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SS第11話「プリキュアはお正月も忙しいよ」


 新春がやってきた元旦の朝。まひるたちは、そろって駅前に集合していた。
 早朝ではないが、やはり元旦だけあって駅前は閑散としている。かぐやは振袖姿で集合場所に一足早く来ていた。
「おはよー、そして明けましておめでとうございます」
 まひるが駆け足でやってくる。
「明けましておめでとうございます。今年もよろしくね」
 かぐやが挨拶する。まひるはかぐやの振袖を興味深げに眺めている。
「かぐや、振袖すっごく似合ってる」
「着付けは自分でやったけど、髪はおばあさまに結ってもらったの」
「へー」
 かぐやの周りをくるくると回るまひる。普段着が和服なだけあって、かぐやの着物は完璧だ。
「あけおめーことよろー!」「おめでとー」
 則子と美香もやってきた。お互いに新年の挨拶を改めてやりなおす。
「……ところで、委員長は? 一緒じゃなかったの?」
 まひるが雪奈の居ない事に気づく。
「携帯に電話が着てさー、兄貴が急に非番になったんでそっちに行くってさ」と則子。
「もー徹底的にブラコンだよね」と美香。
 委員長をネタにしながら四人で神社へ初詣に向かうことにする。
「ねえ、どこの神社に行くの。火川神社とか?」
「あそこ有名だもんね、霊感巫女少女による占いとか」
 まひるの言葉に則子が乗っかる。
「おばあさまが、その年の最初の挨拶は地域の神様にするって言ってたわ」とかぐや。
「あー、それもそうだね」と美香がうなづく。
「えー、霊感巫女少女ー!」と未練げな則子。
「かぐやは引っ越してきたばっかりだから、この地域の神様に挨拶しておいたほうがいいかもね」とまひる。
「そうそう、電車賃も掛からないし」「えー霊感ヤマカン第六感ーん」
 結局、光ヶ丘神社に初詣に出かけることに決定した。まひるとかぐやが先頭になって歩き、美香が則子をズルズルと引っ張っていく。

 光ヶ丘神社は、この街ができる前からあったとされる鎮守で商店街の少し奥に置かれている。規模はそれほど大きくないし、有名ではないが地元の神社として広く親しまれていた。神社に近づくにすれて参拝客が多くなり出店もあってかなりにぎやかになっている。
「結構にぎやかだね」「初めて来たわ」
 まひるとかぐやが周囲を見回している。
「おお、りんご飴! イカ焼き!」「やっぱ甘酒でしょう、そこは」
 則子と美香は出店の雰囲気に大興奮だ。四人ともはぐれないようにしっかり固まって参道を進んでいた。

「くー、妙な光が眩しくてやってられねーな」
 神社の本殿の屋根の上。下からは見えない死角の部分で、何者かがしかめっ面をしながら言葉を吐いている。
「人間って可笑しいねえ。新年とか言って浮かれちゃってさ」
「そー言うお前も振袖とか着ちゃってるじゃないか」
「いーんだよ、あたしは」
 影を帯びた何者かの姿は三人だった。それはウォルケンとスゥとクバートたちだ。プリキュア打倒の作戦を練ろうと来た場所がちょうどこの場所だったのだ。
「とにかくシャイミーをどう奪うかだな」
 ウォルケンが大量の紙袋の一つに手を突っ込みハンバーガーを口に入れる。
「ぐぁあ! スゥ、これチキンじゃねーか。俺はダブルを頼んだはずだぞ」
「クーポンで安かったんだよ。全部じゃないから我慢をおし」
 スゥにピシャリと言われ不本意ながら袋の中身をガツガツと食べるウォルケン。
「そういえば……今日は作戦会議に付き合うなんて珍しいね、クバート」
「初日は休みだからな。明日は新台大解放だ」
「あっそ」
 別な意味で勝利を確信するクバートの笑顔にスゥは呆れ顔だ。
「いずれにせよ、早いところシャイミーを全て奪ってエクリプス様に献上しないと、俺たちマジでやばいぜ」
「そうだわね」「そうだな」
 つらい立場を思い出して顔を見合わせる三人だった。

 混雑している参道をのろのろと進み、ようやく本殿にお参りをすることができたまひるたち。それぞれの願いを神様に一生懸命に祈る。
「ねえねえ、何をお願いした」と則子が興味津々で聞いてくる。
「お願い事はあんまり人に言わないほうが……」とかぐや。
「ところで、まひる。この神社、恋愛事は駄目らしいよ」と不意に美香に言われて「えぇぇっ!」と驚きの声をまひるは上げてしまう。
「あーやっぱり、恋愛関係?」 まひるの反応を目ざとく見つける則子。
「違う、違うってば! 美香が変なことを言うから……」
「神頼みの時点で駄目だよ。今年こそ当たって砕けちゃえ」
「砕けちゃうんだ……」
 則子の言葉に冷静に対応するかぐや。まひるが本気で怒らないうちに四人でおみくじを引きに社務所に行くことにする。
 おみくじの結果は、まひるが「吉」。かぐやと美香が「大吉」。そして則子は「大凶」……。
「がーん、何でじゃーっ!!」 頭を抱えて身もだえする則子。
「でも大凶って大吉よりラッキーじゃないの? 別の意味で」とかぐやが感心したように言う。
「うう…『待ち人:近くにいるが疎い』って何」
「まんまだね、その言葉」 まひるのおみくじを覗き込んだ美香が納得した表情でつぶやく。
「やっぱりさぁ、当たって砕けちゃいなよ」
「うるさい!」
 則子の攻撃にまひる100のダメージだった。
「ねえ、あれって鶴野先輩じゃない?」
 かぐやが社務所の巫女さんの方を見ながら指を差す。確かに鶴野先輩にそっくりな人がいる。忙しそうにお札や破魔矢を買い求めている人たちに対応している。悪いと思ったが近づいてみると本当に鶴野先輩だった。
「鶴野先輩、明けましておめでとうございます」
 四人が挨拶をすると鶴野先輩が顔を向けてくれた。普段、袴姿は部活動で見慣れているが、白と赤のシンプルな装束がまた別の印象を感じさせてくれる。
「あらぁ、月宮さんたち……あけましておめでとうございます」
 鶴野先輩が挨拶をすると、後ろからもう一人知った顔が現れる。
「あら、朝日奈さんたちじゃない。初詣?」
 その姿は桜園先輩だった。巫女衣装が凛とした姿で、こちらも似合っている。四人は、桜園先輩とも挨拶を交わす。
「どうしたんですか、巫女さんとか?」
「この神社は親戚がやっていて、お手伝いを頼まれたのよー」
 まひるの質問に鶴野先輩が答える。桜園先輩は、そのお手伝いに巻き込まれたらしい。あまり長話をしていると迷惑になるので、四人とも少し話してから社務所を後にした。
「これからどうしようか?」
「商店街の初売りとかのぞいて行く?」
「まずは屋台を全部制覇とか」
「そんなにお年玉もらったの?」
 初詣が終わったので、これからどうするのかを帰り道で相談し始めた。

「あー、いい考え出ねーな。くそっ」
 ウォルケンが立ち上がって伸びをする。その時だった、視界の中のまひるとかぐやの姿に気づく。
「ちょうど良い所に獲物がいたぜ。飛んで火に入る夏の何とやらだ」
「今は冬よ、ウォルケン」「うるせい! お前らはそこで見てな」
 仮面を投げると縁起物の熊手に掛かる。とたんに謎空間が発生して、まひるたちの周囲の人が眠り込んでしまう。
「怪しい気配がするレジ!」
 オレンジたちが屋台の間から飛び出してくる。手には焼トウモロコシやたこ焼きやらを持っている。
「オレンジ……あんたら楽しんでいたみたいね」
「それどころじゃないピピ」
 まひるの突っ込みにも負けないピンクたち。気を取り直してキュアパストで謎空間を探ると、社務所の方に空間が発生しているのがわかった。
「まひる、変身よ」「うん」
 キュアパストを構えてプリキュアに変身する。謎空間が拡大して、周囲を包み込んでいく。空間の中ではお多福や小判や招き猫が飛び回り、かなりシュールな世界になっていた。そして中心には熊手クライナーが立っている。
「クライナー!」
 熊手クライナーが自分の体についている小判や米俵を投げつけてくる。それらを華麗に避けながら、ダブルキックを決める。よろけるクライナー。
「あんまり強くなさそうね、ナイト」「油断は禁物よ、サンディ」
 熊手クライナーは一本足で立っているせいか、サンディの足払いが華麗に決まる。倒れた所を上からナイトの攻撃だ。
「よし、必殺技で決めるわよ」
 二人が必殺技を決めようとした時だった。そこにウォルケンが現れる。
「金我信念とかクバートが言ってたが、訳が分からんぜ。そうだ、プリキュア。これが俺様からのお年玉だ」
 ウォルケンが黒い波動をクライナーに注入する。クライナーの形が変わり、パワーアップされた感じになった。
「クライナー新春初夢バージョンだぜ」
 巨大な山を中心に何やら野菜と鳥が配置されている。
「クライナー!」
 野菜と鳥が飛んできた。それは茄子と鷹だ。茄子は地面に落ちると爆発し、鷹がブーメランの様に二人の間を飛び回り二人を襲う。どちらかを避けようとすれば片方の攻撃を受けてしまい、キリキリ舞いをしてしまう。
「もう、初夢って元日の夜に見る夢なのに……」
 ナイトが攻撃を避けながら何とかクライナーに近づこうと苦戦している。
「危ない!」
 サンディがナイトの背後に飛んできた茄子型爆弾を蹴り飛ばす。が、同時に爆発して吹き飛ばされる。
「サンディ!」
 振り返ったナイトに隙ができ、鷹形の小さなクライナーに襲われる。ボロボロになって倒れる二人。
「プリキュアもざまねえな。シャイミーを渡して楽になりな」
 ニヤニヤとするウォルケン。
「絶対に渡さない」とサンディ。
「そして、絶対に負けないわ」とナイト。
 その時だった。謎空間が不思議な力で揺らぎ始める。天の上の方から光が差し、クライナーとウォルケンを包み込む。光に包まれて苦しみだす、クライナーとウォルケン。
「!」
 二人の頭上に破魔矢が現れる。それを手にした二人は急速に力を取り戻した。そして必殺技を。
「プリキュアクロスライジングデーイズ!!」
 二人の必殺技は不思議な破魔矢を包み込みクライナーに向けて発射される。それを察したウォルケンは苦しみながらも力を振り絞って離脱する。そして技がクライナーを突き破り、シャイミーが残された。

 謎空間が消え、周囲が賑やかな境内の姿に戻った。
「あれって何だったんだろうね、かぐや?」
「さあ、神様が手を貸してくれたのかも知れないわ」
 初詣客に賑わう本殿の方を見ながら、二人はそっと心の中でお礼を言った。