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ある洞窟の中、鍾乳石が下がる天井とは不釣合いな近代的なラボラトリー
その者は飼葉も祝福も両親もなく、ただ、待ち望まれて生まれ出た
影 「ふふふふふ ついに ついに生まれたか 忠実なる我等がしもべよ…
   これでようやくワシの悲願が満たされる」
影2「約束を忘れないで下さいよ 子供の一人は残して僕に引き渡して下さい。僕とて出切れば四人とも……」
影 「分かっておる。それは互いの妥協点としてしょうがあるまい。ワシはこの手で全員の息の根を止めたかったが…
   お主が妖怪の呪法を遺伝子組み換えとやらでさらに強力な物にしたのは正直感嘆したぞ  
   さあ、行くぞ。ついて来い、水蛭子に淡島!コラ、お前もだ!!」
影3「ふぁい」 てこてこてこ・ドタッ

 ***

松岡「野沢に戸田。今日はいい天気だよ。大きな事件もなさそうだしどこか行ってきたら?」
野沢「? うん」
戸田「遊びには行くつもりだったけど。あ、あと今日夕方から夢子ちゃんの家にお呼ばれしてるんだ。夕飯いらないから。」
高山「……えっ?まあいいか、早めにお暇してくるんだぞ」
父 「さあさあ、行っといで」
戸・野「?? はーい」

ちゃぶ台に顔をつき合わせて座る二人の子供に一つの目玉
父 「行ったな」
高山「適当に暴れて、疲れて帰ってくればいいですけど…」
松岡「他の日はともかく、今日は夜に寝ていてほしいからね」
父 「もう“ぷれぜんと”は用意して隠してあるんじゃろう?今からそんなに気を揉むでないよ
   お前達も二人の寝床に“ぷれぜんと”を置いたら早くに寝なさい。野沢に身長を抜かれても知らんぞ
  (まあ、この気ぃ遣いっ子達にも寝てもらわんと。わしから用意した物もあることじゃし)」
高山「えええ 恐いこと言わないで下さいよ。ああ、今日は僕が買出しだったっけ
   そろそろ行ってきます。えーと、一人分減ったんだよな…」
松岡「行ってらっしゃい。あぁー、最近「いい子」が二人もいて部屋もきれいなことだし……寝よ」
父 「やれやれ…お休み」
松岡「お休みなさい」


その頃、鬼太郎の家に近づくのは………

野沢「へへっ、兄さん達ったら。僕達を何か驚かそうとしてるの分かってんだかんな
   猫ちゃんなら想像つくだろうか。ちょっと聞きに行ってみようか。 …ん、おや?」
川べりを歩いていた鬼太郎は、水面から顔を出して自分を見つめる少女に気付いた
野沢「何やってんだい。こんな冬の川で。妖怪じゃないけど、人間の子にしてはどうも変だな。君、誰?名前は?」
少女「あたし、あわしまだよ。ね、お兄ちゃん ちょっとこっちおいで」
野沢「君が出といでよ。僕今日あんまり服を汚して流されるのは嫌なんだ。兄さん達の企みを見破ってやるんだから」
淡島「ふん、簡単には近づかないってんだね。いいよ。そのくらいの距離なら…」

カーッと少女の口から吐き出される粘液! 鬼太郎、咄嗟に脇によける!!
タンのよう物は地面に触れるとジュッと音を立てて付近を焼き焦がした
野沢「何すんだい!お前新種の妖怪か何かだな?簡単にはやられないぞ。えーい!」
淡島「あんたを捕まえるのが神様の望みなんだ。大人しくしな!!」
戦いの火蓋が切って落とされた

 ***

カッ、カッ、と地面に軽い音が響く
戸田「てっ!そーれっ! よーし大分勘が戻って来たぞ。独楽も時々いじらないと手が鈍ってくるしな
   野沢の奴、今度こそ一勝取り返してやる!あいつ手遊びに関しちゃ一番強いんだから全く…」

その時、鬼太郎の視界の端を横切る影
戸田「あれはっ!こんな人界の近くに出てきて、また何か企んでるな。何度目だアイツら!
   よーしやっつけてやる。…まずは後を付けて居所を捜そう…よし」

朱の「くっふっふ、ついて来るついて来る。ほんと、ぬらりひょん様の言う通りだったなー
   て、ぎえええ!すごいコワイ顔してる!!は、早く逃げなきゃ…助けてー!」

 ***

街中を歩く鬼太郎
高山「クリスマスだし、たまには洋食もいいな。戸田もそれっぽいものご馳走になるんだろうな
   食後にケーキもいいな。甘い物はみんな好きだし。えー鶏肉と、紅茶もか。そういや味噌がきれそうだったっけ
   …………家計は厳しいなあ……」

ドコッ
高山「うわっ」 「きゃっ」
高山「ああーごめんよ。大丈夫かい?ボク。悪かったよ、不注意だった」
少年「大丈夫だよ。…あっ、ねえ、もしかして鬼太郎さんでしょ!すごいや、僕捜してたんだァ」
高山「えっ、ああ、そうだよ。捜してたって、どうしたの?何か困ってるのかい?」
少年「困って…そうそう。お願いがあるんだよ!ね、僕と一緒に来て!」
鬼太郎の手を引いて裏通りに走り出す
高山「わっわっ、ちょ、まず話を聞かせておくれよ。ねえ、落ち着いて!」
少年「ごめんね鬼太郎さん。僕ヒルコって言うんだ。どうしたのかって…」

カーッ! ビシャッ
高山「う、うわああああああ!!!!!」
水蛭子「お前を捕まえて、僕らの神様、ぬらりひょん様と山田様に捧げたいのさ!」

松岡「さてと、父さん、お茶碗を洗ってきますね。」
親父「うむ。ここの部分の茶渋が落ちんでのう、悪いがここをしっかりこすってくれんか。」
松岡「はい、わかりました。ここですね。」

松岡「骨の~先が~あまりにも~白く~。」
千葉「おっとここでジャスラック様が登場だぜ、早速徴収をだな。」
松岡「まだやってるのか、そのバイト。」
千葉「あたぼうよう、なにしろおぜぜがいいからな。」
ねこ娘「鬼太郎……。」
松岡「あれ、ねこ娘、どうしたんだい?」
ねこ娘「これ、プレゼント。暖かいうちに食べてね……。」
千葉「うひょー!これ、あれだぜ、彰晃なんとかってやつだぜ!」
松岡「ありがとうねこ娘。父さん達も喜ぶよ。」
ねこ娘「……それ、あなただけの分しか、作れなかったの……。だから……。」
松岡「そうなのかい?」
ねこ娘「……鬼太郎、今、食べて……。」
ねこ娘はじいっと、松岡の顔を見つめている。
千葉「なんだなんだ?鬼太郎が食べないんだったら、俺が、いっただきま~。」
ねこ娘「お前は食わなくていい!!」
千葉「!!!!!おい、鬼太郎、なんかおかしいぜ。ねこ娘がお前なんて言うか?」
松岡「お前だからじゃないか?まあ、一つしかないんだったら、……。」
松岡はじっとチョコレートケーキを見た後、まくまくと食べた。
酒が少し強いが、よくあるチョコレートの味がした。
千葉「あーあ、俺とお前の仲じゃないか。俺にもひとくちだな。」
松岡「おいしかったよ、ね……あれ?」
ねこ娘はもういない。
千葉「こう、お前みたいにうまいうまい言うのもいいけどな、ちょっとしたアドバイスを含めることによって、
   ってきいてんのか鬼太郎!」
松岡「どうしたんだろう、ねこ……うっ!!!」
突然、咽喉に手を当てると、松岡は地面に膝をついた。
千葉「お、おい、どうした?まさかうますぎて腹でも下したのか?」
松岡「あ、ぐぐぅ、う、う、うわ、うううううううううううううううううううううううううう!!!!!!!!」
顔面は蒼白。瞳孔を瞼に隠し白目をむいた松岡の額からじわじわとねちっこい汗が浮ぶ。
食べたものを吐き出したいのか、開けっ放しの口からはだらだらと涎が流れた。
皮膚に食い込んだ指の周りから、ぷちぷちと小さな血が落ちてくる。
千葉「鬼太郎!おい、しっかりしろ、鬼太郎!!!!」
ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃっ……

カラスは、誰かが死ぬ時に鳴くという。
ふいに頭に浮んだ言葉を振り払うと、ネズミ男はとりあえず、ゲゲゲハウスに松岡を運ぶ事にした。

猫娘「クリスマスって大変なのねぇ。樹を飾って、鳥の丸焼きを作って、
   ケーキも作って……。」
三期ネコ「それにね、プレゼントも必要なのよ、あとクリスマスカードもね!」
猫娘「クリスマスカード?……ああ、ちょっと早い年賀状みたいなものね。」
夢子「ちょっと違うような気もするけれど……。」
富山「おーい。この荷物運んだら俺にもケーキくれるんだよなー。」
三期ネコ「そーよー。だからさっさと運んでねー。」
高木「兄貴よう、本当に今日のメシがくえるんだろうなー?」
富山「俺を信じろって!クリスマスだからゴミ箱から拾うのもいいけどなぁ、ここでポイントを稼いどけば……。」
ねこ娘「ほらほら、さぼんないでしっかり運びなさいね!」
高木「へいへい……。」
猫娘「こんにちは……あれ?」
千葉「あ、この、ねこ娘!!!」
ねこ娘「え?え?え?」
三期ネコ「ちょっと千葉!妹になんてことすんのよ!」
千葉「うるせぇすっこんでろ!ねこ娘、おめえは鬼太郎になんてことしたんだよ!!!」
ねこ娘「????なにをしたのよ?」
富山「おいおい千葉、どうしたんだよぉ。せっかくスポンサー様のご機嫌を荷物と一緒に担いでいるのによう。」
夢子「千葉さん、泣いてばかりじゃわからないわよ。鬼太郎さんがどうしたの?」
千葉「うぐうぐ……鬼太郎が、松岡が、ねこ娘のチョコレートケーキを喰って死んじまったんだよ~!!!!」
皆さん「な、なんだってー!!!!」
親父「ばかもん!紛らわしい事をいうな!まだ死んどらん!!」
皆さん「ですよねー。」
夜行さん「しかし危険な状態になったことは確かじゃぞ。」
三期ネコ「夜行さん……。」
ねこ娘「夜行さん、鬼太郎はどうしたの?」
夜行さん「うむ、ドクドクタマゴタケが入ったケーキを喰わされたらしい。
     これは即効性の毒でな、食べてすぐに動悸息切れ、強烈な痒み、腹痛頭痛生理痛、
     更に血管、筋肉の収縮など、多種多様な症状が現れ、素早く処置をしないと妖怪といえども死に至るという、
     恐ろしいものじゃ。」
高木「ひぇぇぇ、おっとろしいねぇ。」
千葉「そのおっとろしいもんがなぁ、ねこ娘、おめえがくれたチョコレートケーキに入ってたんだよ!」
ねこ娘「ちょ、ちょっとまって!私はさっきまで、クリスマスを祝うための料理を皆で作ってたのよ!」
三期ネコ娘「そうよ!一緒にマタタビ餅も作ってたのよ!抜け出すひまなんかあるもんですか!」
千葉「でもよぉ、確かにお前だったぜ。ちょっとへんな感じだったけれど。」
富山「あのなぁ、いくらお前が俺の弟でもこればっかりは弁護できねーぜ。俺も一緒にいたんだからなぁ。」
猫娘「まさかあんた、嘘をついているわけじゃ。」
千葉「うそじゃねぇよ!声もなにもかも、寸分違わなかったぜ!」
夜行さん「ネズミ男、お前さっき、ちょっとへんな感じだった、といったが……。」
千葉「ああ、なんか猫くさい感じがなかったし、それに俺のことをアンタ、じゃなくてお前って言ったんだ。
   それは気になったけど、声も姿も身長もおんなじだったから……。」
親父「うむ……?それはもしかすると、誰かが、ねこ娘に化けて毒入りケーキを食べさせた、ということではないか?」
ねこ娘「誰かが?」
親父「そうじゃ。姿かたちを完璧にしても、出てくる言葉や体臭、匂いはなかなか変えられんからな。」
夢子「じゃあ犯人はねこ娘さんじゃないのね。」
親父「そうじゃよ。松岡はねこ娘に一番気を許しておるからのう、それが命取りじゃったんじゃな。」
「にみゃぁ。」
猫娘「あら、どうしたのクロちゃん……ええ!!高山さんが!!」

水蛭子「キャラキャラキャラッ!!!捕まえたぞ!高山を捕まえたぞ!」
高山「くそ!力がでない!!」
水蛭子「そりゃそうさ。これは妖力を吸い取るからね。さあって、どうやってつれてこうかなぁ。」
「こら、何をしている。」
騒ぎ声を聞きつけたのか、警官と野次馬が二人に近づいていた。
「こんなとりもちをくっつけては窒息してしまうだろ!傷害致死、いや殺人罪だ!ちょっと交番まで来なさい!」
水蛭子「五月蝿い五月蝿い五月蝿い!」
水蛭子は音を立てて体を掻き毟る。引っかき傷どころか肉を抉るような音を立てて。
「き、君、ちょっとまちな。」
水蛭子「きゃらきゃらきゃらきゃらきゃらッ!!!」
笑い声と共に鮮血が吹き出た。赤い体液がビルや道路についた瞬間、爆発が起きた。
警官も野次馬も、ビルの中の人も一緒に吹き飛び千切れる。水蛭子はそれはそれは愉快そうに笑った。体を毟り取りながら。
水蛭子「もっともっと!ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃっ。」
五期ネコ「鬼太郎、大丈夫?!鬼太郎!」
高山「ね、ネコ娘……?!」
五期ネコ「バイト帰りに爆発があったから来てみたら……どうしたの?!」
高山「は、早く……にげ……。」
水蛭子「あぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぁっ」
ずるり、ととりもちっぽいものから引きずり出している最中に、水蛭子はゆっくりと振り返った。
五期ネコ「アンタ何者よ!なんてことをすんのよ!!」
猫顔そのものになったネコ娘は水蛭子に鋭く襲い掛かる!!
高山「だめだ……、あいつは……。」
水蛭子はぐわっと口を開けると大量のタンを吐き出した。
五期ネコ「きゃあ!気持ちわるいいい!!!」
怯んだその途端にタンに包まれる。
臭い、気持ち悪い、と喚いていたが、その声はだんだんと小さく、弱くなっていって……。
高山「く……くそ……。」
いまだふらふらの体は辛いが、ネコ娘を助けるためにはタンを取り除かなければならない。
ぐにゅりと柔らかくてねちょねちょしたそれは悪臭を放っていて、それだけで気持ち悪いのだが。
高山「ぐ……。」
触ったその部分から体力が吸い取られていく。
五期ネコ「きたろ……逃げて……。」
高山「でも……!!」
水蛭子が近づいてくる。高山は頬を叩くとネコ娘の前に立ち、下駄を手にはめて構えた。
水蛭子「無駄無駄無駄、もうふらふらじゃないか。倒しちゃったらぬらりひょん様の分がなくなっちゃうよ。
    抵抗しないで僕につかまってよ。」
高山「ぬらりひょん……さっきからぬらりひょんと……!」
一触即発、の中を裂いて救急車と消防車、パトカーのサイレンが飛んできた。それと。
三期ネコ「鬼太郎ー!!!」
猫娘「ネコちゃん!!大丈夫?!」
五期木綿「おーい、大丈夫でごわすかー?!」
……頼もしい仲間達の声も。水蛭子は面白そうといいたげな顔をして彼らを見た。
高山「またタンを吐き出すつもりだな!このぉ!!」
ゲタを投げる高山。熱風で暖められた空気を切ってゲタは水蛭子の顔に飛んでいく。
しかし体力も残り少ない高山の投げた渾身は、いとも簡単に避けられてしまった。
膝をついて、前のめりに高山は倒れた。もう一分の力も残っていない。
水蛭子はひょい、と肩に乗せると、また血を噴出させた。地面に滴った雫がまた爆発を起こす。
煙が晴れた時、二人の姿はどこにもなかった。

淡島「神様がね、鬼太郎は悪い奴だって!悪い奴は捕まえてお仕置きして死刑にしなきゃならないからね、
   あんたを捕まえるの!」
野沢「そんなひどいことを命令するやつは神様じゃないよ、独裁者っていうんだ。」
タンを避けつつ逃げ道を探す。出来るだけ早く、安全に、そして服が汚れない道を。
こういう時は冷静にならなければならないのだが、あのタンで焼けた地面を見るとどうしても焦ってしまう。
淡島「ちがうよ!神様は悪い奴を倒すためだったらどんなことでもするんだよ!
   悪い奴は悪い事をしてるんだもん、どんな目にあってもいいよね、ね!」
淡島はどうやら神様とやらの言葉を本気で信じているようだ。
宗教にはまってしまった奴を相手にするのが一番大変だ、と目玉親父は言っていた。
自分はそんな奴に一生縁がないと思っていたのに、ああそれなのに。
野沢はちらりと右の茂みを見た。ここからなら、ゲゲゲハウスまでちょっと走ればすぐにつく。
そこまで帰れば、兄が一緒に戦ってくれるはずだ。
逆立ちのまま横っ飛びで茂みに飛び込む。用心のためにカメレオンの術を使ってそこから這い出た。
淡島「だめだよー、見えてるよー。」
野沢「え?!どこ?どこが同化してないの?」
思わず敵に聞いてしまった野沢。だって自分の姿は自分では見えないもの。
淡島のかわいい笑い声が聞こえた。
淡島「全部。」
途端に飛んでくるタン。野沢はカメレオンの術を解除すると今度は土の中に逃げた。
淡島「あーん、待ってよう、つかまってよう。」
つかまってなんか、やるものか。
野沢はとにかく逃げた。うっかり変なところにでないよう、妖怪アンテナを立てて方角を確かめながら。
だんだんと、兄の妖気が強くなってくる。野沢は思い切って外に出た。

「みーっけた。」

べっちゃりとタンを吹き付けられる。
なんてことだ、敵の足元に出てしまうなんて。
皮膚が焼きつく感覚が足元へと走っていく。穴に戻ろうとするけれど、力が出ない。
淡島「穴から出て来れない?手ぇ、引っ張ってあげようか?」
冗談じゃない、と野沢は鼻を膨らませる。
そんなことをしたらこいつにつかまってしまう。
もがいて、この鳥もち地獄から逃げようとするけれど、もうもがく元気もなかった。
淡島の小さな手が自分の髪の毛を引っ張る。野沢はゲタを穴に落とした。そしてちゃんちゃんこも。

その頃

戸田「ったく、あいつどこまで行くんだよ。こんな山奥、何かあるのか?」
朱の盤を尾行中の戸田は、道無き深山を進んでいた。
もちろん辺りに人影は無く、何となく薄暗い、気味の悪い森だ。
戸田「うー、これ以上は夢子ちゃんの家に行くのに遅れるなあ。でもここまで来たからには後に引けないし。・・・そろそろあいつ締め上げた方が早いか?」

 * * *

朱の(ひいいい!!何かさっきよりすごい殺気がーー!?)
一方、こちらは心臓の動きが速くなっていた。(自然に足も早足に。)
朱の(あともう少しだから待ってくれー!・・・はっ、着いた!)
朱の盤の目に救いの扉が飛び込んできた。

 * * *

戸田「何だ?ここは」
目の前に現れたのは巨大な洞窟だった。
しかも、自然に出来たものではなく、ごく最近人工的につくられたもので、中からは妖気が漂ってくる。
朱の盤は慌てるようにその奥へと入っていった。
戸田「やっぱり何か企んでるな。よし、言い訳は考えとくとして、中にはいるか!」
戸田は、得体の知れぬ穴の深淵へと足を踏み込んだ。

洞窟の中は少し入り組んだ構造になっている。
戸田は、その中でも特に妖気の濃い方へと進む。
すると、広い研究室の様な空間に辿り着いた。
戸田「これは・・・。妖怪か!?」
そこにはビン詰めにされた小さな妖怪達が、所狭しと並べられていた。
どれも手のひらに乗るくらいの大きさで、ぶよぶよとした半透明の体をしている。
戸田「見たことないヤツらだけど。こんな物に閉じこめるなんて!」

『じゃあ、出してあげようか?』
戸田「っ!!」
『その途端に君に襲いかかってくるだろうけどね』
どこかに取り付けられたスピーカーから、男の声が聞こえてきた。
戸田「誰だ!その声はぬらりひょんじゃないな!?」
男『ああ、そうだ。僕は彼の企みに協力している者だよ。』
戸田「何だと・・・。そんなことは今すぐやめろ!こいつらをここから出せ!」
男『やめることは出来ないけど・・・。出してあげるのはいいとも。さあ、目を覚ましなさい。』
男が言うと、目を閉じていた小さな妖怪達は、皆起こされたかの様に目をカッと見開いた。

バリンッ!!

一斉にビンが割れ、妖怪達はヨタヨタと戸田の方へ寄ってくる。
戸田「よかったなお前達。もう安心」
戸田が一匹に触れようとしたとき、それは突然戸田の腹を目がけて飛びついてきた。
そして当たった瞬間、妖怪の頭部が潰れ、中から出てきたべったりした物体が戸田の体を焦がした。
戸田「うああっ!!ったあ・・・」
戸田は驚いて飛び退いたが、妖怪達はどんどん襲いかかってくる。
避けたり当たったりする度に、ぐちゃぐちゃと頭の潰れる音がする。
戸田「な、何なんだよ!まるで捨て身の攻撃して」
男『おや、捨て身ではないよ。よく見てごらん』
戸田「?」
足下を見ると、さっき当たり損ねて潰れたものが再生をし始めていた。
男『「彼」は“単体”では単純な攻撃しか出来ないが、“複数”になると色んな攻撃が出来るんだ。強力な酸
を出したり、妖力を吸い取ったりね。おまけに潰れただけなら再生も出来る』
戸田「彼?こいつらは、一つの、妖怪?」
男『そう、彼の名前は「幾重」君。仲良くしてあげてくれ。ああ、そうそう。ついでに言っておいてあげるけど、君のお兄さんや弟は幾重君の弟妹に捕まったらしい。後で会えるかもしれないね。死んでなければ』
どこか薄ら笑いを含んだ声。
見えない男を睨み付けながら、戸田は「彼」らに向かってオカリナを構えた。
戸田「ふん。絶対お前の居る所まで行ってやるからな!まとめてかかってきやがれ!」