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男が魔法を使って、 ナニが悪いっ!! 第一章 その2」(2011/11/03 (木) 17:38:07) の最新版変更点

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[[作品紹介ページ]]>>[[設定紹介バナナな人]]>>[[男が魔法(ry 第一章>男が魔法を使って、 ナニが悪いっ!! 第一章]]>>[[第一章その2>男が魔法を使って、 ナニが悪いっ!! 第一章 その2]] ***男が魔法を使って、 ナニが悪いっ!!  「ああああああああああっ!!」  エナに僕の意思を伝えた後、恐怖と緊張に支配された体は怪物へと向かって強烈な体当たりをかましていた。攻撃がくるとは思っていなかったのか、油断していた黒い塊の怪物は少しだけとはいえ距離をとった。僕は、女の子を逃がすなら今しかないと思った。 「た、立って!」 「あ……」  呼びかけてみたが視線は僕を見ていない。放心状態なのか。しかし今はとにかく、この女の子にはなんとしてもこの場を逃げてもらう必要がある。とはいえいくら呼びかけても反応は返ってこない。 「こうなったら……」  僕は覚悟を決める。一度大きく息を吸い、そして女の子を抱きかかえた。いわゆる、お姫様抱っこの形で。 「だあああああああああああああああ!!」  公園の出口までは7メートルくらいあるだろうか。現在全力を持って抱えあげているわけなんだけど、開始数秒で既に腕の力が抜け始めている事実に僕自身の筋力のなさに絶望した。こんなことなら、腕立てでもしていればよかったな。それにしても小学生くらいなら問題ないかなと思っていた僕の判断が酷く甘かったことを思い知らされてしまったよ。そういえば一回だけ陽花が怪我したから家まで背負って帰ったこともあったっけなぁ。そのときも女の子って重たいんだなぁとか思ったっけなぁ。 「あ」  ぐら、と体が揺れる。バランスが崩れる。体の体重が前方方向へ集中し始めるのを右足が感じ取る。 「うおおおおおおあああああ!!」  僕の全てを、左足にこめた。僕+女の子の全体重を、僕のなけなしの全力はどうにか受け止めきることに成功した。代わりに、今ので全部の体力を使ってしまったわけなんだけど。 「はぁ……も、無理……はぁ……」  正直女の子を落とさなかっただけ僕をほめたい。というか誰かほめてほしい。 「ゆ、ユウキさん!」  遅れて飛んできたエナが心配そうに声をかけてきた。僕はゆっくり女の子を地面に降ろしてからそれに答える。 「ぼ、僕は大丈夫だよ……えと、それより、グリーとかいうのは?」 「奴でしたらまだ動いていませんから安心してください。そ、それよりその女の子は……?」  女の子の方を見てみると、恐怖からかカタカタと口を震わせてうつむいてしまっていた。ひざを少しだけすりむいているだけでそれ以外の怪我はないらしく、少しだけ僕はほっとした。 「怖がってるけど、一応大丈夫。 でもこのままじゃあの怪物がやってきてしまう」 「……ユウキさん、さっきの言葉って」 「そのままの意味だよ」  魔法使いになるということが、どれだけ大変なことで、これから先の僕の人生がどれだけおかしなことになるのか、そんなことは僕には分からなかったが。  今、僕が感じているこの気持ちを、つぶされてやるわけにはいかないんだよ。 「だから、どうすればいいのか教えてくれ」 「ユウキさん……はい、わかりました!」  いつも思うのだが、素直に感情を表情に出されると恥ずかしいからやめてくれ。まぁ、そんなことは彼女を目の前にしたら言えなくなってしまうわけなのだけどさ。 「えっと、ですね。それじゃ言いますからよく聞いてくださいね」  一体、変身するというのはどんな風にするのだろうと、内心どきどきの僕が聞いたのは次の台詞だった。 『天界の杖よ! キラリとキラメクぴゅあ☆はーとの鼓動に導かれ――今ココに現れよ!』  うんとね。OK。 「ごめん、やっぱりやめるわ」 「なんでですかッ!?」 「いやいやいやおかしいよなんでそんな今の世の中の魔法少女を意識したようなあれなのさ主にピュアハートのところとか突っ込んでほしいのか絶対そうだろ絶対そうなんだろ!?」 「ピュアハートじゃなくてぴゅあ☆はーとですよユウキさん!」 「そんな細かい指摘は求めてないよ!? そもそもその真ん中の☆は発音してないしね!?」 「ユウキさん、何言ってるんですか?」  これは落ち着くべきか。いやまぁこの危機的状況下でこんなことやってる僕らも僕らだろうけど。息を吐いて、吸って、吐いて、吸って。よし。 「あの、本当にそれ言わないと、駄目?」 「駄目です!」  逃げ道なし。回り道もなし。見える道は茨道。  やるしか、ないのだろうか。というかないのだろうな。エナがキラキラ輝きながら僕の方を期待の目で見つめているわけだし。  僕は一歩、化け物へと向かって進んで、目をつぶる。  深く、息を吸って、それを数秒の間肺の中で味わってから、声に変換した。 『天界の杖よ! キラリとキラメクぴゅあ☆はーとの鼓動に導かれ――今、ココに現れよ!』  変化を感じたのはその言葉を唱え終わるのとほぼ同時のことで、ちょうど突き出していた右手。そこに輝きの渦が集まって何かが現れようとしている。原理は不明だが右手周辺から凄まじい風が放射状に吹き荒んで、僕の髪の毛は大いに荒れ模様となっている。 「やりました! それこそが魔法使いのための杖です!」 「こ、これが……」  今のところまだ何も形作られてはいないみたいだが、それでも僕自身が呼び出したのは間違いない。そう思うと感動も一入だ。 「後は変身するだけです!」 「いや、そこが肝心要だと思うんだけど!? 何にもわかんないんだけど!?」 「そこはもうバーってイメージすればどうにかなりますから! なのでがんばってください!」 「杖出すときは色々決まってたのになんで変身は適当なんだよおい!」  ここまできたら仕方がない。直進する以外他はない。  僕は右手の輝きの渦を握り締めると、ご丁寧にもありがちというか王道の塊のような台詞を叫んでいた。 「――変身ッ!!」  ――思考停止――  ――光――抱擁――  ――変化――力――充満―― 「ん――」  目を開けると、総ては終わっていた。言いようのない充足感と確かな手触りが僕の手の中に存在していた。 「僕は……」  僕は魔法少女――言い換えるなら魔法少年へと、その姿を変えているのだった。  明らかに子供の身長になっているのはきっと気のせいじゃないんだろうなきっと。 「そのままじゃないのかよおおおおおおおおおおおおおおお!!」  公園に再び僕の絶叫が響き渡るのだった。 「さぁユウキさんがんばってください!」  いやいやいやいや今は絶対それどころじゃないというか突っ込みどころは色々あるわけだがまず言わせてほしいのはどうして僕は子供の姿になっているのかということなわけだが(ついでにいうとちょっとかわいらしい服になっている)  だがしかし運命とは非常なもので僕が突っ込みを入れる前に例の化け物はすでに僕に向かって突撃を仕掛けているのが目に映った。 「コッナクソぉ!」  僕は右手に構えていた杖をちょうど野球のバッターのように振りぬいて化け物の頭を攻撃する。攻撃された化け物は非力な僕が攻撃したとは思えないほどの距離を吹き飛んでいくとそのまま地面に無様な姿で転がっていた。 「……すげぇ」  思わず素直に感心してしまった。実際ただ変身したというだけでこんな細い金属(?)の先端に星型の飾りのようなものがついている杖を振り回しただけでここまで相手が吹き飛ぶとは思っても見なかった。 「僕って、もしかして今すごい強い?」 「ユウキさん、今こそ魔法ですよ魔法! 相手を倒すんです!」  少しくらい感傷に浸らせてくれたっていいじゃないか。まぁとは言うもののそこまでの余裕はないみたいだし。すでに化け物――グリーズは地面から立ち上がろうとしている。確かにエナの言うとおりチャンスだろう。しかし 「僕が魔法知ってるわけないだろ!」 「あ、そうでしたね」 「そうでしたね、じゃないだろ!」  このまま有効な技がないままなら間違いなく僕の方が消耗してやられてしまうのは明らかだ。でも今からエナに教えてもらうなんて、そんな都合の良いことできるはずも……  ――想像です―― 「――想像?」  今、頭の中で声が――  ――イメージするのです―― 「い、イメージったって……」  ――思い描くのです―― 「思い描くって言われても……いきなり無理だよ!」  ――えーと、取っ掛かりを差し上げますので、それでどうにかしてください―― 「案外適当だなおい!」  その瞬間、脳裏に浮かんだのは、流星だった。一つ一つの粒子が光となって突き進んでいって、周りの風景を飲み込みながらどこまでもどこまでも光り輝いていて、最終的に全て宇宙に溶け込む。そんなイメージが。  これは、つまりはそれをやれってことなんだろうか。どこの誰だか知らないけどずいぶんと無茶振りをしてくれるじゃないか。新米の魔法使いにそんなことできると思っているのかと。まぁそんなことを愚痴ったところでこの現状がどうにかなることはないのだけれど。 「まぁ、やるしかない――よね」  大きく息を吸った。特に意味はない。ただ空気がないと動けないのが人間というものだろう。  大きく息を吐いた。特に意味はない。ただ呼吸しないと動けないのが人間というものだろう。  大きく杖を掲げた。特に意味はない。ただ助走がないと動けないのが人間というものだろう。    そして大きく杖を振って叫んでみた。  特に意味はない。  ただ。 「うらあああああああああああああああああああああああッ!!」  何か叫んでないと格好がつかないのが人間というものだろう。    僕がそれを認識するころには、目の前の景色は白一色に染まりあがっていて。  公園にグリーズの姿はどこにもなく。  白一色から茜一色の景色へと変わっていた。
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