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妖怪誕生の巻

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reki-kita

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戸田「どうだ、気配はあるか?」
高山「……いや……。」
今日の妖怪退治組は、戸田と高山。依頼は兄弟のうち誰か一人が行う事が多いけれど、
たまに二人、三人、あるいは全員で立ち向かうこともある。
戸田「おかしいな……そろそろ依頼者が言っていた時間だろ。妖気が僅かでも、あるはずだけどなぁ。」
目玉「鼻のいい奴かもしれんのう。わしらの妖気に感づいておるのかもしれん。」
戸田「そのために、夜行さんから妖気遮断ビニールを借りてきたんですけどねぇ。」
高山「このシート、狭いからなぁ。」
ブルーシートに絡まって、道の脇に蹲っているその姿は、はっきりいって、ゴミである。
高山「もう一回、依頼を確認しましょう。」
戸田「うん。依頼主はこのビルの管理人だったな。」
目玉「うむ、わしが茶碗に入ってもちっとも驚かない肝の座った人じゃったな。」
高山(あれは失神してたんじゃ……。)
戸田「最近、夜の二時半になると、このビル脇の道、つまりここを何かが走っていくらしい。」
高山「目撃者も多数で、みんなが、あれは人間ではなかったと言っていた。」
目玉「このビルにいた人たちはそれを不気味がって、櫛の歯が抜けるように出て行く。」
戸田「それに困ったオーナーが、退治してくれ、と手紙を出した、これでいいですよね。」
目玉「そうじゃな。」
高山「でも二時半といえば、だいたい丑三つ時辺りじゃないですか。妖怪が丁度動く時間ですし……。」
目玉「しかしここは、昼間調べたとおり、妖怪の通り道ではなかったし、オーナーは最近そうなった、と
   言っとったじゃろ。」
戸田「どちらにしろ、そいつにあって見なけりゃ話しにならないよ。」
 問題の時間は刻一刻と、迫ってくる……。五月蝿いほどあった往来が途切れ始め、戸田が大きな欠伸をした、その時だった。
高山「何かが、……こっちにくる!」

それは蛇のように地面を這っていた。細かい節ができた身体をくねらせるたびに大きな音がした。
どたどた……ぱらぱら……どたどた……
戸田「あれは……。」
高山「古今!」
古今は一声鳴いてページを捲るが、一向にその動作は止まらなかった。
高山「どうしたんだ?」
ここん、と悲しげに鳴いてぱたん、と本が閉じられる。
目玉「載ってない妖怪、じゃと?!」
戸田「そんな妖怪、いるんですか?」
目玉「古今は風の噂にでてきた妖怪全てが載っている。そんな妖怪がいたら、おそらく、既に滅んだ妖怪か……。」
蛇のようなものはいよいよ近づいてくる。
戸田「くそ、こうなったら捕まえて正体見てやる!オカリナロープ!!」
ビニールを勢いよく剥いで、オカリナを蛇に向ける。伸びたロープはすぐにそいつの長い身体に巻きついた。
蛇は地面に波打ち、身体を叩きつけるが、ロープが解ける事はなかった。
高山「ずいぶんと弱い妖怪ですね……。」
目玉「そうじゃ……おや?」
目玉オヤジ、高山の手からひょい、と降りると、蛇に近づいて身体を調べ始めた。
戸田「駄目ですよ、父さん。こいつ、結構な力で引っ張ってますから!」
戸田の足が、悲鳴を上げながら動く。高山も後ろについて引っ張るが、一瞬止まっただけで、またじりじりと妖怪に近づき始めた。
目玉「そ、そうか!こやつは……!!」
戸田「どうしましたかとうさってうわ!!」
高山「戸田、力を緩めるな!」
戸田「悪い悪い。」
目玉「こやつの身体は、手紙で出来ておる!しかも、これはいわゆる、不幸の手紙、というやつじゃ!!」
戸田&高山「な、なんです、うわわわぁあぁ!!」
力が緩んだ拍子に、手紙の妖怪は一気に力を出して動いた。ロープはそれに耐え切れずに千切れ、二人は親亀の背中に小亀が乗ってよろしく、重なって倒れた。
目玉「おおっと!!」
すかさず目玉オヤジは手紙妖怪の尾を掴み、その一部を千切りとった。

目玉「あやつは人間が出した不幸の手紙についていた思念から生まれたものだったんじゃよ。」
家に帰り、いつもの通り茶碗風呂に浸かる目玉オヤジ。
戸田と高山は、父親が決死の思いで引きちぎった手紙妖怪の一部を眺めていた。
(これは不幸の手紙です。これを)
戸田「確かに、不幸の手紙ですね。」
高山「でも、なんで手紙の思念があんな形になったんです?」
目玉「ふむ……これはわしの予想なんじゃが。」
隣りに座っていた松岡が、新しいお湯を入れる。野沢がついでにお茶漬けの素をお茶目で入れようとして、頭を小突かれていた。
目玉「不幸の手紙、というものは、もう何年も、何十年も人間界にあったわけじゃ。
   手紙そのものは処分されても、その概念というか、とにかく、そういうものはみんなの頭にあるわけじゃ。」
野沢「めんどうくさいですね。」
目玉「ようするに、実物は見たこと無いけど、そういったものはあると知っているわけじゃ。
   それがつもり積もって、あの、蛇のようなものが生まれた。」
松岡「その蛇、もしかして、妖怪、ですか。」
目玉「いや、妖気がなかったから、妖怪ではない。しかし……。」
松岡から渡された小さな手拭で顔を拭くと、それを畳んで頭に乗せた。
目玉「もしかしたら……あと何年かしたら、妖怪になっておるかもしれんのお。
   わしらはめったに見れん、新しい妖怪が生まれるその瞬間に立ち会ったかもしれんのう。」
野沢「いいなぁ。兄さん達。」
戸田「いいもんか。こっちは必死だったんだぞ。おかげでゲタすりへっちゃって。」
高山「あとで夜行さんのところへ行きましょうか。」
家族の団欒を楽しんでいる中、古今の身体がぱらぱらと目にも留まらぬ速さで捲れていく。
そして動きが止まったそのページに載っていた妖怪は。



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