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*SS第10話「まひるとかぐやの忙しい一日」 (番外編ストーリー)  暗い闇の世界では、そこに住む者たちにも非情な仕打ちが待ち構えている。ボウケン星にあるダークネスの本拠地でも今まさに闇の仕置きが行なわれようとしていた。 「役立たずは、ダークネスには不要なのだ!」  エクリプスの低い声がホール全体に響き渡る。 「いや、ですが……エクリプス様……」  ウォルケンが必死の弁解を試みる。 「プリキュアのパワーアップに俺たちも何とかしようと……」 「言い訳は無用だ!」 「ギャーーーーーッ」  エクリプスの指先から閃光がほとばしる。闇の雷がウォルケンの頭上に落ち、骨が透けて見えそうなほどの電撃が加えられる。 「馬鹿だね、ウォルケンは」 「まさに雉も鳴かずばですね」  クバートとスゥが柱の影からのぞきながらクスクスと笑う。 「お前らも無能者だ、恥を知れ」 「「ギャーーーーーーッ」」  雷がクバートとスゥの頭上にも落ちた。  しばらくしてダークネスの本拠地で揉めている三人の姿があった。 「まったくもう、玉のお肌に傷でも付いたらどうするのよ」  黒焦げになったスゥが鏡をのぞきながらウォルケンに文句を言う。 「全くだ。ツキが落ちたらどうしてくれる。今月は新台が入るっていうのに」と、クバートもうなずく。 「何おー、仲間が苦しんでるのにその態度は何だよ、その態度は!」  ウォルケンが足踏みをして悔しがる。プリキュアに勝てないだけでも悔しいのに仲間の冷たい態度になおさら腹が立つのだ。 「だったら、プリキュアを倒してくればいいじゃない」 「それができたら苦労するかよ!」  スゥの言葉にますます興奮するウォルケン。 「でも、あたしたちもこのままだとヤバいと思わない?」  この言葉には他の二人が息を飲んだ。最近、モークライの動きも含めて何やら不穏な動きが見られるのは薄々感じていた。このまま成果があげられなかったら、自分たちが闇へと処分されてしまうかも知れない。そう思うと、それぞれの背中に戦慄が走る。 「ここは何か考えないといけないな」と、腕組みをするクバート。 「おう、そうだな。それぞれ何か良い手を考えようぜ」  ウォルケンも同調する。スゥもうなずいている。まずは、自分たちでアイデアを考えて、それを披露しあうことに決めた。 「「「よし、アイデアを練るぞ」ってやるか」わよ」  三人がそれぞれ姿を消した。  ウォルケンが現われたのは、光が丘の駅前商店街の上空である。眼下には日曜の午後の街が広がっている。 「アイデアを出すにしても、腹が減っては良い考えが浮かばねえしな。まずは、腹ごしらえだ」  そのままスゥーと落下する。 「ハンバーガー屋はどこだ?」  ビルの屋上に何気なくドスンと着陸する。同時に「うげぇ」といううめき声が聞こえた。足元が何やら不安定なので下を見ると、毛むくじゃらのものを着込んだ若い男性が倒れて気を失っているようだ。 「何だ、俺の下敷きになったのか。ははっ、悪いな」  片手でひょいと摘まみ上げるとそのまま近くにあった空き段ボールの山の中へ投げ込む。 「さて、食い物、食い物」  ウォルケンが先に行こうとすると、背中に「スタッフ」と英語で書かれたTシャツの男たちがやって来て取り囲む。 「緊張ほぐすってどこまで行ってるんだよ」 「こんな所でふらふらしてないでくださいよ。出番近いんですから」 「?」  ウォルケンが戸惑っていると、いきなり背中が押され、両手を引っ張られる。 「まずは飯をだな……」 「これが終わったら食事がでますから」  本気をだせば簡単に吹き飛ばすことは出来たが、食事という言葉にちょっと思いとどまった。ついでに、これを利用して一暴れしてやるのも面白いと思ったのだ。ウォルケンはそのまま連れて行かれた。 「みんなー、こんにちわー」「こんにちわー」 「声が小さいよ。こんにちわー」「こんにちわー」 「『幕末!プリキュア新鮮組』のステージへようこそ」  隣のデパートの屋上では、キャラクターショーが行なわれている最中だった。ステージの上から会場にいる小さなお友達にお姉さんが呼び掛けている。 「ジョウイ、ジョウイ」  そこへいきなり赤尽くめの手下たちが乱入してきた。 「大変、キンノーハがやってきたわ」とお姉さんが叫ぶ。登場したザコキャラはステージ上だけでなく客席にまで降りて客席の間を歩きまわり、何かを探している。そして何人かの小さいお友達が手下たちに抱きかかえられてステージにあげられる。  そこにいきなりウォルケンがステージ袖から押し入れられる。面白そうと思ってやってきたのはいいが、突然の展開に何をしていいのか分からず、呆然とするウォルケン。 「……あ、キンノーハのコゴローダが現れたわ!」  お姉さんがあわててフォーローを入れるが、進行が分からないウォルケンは棒立ちのままだ。 『ぐはははは、お前たち。新鮮組の仲間だろう? 俺が拷問して調べてやる!』  不意に声がスピーカーから聞こえた。これが本来のコゴローダの声らしい。が、それに気付かず棒立ちのままのウォルケン。会場内に微妙な空気が流れ始める。 「きゃあ、みんな! お姉さんは大丈夫だから、新鮮組の秘密は喋っちゃだめよー!」  急にお姉さんがウォルケンの腕を自分に巻き付けて捕われた格好になる。 「…ちょっと! 打ち合わせ通りやってくれないと困るじゃないの…」  ヘッドマイクを押さえて声が聞こえないようにしながら、お姉さんが小声で囁く。ようやく事態を飲み込めたウォルケンは首を縦に振ると、まずはお姉さんの首根っこを掴むとポイッとステージの外に投げ捨てた。お姉さんの悲鳴が聞こえる。 『お姉さんよりもお前たちに聞いた方が良さそうだな』  お姉さんの方を見て呆然としている小さなお友達のそばにウォルケンが近付く。そういえばさっき何やら確認とか言って「進行表」とかいうやつを渡されたのを思い出した。その通りにやってみればいいのか? 『お前の名前は何だ?』  ウォルケンがしゃがんで幼稚園くらいの子に顔を近付ける。着ぐるみではない本物の迫力にその子が震えているのが分かる。小さな声で名前を言うのが聞こえる。 『聞こえないなあ? 大きな声で言わないとこの場で天誅を加えるぞ』  その子が精一杯の声で名前を叫ぶ。 『では聞くぞ。新鮮組はどこにいるんだ?』  当然、その子が言う訳はない。 『言わないと天誅だぞ』  その台詞の後で、ウォルケンがその子を抱きかかえた。瞬間姿が消えたように見えた。次の瞬間に大泣きしている子とウォルケンの姿があった。次の子もそして次の子も同じ状態になり会場がざわめきはじめる。  それもそのはずで、実は一瞬の間に子どもを抱きかかえたウォルケンが上空高くジャンプし、そのままステージ上に降りてきていたのだ。いきなり空高く舞い上がりフリーフォールされたら大の大人でも泣いてしまうだろう。 「おいおい、子どもを泣かすなよ」  会場が騒然とする。ちょうどその時、屋上に上がって来た5人組の集団がいた。 「へー、最近のキャラクターショーは結構過激なんだねえ」  まっ先に上がって来たのは則子だった。屋上でキャラクターショーがあるのを掲示板で見て買い物に来ていた皆を誘ったのだ。美香が「あんたヒーローショーが好きなんじゃないの?」と呆れながらついて来る。かぐやは初めて見るのでワクワクしている。まひるも嫌いじゃない。雪奈は、普通といった感じか。  彼女らが到着して会場の一番端っこで見ている頃にはウォルケンの動きがますます過激になっていた。もうスピーカーの台詞も無視して、ザコキャラをぶっとばしたり、客席のハンバーガーを奪ったりしてやりたい放題だ。  まひるとかぐやは暴れている怪人の姿を目にしてギョットした。確かにアレに良く似ている。 「ねえ、かぐや。暴れてるあの怪人って?」  まひるとかぐやが顔を見合わせる。 「やっぱり、まひるもそう思った?」 「あれってまずいよね」「うん」  二人がそう思っていると『闇の気配を感じるレジ』『近くに強い力が居ないプル?』とバッグの中からオレンジたちの声が聞こえる。これでまひるとかぐやの嫌な予感は確定した。  二人がキュアパストを取り出そうとした時だった。派手な音楽が鳴り、舞台袖から新たな登場人物があらわれる。 『コゴローダ、お待ちなさい!』 『あんたの好きにはさせないわよ』  進行はメチャメチャになっていたが、投入されたのはヒロインだった。和服を基調にした美少女二人組がそれぞれ名乗りをあげる。 『新しい夜明けは私たちが作る、キュアイサミー!』 『悪と思えば全てを叩き斬る、キュアニシキー!』 『『黒船なんかに負けないわ、幕末! プリキュア新鮮組!!』』  じゃーん、と決めポーズの音楽が鳴る。 「はあ、なんだぁ? お前たちがプリキュアだって、こいつは面白い」  客席の後ろにある屋台に乱入していたウォルケンがアメリカンドッグを食べながら振り返る。 「こいつがお前らの相手だ」  隣の焼そばの屋台に向かってウォルケンが仮面を投げる。熱々の焼そばがみるみる怪物に変わり闇の空間が周囲を支配した。 「クライナー」  眠るように倒れる人々。当然、ステージ上の新鮮組も眠り込んでしまう。 「何でえ、偽もんは駄目だな」  呆れたように言うウォルケンが周囲を見回すと、眠らずに立っているまひるとかぐやと目があう。 「お前らは……見つけたぞ、プリキュア!」  闇の空間が本格的に広がり、異空間への扉が開く。そこは、熱々の鉄板の世界だ。 「クライナー」  クライナーの焦げる良い匂いがあふれる。 「あー、焼そば食べたいなー」  思わずヨダレをたらすまひる。 「その前に私たちが鉄板焼きになっちゃうわよ」  かぐやが足元から来る熱さに思わず顔をしかめる。 「デュアル・クロッシング・デ―――イズ!」  二人が同時に変身する。決めポーズを取ろうと鉄板に降り立ったとたん、鉄板の上の油で滑って転ぶ。 「「痛っ、熱っ」」  あわてて立ち上がる。 「ほらほら、もたもたしてるとプリキュア焼きができてしまうぜ」  ウォルケンがホットドックを齧りながらニヤついている。そして巨大化したガスコンロのコックを開く。強くなる火勢に音を立てて鉄板の油が跳ねる。  焼そばクライナーが攻撃してきた。飛び交う揚げ玉ボンバーにソースビーム。鉄板の上では踏ん張りが効かずに苦戦する二人。ソースや紅ショウガを浴びてドロドロになっている。 「きゃあ」  サンディが焼そばの麺に足を取られて空中に放り投げられる。続いてナイトも。二人が空中高く舞い上がり、そのまま鉄板の上に落ちる。 「うっ」  熱さを予想して顔をしかめた二人だが、直後に「?」という表情になる。同じ鉄板だが、ここは思ったよりも熱くないのだ。 「火の回りにムラがあるのね。これはいけるわ、サンディ」  ナイトが何か思いついたようだった。ナイトが鉄板の外側に近い方を走るよう提案する。実際に走ってみると、それほど熱くなく油も引かれていないので滑らない。そのままクライナーの反対側に回り込む。 「これでも食らいなさい」  二人が置かれていた巨大コテ一緒に持ち上げそれをクライナーに向かって投げ付ける。コテはクライナーにぶつかり、その勢いでクライナーが鉄板の中央に倒れ込む。ウォルケンが熱々に熱していたため、たちまち焼そばクライナーが焦げはじめる。キャベツが黒くなり、麺がグズグズになっていく。麺が鉄板に焦げ付いたのかクライナーが起きあがれない。 「プリキュアクロスライジング」  二人の必殺技が発射される。光に包まれ消えていくクライナー。 「まだ、俺は焼きが回ってなんかいないぞー」  同時にウォルケンも捨て台詞を残して消えていった。闇の空間が消えると、大混乱だったステージが元通りになっている。 「みんなー、こんにちわー」「こんにちわー」 「声が小さいよ。こんにちわー」「こんにちわー」  何かお姉さんは納得していない様子だったが、再びキャラクターショーが始まる。今度は、着ぐるみの怪人が現われ、正常に始まったようだ。 『まだ闇の気配がするレジ』  鞄の中からオレンジの声が聞こえる。まひるとかぐやは顔を見合わせた。さっきウォルケンは追い返したはずなのに、まだ他にもいるというのだろうか。  まひるとかぐやが友人たちから離れようとした、その時に則子が振り返る。 「あれ、まひるに月宮さん、どこか行くの?」 「えーと、ちょっと冷えちゃって…あはっ」  とっさにお腹を押さえるまひる。 「おばあさまに頼まれたものがあるのを思い出しちゃって。忘れないうちに買ってくるわ」とかぐや。 「ふーん、じゃあ待ってるわ」 「もしショーが終わるまでに帰って来なかったら、先に帰っちゃっていいからね」  まひるが片手を振りながら、あわててエレベーターホールへ駆け込む。かぐやも彼女に続く。 「わんちゃんは追い返したでしょ? まだ他にもいるの?」  まひるが訪ねると鞄のジッパーが開いて、オレンジが顔を出す。 「ここから近い所レジ」  二人は取りあえず、その方向に行ってみることにした。  ウォルケンが暴れている頃、駅前のゲーム店でクバートは考え事をしていた。次に入る予定の新台ではないが、結構人気のゲーム台の前に座る。 「やはりじっくりと戦略を練るには集中できる環境でないとな……おっ!」  考え事をまとめようと思った矢先に派手な音楽とビカビカと光るアクションでリーチが掛かる。 「これは、冒険リーチだ。日頃の行いの良さが現われたな」  が、リーチが外れ、再び数字が回る。 「!」  せっかくのリーチが外れてしまい落ち込むクバート。考え事を巡らす良いチャンスだと思い直して、再びプリキュア攻略のための手段を考えはじめる。その直後に再びリーチが掛かる。 「必殺技リーチだ、来なさい、来なさい」  さっきまで考えていたことも忘れて、一心不乱にボタンを連打する。画面の中のキャラクターから必殺技が発射され、敵に当れば確定だが、もう少しの所でエネルギー切れになる。 「ーーーーーーっん」  思わず台を叩きそうになるが、そこは紳士たるものぐっと押さえる。再び考え事を始めるとリーチが掛かり、その時に限って絶対確定のリーチですら外れる始末だった。その後は空しく数字が回っている。  それがもうかれこれ一時間以上は続いただろうか、別の台に移っても結果は同じで、ついにクバートはゲーム台のガラスを叩きはじめた。店員が飛んで来る。 「お客さま、ゲーム台を叩くのはご遠慮ください」 「なにおう、ふざけんてんのか、この店の台はリーチが当たりゃしないじゃないか」  クバートの怒りは収まらない。 「こんな店、破壊してやる!」  闇の仮面を取り出すとゲーム台に被せる。途端に、ゲーム台クライナーが誕生し、闇の空間が広がった。店内の人たちが眠り込む。 「クライナーよ、店を壊してしまえ」  派手な電飾を光らせたクライナーが店内で暴れまくりめちゃくちゃに破壊する。 「ここだわ」  その現場にキュアパストに導かれたまひるとかぐやが到着する。再び変身をしてキュアサンディとキュアナイトになる。 「プリキュア、ここで会ったが勝負のしどころ。シャイミーたちを今日こそ頂くぜ」  闇の空間が完全に展開され、異空間が広がる。ゲーム台の中の世界だった。巨大な金属玉がゴロゴロと転がって来る。 「ははは、それフィーバーだ、フィーバー」  クバートの高笑いが聞こえる。魚や女の子が襲って来たり、大工や花火師までもが襲って来る。それを交わし、クライナーの中央に『スタート』と書かれた部分を二人が同時に蹴飛ばした。途端に大量の玉が降り注ぎクライナーに直撃する。玉の山に埋まって動けないクライナー。 「今よ」「うん」  二人が必殺技を放ち、クライナーが消滅する。 「今はツキがなかっただけだ。今度は一粒の真珠が万倍の夢を叶えるからな!」  クバートがそう捨て台詞を残して消えた。闇の空間が消え、賑やかな店内が戻る。中学生がゲーム店内にいるとちょっと不味いのであわてて外に出る。賑やかな音楽が自動ドアが閉るのと同時に消えた。 「かぐや、まだ闇の気配がするプル」  今度はパープルが顔をだす。 「えー、まだいるのー」  まひるが思わず天を見上げた。かぐやもうんざりした顔をしたが、仕方がない。キュアパストを掲げると、確かに一定の方向を示している。 「いくわよ、まひる」 「はいはい」  二人は再びその方向へ急いだ。  大型電器店の最上階にあるイベントホールで。ネットアイドルの撮影&握手会が行なわれていた。それぞれ人気のネットアイドル数人を選んでファンとの交流を行なう会だ。  その会にスゥがいた。満面の笑みを浮かべながら参加者と握手をしている。 「やっぱり、気分転換はたいせつよねえ。ちやほやされて気持良くなれば良いアイデアも思いつくわよね」  撮影タイムになるとそれぞれのお気に入りのネットアイドルの前に行列ができる。スゥの場所には……。 「何よ、あんたたち。この美しい私を撮影しないと後悔するわよ」  ステージ上で叫ぶスゥ。その剣幕に恐れをなしたのか、並んでいたカメラマンすら徐々に減っていく。 「あんたたち、私を馬鹿にすると後悔するわよ」  闇の仮面を取り出すと業務用のストロボに投げ付ける。途端にクライナー化する業務用のストロボ。 「クライナー」  その時、バタバタと駆け付ける音が聞こえた。 「お、いたいた」 「もう、いい加減になさい」  まひるとかぐやが三たび変身して、即必殺技を放つ。 「ちょっと若いと思ってると大間違いよー!」  捨て台詞を残してスゥとクライナーが消える。再び何事もなかったかのように撮影会が始まったが、まひるとかぐやは係員に見つかって会場からつまみ出されてしまった。 「もう闇の気配は完璧に消えたレジ」  オレンジの言葉にほっとする二人。 「もう則子たち帰っちゃったかなあ」 「一応、戻ってみる?」  まひるとかぐやは再びデパートに向かって走り始めた。

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