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ぬらりひょんたちは最初、このように考えていた。
魔王子を焚きつけ、地獄から失敬した妖怪を操る笛を当たる。
鬼太郎への恨みを募らせた魔王子は、妖怪を操って彼らを倒そうとする。
心優しい仲間思いの鬼太郎は、操られているとはいえ親しい者達を倒す事など出来ないはず。
こうして鬼太郎は信頼している者たちに裏切られて死んでいくはずだ、とぬらりひょんは考えていた。

しかしこんな予想はあっけなく覆ってしまった。
「ふふふ、ついに鬼太郎たちを服従させたぞ!!」
腰に手をあて踏ん反り、高笑いをした。もちろん、命令して妖怪たちに拍手や歓声を上げさせることも忘れない。
「ようし、お前達、これから悪魔くんを倒しに行くぞ!」
「おー……。」
覇気のない掛け声が上がった。ぞろぞろと亡者のように、妖怪たちは悪魔くんのいる方向へと歩いていく。
(よぅく考えたら、悪魔くんがアニメ化しても、僕の活躍が増えても、結局倒されることには変わらない。
 だったらだ、こいつらを使って悪魔くんを倒して新たに『魔王子くん』というのを作ってもらえばいいのだ。
 それまで鬼太郎たちの処刑はお預けだ。命拾いしたな!)
こみ上げてくる笑みを押さえきれず、魔王子はまた一回、大きく笑った。

一方、こちらは森の端にあるヒノキの木の下にいる埋れ木と山田。
今日もどうすれば悪魔くんがリメイクされるのかというのを話し合うためにここにきていた。
一緒にゲゲゲスナックを食べながら最後の一人、松下の到着を待っている、が一向に彼の姿は見えなかった。
「遅いねぇ、松下君。」
「空とぶ箒が壊れたから徒歩で来るって言ってたけど……いつ頃につくんだろうね。」
「あと三十分してこなかったら僕達だけで会議をしよう。この前だした、悪魔によってゾンビに変えられた人間を魔法で倒していく
 デビル・ハザードなんか結構いい線いってたんだけどねぇ……。」
袋の中がいよいよ軽くなる。もう一つに手を伸ばした時、山田が声を上げた。
「ねぇ、あれ、なんだろう。」
細い道の向こうから、鬼太郎と奇怪な子供を先頭にした妖怪の群れがこちらへとやってきている。
持ちかけたお菓子の袋を置くと、座っていた切り株から下りた。
「やあ、松岡君、その……。」
「者共、あの二人を八つ裂きにしろ!」
西洋の格好をした子供が叫んだ途端、妖怪たちが襲ってきた!
「な、なにをするんだー!!!」
逃げようとするが足元をスネコスリやなんやら阻まれてなかなか動く事が出来ない。
一万年に一人生まれるという救世主も、肉体はただの人間そのものである。
うかうかしていると命が危うい。
「エロイムエッサイム!いでよ、十二使徒!!」
「こっちもだ、エロイムエッサイム!いでよメフィスト!」
呪文を唱えながら水晶玉を地面に投げつける。するととてつもない速さで魔方陣が描かれ、わずか数秒の間に十二使徒とメフィストを呼び出すことが出来た。
「わぁ!どうしたんだよぉ!親父まで呼ぶなんてただごとじゃないな!」
目を丸くしているメフィスト二世に、三期ネコ娘が飛びかかる。
「おおっと、魔力、至高の鰹節!!」
「ふにゃぁーん。」
「皆、詳しく説明している時間がない!とにかく鬼太郎さんたちを止めるんだ!ただし、傷つけないで!」
「了解!!」
「でも妖怪の数が多すぎるでヤンスよ。ここは潔く、こうさ。」
「弱いこと言ってるんじゃないの、こうもりネコ!」
鳥乙女は、おもいっきりこうもりネコのひげを引っ張った。
「あいつ、どこかで見たことが……。」
「埋れ木くん、早く家獣の中に!」
「早くだもん!」
山田と百目に引っ張られたせいで、埋れ木はもう少しで思い出せそうだったあの奇怪な奴の名前を頭から零してしまった。


「鬼太郎どん、鬼太郎どん、しっかりするでゴワスよ。」
「う、うぅ……。」
ところどころを踏み荒らされたゲゲゲハウス周辺。ただ一人残された戸田は、聞き覚えのある声のおかげでやっと気がつくことが出来た。
「ん……一反、木綿……。」
白く長い身体を確認した瞬間、傷ついた身体に鞭を打って戸田は飛び上がった。
なにしろ最後に一反木綿を見た時、彼らは魔王子とかいう奴の軍勢に加勢していたのだから。
「お前、まさか僕を!」
「ちがうちがう!わー、暴力反対でごわすー!!」

「そうか、君は九州に里帰りしていたのか……。」
戸田が、いつもの一反木綿だと気づいたのは下駄パンチを彼に六発ほど食らわした後だった。
傷だらけの身体を謝りながら縫い合わせつつ、互いの状況を話し合っていた。
「そうそう、おいどんたち兄弟は交代で里帰りするでごわす。んで、今回はおいどんで出番でごわした。」
四期木綿は吊り目を下げたまま、傷ついた尻尾を撫でていた。正気を失った鬼太郎兄弟は、本当に恐ろしい。
「ひんもどっ(帰る)途中であにょやおとっじょがなんか妙な行列にいたもんだから、声をかけようとしたけどおっとろしくてできなかったでごわすよ。」
「そうか……君の兄弟はあの魔王子とかいうやつに操られているらしいんだ。父さんまで操られてしまったし……一反木綿。」
「はい。」
縫い針を針山に刺すと、戸田は霊毛ちゃんちゃんこの裾を正した。一人だけでも、味方がいるというのは、本当に心強いものだ。
「とにかく、魔王子という奴の後を追うんだ。出来る事はすくないけど、兄さん達をとめなくちゃ。」
「わっかりもしたぁ!!」

「ううむ、まだつかんのか……。」
松下は、まだ道を歩いていた。空を飛べば三分でつく集合場所も、徒歩ではこんなにかかるものなのか、とイライラしながら考えていた。
「全く、ヤモリビトめ。魔法の箒をぶっこわすとなにごとか。ビンタ三発じゃ、まだちょっとおさまらな……ん?」
急に空が暗くなる。徒歩の上に、更に雨が降るのか、と珍しく不幸のようなものを嘆きながら空を見上げた。
が、そこにあったのは雲ではなかった。
「一反木綿……ちょうどいい。あいつに乗せてもらおう。」
届くかどうか、わからないが、とりあえず、大声を出してみた。

「ん、なんか、声がするなぁ。」
上空四百メートル付近を飛んでいる一反木綿の背中に、戸田は珍しく正座しながら乗っていた。
「おおーい、聞こえるかー。」
「おーい、ごっどまーん、き。」
「一反木綿、ふざけてる場合じゃないよ。ここらへんから声がするみたいなんだ。」
「聞こえるんだったらさっさと返事をしろー。」
耳をすまして聞いてみれば、それは松下の声だった。しかも、かなりレアな困っている響きの声。
「松下でごわすな。」
「急いでるけど、放っておけないや。一反木綿、下に下りてくれ。」
「わっかりもした。」
一度上に跳ね上がると、そのまま海にダイブするように一反木綿は急降下する。
「うわ、ちょっ。」
おかげで戸田は一度、振り落とされそうになった。おかげで地上の松下の前に姿を現した時、彼は一反木綿に四つんばいでしがみつくという、かなり恥ずかしい格好をしてしまっていた。
「おお、随分と大胆な姿をしているな。」
「そんな風に言わないでくれ、恥ずかしい。」
風圧で髪の毛が後ろに引っ張られ、おでこが全開になってしまったが、ぼさぼさの髪を整えればいつもの戸田に戻ることができた。
「それで何のようだい。今ちょっと急いでいるんだ。」
「僕も急いでいるんだ。大至急森の外れにあるヒノキの木の下に連れて行ってくれ。」
「ヒノキの木ぃ?!」
「そうだ。千年王国実現と共にリメイク計画もしなけりゃならんからな。」
「悪いけど僕たちは忙しいんだ。他を当たってくれ。」
「何を言っている。忙しい時間を割いて会議に出ているんだぞ。一人でもかけてしまってはいかんのだ。」
「僕達の方は家族と仲間の絆がかかっているんだ!」
「こっちだって代代続いてきた悪魔くんの名がかかっているんだぞ。」
「あの~。」
にらみ合う二人に挟まれた一反木綿は、かなり情けない声を出して会話に参加しようとする。
だが。
「なにぃ?!」
「なんのようだ!!」
と、メンチ鋭い二人に睨まれてしまい、思わずしり込みしてしまった。
何か言わないと、鬱憤晴らしにこっちがギタギタにされてしまいそうな感じだ。
「ま、松下どんのポッケからなんか音がしとるんでごわすが……。」
音?と松下はポケットに手を突っ込む。出てきたのはプルプル音を出して震える生き物の肉っぽいグリップだった。
「なんだいそれは。」
「メシア専用携帯電話。通称ホントウラインだ。もしもし?」
「ま、松下君!逃げてくれ!」
「その声は山田だな、逃げろとはどういうことだ?」
何かを叩く音と叫び声、とにかく雑音が多すぎてか細い山田の声は本当に聞き取りづらかった。
「き、鬼太郎君が、妖怪たちが、僕達を殺そうとして、うわー!!!」
「!!!!もしもし!もしもし!山田!聞こえるか!」
松下は声を張り上げて電話に話しかける。しかし応答はなく、完全な雑音しか流れてこなかった。