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???「よお」
男「う~ん・・・」
???「起きろ」
男「う・・・だ、誰だ?」
死神「死神だよ。魂を・・・」
男「!!!」

寝ていた私の枕元に現れたのは死神だった。ふざけた話だが、私は一瞬で全てを把握した。
私は今まで5人の尊い命を奪った人間なのだ。そう、人非人だ。動物的な判断で、私は逃げ出した。
アレは、本物だ。む、昔に見たんだ。

男「うわああああ!」

階段を飛ぶように駆け下りる。玄関は全開だった。
昔からイヤに人間臭い死神だとは思っていたが、まさか玄関から入ってくるとは。
靴もはかず、着替えもせず外に出る。草木も眠る丑三つ時。少しの街灯のほかは真っ暗だ。

男「た、助けてくれ!死神!死神だぁ!」

駅前まで走ってきた私は、走り続けながら僅かにたむろする人々に叫んだ。
みな、私の方を見もしない。当然だ。こんな深夜に死神だと着の身着のままの人間が言ってるのだ。
自分で言うのもなんだが、こんなのは気違いだろう。目を合わせないのももっともである。

目の前に交番があるが、私はそこに入れない。
人殺しだという負い目ではなく、ただ走るのを止めれば、死神に連れて行かれる。そうわかるからだ。

走りに走った私は、とある森の中に入った。
今まで気付かなかったが、雨が降っている。
肌には感じないが、幾重もの水溜り、そして歓喜の声をあげるけたたましい蛙の声で、それに気付いた。

この蛙の声。聞き覚えがある。ここはそう、ゲゲゲの森だ。

私が小学生だった頃、一度鬼太郎兄弟に妖怪退治を依頼をしたことがある。その記憶がまざまざと蘇った。
男「き、鬼太郎さん!鬼太郎さん!!」

なんと言っても死神に追われてるのだ。状況を打破するには、鬼太郎兄弟に頼るほかない。
男「鬼太郎さん助けて!鬼太郎さん!」

さっきからかなり走り続けているにもかかわらず、私は息も切らさず叫び続けた。
これは一種の火事場の馬鹿力なのだろうか。
疲れを感じず、息も切れない。ただ恐怖のみを感じる。

雨の森の中、一人の少年が立っている。

時代遅れの学童服にゲタ、そして一度見れば忘れないあのちゃんちゃんこ。
あれは確か・・・末っ子の野沢さんだ!

男「の、野沢さん!た、助けてください!」

走ってきた私に気付いたのか、少年はゆっくりこちらを振り向いた。

満面の笑顔で。

野沢「いたぞ高兄!回り込んで!」

後ろに気配を感じて振り返ると、そこにも同じいでたちの少年が。確か、高山さんだ。

私が走りながらも後ろを確認したその刹那、前に衝撃を感じる。野沢さんが私に飛びついたのだ。

野沢「捕まえたぞ!高兄!早くロープをも・・・」

突然の行為に驚いた私は、無我夢中で野沢さんをふり落とす。
なぜ私を捕まえるんだ!?死神に、死神に追われてるというのに。

野沢「うわっ!」

兄弟で一番小さい野沢さんは私に振り落とされ、豪快に水溜りに突っ込んだ。

高山「野沢!大丈夫か」

兄弟で一番優しかっ高山さんは野沢さんの介抱のため私を追うのをあきらめたようだ。
私は一連の行動をずっと走りながら行っていた。
普段運動などしない私がこれほど走れるのは、やはり火事場の馬鹿力のなせるわざか。

男「な、なんだんだ一体!?なぜ鬼太郎兄弟が私を捕まえる!?」

なおも走り続ける私の前に、また同じシルエット。あれは・・・戸田さんだ。

男「戸田さん!助けてくれ!死神に追われて、野沢さんと高山さんの様子もおかしいんだ!」

兄弟の中で一番武闘派な戸田さんなら、死神も、そしておかしくなったあの二人も止められる。そう思った。

戸田「見つけたぞ!もう観念しろ!」

そういうと戸田さんは例のオカリナを取り出した。そうだ、あれはムチになったなと懐かしむ暇も無く、
ヒュンヒュンと気味のいい音をたててムチは私に絡み付いた。

男「うわっ!?」

天と地がひっくり返り、その次には泥水のたまりの情景が目に飛び込む。
よくわからないが、私はムチを体に受け卒倒したようだ。

ズシン、と重みを感じた気がする。私の上に馬乗りになるように戸田さんが乗ったようだ。

戸田「こいつめ!やっと捕まえたぞ!」

私は死神の恐怖を感じ、無我夢中で暴れまわった。もう、なにがなんだかわからない。

戸田「ああっ!」
思い出したが、雨が降っていたのだ。雨にぬれ滑りやすくなったムチから、私はからくも脱出した。

再度の逃走。もう何時間走ったのか知れない。なぜ、なぜ鬼太郎兄弟があんなことを?
数十年前に依頼をした時は、力を合わせて私を妖怪から守ってくれたのに・・・。
雨のせいか、私は泣いているのか分からなかったが、哀しかった。

真っ暗な森、不気味な蛙の声の中、私はなおも走り続ける。
すぐ後ろに、死神がくっついている。そう思うと止まるどころか後ろを見ることも出来なかった。

男「あれは・・・!」

この安堵、あれは松岡さん、松岡さんだ!長男で一番冷静沈着、彼なら、この状況から私を救ってくれる!!!

男「ま、松岡さん!!松岡さん松岡さん松岡さん!!!」

私は松岡さんの前に倒れこんだ。そしてその足を抱きしめる。はたから見れば、なんとも情けない格好であったろう。

私はゆっくりと松岡さんを見上げた。


そこにあったのは なによりも怖い ずぶぬれで無表情な 松岡さんの顔

男「あ、あ・・・あ」
松岡「・・・」
男「た、たすけて・・・ください・・・お・・・お願いします」

全く気が付かなかったが、雨はいつの間にかかなり激しくなっていたようだ。
一瞬目の前が真っ白になる。

松岡「残念ですけど、あなたは地獄行きですよ」

少し遅れて、もの凄い雷鳴。

男「あ・・・ひ・・・ひ?」

松岡「お~い死神、こっ・・・」

またしても目を潰すほどの白い閃光、そしてその瞬間の雷鳴。近くに落ちたようだ。
その白い閃光からさめた時、目の前にいた。あの時の、死神。

男「キキキヒヒヒヒヒヒヒ」

私は理解した。雨を全く感じないはずだ。

私が松岡さんの足を抱くように回した手は、透けていた。

そして私はいくら走っても息が切れないはずである。

男「ヒヒッ!ヒィー!クケケケケケッ」


私には足が なかった


松岡「まあ、因果応報ですよ。それじゃあ死神、あとは・・・」

正論。正論だ。
そうだ、あの布団から飛び起きて逃げ出したときチラリと見たもの。そうだ、確かに『私』は、あそこで死んでいた。

私は目の前が真っ暗になる。
私は幼少の頃、笑いながら聞いた祖母の話を思い出す。

男の祖母「地獄には閻魔様がいて、うそつきは舌を抜かれるんじゃ。血の池に針山、灼熱。刑期は短くて1兆年じゃぞ・・・」




              ああ、おばあちゃん、僕を助けて