支えている。 **王立海兵隊 広義の王立海軍の一部をなす陸戦隊(由来的には敵船への乗り込みが海戦術における王道であった時代の部隊)。大戦においても積極的に作戦に参加している。 **王立空軍 アーカルソン=リペルニア王の下に存在する空軍。先王の意向で創設されたもので、陸海軍からは微妙な目を向けられているが、マニアックな技術者たちが空中艦隊計画の実現に日々邁進している。未だ発展途上ではあるが、防空体制は比較的よく整備が進んでいる。 *外交関係 伝統的に他大陸との通商と勢力均衡を外交政策の主軸としている。ゴーシュ大陸への入植も他大陸との通商の一環である。 目下のアトリオンにおいて脅威と認識されている勢力は[[リントヴルム朝ヤード帝国]]の集権化の進展と[[清河人民社会主義共和国]]の社会主義であり、リント朝の地方勢力・[[ソフィア王国]]・[[レオネッサ王国]]領[[東タヴェリア植民地>レオネッサ王国領東タヴェリア植民地]]・[[ザルバチ海岸共和国]]によって前者を、[[ジャーガルク・シャー国]]・[[スルガ]]・[[角]]・[[ユルキア王国]]によって後者を封じ込めようとしている。 |国名|所感| |[[ジャーガルク・シャー国]]|シンガの大国。この国からの物産はアトリオンを大いに富ませた。[[ムスルマーネン=カリフ国]]をどうにかしてもらいたいのだが。| |[[角]]|果たして彼らには清河から自衛できる力があるだろうか?| |[[清河人民社会主義共和国]]|我々は永久の敵がいるなどと思ってはいない。だが君たちが我々のことを永久の敵とみなす理屈を信奉しているのであれば、君たちは我々の当座の敵だ。| |[[スルガ]]|小国だが、進取の精神はある。そして小国ならば、伸びすぎるということもあるまい。| |[[ユルキア王国]]|シンファナの境に存在する国家。民族自決の理念が清河の抑え込みに使えるならば、それは結構なことだ。| |[[リンディスヴァート制憲諸邦同盟]]|戦塵の中に沈んだ対岸の民もやがては自然の秩序のうちにあるべき地位に戻るだろう。今度は敵にならぬよう、手を打ちたいものだ。| |[[フォンタニエ辺境伯国]]|運命に翻弄される小国。少なくとも彼らがヤードに飲み込まれることは望まない。だがそれを阻止することに全力をかける価値があるかというとそれは別の話だ。| |[[カラシュ公国]]|オブスキュアな夜の国。しかし我々もランタンを持って押し入るほど無作法ではない。ただ、かの国から出てくるものには細心の注意を払わねばなるまい。| |[[レオネッサ王国]]|このファシストという連中は敵とも味方ともつかないな。本国はともかく、南タヴェリアを統治はできるのだろうか?| |[[ソフィア王国]]|前大戦の戦友には、傷が癒えるときまで必要な手助けをしよう。そしてかの国の庶民が戦後世界の平穏を享受できるようにしよう。| |[[トルカーナ公国]]|彼らにとってソフィア王国は憎むべき相手かもしれない。だが、彼らが世界の全てを憎んで生きるようになってもらっては困る。| |[[リントヴルム朝ヤード帝国]]|巨大で集権化された隣国というのは落ち着かないものだ。だからといってもう一度大戦をすることを望みはしないが。| |[[ザルバチ海岸共和国]]|かの国の共和主義はアトリオンの右派、白人至上主義はアトリオンの左派に評判が悪い。とはいえ、地政学上敵の敵たる彼らの存在は有益だ。| |[[ハダカンボ王国]]|リンディスヴァート領から独立したタヴェリアの部族国家。敵の敵の敵…ということになるのだろうが、ここまでくるともはや敵対ともいえまい。| **大使派遣国 以下にある国には大使を派遣している(それ以外は公使)。 ***リンディスヴァート制憲諸邦同盟 隣国。イスティング人に由来するとされ北部イクファターナの共通の政治文化を構成した「古き自由」を守るという点で長らく友好関係にあったが、大戦直前のほんの一時期だけこじれた、というようにアトリオンでは理解されている。 ***スルガ 礼王朝の近代化政策により招請され清河の地を踏んだアトリオン人の主な勤務の場は二つあり、一つは礼王朝の首都であり、もう一つは海に面し進取の気性の強いスルガ藩である。 礼王朝で内乱が起こるとアトリオン人は都では影響力を失っていったが、スルガ藩ではこの時期までにアトリオン的な学問は広く受容されており、「冷笑派」と呼ばれる勢力が力を持っていた。清河での反アトリオン政権出現の可能性を憂慮したアトリオン人は冷笑派と協力関係を結び、清河における近代化支援のプロジェクトはスルガにおける国家建設支援のプロジェクトへと変わっていった。 独立達成後は通商関係を中心に安定した二国間関係を築いており、清河が社会主義化したことを契機に7614年に防衛同盟を結んでいる。 ***ソフィア王国 [[ソフィアの聖女]]、多数の図書館の存在などの要素がアトリオン人の好感を呼んでいる。一方で、ソフィア社会の抱える様々な社会問題もまたセンセーショナルに報じられてもいる。 ***ジャーガルク・シャー国 近世に大海原に乗り出したアトリオン人がたどり着いた異国の地。異国の地には当然異国の物産があふれており、イクファターナ東部にこれらの物産を持ち込んだことでアトリオン商人は大きな利益を上げた。 ***リントヴルム朝ヤード帝国 地政学的理由から公然たる仮想敵国ではあるが、その経済規模の大きさから、アトリオン有数の貿易相手国であるのは確かである。 ***レオネッサ王国 *歴史 **古代 ***上古アトリオン アトリオン諸島にもともといた人々は、アストラヴィチャニン(よく「アストラ系」と呼ばれる。ヤード語で「島の民」の意。往々にしてアトリオン語の通俗語源で「星詠みの民」と解釈されがち)と呼ばれる人々である。 彼らはグリット島に住んでいた先住民ゲアファルから文化的な影響を受けて占星術的な信仰文化を発達させ、自然と共存した農耕生活を送っていた。この時代の史料には石碑がいくつか残っており、上古アストラ語の解読も進んでいるが、記録は断片的であり、今なお研究が進められている。アストリック・デバイスと呼ばれるアストロラーベ的な機能を持つと考えられているオーパーツも発見されており、一定の機械技術の発達を見ていたという見解もある。 **大陸からの征服の波の中で アトリオン諸島は古代から度々大陸勢力の拡大の目標として征服の対象とされた。特に北部地域には古代ヤード帝国の属州が置かれたことから遺跡が複数存在する。とはいうもののそれらの征服者はアストラ系を支配しつつも彼らの慣習を改変しようとまではしなかった。 しかし現在のリンディスヴァート北西部を根拠地とするとされるイスティング人の大規模な入植はこの状況を大きく変化させた。次第にアストラ系の勢力は山がちで土地の貧しい南東部に追いやられた。イスティング人は勢力を拡大しつつも内紛を繰り広げていたが、ある時アルカルという人物がイスティング人を糾合し、以てアトリオンを完全に平定しようとした。彼はアーカルソン島全土を支配下においた後リペルニア島への遠征を行ったが陣中で没し、その後しばらくアトリオン諸島は多数の小王国が分立する状態となった。 **中世 ***二王国の成立 イスティング系入植者に抵抗しつづけたアストラ系の諸侯は連合して自分たちの中で最も名声の高かったウィラード1世を推戴し、自分たちの王国を建設した。これがリペルニア王国の成立である。 彼らはイスティング系の内紛に介入し漁夫の利を得ることで勢力均衡を図ったが、ある時リペルニアの同盟者のとある小王国の新王に即位した人物が即位早々に電撃的にほかのイスティング勢力を征服し、自らをアルカルの再来としてアルカル2世を名乗った。アルカル2世はその後すぐに病没するが、彼の長男アーカルソン(アルカルソン)は征服地を安定させることに成功し、アーカルソン王国を建てた。 リペルニア王国にとってこのアーカルソン王国成立は歓迎すべきことではなかったが、国内の安定を実現したアーカルソンに対抗するのは困難と判断したリペルニア王ウィラード2世は自らの娘をアーカルソンの王妃として迎えさせた。以後、アーカルソン王国とリペルニア王国は何度かの王朝交代を経ながらもそのたびごとに姻戚関係を結ぶようになった。 この二王国分立の時代は500年以上にわたって続いたが、時折アーカルソン=リペルニアの人的同君連合を形成することもあった。しかしタニストリー的な選挙王制の伝統を持つリペルニア王国と長子相続であるアーカルソン王国という建国以来の王位継承法の違いからこの時代に同君連合が長続きすることはなかった。 ***ダルキアンとプロト啓蒙 ソフィア王国の聖女、マリー・ダルクとその事績がアトリオンに伝わったのは、彼女の著書を全て焼くようにという指示によってであった。 これをもとにアンゼロット記念大学で地動説の理論的検証がなされ、得られた結論である「近似計算としては有用である」は、リペルニアでダルキアンな天文学計算を普及させるに十分なものであった。リペルニア文化では天文学計算とはごく日常的に要求されるものであり、複雑化し精緻だが煩瑣な天動説理論は、計算力に優れた人間にはともかく普通のリペルニア人にとっての苦労のもとであったのである。 とはいえ、この時伝わったのは地動説と天体運動理論のみであり、万有引力は伝わっていないとされる。 ***議会合同と合同王政の成立 (設定調整中) 王国分立を終わらせた契機はリペルニア王国でのクラリッサ王国との継承戦争である。リペルニア王ヘンリー3世は苦戦の末に諸侯の活躍によってクラリッサ王アドルフ1世を捕虜とし、この戦争に勝利したが、この勝利はピュロスの勝利であり、賠償金は諸侯への報奨に消えた。こうしてリペルニア王はこの時期には次第に北方大陸の通商で存在感を示しつつあったアーカルソン王国に対して劣位に置かれた。 継承戦争の数年後、当時のアーカルソン王ジョン2世が崩御するとヘンリー3世はアーカルソン王位を継承したが、彼は荒廃し諸侯の専横が甚だしいリペルニアに倦んでおり、伝統的にアーカルソン王にしてリペルニア王となった者の王座は両王国の国境付近の街に置かれるという慣習を無視してアーカルソン最大(そしてアトリオン最大)の都スタックバラを居とした。 リペルニア諸侯は次第にこれに不満を募らせ、ついには反乱を起こすが、この反乱はアーカルソン軍によって鎮圧された。ヘンリー3世は反乱の発端となったリペルニア王国議会(国王選出権を持つ)を解散しアーカルソン議会に統合させた。この合同議会の最初の仕事はリペルニアの王位継承法をアーカルソンと同じものにすることであり、この議会合同を以って歴史学的には合同立憲王政アトリオンが成立したとされるが、法的にはこの次の代に女王となるシャーロット1世の即位を巡る混乱に対処するためアーカルソン=リペルニア王位が宣言された時点が合同立憲王政の成立とされている。 **近世 ***シンガ大陸航路と新大陸の発見 合同が実現した後、島内の争いが沈静化したアトリオン人は、海外に目を向けるようになり、大陸間の通商に積極的に乗り出した。 ジャーガルクを初めとするシンガ諸国の物産はアトリオン経済のあらゆる分野に富をもたらした。 ***初期啓蒙と立憲王政の確立 リペルニアで地動説が計算手法として用いられていることは公然の秘密であり、アーカルソン人もそれが異端の係累に属すると知りつつもひそかにこれを活用してはいたが、教会中央からはアトリオンは辺境の地であり、大きな問題にはならなかった。 しかし、この時期にアンゼロット記念大学の哲学教授ランキンが裁判記録を発見、知り合いでリニス大学の数学教授であるアーシャに見せ、彼女が自ら創始した微積分学によって定式化したことにより、解析力学の体系を作り上げた。 ランキンは彼女の成果を称賛、彼女の方法論を人間知性の研究に適用し、生得観念を否定、アトリオン観察主義哲学を創始し、さらには最初期の自由主義思想を唱え、アーカルソン=リペルニア合同時に締約された権利憲章を自然権論により正当化した。 ランキンとアーシャの考えはアトリオンで広く受容され、最初期の啓蒙を形作った。とくにランキンの立憲自由主義は次第に政府にも受容され、立憲王政の確立につながった。 ***グリットの統合 (執筆中) 伝統的に家族より大きな共同体の観念が薄いゲアファルは、アーカルソン王が掲げる「グリットの領主にしてゲアファルの君主」という称号を是認しており、グリット諸島に進出するアトリオン人に対しても住処や漁場を荒らされない限りは特に抵抗してこなかった。アーカルソン王の側も庇護民に過ぎないゲアファルに対しては自らの信仰や文化を押し付けることを目標とはしていなかった。 合同王政の確立もこれをすぐに変化させることはなく、むしろ合同王政がリペルニアの信仰や文化を維持することによって成り立っているために維持する方向をさらに強めた。 しかしながら、シンガ航路の利益がますます増大する中、道中の島嶼に補給基地を設置する必要性がますます増大しつつあった。 ここで登場する「無色透明の王」アダムズ3世は、兄であるアダムズ2世が即位して1年足らずで急死したため、急遽王位についたアーカルソン=リペルニア王である。彼は幼少時から勃興しつつある科学に対して関心を持ち、長男ではない(つまり跡継ぎではない)のをいいことにアンゼロット記念大学で光学を学び、顕微鏡と望遠鏡に関する最新の知識を身につけた、「史上最も高貴なレンズ職人」である。彼の下で世界初の学会といわれる王立学会が設置、それ以外にもさまざまな学術組織が国王の支援を受け設置されるなど最初期の科学革命のアトリオンにおける基盤が整備された。 アダムズ3世は即位以降も統治に対してはほとんど関心を持たず、議会・宮廷・国教会の三者による勢力均衡のなすがままにしていたが、友人の天文学者が異端審問により自説の撤回を余儀なくされたことに衝撃を受け、彼は異端審問の力を弱めるべく行動を起こす。これにより学者の学説への異端審問が厳しく戒められた結果、国教会の異端審問部門はグリットのゲアファルに対し改宗活動を強化していくことになる。 この布教活動は一定の成果をあげたが、次第にゲアファルからの反発も強まり、ついにはゲアファルはグリット諸島近辺を航行するアトリオン船を襲うようになる(第一次ゲアファル戦争)。当時の軍艦はゲアファルの襲撃に対して無力であったため、ゲアファルの襲撃への対応には改宗したゲアファル兵が用いられた。 この戦いが激化すると通商活動への損害も大きくなり、見かねた商人勢力中心の議会はアダムズ3世の暗黙の支持のもとに国教会を封じ込め、異端審問を事実上骨抜きにすることに成功した。第一次ゲアファル戦争はこれにより終息したが、この時抵抗したゲアファルと改宗したゲアファルの対立は後の争点となった。 アダムズ3世の没後、彼の孫であるアダムズ4世が即位した。アダムズ4世は絶対主義を奉じ、統治、信仰、そして家庭をほとんど顧みず学究的生活に身を投じた祖父を国王の模範たりえないとして厳しく否定し、そして「国教会の首長」としての自らの地位を重視していた。アダムズ4世は祖父が骨抜きにしていた異端審問を復活させ、アトリオンとグリット双方で積極的に活動させた。 この政策に関しては、本土での支持は実際のところ悪いものではなかったが、当然のことながらゲアファルからは激烈な抵抗を招いた(第二次ゲアファル戦争)。戦いが長期化すると、第一次ゲアファル戦争と異なりゲアファルは組織化の方向へと向かった。 **近現代 ***工業化の進展 通商の発展が進む中で、アトリオン島から輸出できる物産をさらに多様化すべく、製造業を発展させた。 まず外燃機関の発展により鉄道と汽船が実用化され、陸運と海運が急速に成長した。 ***大戦の時代 *文化 **大学 アトリオンに存在する大学は中世の間に設立され法的根拠を国王の勅許による大学と近代以降に作られた大学の二種類ある。 ***勅許大学 儀礼的にはその教員には学問と研究の自由、組織としては不輸不入の特権をアーカルソン=リペルニア国王から認められた大学。アーカルソンに2つ、リペルニアに1つある。全て中世に由来を持つ大学である。 ****リニス大学 中世盛期アーカルソン王国において、宮廷の貴族が貴族院の円滑な運営のため共同で出資し著名な法学者を招いて自らの子弟に教育させたことを由来とし、その数十年後にはそれまでの貢献によってアーカルソン王から勅許によりアトリオン初の大学として設置されたアーカルソンの勅許大学。 自然法や海洋法を中心に法学研究がよく知られる一方、自然神学的な学問を契機として近世における初期の古典力学発展の舞台にもなった。 ****エタブリッシェ大学 中世後期のアーカルソン王国で、絶対主義の導入を目指す国王が自らに忠誠な官僚を欲してリニス大学の一部の教員と学生を引き抜いて作った勅許大学。 当時のアーカルソン王がヤード皇帝に対し自らの格を主張するため古典古代研究に力を注いだこともあり、ヤード国外ではトップクラスの古典学研究がなされている。西ヤード分裂時代やイスティングといった歴史に関しても研究が進んでいる。 アトリオン語研究の中心でもあり、エタブリッシェのアトリオン語辞典はアトリオン語辞典の中でも最も精緻な記述で知られる。 中世以来伝統的に天文学研究も活発であるが、これはリペルニアの星詠み文化への対抗の意味が強い。リペルニアにおける国王とは、星を詠み、それに基づいて地上世界で政治・軍事を司る力量の最も高い者であり、天文現象を精緻に予測できない者は権威を認められないからである。 ****アンゼロット記念大学 系譜的には中世初期の普遍教会修道院である聖天使修道院(リペルニアの修道院文化は円十字教でも特に古い由来を持つ)の付属学校、大学としての成立はその修道院長を務めたとある教会博士の尽力のもとでリニス大学をまねてリペルニア王の勅許を受けたことに由来するリペルニアの勅許大学。 合同後、国教会が圧倒的に優位なアーカルソンと異なり、改革教会が優位を持ち普遍教会の勢力も残るリペルニアにあって、アーカルソン=リペルニア王による改めての勅許により円十字教徒であれば宗派を問題としない姿勢をとった。 リペルニアの周縁的な地位ゆえ、アーカルソンの勅許大学に比べると官界・政界への影響力は見劣りする一方で、本学の卒業生の中には望遠鏡を発明し科学革命への道を開いた者、重商主義を否定し経済学という学問領域を作った者、蒸気機関を初めて実用化し産業革命の端緒を築いた者などがおり、科学技術の分野においてはアーカルソンの勅許大学に勝るとも劣らない存在感を持つ。 **階級社会 ***貴族 アトリオンの貴族は制度的には世襲貴族と一代貴族、法的には依拠する慣習法の異なるアーカルソン貴族とリペルニア貴族の区分がある。ただし大貴族や古い由来を持つ貴族はアーカルソン貴族かリペルニア貴族かはっきりしているものの、中小貴族に関してははっきりしないものも多く、それらは合同立憲王政貴族と呼ばれることも多い。ただしアトリオンの貴族は異なる種類の身分との通婚をあまり忌避しないため、社会的にはアトリオン貴族という一体の存在をなしていると考えられることも多い。 アトリオン貴族たる者の資格は、伝統的に学識と資産であると考えられてきた。これは貴人とは天界の秩序を学び、自然の法則を理解し、それに従って地上を統治する者であるというリペルニアの伝統的価値観と、自らの土地を求めて自弁の武器と共にアトリオンの地を踏んだイスティングの戦士たちの慣習が複合して生じたものである。 一代貴族に叙される目安も勅許大学の教授が務まる程度の学識とカントリーハウス(もちろんある程度の田園を備えることが望ましい)を持てる程度の資産であるとされる。慣習的には一代貴族に叙されることが三代続けば世襲貴族号を付与されるとされる。逆に何の学術的成果もあげずに代替わりした場合、戦死や短命といった事情がない限りは保持する最上位の爵位の継承は認められないことが多い。 現在存在する貴族の特権は「貴族を名乗れること」と「貴族院における参政権」のみである。アトリオンの貴族が持つ爵位は形式的なものであり、実際にはその土地は地域共同体が統治するため、統治権や徴税権は持たない。 **学者の国、啓蒙の国 リペルニアでは伝統的に学問が好まれ、自ら新しい学問的成果を作り出すことが貴人の条件とされてきた。中世以来アーカルソン人もこの影響を受け続け、合同以降はアーカルソンと同レベルで学術研究の発展を志向するようになっている。近代以降中流階級が台頭すると彼らはより実学を重視するようになるが、実学といっても100年後に役に立つような基礎科学もまたアトリオン人中流階級にとっての実学である。 そのため、アトリオンでは高等教育機関が古くから発達しており、優れた学識者や学識あるエリートを育成してきた。改革教会の浸透・国教会成立以降は庶民の識字率向上も進展している。 ニューアーカルソンでもこの傾向は受け継がれているが、ニューアーカルソンの場合には学識を身に着けることは貴人の条件とか生活の改善とか立身出世の手段ではなく人間が当然持つべきものとされている。 **治安・衛生 アトリオン領の治安・衛生状況は比較的安定しており、本国はイクファターナ随一の低い犯罪率となっている。階級社会ではあるが、民衆の間での疫病の伝播に対する警戒心は強く、行政機関は衛生環境の向上に関しては貧民街であっても積極的に取り組んでいる。 グリット諸島、北ゴーシュ、ニューリペルニア、ヴェルレニースは本国ほどではないが警察機構は有効に機能している。なおニューアーカルソンは重犯罪を見ると本国並みに低いが愚行権を認めず何でも軽犯罪にするため統計上の犯罪率は他のアトリオン植民地と大きく変わらない。レイズフィル内陸部では警察機構が機能していないため統計がないが、沿岸部ではヴェルレニース並みの状況と報告されている。 アトリオンの入国管理や税関は密輸や密航だけでなく防疫にも注意を払っており、特に本国の入国手続の煩瑣さは有名である。 ***二十則委員会 リペルニア王国に存在する公安組織。内赦執行機関。「外法から自然法を防衛する」ことを趣旨とし、中世リペルニアにおいて聖ルーアンの事件に衝撃を受けたリペルニア王が竜大公の助言に基づき創設した組織。大陸からの吸血鬼や人さらいの類に対する侵入阻止を主な活動目的とし、法運用の厳格さから恐れられてきた。一般には合同以降は形式上の存在に過ぎないとされる。 **人名の命名規則 原則として、男性にはミドルネームがなく、女性にはミドルネームがある。アトリオンでは貴人は爵位や称号が長くなる傾向にあり、貴人も複雑で長大な名前を付ける習慣を持たなかった。そのため4単語以上の名前を持つのは基本的に移民のみである。 ゲアファルに関してはもともと古代には個人の名前が希薄で、アトリオン諸島を超えて東進したイスティングから名前の概念を受け取ったとされる。現在でもその名残で名前はイスティング系であり、姓の代わりに父称を用いる。 *国民 **民族・人種 ***アーカルソン人 アトリオン諸島に入植したイスティング系に由来を持つ主にアトリオン諸島北部の民。大陸からの優れた戦闘技術・農業技術を持って中世アトリオンを席捲した。外見は銀髪碧眼の典型的な北方系。 古くから子は成人すると親元を離れるのが普通であり、比較的家族単位の独立性が高く、個人主義的な土壌を育んだ。継承法は基本的に長子相続。 ***リペルニア人 イスティング系に抵抗したアストラ系を由来とするアトリオン諸島南部の民。独特の星詠みの文化とウイスキー醸造などで有名。 タニストリー的な、親族会議により家督相続を決定する慣習がある。 ***ゲアファル(ゲアファオル) グリット諸島の先住民族たる[[有翼亜人]]。彼らは水面効果を活かして海面上を滑空し、また翼を巧みに使って水中でも機動的に動くことができる。また、視力(特に暗闇や動体、立体)に優れ、磁覚をはじめ、人間の持たない知覚能力をいくつか持つ。小家族的な集団で暮らし、きわめて家族に対する情愛は深いと言われる。 本来はノマド的な生活を送っており、南北に広がるグリット諸島を季節に応じて渡り、アニミズム的な信仰の中で海洋と気象に関する優れた理解をもって漁労を中心とした暮らしを営んでいた。 古くよりアトリオン諸島に流れ着いた彼らが自らの地学的知見をアトリオン人に提供することも多く、リペルニア神話によるとリペルニアの星詠み文化も彼らの系譜上にあるとされ、リペルニア貴族の出自の逸話として流れ着いたゲアファルを祖先に持つというモチーフは多くみられる。 しかし、近世以降になるとアトリオン人の勢力拡大のなかで飲み込まれ、異端審問によりアトリオン国教会に改宗させ定住化させるなど同化が推し進められ、ゲアファルの文化は大きな打撃を受けた。 近代以降は彼らの漁業はもはやアトリオン人の近代的漁業に太刀打ちできなくなっており、定住化を受け入れて農耕生活を行う者や近代的漁業を受け入れてアトリオン漁民と変わらない生活を送る者が多いが、高級魚の分野では今でも伝統的なゲアファル漁法を続ける者もわずかながら存在する。 また、その能力を活かして偵察兵・水兵・航空兵などの分野で軍務につくことも多く、家族を養うためなら何でもする習慣もあってアトリオン軍人として戦史に名を残すゲアファルも多数存在する。軍人・学者・貴族仕えなどの道から一代貴族の地位を得るゲアファルは多く、人口比で考えると一代貴族のうちゲアファルの比率は突出している。 **宗教 アーカルソン国王を首長とする円十字教の宗派であるアトリオン国教会が主流。公職に就くには国教徒が望ましいとされるものの、信仰の自由は保障されている。 リペルニアでは古代から続く星詠みの文化が残っているが、円十字教自体はどこでも受け入れられている。 *人物 **王族 ***アン4世 神と自然法の恩寵によるアーカルソン=リペルニア女王にしてゴーシュ女王、グラニツァ大陸およびグリット諸島およびニューリペルニア諸島の領主、アトリオンの古き法と自由の擁護者、アトリオン国教会の首長。今代の合同立憲王政の女王。 【魅力的な交渉人/Charismatic Negotiator】【強硬な孤立主義者/PIG-HEADED Isolationist】【広い人脈/Well Connected】【厳格/Strict】【慈善家/Benevolent】【貞節/Chaste】【充足感/Content】【公正/Just】 **政界 ***エドワード・バード 現在の首相。保守党。リペルニア貴族の出身で、家柄としては中堅程度。質実剛健を旨とし、その私生活においては簡素。人間・国家のいずれにせよ関係性の分析に長けた策略家。 【稀代の黒幕/Elusive Shadow】【寡黙な勤勉家/SILENT WORKHORSE】【政治家/Statesman】【盤戯の達人/Game Master】【節制/Temperate】【冷笑的/Cynical】 ***ウィリアム・スミッテン 自由党党首。父はセント・ミカエル海上城塞生まれ、母はニューリペルニア生まれで本人は船上生まれという海洋国家アトリオンらしい出自の人物。彼自身も海上保険会社を創業したことをはじめ、金融業で財をなした資本家上がり。彼自身は既に経営から手を引いていたものの、世界大戦で彼の興した会社の事業が一時危機に陥ったこともあり、総力戦を嫌っている。ただし平和主義者といえるかと言えば必ずしもそうではなく、植民地戦争には肯定的で、彼の手掛けた事業の中には海軍とのかかわりが深いものも多い。 【金儲けの達人/Fortune Builder】【レッセ・フェール資本主義者/LAISSEZ FAIRES CAPITALIST】【交易商人/Trader】【大食/Gluttonous】【勤勉/Diligent】【社交的/Gregarious】 **外交官 ***クレア・マリー・ウィルソン 駐リンディス大使。文学修士(エタブリッシェ大学)。庶民の出でありながら語学の才能と超人的な努力によって本来貴族の職である大使に上り詰めた才女。 【魅力的な交渉人/Charismatic Negotiator】【イデオロギーの闘士/IDEOLOGICAL CRUSADER】【外交官/Diplomat】【端麗/Attractive】【明敏/Quick】【社交家/Socializer】【貞節/Chaste】【勤勉/Diligent】【謙虚/Humble】【臆病/Craven】【社交的/Gregarious】【冷笑的/Cynical】 ***リチャード・マクダウェル 駐スルガ大使。法学博士(リニス大学)。スルガ人の期待するアトリオン人イメージを崩さぬ教養ある紳士で、スルガ独立以前から外務省で清河政策に携わり、スルガ独立後はアトリオン=スルガ同盟の成立を主導してきた。 彼も天文学の学識と学究的性格を持った典型的アトリオン貴族で、彼の場合はその関心は西方の社会と文化に向かっている。本来の専門は比較法学であるが、しばしばその分析手法は社会人類学的と言われる。冷笑派にとってはアトリオン法学のスルガにおける紹介者の一人でもある。 【影の実力者/Gray Eminence】【偏見ある知識人/BIASED INTELLECTUAL】【端麗/Attractive】【明敏/Quick】【社交家/Socializer】【盤戯の達人/Game Master】【学者/Scholar】【貞節/Chaste】【慈善/Charitable】【忍耐/Patient】【社交的/Gregarious】【冷笑的/Cynical】 ***スタンリー・ハクスリー 駐ジャーガルク大使。経営管理修士(ニュースタックバラ大学)、経済学博士(アンゼロット記念大学)。ヴェルレニース生まれでニューリペルニアを拠点に貿易会社を経営してきた経済人。大戦で中央海航路が使えなくなったため東西の大航路の重要性がさらに高まったことからアトリオン政府から招聘を受けて以降スタックバラで通商政策に関与するようになる。 【金儲けの達人/Fortune Builder】【偉大な調停者/GREAT COMPROMISER】【レッセ・フェール資本主義者/LAISSEZ FAIRES CAPITALIST】【交易商人/Trader】【行政家/Administrator】【勤勉/Diligent】【社交的/Gregarious】 ***キャロライナ・ジュリエット・チャットウィン 駐ヤード大使。文学博士(エタブリッシェ大学)、経済学博士(アンゼロット記念大学)。経済学という学問自体の成立を哲学的に検討すること目的に古代ヤード哲学と近世アトリオン哲学と近代経済学を修めた教養人で、リントヴルムポリス留学経験者。古典哲学の世界から出てきたかのような懐疑主義と禁欲主義の実践者。 戦後のヤードへの外交官に誰を送るかということは大きな問題で、策士、商人、軍縮交渉の実務家、様々な候補があったが選ばれたのは彼女であった。これはアトリオン人の理解では結局のところ問題はヤード帝国の歴史がもたらす彼らの傲慢さにあり、ヤード人に対して外に学ぶべきものがあると知らしめることは戦後体制の延命につながると考えられた、ということを意味する。 【博識な古典学者/Scholarly Classicist】【懐疑主義者/Skeptic】【偏見ある知識人/BIASED INTELLECTUAL】【端麗/Attractive】【学者/Scholar】【禁欲主義/Celibate】【詩人/Poet】【貞節/Chaste】【忍耐/Patient】【謙虚/Humble】【公正/Just】 ***ノエル・ブライトウェル 駐ソフィア大使。工学博士(ハリントン大学)、数学修士(エタブリッシェ大学)。法的には庶民だが、6代遡るとクラリッサ皇帝に繋がる家系の持ち主で、祖父は信仰のために相続権を放棄しニューアーカルソンに移住したアーカルソン貴族。彼自身も一代貴族の候補になったことがあるが、これは本人が拒絶した。 敬虔なニューアーカルソン改革教会信徒の両親に育てられたが、次第にその価値観に疑問を抱くようになり、技師となるべく入学したハリントン大学で社会工学に出会い、信仰ではなく科学的方法による社会の改良という発想に魅せられ革新主義者となった。両親とも当初は対立したが、現在では彼のよき理解者となっている。以来、アトリオン各地で行政官として働き、社会改良に努めてきた。このように信仰を疑い合理的方法によってではあるものの社会の非道徳は解決されなければならないという態度からは典型的なニューアーカルソン人であると言え、近年のニューアーカルソン革新主義・進歩主義派の旗手である。 如何に行政官として社会問題に向き合ってきたとはいえ、アトリオンのアカデミズムとニューアーカルソンの知性主義の世界で生きてきた彼はソフィア大使に任ぜられて初めて想像を絶する無知・不衛生・貧困の中で暮らすソフィア貧民の生活を知り大変に驚愕している。しかし、彼はそれでもこれまでのキャリアでしてきたのと同じようにソフィア社会の実情を合理的に分析し、彼らの待遇が改善される方策を考え続けている。本国ではあまり主流ではない彼が大使を務めているのは、本国外務省にとってもソフィアの貧困は共産主義者の絶好のプロパガンダ素材とされることが問題視されていることを意味する。 自由党の社会自由主義側の中心的人物の一人。誤解する保守主義者も多いが明確な反共主義者。万人が同じ生活水準を享受できるところまで民衆の生活を引き上げねばならないと考えながらも民衆が自らの力だけで自らを救済できる可能性を否定する、この点でも典型的ニューアーカルソン人。 【真面目な官僚/Dutiful Bureaucrat】【革新主義者/Progressive】【明敏/Quick】【行政家/Administrator】【慈善/Charitable】【勤勉/Diligent】【公正/Just】【狂信的/Zealous】 ***アーチボルド・ランフランク 駐角公使。神学博士(エタブリッシェ大学)。 礼王朝の首都栄都でアトリオン国教会の宣教師をしていた元聖職者。韓語、スルガ語、ジャーガルク語などのシンガ諸言語を流暢に操り、また天文学・数学・機械工学などで教職が務まる程度の学識を持った国教会随一の秀才。清河人、特に対アトリオン取引をする商人に広く人気があった。革命後も親アトリオン軍閥下で布教活動を続けていたが、社会主義者が勢力を増すと、当然のことながら外国勢力で商人と親しい聖職者の居場所はなくなり、少数の信徒と共にどうにか逃げ延びることに成功した。しかし、信徒の多くを守れなかったことがトラウマになり、宣教の際の滑らかな弁舌は失われ、信仰に対しても懐疑的になって聖職者を辞する。その後知り合いの官僚に招かれ西方言語の語学力のある人材を求めていた外務省に入り、対清河封じ込め外交の一翼を担うようになった。 【魅力的な交渉人/Charismatic Negotiator】【ストレス/Stressed】【端麗/Attractive】【明敏/Quick】【社交家/Socializer】【神学者/Theologian】【禁欲主義/Celibate】【貞節/Chaste】【慈善/Charitable】【社交的/Gregarious】【公正/Just】【冷笑的/Cynical】 ***スティーヴ・ティレット 駐トルカーナ公使。陸軍退役大佐。法学博士(リニス大学)。大戦中にソフィア大使館駐在武官を務めていた人物。実直で厳格かつ勤勉な性格、「古き自由」とアトリオンを中心とした世界の安定を奉じる保守主義者、という典型的アーカルソン貴族出の陸軍軍人であったが、航空戦力の導入や海軍・海兵隊との連携によってアトリオンの安全は保障されると考える柔軟さも持ち合わせた人物で、そのために海軍軍人との協力を求められるソフィア駐在武官に任じられた。 大戦中、地中海に派遣されたアトリオン軍のネットワークの結節点ともいえる役割を果たすと同時に、戦線で度々観戦武官としてソフィア戦線の戦場に出るが、毎度ソフィア軍の過剰な民間人への暴力をめぐって指揮官と言い争うため本国からは何度も左遷を検討されていた。しかし彼の周囲の軍人から「大戦が終わるまで絶対に彼はここに必要」との声もあり、大戦が終わるまでその職にとどまる。大戦後期には何があったか国際法について学びだし、ソフィア休戦協定が結ばれた直後に陸軍を退役、本国に戻りリニス大学で法学を学び、国際法と人道主義に関する論文で博士号を取得する。その後は外務省に勤め、リンディスヴァートの武装解除などで活躍した後、駐トルカーナ大使に就任。トルカーナ人には「よきアトリオン人スティーヴ」として知られるが、本人はそう呼ばれると何とも微妙な顔をする。本人曰く、「自分には何もできなかった無力者」。 【熟練の戦術家/Skilled Tactician】【偉大な調停者/GREAT COMPROMISER】【心理戦科/SCHOOL OF PSYCHOLOGY】【陸空共同作戦論/ARMY AVIATION DOCTRINE】【市街戦/Urban Warfare Specialist】【包囲戦/Encircler】【規律/Disciplined】【ストレス/Stressed】【うつ/Depressed】【行政家/Administrator】【慈善/Charitable】【勤勉/Diligent】【臆病/Craven】【公正/Just】【冷笑的/Cynical】【疑心暗鬼/Paranoid】 研究スキル7:集中実行・諸兵科連合部隊重視・大規模部隊戦術・訓練 **学界 ***エミー・アイザック・ケーニヒスベルガー 物理学者・数学者。物理学博士(アンゼロット記念大学)。リニス大学教授。アトリオンの才媛。波動方程式と相対論的収縮を発見した物理学者であり、量子力学と相対論の双方への扉を開いた。 科学者として天才的であるだけでなく、後進の育成には学界に金を引っ張ってこなければならないことをよく理解し、政財界にも広いコネクションを有している。しかし外面では良識ある人間のようにふるまう一方で、その内実は数学と物理学の進歩以外のあらゆるもの、常識的観念や道徳規範や人間関係の何から何まで無意味であると考えている懐疑主義者で虚無主義者。彼女の下で学ぶ学生いわく、「彼女に常識的にふるまえる能力があることがまず非常識」。本人いわく、「何をすれば他人が自分と同類であると誤解するのか観察するのが趣味」。 【並ぶ者なき物理学者/Mastermind Physicist】【操作可能性の操作者/Handler of Handling】【懐疑主義者/Skeptic】【虚無主義者/Nihilistic】【管理の天才/Administrative Genius】【自然科学者/Natural Scientist】【天才/Genius】【傲慢/Proud】【気まぐれ/Arbitrary】【冷笑的/Cynical】 研究スキル10:電子工学・産業工学・数学・機械工学・核工学・核物理学・航空電子工学 ***ヘンリー・ウィルミントン 神学者・歴史学者・言語学者。神学博士(エタブリッシェ大学)。エタブリッシェ大学教授。聖書翻訳の歴史を研究している。 人当たりのよい紳士で、多言語能力もあって特に留学生には話しかけやすいと人気。なお、非円十字教徒にも表面上取り繕うだけの度量はあり、高等批評をする自由主義神学者でもあるものの、あくまでも彼自身は敬虔な円十字教徒であることは忘れてはならない。 【博識な人文学者/Scholarly Humanist】【偏見ある知識人/Biased Intellectual】【神学者/Theologian】【禁欲主義/Celibate】【貞節/Chaste】【慈善/Charitable】【公正/Just】 ***シンシア・エイミー・オブライエン 気象学者・雪氷学者。探検家・飛行船航法士。理学博士(アンゼロット記念大学)。リペルニア最大の貴族グウィンドル公爵家分家の当主。アトリオン空軍創設の主導者の一人。ただし本人が持っている軍歴は大気海洋庁士官部隊で観測気球を扱っていただけで、直接空軍軍人となったことはなく、大気海洋庁で航法士になるのは士官部隊を外れてからである。空軍創設後は熱心に空中艦隊構想を推進していたが、近年は空対地攻撃よりも防空に主眼が置かれ、彼女のプロジェクトは下火になっている。そのような状況下で注力する方向を変えた彼女は払い下げられた空中戦艦に自ら乗り込み各地で探検飛行を行うようになる。最も有名な実績として、北極点に着氷して世界初の北極点到達者となったことが挙げられる。 なお、学者としてはケーニヒスベルガー女史を熱烈に崇拝するケーニヒスベルガー主義者。専門は違うものの、どんなに忙しい時でも彼女の最新の研究はフォローしている。 【熟練の航法士/Skilled Navigator】【陸空共同作戦論/ARMY AVIATION DOCTRINE】【端麗/Attractive】【明敏/Quick】【傲慢/Proud】【勇敢/Brave】【野心的/Ambitious】【狂信的/Zealous】 研究スキル6:航空学・産業工学・機械工学・沿岸航法・操船術・技術効率・空挺訓練・空母設計 ***ナタリア・ユージェニー・カーライル 数学者・暗号学者。レイズフィル在住の農園主を自称する在野の数学者であり、大学に通ったことすらないらしいが、彼女の暗号理論はケーニヒスベルガー女史にも認められ、リニス大学で数学の博士号を与えられた。 あらゆる政治権力を完全に否定するアナキストに近いリバタリアン。表現の自由戦士であれば最も急進的な層、レイズフィル人でも50人に1人いるかいないかという水準の急進的自由至上主義者。 当然、国家が人々の通信の秘密を侵害することを一切容認せず、それがために自らの最先端の研究成果を実際の使い方を含めて公開するため、各国の諜報関係者には随分嫌われている。特に国内情勢の混乱の続くリンディスヴァートでは過激派同士のやり取りに彼女の成果が使われており、混乱に拍車をかけている。暗殺したいと思っている諜報関係者も数知れないが、彼女の住所どころか正体は誰なのかすらケーニヒスベルガー女史ほかごく数人しか知らず、そのやりとりも彼女一流のインテリジェンスを駆使して行われており現在まで追跡されていない。 【不世出の暗号学者/Brilliant Cryptographer】【天才/Genius】【学者/Scholar】【憤怒/Wroth】【嘘つき/Deceitful】【臆病/Craven】【内向的/Shy】【冷笑的/Cynical】【疑心暗鬼/Paranoid】 研究スキル0:(彼女は一国に対して役に立つことを一切拒否する) ***シグリズル・ベッティドッティル 西岸強化のメカニズムを明らかにした、ゲアファルの海洋学者。理学博士(アンゼロット記念大学)。他のゲアファルからはアトリオン本国で成功した人物として敬意を以て遇されているが、本人の内心では(統計上ゲアファルが知識においてアーカルソン人・リペルニア人に劣るということは特にないのだが)無学な同胞を冷笑している。もっとも、アトリオン人で無学な者に対しても冷笑しているのはほかのリペルニア人学識者とそう変わらないので、その点、もはや典型的なリペルニア学識者である。ただ、夫に対しては人間味のある態度をとるので、そこに関してのみゲアファルらしさを残している。 【博識な海洋学者/Scholarly Oceanographer】【貞節/Chaste】【忍耐/Patient】【内向的/Shy】【冷笑的/Cynical】 ***ウィリアム・グレイ 分析化学者。化学博士(エタブリッシェ大学)。本業は分光法だが、クロマトグラフィーの発明者でもある。化学者として大戦中の化学戦に心を痛め、毒ガスの成分分析を容易にするキットを開発しアトリオン側の化学戦防護能力を大いに高めた。ただし、彼のキットは新しい化学兵器の開発にも応用されることになったのではあるが。 【真面目な化学者/Dutiful Chemist】【明敏/Quick】【貞節/Chaste】【慈善/Charitable】【勤勉/Diligent】【正直/Honest】【公正/Just】 研究スキル7:化学・産業工学・技術効率・医療科学 **財界・実業界 ***アンドリュー・フィールズ 鉄道技術者。工学博士(アンゼロット記念大学)。鉄道の高速化を追求し、高速輸送による動員迅速化のメリットを説いて弾丸列車計画の実現に邁進、既にホイーリントン郊外に実験線を敷設している。 【経済の錬金術師/Midas Touched】【鉄道ロマンチシスト/Railway Romanticist】【資源産業家/RESOURCE INDUSTRIALIST】【軍事技術者/Military Engineer】【悪魔つき/Possessed】【建築家/Architect】【勤勉/Diligent】【忍耐/Patient】【野心的/Ambitious】【狂信的/Zealous】 研究スキル8:産業工学・管理・機械工学・ロケット工学・技術効率・車両工学 **貴族 ***ニューコーム侯リチャード・ホワイトヘッド アーカルソン貴族の中でも貴族中の貴族といわれるアトリオン最大の大貴族ストックトン公爵家の長男であり、ニューコーム侯爵号は伝統的にストックトン公継承者の証である。既に三十路にある跡取り息子、本来であれば更なる家の発展のために結婚して家の管理を担い社交界でも積極的に活動しなければならない身にありながら、異性と交際することすらせず、ただリペルニアウイスキー醸造所を訪れるだけの旅行を繰り返し、そうでないときには自らのカントリーハウスに引きこもって文芸やら庭の手入れやらにだけ注力する放蕩息子。人間の好き嫌いが激しく、側仕えにも気の許せるごくわずかな人間しか置かない。 人間嫌いが高じて、ケーニヒスベルガー女史に吹き込まれた「機械化がますます進展すれば引きこもりながらできる生活の水準はますます向上する」というアイデアを気に入り、機械工学や計算機工学をはじめとした工学の諸分野に対し家が傾きかねないほどの出資を続けており、アトリオン各地の工学教育機関には彼の名を冠した講座や奨学金が多数設置されている。 【世間知らずの甘ちゃん/Indulgent Wastrel】【酒浸り/Drunkard】【庭師/Gardener】【詩人/Poet】【慈善/Charitable】【怠惰/Slothful】【内向的/Shy】【冷笑的/Cynical】【疑心暗鬼/Paranoid】 ***ペンドラゴンシャー大公/リペルニアの竜大公イグナティウス 竜族。性別は不明(以下では暫定的に「彼」)。アトリオンの象徴として広く知られた竜で、アトリオンの国章にも使われている(国旗そのうち手直しします)。様々な言語で様々な名がついており、神話好きの間では「百の名を持つ竜」「竜大公」だけで通じる。伝承ではアストラ系がアトリオンに住まう遥か以前からリペルニアの空を自由に飛び、火を吐いて敵を焼き殺し、火山と大地を意のままに操っていたといわれるが、実際に空を飛んだり火を吐く姿は今のところ目撃されていない。各地で確認されている竜族の中でも突出して大きく、それだけの年かさを重ねていると推定されている巨竜で、現在はリペルニアの火山の火口に住み、そこからはほとんど外に出ない。彼は自分以外の翼ある者を嫌うので、基本的に彼の下にたどり着くには火山の洞窟を通って火口に向かうことになる。耐久力は高くうろこは銃砲撃を跳ね返してほぼ無傷、寒いときにはマグマに浸かっていることもあるがそれでうろこが融けたりはしない程度の耐熱性も持つ。知性に関しても長い年齢からくる知識、アトリオン語など人語を解する語学力などからは人間と同等以上のものを持っていると考えられている。 性格は傲慢で気まぐれ、特に古代の伝承では理由なく人間を襲ったとされ、中世アトリオンの騎士道物語でも竜を討伐する騎士というモチーフは頻出である。一方でリペルニア的な学識ある権威への敬意は持っており、中世リペルニア王国においてはリペルニア王の権威を認め、形式的には彼に臣従し、大公位を授けられた歴としたリペルニア貴族。リペルニアの守護者を自認し、リペルニア島への侵略者に対してはリペルニア人と共に戦ったこともある。アルカルのリペルニア征服の挫折も彼を避けるため無理な作戦機動をとったためであり、以後アーカルソン王国のリペルニア征服事業が功を奏さなかったのも同じ理由である。リペルニア生まれでないリペルニア王を認めないという理由でシャーロット1世以降しばらく臣従を拒否していた。しかし第二次ゲアファル戦争でのアトリオン国教会のゲアファルへの苛烈な取り扱いを聞いて満足しアーカルソン=リペルニア王を再び認めたという(そしてその際に合同立憲王政は彼に対してのみ特例的に合同以前の特権を認めた)。そのため彼に関しては領地の不輸不入特権・免税特権・国王の親裁なしに処罰されない(現実的には処罰自体困難だが)特権など、百年以上前に一般のアトリオン貴族が失った特権を未だに有している。それほどゲアファルを嫌う理由として何らかの古い確執があるらしく、単に有翼亜人のみならず亜人一般を嫌い、航空機も彼の領地の上空を飛ぶことは許されていない(…が、金を積むと許してくれる)。なお、ゲアファルの神話においてもこの巨竜によってアトリオン諸島にいたゲアファルは滅ぼされたと伝わっている。 彼の領地ペントラゴンシャーは一応彼の許可がないと入れない(通常の貴族において爵位にある土地が実際には統治権がないのとは対極であり、ある意味では彼のための保護区である)が、地代を払えば耕作等も認められる。地代にはかなりがめつく、基本的に金貨など貴金属を求めるが、たまに書物を求めることもある。その巨体で人間の本をどうやって読むのかは謎に包まれているが、内容について話したり、さらに関連する書物を求めたりするので実際に読んでいるらしい。最近は新聞を定期購読したり、ラジオを聴いたり(電波の知覚能力もあるらしい)もしている模様で、時には女王に手紙を出して国政への意見も行う(貴族であると考えると特段変なことではないのだが)。なお、産業技術の振興や勢力均衡の外交政策など、意外にその内容はまともであるため政府も時に参考にしているが、亜人に対する徹底的に酷薄な待遇を毎回必ず要求することには流石のアトリオン紳士たちも微妙な顔をしている。 【竜大公/Grand Duke of Dragon】【竜族/Dragon】【明敏/Quick】【極めて屈強/Very Strong】【盤戯の達人/Game Master】【狩人/Hunter】【学者/Scholar】【貞節/Chaste】【強欲/Greedy】【憤怒/Wroth】【傲慢/Proud】【勇敢/Brave】【気まぐれ/Arbitrary】【冷笑的/Cynical】 **軍人 ***アリソン・ルイーズ・シュテファン 王立海軍大将。アトリオン本国艦隊提督。アーカルソンの零落した貴族上がりで、家格と国威の向上に熱烈な精力を注ぐ。 大戦に際してはミネルヴァスハーフェン上陸作戦と三度のリントヴルムポリス強襲作戦に参加し、特にアトリオン艦隊が大損害を受けた第一次リントヴルムポリス強襲作戦では巧みな機動を指揮し自らの艦をほぼ損傷なく帰投した数少ない艦長として知られる。 なお、自らの家に(一般家庭には容易に手が届かない程度に高価なはずの)機械式計算機を置いて暇があれば最新の弾道学論文の内容を検証し、時には自ら学会で射爆理論について発表する弾道学マニアの側面もある。しかし、そんなものはアトリオン中流階級のありふれた余暇の過ごし方に過ぎない。 【熟練の戦術家/Skilled Tactician】【基地制圧論/BASE CONTROL DOCTRINE】【卓越した戦術家/Superior Tactician】【海軍改革者/Naval reformer】【屈強/Strong】【学者/Scholar】【戦術家/Strategist】【忍耐/Patient】【勇敢/Brave】【野心的/Ambitious】【狂信的/Zealous】 ***クリストファー・ミドルトン 王立海軍大将。蒼海洋艦隊提督。アッパーミドル家庭の出身で、愛国者である両親の勧めで海軍兵学校の門をくぐり、航海術や語学・軍事史・地理学などではいつも最優等、その他の科目でも五本の指に収まる成績を修め首席で卒業した秀才。 長年にわたりゴーシュやグラニツァの植民地艦隊で大きな問題を起こすことなく勤務を続けてきた。しかしそろそろ老後設計を考えだす頃になって大戦が起こり、リントヴルムポリス強襲作戦などで海軍軍人が死亡や負傷により退役した結果、中央海艦隊に戦力を抽出され残滓のような有様となったニューリペルニア艦隊を突如任される。さらにヤード艦隊は西海峡を越えて大艦隊を送ることはなかったためにすることもなく臨検により中央同盟側への密輸を摘発していたところ、ムスルマーネンに送られる奴隷の中からアトリオン人捕虜を発見、解放させたり、礼王国での革命ではいち早くスルガに艦隊を派遣し在留アトリオン人を保護するなどした結果本国での評価が本人の知らないうちにうなぎ登りになってしまった。そんなこんなで人間の評価の当てにならなさをこの歳で改めて実感している。 本人は妻と平穏無事な老後を過ごすことだけを望んでいる。しかし、蒼海洋の航路を預からせると彼の右に出る者はいないというのは国内外の共通理解であり、本国は彼が働ける限り働くことを望んでいる。とはいえ、艦上ではなくニューリペルニアに置かれた司令部での地上勤務ではあるため、軍人としての職務における勤勉さと同じ生真面目さで海軍軍人であるために長年あまり傍にいてやることのできなかった妻との時間を過ごすことはできているようではある。 【気弱な仲介者/Naive Appeaser】【外洋理論/OPEN SEAS DOCTRINE】【封鎖線突破の達人/Blockade-Runner】【索敵/Spotter】【古典派/Old Guard】【海洋探検家/Navigator】【端麗/Attractive】【明敏/Quick】【禁欲主義/Celibate】【貞節/Chaste】【勤勉/Diligent】【親切/Kind】【謙虚/Humble】【臆病/Craven】【充足感/Content】【冷笑的/Cynical】 ***ウィルステッド侯アルカン・ラースティン アーカルソン最大の貴族ストックトン公爵、リペルニア最大の貴族グウィントル公爵と並ぶアトリオンの三大貴族、フリーディル公爵家の跡取り。アーカルソン陸軍中将。「ミネルヴァスハーフェンの肉屋」として知られるミネルヴァスハーフェン上陸戦の総司令官。 自らも内心では認める無能、お飾りである。個人としては優れた鷹匠であるなど戦士らしい素質も持ち合わせているのだが、多対多の戦いではその意志薄弱が浮き出てくる。しかし性格は抑制がとれており、能力的な問題は副官のアシュリーをはじめとする側近の助けでカバーし、参加した兵卒には内心はともかく表向きのストイックさから敬意を持って遇された。一方でアシュリー大佐やローズマリー野戦病院院長のように有能な側近たちにとっては状況によっては使いつぶせばよい程度の存在(アトリオンでは大貴族すらも伝統的にそうである)と認識され、ささやかな心の均衡は幼少時から自らと共にあったメイドとの手紙のみによって辛うじて保たれていたという。 戦後には「ミネルヴァスハーフェンの肉屋」の悪名で知られつつも、大戦中数少ない上陸戦と橋頭堡防衛の成功者という戦果は一定の評価がなされ、後方勤務にまわった。この状況は適職であると本人も納得し、心の平穏を取り戻せたようである。 【将才なき戦士/Misguided Warrior】【銃とバター理論/GUNS AND BUTTER DOCTRINE】【鷹匠/Falconer】【忍耐/Patient】【臆病/Craven】【内向的/Shy】【野心的/Ambitious】【冷笑的/Cynical】 ***アシュリー・グラウクス・ニコルソン アーカルソン陸軍大佐。ミネルヴァスハーフェンの梟。眼鏡で未来を占う預言者。ミネルヴァスハーフェン上陸戦における総司令副官。現在は参謀本部勤務。 一度見たものを細部に至るまで描き起こせる完全記憶能力・11ヶ国語をネイティヴと見分けのつかないレベルで操る言語的能力・断片的な情報から大戦全体の戦局を的確に把握する分析力を備えた天才。その驚異的な才能から、家格を重視する陸軍にありながら庶民としては初めて士官学校に首席で入学、卒業まで常に席次は首席であった。 兵を鼓舞することにも長け、「総司令官殿は望んでおられる」から始まる彼女の演説は厳しい戦局の中でも兵を魅了し、最後まで士気を維持した。 【緻密な策略家/Intricate Webweaver】【兵站の専門家/LOGISTICS SPECIALIST】【心理学科/SCHOOL OF PHYCHOLOGY】【兵站管理/Logistics Wizard】【防勢ドクトリン/Defensive Doctrine】【伏撃/Trickster】【工兵/Engineer】【特殊戦/Commando】【反撃戦/Counter Attacker】【規律/Disciplined】【弾性防御/Elastic Defence Specialist】【陸軍組織者/Army Organiser】【天才/Genius】【盤戯の達人/Game Master】【貞節/Chaste】【勤勉/Diligent】【忍耐/Patient】【勇敢/Brave】【野心的/Ambitious】 研究スキル8:集中実行・諸兵科連合部隊重視・一般装備・各自の勇気・管理・小規模部隊戦術・技術効率・訓練・機動戦術・弾薬 ***グレアム・モーズリー 王立海兵隊少将。「議会に属する陸軍だと王のために死ねないが王立海兵隊なら王のために死ねる」という理由で王立海兵隊に入ったアーカルソン小貴族の次男。イスティング時代の武勲詩を愛するあまり現代においてそれを実行しようとした狂人。 しかしながらミネルヴァスハーフェン橋頭堡の確保には彼の(剣と弓を携えての)鬼神のような戦いぶりが大きく貢献し、「彼なしには橋頭堡の確保はなかった」(総司令)、「銃弾はまるで当たらず、弾幕にはまるでひるまずに飛び込んできた」(ミネルヴァスハーフェン防衛にあたったリンディスヴァート軍人)と言われる。 【不屈の軍人/Tough Soldier】【決戦論/DECISIVE BATTLE DOCTRINE】【攻勢ドクトリン/Offensive Doctrine】【伏撃/Trickster】【特殊戦/Commando】【古典派/Old Guard】【レンジャー/Ranger】【奇襲戦/Ambusher】【狂気/Lunatic】【屈強/Strong】【狩人/Hunter】【詩人/Poet】【貞節/Chaste】【憤怒/Wroth】【勇敢/Brave】【野心的/Ambitious】【狂信的/Zealous】【軽歩兵リーダー/Light Foot Leader】 研究スキル7:分散実行・各自の勇気・歩兵重視・訓練・海兵訓練 ***ハルドル・アルナルソン ゲアファル飛行士による空母飛行隊である第6飛行隊の隊長。大戦においては海軍航空隊である第15航空隊に所属、リンディス海軍やヤード海軍との交戦のため度々出撃し、敵艦21隻と敵機6機を撃破したエース。そのために左足を負傷しているが、本人の弁では「ゲアファルの足は飛行機の足。それを使って歩くわけじゃないんだから、思うように動かなくてもとにかく操縦席に座れさえすればいい」とのこと。 【不屈の軍人/Tough Soldier】【海空共同作戦論/NAVAL AVIATION DOCTRINE】【索敵/Spotter】【夜間航空作戦/Night Flyer】【対艦攻撃/Fleet Destroyer】【海軍改革者/Naval reformer】【傷痕/Scarred】【狩人/Hunter】【貞節/Chaste】【勇敢/Brave】 研究スキル7:航空学・爆撃機戦術・空母戦術・諸兵科連合部隊重視・戦闘機戦術・大規模機動部隊戦術・海軍訓練・操船術・戦闘機設計 ***ローズマリー・アッカーソン・ヘイソーンスウェイト 陸軍軍医少将。医学者・薬学者・疫学者・衛生学者。医学博士(リニス大学)。リニス大学公衆衛生大学院の創設者。ミネルヴァスハーフェンの女神。白衣の聖母。大戦中のリンディス上陸作戦における橋頭堡であるミネルヴァスハーフェンの野戦病院の院長(実際は前半は副長)に任命されたが、保守的で不衛生な野戦病院の実情に驚愕、その疫学知識をもとに本国に告発した。陸軍省・海軍省・医学界を丸ごと巻き込んだ大論争の末、衛生環境を劇的に改善させることに成功。その功績は非常に有名で、ミネルヴァスハーフェンにおける軍人の誰よりも優れた英雄であるとして賞賛されるが、側近は彼女が自らの超人的な努力を他者にも平然と要求する存在であることをよく理解している。 【不世出の軍医/Brilliant Surgeon】【衛生学の天才/Hygienic Genius】【ミネルヴァスハーフェンの女神/Goddess of Minervashaven】【疫学者/Epidemiologist】【陸軍改革者/Army Reformer】【需品将校/Quartermaster】【明敏/Quick】【社交家/Socializer】【行政家/Administrator】【貞節/Chaste】【勤勉/Diligent】【忍耐/Patient】【正直/Honest】【勇敢/Brave】【狂信的/Zealous】 研究スキル9:分散実行・各自の勇気・管理・数学・小規模部隊戦術・訓練・医療科学 ***トレイシー・アイアトン 陸軍退役大佐。リペルニア出身の測量家・地図製作者。地学博士(エタブリッシェ大学)。愛国者の両親のもとに生まれ、彼自身も日の沈まぬ国アトリオンの繁栄を奉じる帝国主義者で反共主義者、反共和主義者。 エタブリッシェ大学で地質学と測地学を修めた後、アトリオン陸軍の一員として北ゴーシュやグラニツァ各地で測量に携わり、セント・ミカエル海上城砦の拡張工事にかかわるなど築城にも関与する。その後礼王朝に派遣され清河各地の地図を制作した。清河革命が勃発すると流れに流れてスルガにたどり着き、斎藤ダガタールに招かれスルガ国境付近の要塞線の建設と防衛戦術の教授に尽力した。本国では清河革命でアトリオン大使館を守って戦死したと伝わっており、彼を雇った斎藤ダガタールはアトリオンに彼を雇う旨連絡を入れたものの大戦の混乱下で正しく伝達されなかった(元々スルガに派遣していた者を雇い入れる話だと本国は誤解していた)が、戦後に生存が明らかになると帰国。戦死による二階級特進は清河の地図を持ち帰った功績と友好国スルガの防衛に貢献した功績に読み替えられて大佐として名誉除隊した。清河=スルガ戦争でスルガが清河軍を撃滅したと聞いた時には大いに喜んだという。現在はリペルニアで地図会社を営んでいる。 地図を作る傍ら趣味でプラントハンターもしており、清河奥地で生息する植物の学名にはいくつか彼の名前のついたものがある。現在の彼の家にある温室では彼が各地で採取した植物がいくつも花を咲かせているという。 【熟練の測量技師/Skilled Geodesist】【防衛戦科/SCHOOL OF DEFENCE】【静的防御論/STATIC DEFENCE DOCTRINE】【伏撃/Trickster】【工兵/Engineer】【山岳戦/Mountainer】【高地戦/Hills Fighter】【地図製作者/Cartographer】【屈強/Strong】【植物探検家/Plant Hunter】【庭師/Gardener】【勤勉/Diligent】【忍耐/Patient】【傲慢/Proud】【狂信的/Zealous】 研究スキル7:火砲・分散実行・一般装備・管理・小規模部隊戦術・技術効率・静的防御戦術・弾薬 *参考文献 Slack参照。

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