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*【統一銀河連邦】  全盛期には銀河系の七割を支配していた連邦国家。  前身は“大喪失”によって太陽系を追われた難民たちの「統一船団連邦」であり、 これが銀河系各星域へと拡散しながら惑星の開拓やコロニー建設を進めていった。 船団が役目を終え、人類が無数の太陽を己のものとしたとき、船団連邦は銀河連邦へと 名を変えた。本編より千年以上前のことになる。  現在は権力構造の最上部が腐敗し切って硬直、反連邦勢力の台頭を招いている。  腐敗を指摘されるに至った理由としては、連邦政府と星間企業が重要技術を独占し、 市民がそれら技術の恩恵を充分に受けられていないことが挙げられる。権力に 執着するあまり、テクノロジーを支配のツールとして使う大企業らと政府。その打倒が 革命軍“ザナドゥ”の大義名分の一つでもあり、市民の支持を受ける。  また連邦は、圧倒的な技術格差を背景に、シングラルなどの超兵器を用いて反対勢力の 弾圧を繰り返してきた。その結果、問題を長期の働きかけで宥和的に解決するよりも、 手っ取り早く武力で片づける武断統治に慣れ切ってしまっている。そうした歪みの蓄積が ニコラス・ノースクリフという傑出した個人を焦点に結んだ像こそ、銀河を二分する戦争である。 #region(「賽は投げられた。では、ルビコンを渡るとしましょう」) **【劫院<クロノン>】  統一銀河連邦の最高権力機関は連邦議会、ということになっている。  中央集権を布いてはいるものの、名目上は無数の国家による連邦制であるため、 会期を区切って毎年議会が開かれているのだ。  強大な権限を持つ連邦大統領が最高議長を兼ねることになっており、一見するとこの 大統領こそが銀河系の支配者であるかのような印象を与える。事実、民衆の大半は そのように認識している。これまで悪役として槍玉に挙げられてきたのも大統領だった。  しかし真の支配者は、連邦政府の権力を支えるテクノロジーの秘伝を受け継ぐ者たち、 すなわち星間企業連合とテクノクラートらによる影の議決機関“劫院<クロノン>”である。 大統領は代々“劫院”の下請けとしてスポークスマン程度の役割を担っていたに過ぎず、 実際の意思決定は議会でも大統領でもなく企業トップと官僚たちによって行われてきた。  この恐るべき癒着の支配構造が形成されたのは船団時代で、国家が権勢を失っていた 混乱の時代に、秩序を取り戻し人類文明の復興を行う主体となったのが企業連であった。 船団連邦政府も彼らの主導で設立されたものゆえ、政策には予め企業の利益が組み込まれている。 その船団を引き継ぐ形で発足した銀河連邦政府も、彼らの支配力を拒むことはできなかった。  現在“劫院”を構成するメンバーはいずれも矮星族で、外見年齢10歳以下の者がほとんど。 だが実年齢は(つい最近に代替わりがあった所を除けば)100歳以上の者ばかり。 唯一、新たに大統領に就任したティツィアーノ・ヴェロッキオのみが青年の容姿を持ち、 実年齢においても30歳代と非常に若い。しかし彼に期待される役割は「傀儡」であるため、 大統領と言えど“劫院”の一員としてカウントされることはあまりないのが現状。 #endregion #region(「一枚岩には程遠い、ひび割れた化石さ」) **【連邦統合治安維持機構“メガリス”】  市民の大半、公務員でさえも「連邦軍」という俗称を使うことがあるが、公式には 統一銀河連邦に「軍隊」は存在しない。建前上、連邦は人類文明全体を包括している のであり、外敵に対抗するための軍事力というものは保有する必要がないからである。 (異星文明からの攻撃、という可能性はあまり真剣には考慮されていない)  しかし権力を担保するものは最終的には武力であり、また絶えざる反連邦運動を 鎮圧粛清すべく、事実上の軍隊とも呼ぶべきものは要請される。そこで、連邦警察に “高強度犯罪対策部門”なる新部署が設置され、ここが軍の機能を担うこととなった。 一部門といっても、規模はそれ以外の警察全部署を合わせたより巨大なもので、実権は 政府高官や企業群との太いパイプを持つ高強度犯罪対策部門が握ることとなった。やがて 組織再編が進み、遂には警察機能の方が軍機能に従属する形で指揮系統が統合される。 警察の権能と軍の武力・高圧性を併せ持つ、史上最強の暴力機構の誕生である。  正式名称は“連邦統合治安維持機構”に変わったが、人々は建前など無視してこれを 「連邦軍」「軍警察」と呼び、あるいは“メガリス”と呼んだ。メガリスとは考古学などの 用語で「(有史以前の、単一の)巨石」を意味するが、連邦統合治安維持機構を指す場合は 「警察を超越した巨大権力」の意で用いられる。「ポリス」と「メガリス」をかけた駄洒落。  メガリスの階級は軍の形式に準拠しており、上から邏将(上級邏将、邏将、邏将補)、 巡佐(一等~三等)、哨尉(一等~三等)、衛曹(衛曹長、衛曹、衛曹補)、 警兵(単に警吏、憲兵とも呼ばれる。警兵長、一等警兵、二等警兵)まで存在する。  外部の人間が一次的にこの指揮系統に組み入れられる場合は、当該人物の地位や役職に 応じて「二等哨尉待遇」「衛曹待遇」など仮の階級が割り当てられる。傭兵なども 一応はこの「待遇階級」が与えられるが、実際は指揮系統の外に置かれていたり、 二等警兵以下の扱いを受けたりすることも多い。減刑と引き換えに徴兵された囚人、通称 グラディアトールは階級ではないため、特務兵の肩書とは別に各々の階級を持っている。  枠に囚われず優秀な人材を最大限活用するためとの名目で、特に優れた戦果を挙げた者には 「ライセンス」が授与される。これを持つ者(ライセンスホルダー)は、事後にレポートを 提出する義務の下ではあるが、現場では独自の戦略判断に基づく行動を取ることが許される。 事実上、通常の指揮系統外に置かれているのに等しく、傭兵(PMC)同様戦争犯罪の温床と 看做されている。グラディアトールと並ぶメガリスの悪制のひとつ。  ライセンスホルダーは単独行動特権のほかにも数々の自由が認められるが、権力の過大化を 防ぐため、巡佐以上の階級になるとそれ以前に取得したライセンスは返上しなければならない。 昇進後に新たな大功あって、再びライセンスを授与される、ということはあり得る。 #endregion *【解放星団<リベレーション・クラスター>】  銀河系の四割を勢力圏に収める反連邦勢力のネットワーク。  現在中心となっているのは革命家ニコラス・ノースクリフ率いる義勇軍“ザナドゥ”であるが、 彼の登場以前から“星団”自体は存在していた。しかし当時の“星団”はネットワークと 銘打ちながらも有機的な連携を欠き、あろうことかCJPO(連邦統合治安維持機構。通称メガリス) と癒着して、軍需産業に利益を供するための制御された低強度紛争を演じている組織すらあった。 これをニコラスが粛正・再編し、連邦の支配圏を半分近く削り取る巨大な勢力にまで 編み上げたのが現在の“星団”である。とはいえその巨大さゆえ、末端ではニコラスの 目が届き得ない部隊もあり、そうしたところでは軍規の乱れも見られる。民衆のための闘争を行う 革命者としてクリーンなイメージを保たねばならないニコラスにとって、こうした足手まといの 味方は敵以上に厄介な存在でもある。一部は実際に連邦のイメージ工作が混ざっている。 #region(“ザナドゥ”について) **【革命義勇軍“ザナドゥ”】 “解放星団”の現中核組織“ザナドゥ”は、同名の辺境惑星を発祥の地とする。  惑星ザナドゥは船団連邦初期の開拓星で、星系領主が代々支配していた。領民の教育水準は 意図的に低く抑えられ、知的好奇心は弾圧と粛清によって報いられる。文盲の者も少なくない 彼らは統一銀河連邦の存在すら知らず、鋼の巨人を操る領主を魔術師として恐れていた。  状況が変わったのは51年前。この星を訪れたニコラス・ノースクリフが、体制に不満持つ 領民を率いて、領主の城館へ攻撃を仕掛けた。ニコラスが持ち込んだ星系外のテクノロジーに より民衆は善戦。領主がただ一機保有するシングラルが出撃し、一気に叛乱を鎮圧するかと 思われたが、ニコラスが自ら設計・製造した機体“カレトヴルッフ”の前に敗れる。 リプレイサー・ドライブ搭載の連絡艇などが一隻も脱出できなかったことで、この革命を 銀河連邦が察知するまでに数年を要した。  四百年に及んだ領主の支配は終わり、人々はテクノロジーの恩恵を受ける権利を勝ち取った。 しかし連邦が異変に気付けば、再び不条理な規制と歪んだ経済の押し付けが始まる。根本的な 解決のためには銀河連邦の変革こそが必要である、とニコラスは説いた。一度得た自由を 奪われてはならない、連邦との対立は不可避である、そうした論理と自らのカリスマ性で以て ニコラスはザナドゥの住民を懐柔。元をただせば彼が煽動し巻き込んだ戦いであるにもかかわらず、 反対派は少なかった。これは無知だった人々がテクノロジーの味を知ってしまったからでもある。 文明は基本的に後退をしない。すでに後戻りは利かなかった。  禁断の果実を喰らった同星は反体制勢力の拠点へと急速に生まれ変わり、この組織はやがて 発祥の地から名を取って革命義勇軍“ザナドゥ”と自称。ニコラスの卓越した戦略眼に導かれ、 反連邦闘争の最大勢力となってゆく。  ニコラスを批判する者はこの経緯を旧約聖書の失楽園に準え、彼は神の意に背いて無知な人々を 堕落せしめた「狡猾なる蛇」であると断罪する。一方、ニコラスの支持者はギリシャ神話や グノーシス主義を引用し返し、彼はプロメテウスやサタン同様の「文化英雄」であると称揚する。 ザナドゥのシンボルマークである「金色の球体へ差し延ばされる手」は、実際これらの神話的 イメージからモチーフを得たデザインである。黄金の球体は太陽(天の火)であるとも、 智恵の果実であるとも解釈できる。また、下方から伸びた手は球体を掴もうとしているようにも、 支えようとしているようにも見える。 #endregion **【宗教自治星区“ブラーフマナ”】 #region(名称について) (原語ブラフマンはサンスクリット語の「力」から。特に、物質世界を変える儀式や  犠牲・生贄の力を意味する。ブラーフマナは「ブラフマンに属するもの」の意であり、  この自治区が「世界を変革する“力”に属す者の国」であることを示す) #endregion  新興宗教コミュニティ“マハブラーモ・サマージ”による自治が連邦に認められている星区 (星区は星系を複数束ねた行政単位)。新興とはいえその源流は古く、人類が地球と 太陽系圏を追われた“大喪失<グランド・フォーフェト>”の直後に生まれた宗教団体が 彼らの始祖とされる。 「テクノロジーを人為に任せるから悲劇が起きる。神意にかなう形で運用することによってのみ、 テクノロジーは真に人間を幸福にする」という思想が中核にあり、訓練された高位聖職者集団 “大人(うし)”によるテクノロジーの徹底管理を政治の要旨とする。彼らの用いる地球文明 由来の遺失技術は、ブラックボックス化され「魔術」と呼ばれており、それが人智を越えた (つまり神とその僕たる聖職者らのみに扱いが許される)力であることを示している。 すなわちブラーフマナの統治システムは神権政治とシャーマニズム的呪術国家の皮をかぶった テクノクラシーであり、正体を隠すものが違うだけで実質的には連邦と同様。テクノロジーを 支配のツールにする手口の徹底ぶりでは連邦を越えている。  教義はヒンドゥー、仏、キリスト、イスラム、ゾロアスターなどの宗教用語・神話を混成して 作られている。北欧やギリシャの古代神話、ユダヤ民間伝承までも取り込んだその教えは 要約不可能なほどの混沌。しかし矛盾すら許容する混沌ゆえに間口が広く、本来宗教とは 相容れぬ概念であるはずの多様性を内包するため、信者は多い。多様性が可能であるのは、 何よりも信仰を示すのが行動や生活態度であるとされているため。
*【統一銀河連邦】  全盛期には銀河系の七割を支配していた連邦国家。  前身は“大喪失”によって太陽系を追われた難民たちの「統一船団連邦」であり、 これが銀河系各星域へと拡散しながら惑星の開拓やコロニー建設を進めていった。 船団が役目を終え、人類が無数の太陽を己のものとしたとき、船団連邦は銀河連邦へと 名を変えた。本編より千年以上前のことになる。  現在は権力構造の最上部が腐敗し切って硬直、反連邦勢力の台頭を招いている。  腐敗を指摘されるに至った理由としては、連邦政府と星間企業が重要技術を独占し、 市民がそれら技術の恩恵を充分に受けられていないことが挙げられる。権力に 執着するあまり、テクノロジーを支配のツールとして使う大企業らと政府。その打倒が 革命軍“ザナドゥ”の大義名分の一つでもあり、市民の支持を受ける。  また連邦は、圧倒的な技術格差を背景に、シングラルなどの超兵器を用いて反対勢力の 弾圧を繰り返してきた。その結果、問題を長期の働きかけで宥和的に解決するよりも、 手っ取り早く武力で片づける武断統治に慣れ切ってしまっている。そうした歪みの蓄積が ニコラス・ノースクリフという傑出した個人を焦点に結んだ像こそ、銀河を二分する戦争である。 #region(CJPOについて) **【連邦統合治安維持機構“メガリス”】  市民の大半、公務員でさえも「連邦軍」という俗称を使うことがあるが、公式には 統一銀河連邦に「軍隊」は存在しない。建前上、連邦は人類文明全体を包括している のであり、外敵に対抗するための軍事力というものは保有する必要がないからである。 (異星文明からの攻撃、という可能性はあまり真剣には考慮されていない)  しかし権力を担保するものは最終的には武力であり、また絶えざる反連邦運動を 鎮圧粛清すべく、事実上の軍隊とも呼ぶべきものは要請される。そこで、連邦警察に “高強度犯罪対策部門”なる新部署が設置され、ここが軍の機能を担うこととなった。 一部門といっても、規模はそれ以外の警察全部署を合わせたより巨大なもので、実権は 政府高官や企業群との太いパイプを持つ高強度犯罪対策部門が握ることとなった。やがて 組織再編が進み、遂には警察機能の方が軍機能に従属する形で指揮系統が統合される。 警察の権能と軍の武力・高圧性を併せ持つ、史上最強の暴力機構の誕生である。  正式名称は“連邦統合治安維持機構”に変わったが、人々は建前など無視してこれを 「連邦軍」「軍警察」と呼び、あるいは“メガリス”と呼んだ。メガリスとは考古学などの 用語で「(有史以前の、単一の)巨石」を意味するが、連邦統合治安維持機構を指す場合は 「警察を超越した巨大権力」の意で用いられる。「ポリス」と「メガリス」をかけた駄洒落。  メガリスの階級は軍の形式に準拠しており、上から邏将(上級邏将、邏将、邏将補)、 巡佐(一等~三等)、哨尉(一等~三等)、衛曹(衛曹長、衛曹、衛曹補)、 警兵(単に警吏、憲兵とも呼ばれる。警兵長、一等警兵、二等警兵)まで存在する。  外部の人間が一次的にこの指揮系統に組み入れられる場合は、当該人物の地位や役職に 応じて「二等哨尉待遇」「衛曹待遇」など仮の階級が割り当てられる。傭兵なども 一応はこの「待遇階級」が与えられるが、実際は指揮系統の外に置かれていたり、 二等警兵以下の扱いを受けたりすることも多い。減刑と引き換えに徴兵された囚人、通称 グラディアトールは階級ではないため、特務兵の肩書とは別に各々の階級を持っている。  枠に囚われず優秀な人材を最大限活用するためとの名目で、特に優れた戦果を挙げた者には 「ライセンス」が授与される。これを持つ者(ライセンスホルダー)は、事後にレポートを 提出する義務の下ではあるが、現場では独自の戦略判断に基づく行動を取ることが許される。 事実上、通常の指揮系統外に置かれているのに等しく、傭兵(PMC)同様戦争犯罪の温床と 看做されている。グラディアトールと並ぶメガリスの悪制のひとつ。  ライセンスホルダーは単独行動特権のほかにも数々の自由が認められるが、権力の過大化を 防ぐため、巡佐以上の階級になるとそれ以前に取得したライセンスは返上しなければならない。 昇進後に新たな大功あって、再びライセンスを授与される、ということはあり得る。 #endregion *【解放星団<リベレーション・クラスター>】  銀河系の四割を勢力圏に収める反連邦勢力のネットワーク。  現在中心となっているのは革命家ニコラス・ノースクリフ率いる義勇軍“ザナドゥ”であるが、 彼の登場以前から“星団”自体は存在していた。しかし当時の“星団”はネットワークと 銘打ちながらも有機的な連携を欠き、あろうことかCJPO(連邦統合治安維持機構。通称メガリス) と癒着して、軍需産業に利益を供するための制御された低強度紛争を演じている組織すらあった。 これをニコラスが粛正・再編し、連邦の支配圏を半分近く削り取る巨大な勢力にまで 編み上げたのが現在の“星団”である。とはいえその巨大さゆえ、末端ではニコラスの 目が届き得ない部隊もあり、そうしたところでは軍規の乱れも見られる。民衆のための闘争を行う 革命者としてクリーンなイメージを保たねばならないニコラスにとって、こうした足手まといの 味方は敵以上に厄介な存在でもある。一部は実際に連邦のイメージ工作が混ざっている。 #region(“ザナドゥ”について) **【革命義勇軍“ザナドゥ”】 “解放星団”の現中核組織“ザナドゥ”は、同名の辺境惑星を発祥の地とする。  惑星ザナドゥは船団連邦初期の開拓星で、星系領主が代々支配していた。領民の教育水準は 意図的に低く抑えられ、知的好奇心は弾圧と粛清によって報いられる。文盲の者も少なくない 彼らは統一銀河連邦の存在すら知らず、鋼の巨人を操る領主を魔術師として恐れていた。  状況が変わったのは51年前。この星を訪れたニコラス・ノースクリフが、体制に不満持つ 領民を率いて、領主の城館へ攻撃を仕掛けた。ニコラスが持ち込んだ星系外のテクノロジーに より民衆は善戦。領主がただ一機保有するシングラルが出撃し、一気に叛乱を鎮圧するかと 思われたが、ニコラスが自ら設計・製造した機体“カレトヴルッフ”の前に敗れる。 リプレイサー・ドライブ搭載の連絡艇などが一隻も脱出できなかったことで、この革命を 銀河連邦が察知するまでに数年を要した。  四百年に及んだ領主の支配は終わり、人々はテクノロジーの恩恵を受ける権利を勝ち取った。 しかし連邦が異変に気付けば、再び不条理な規制と歪んだ経済の押し付けが始まる。根本的な 解決のためには銀河連邦の変革こそが必要である、とニコラスは説いた。一度得た自由を 奪われてはならない、連邦との対立は不可避である、そうした論理と自らのカリスマ性で以て ニコラスはザナドゥの住民を懐柔。元をただせば彼が煽動し巻き込んだ戦いであるにもかかわらず、 反対派は少なかった。これは無知だった人々がテクノロジーの味を知ってしまったからでもある。 文明は基本的に後退をしない。すでに後戻りは利かなかった。  禁断の果実を喰らった同星は反体制勢力の拠点へと急速に生まれ変わり、この組織はやがて 発祥の地から名を取って革命義勇軍“ザナドゥ”と自称。ニコラスの卓越した戦略眼に導かれ、 反連邦闘争の最大勢力となってゆく。  ニコラスを批判する者はこの経緯を旧約聖書の失楽園に準え、彼は神の意に背いて無知な人々を 堕落せしめた「狡猾なる蛇」であると断罪する。一方、ニコラスの支持者はギリシャ神話や グノーシス主義を引用し返し、彼はプロメテウスやサタン同様の「文化英雄」であると称揚する。 ザナドゥのシンボルマークである「金色の球体へ差し延ばされる手」は、実際これらの神話的 イメージからモチーフを得たデザインである。黄金の球体は太陽(天の火)であるとも、 智恵の果実であるとも解釈できる。また、下方から伸びた手は球体を掴もうとしているようにも、 支えようとしているようにも見える。 #endregion **【宗教自治星区“ブラーフマナ”】 #region(名称について) (原語ブラフマンはサンスクリット語の「力」から。特に、物質世界を変える儀式や  犠牲・生贄の力を意味する。ブラーフマナは「ブラフマンに属するもの」の意であり、  この自治区が「世界を変革する“力”に属す者の国」であることを示す) #endregion  新興宗教コミュニティ“マハブラーモ・サマージ”による自治が連邦に認められている星区 (星区は星系を複数束ねた行政単位)。新興とはいえその源流は古く、人類が地球と 太陽系圏を追われた“大喪失<グランド・フォーフェト>”の直後に生まれた宗教団体が 彼らの始祖とされる。 「テクノロジーを人為に任せるから悲劇が起きる。神意にかなう形で運用することによってのみ、 テクノロジーは真に人間を幸福にする」という思想が中核にあり、訓練された高位聖職者集団 “大人(うし)”によるテクノロジーの徹底管理を政治の要旨とする。彼らの用いる地球文明 由来の遺失技術は、ブラックボックス化され「魔術」と呼ばれており、それが人智を越えた (つまり神とその僕たる聖職者らのみに扱いが許される)力であることを示している。 すなわちブラーフマナの統治システムは神権政治とシャーマニズム的呪術国家の皮をかぶった テクノクラシーであり、正体を隠すものが違うだけで実質的には連邦と同様。テクノロジーを 支配のツールにする手口の徹底ぶりでは連邦を越えている。  教義はヒンドゥー、仏、キリスト、イスラム、ゾロアスターなどの宗教用語・神話を混成して 作られている。北欧やギリシャの古代神話、ユダヤ民間伝承までも取り込んだその教えは 要約不可能なほどの混沌。しかし矛盾すら許容する混沌ゆえに間口が広く、本来宗教とは 相容れぬ概念であるはずの多様性を内包するため、信者は多い。多様性が可能であるのは、 何よりも信仰を示すのが行動や生活態度であるとされているため。

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