きまって日曜日に図書館を訪れるのは、届けられた予約本を借りるためなのですが、カウンターの前に新着本の書棚があって、手続きの間に手を伸ばすこともあります。
たいていはぺらぺらとめくって元に戻すのですが、こちらは冒頭の一首に惹かれて借りてきました。
こころとは脳の内部にあるという倫理の先生の目の奥の空
あとで知ったことですが、第50回角川短歌賞を受賞した‘乱反射’を中心に、17歳から20歳までの三年間に詠んだ歌をあつめた第一歌集だそうです。
冒頭の歌は、高校生時代のものですね。気になった歌をいくつか挙げてみると ―
天井に水面が映り水の夢浸透圧に冒された昼
牛乳のあふれるような春の日に天に吸われる桜のおしべ
黒髪を後ろで一つに束ねたるうなじのごとし今日の三日月
特急の電車ぐわんとすぎるとき頭の中でワニが口開く
十代の感性で切り取られた情景の中に、ほのかにたゆたう官能ともいうのでしょうか。そこに魅力を感じます。
図書館の本なのでとられていましたが、帯にはレミオロメンの藤巻さんが推薦文を書かれているそうです!
「あの頃を過ぎた人も、真っ只中の人も、全ての時間の一瞬一瞬ってこんなにも素敵だぞ」
ちょっと調べてみると、8月29日付け読売新聞水曜夕刊・カルチャー面の「PoPStyle」で、小島さんと藤巻さんの対談が掲載されているということで、さっそく(遅い^^;)チェックしてみました。そのなかで ―
藤巻:この歌集を読んだとき、言葉の質感にひかれました。例えば…。
【妹が叱られている雨の午後こぼれ落ちゆくアロエの果肉】
なんだか色や匂いがあって、ウェットな感じもする。かわいい。
小島:その歌をほめてもらったのは初めてです。ありがとうございます。
…
小島:そう言えば、わたしレミオロメンさんの曲を聴きながら、よく短歌を作ることがあります。
【ゆらゆらとくらげふえゆくこの夏もビニール傘はなくなっている】
この歌は、アルバム【HORIZON】の「傘クラゲ」を聴いていて、ふと言葉が浮かんできました。
藤巻:歌詞を書いていると、つい内面を吐露し過ぎることがあります。でもこの曲は、伝えたいことと自分を冷静に見ることのバランスがうまく取れた。
小島:「深海に沸く静かなマグマ」「二つの傘のクラゲ」。本当に独特な言葉遣い。触れていると、瞑想しているように自分の中でイメージがわき上がってきます。
短歌は今もそうでしょうけれど、声に出して歌うことが基本にあるのだろうと思うので、ポップスの歌詞とももっと影響し合ってもいいのかもしれません。
‘傘’が出てくる次の歌も気に入りました。
なんとなくかなしくなりて夕暮れの世界の隅に傘を忘れる
クァク監督の【ラブストーリー】のあのシーンがふと甦りました^^ そのつながりで次の歌も…。
なにもないこともないけどなにもない或る水彩画のような一日
小島なおさんの画像は、《
コチラ》
posted by sakae at 23:21
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