神界
神やその奴隷である天使たちが好んで住む世界。
圧倒的な技術力、軍事力、経済力をもち、実質的に全世界に君臨している。
少数民族による閉鎖的な統治がなされており、少数の有力な貴族たちが寡頭政体を形成し、
一年ごとに支配権を回しあっている。
冥界
悪魔や幽鬼たちが住む世界。上層と下層に別れており、下層に行くほど重要な行政区画や歴史的建造物が密集する。
極めて広大な領域をそれぞれ地方領主たちが分権的に治めており、まとまりは薄かった。
かつて人界と結んだ神界との約千年にわたる侵略戦争に完膚なきまでに大敗し、以後は政治・経済的に神界に従属することになった。
戦後、荒廃した領土の復興と神界の支配から脱するため、魔王を最大権威とする緩やかな「国家統一」がなされ、
官僚制と冥界正規軍が組織・整備された。
人界
人間やその他の生物がすむ世界。
厳密には神々の創造想像した世界だが、著しく発展、拡大して実力を持ったため、主権を認められた。
そのため神界には友好同盟を結ぶとともに臣下の礼をとって服従している。
かつて神界とともに冥界を攻め、不干渉条約を結ばせた。
農業製品や工業製品の品質が高く、貿易不均衡で冥界を苦しめている。
今のところ国際的な力関係は冥界<人界<神界である。
次界
主に神界に住む神々がそれぞれ好き勝手に作り出した世界。
神界は領域的にとても矮小なので、
大概の神々は部族ごとに自分たちの住みよい次界を創造して、そこに居を構えていることが多い。
神の創造力が続く限り無尽蔵に作り出すことができ、「神々の世界」と言った場合、ここを指すことの方が一般的である。
例外はあるにしても、次界は無から有を生み出すことができる、神々にだけ領有可能な世界であり、
他の民族に対する神々の優越性を主張する論拠としてもよく持ち出される。
ブライヅヘルド子爵領
冥界の上層貴族シュール・レアルの治める領地。辺境に近いド田舎。
冥界の中では比較的小領であるが、ウサギを追うに適した山あり、小鮒を釣るに適した川あり、
その他耕地にふさわしい平野、西端に広がる砂漠、まだ見ぬ冒険の待つ大森林などを備え、変化に富んだ美しい景観を誇る。
神冥戦争終結のドサクサに紛れてシュールの祖父が領有・支配したしがない辺境領であったのだが、
ズム・ダアダ騒乱の結果、彼女がこの地に逃れて眠りに就いてしまった。
以来、ズムの監視所が設置され、自領に召喚されたシュールが彼女を監視する任務に就いている。
シュール帰還以後から、こっそりじわじわと領域を拡大しているという噂がある。
魔都インシピット・ヴィータ
冥界の下層にある第1首都。第14233階層に位置する。
冥界に君臨する魔王リグランデアル・カン・ヴィータの故地であった小都市を、
戦後、彼が民主的に魔王に選ばれてから急激に開発して首都とした計画都市。
政治・商業・学業の中心地であり、莫大な領土を誇る冥界の、あらゆる富や頭脳、人口が集まってくるところでもある。
都市の中央に宮殿と行政区画(国会、官庁、大使館など)、
それを囲むように軍人街、商業区画、市民街、学業特区があり、その外側を環状に取り巻く歓楽街が広がっている。
今なお拡大・発展中であるが、「鉄壁の方円」という結界が覆っている部分までが暫定的な魔都の領域である。
大小の都市問題増加が騒がれているが、ことに近年の、人界資本による企業買収や、ズム・ダアダ騒乱の被災難民などは解決が急務の問題とされる。
都市部を外れると広大な農地が広がっており、まだこの地が小都市だったころの名残を色濃くのこしている。
冥界にある他の都市に比べて、歴史はないに等しい。
そうは言っても、魔王宮、三爵宣誓広場、国会議事城、ヴィータ大学、コンメジア教会など、観光資源には見るものが多く、
観光目的で訪れる人たちも後を絶たない。
シュールが大学時代を過ごした都市で、ロストンはここに居住している。
名乗ったもん勝ち時代
冥界における中世封建時代初期、実力者たちが各地で主権を主張して勝手放題に領土を持ち、貴族を自称し始めた時代。
冥界の貴族の多くはこの頃自分で名乗りをあげた者たちである。
もちろん爵位や尊称なども好き勝手に名乗りたいものを名乗ったが、実力が伴わずに名前だけ大層な者たちも当然多数存在した。
この時代には超絶大魔王や暗黒地獄極楽大将軍、阿修羅義炉珍侯爵など、凄まじい称号を持つ者たちが各地に氾濫していたが、
質実剛健が美徳とされ、個の武力を尊びそれを他に示すことが名誉である戦国乱世でもあったため、
実力を持たぬ高位貴族たちは決闘のいいカモとなり、次々と淘汰されてその姿を消していったようである。
冥界における国定爵位
冥界における爵位は十一等爵であり、最高位から順に
魔爵>皇爵>帝爵>覇爵>大公爵>公爵>候爵>伯爵>子爵>男爵>下爵
となる。
高位になればなるほどそれ相応の実力が求められ、不幸にも爵位にふさわしくないとみなされた者は
格上の貴族たちに決闘と称してリンチされたり、賞金をかけられて命を狙われる立場となることが多い。
魔爵:冥界最大権威である魔王および魔王経験者にのみ与えられる最高位。
皇爵:魔王の血族に与えられる爵位。魔王が交代するとはく奪され、公爵位が与えられる。
帝爵・覇爵・大公爵:いわゆる高位三爵。国会における貴族院は以上の五爵で運営される。
古くから冥界を支配し、かつ生き残ってきた実力最強クラスの血統貴族以外で、現在爵位を有する者はいない。
公爵~男爵:低位貴族階級。役人などの官職貴族はここまでしか出世できない。
下爵:国家公務員試験に合格すると下賜される名ばかりの爵位。他の爵位からは貴族とみなされていない。
名刺の隅にでも書いておくのがふさわしい称号。全爵位の中で最も人口が多い。
この下にも血統貴族たちが思いのままに叙勲することができる騎士などの雑称階級が存在するが、
国家的に認められて通用する爵位はこの十一等爵である。
三爵宣誓
神冥戦争に敗れた冥界は国家的統一の必要性を実感し、冥界の指導的役割を果たしてきた貴族たちや戦時中頭角を現した軍事指導者たちが集まって会議を開き、
冥界の議会制による統治と国軍の整備・近代化を決議する。
その後、冥界全土にお触れを出して魔王の一族を除く実質的な実力者、すなわち帝爵、覇爵、大公爵の三爵を招集した。
国会議事城前の広場にて一同に会した(便宜上)全ての最上位貴族たちは、
神界の支配から脱して冥界を再興するために「富国強兵政策を妨害せず、神界を利せず」という誓いを交わし、全国に発布した。
これを三爵宣誓といい、冥界の近代的ナショナリズムの源泉とされる。
誓いが交わされた広場は宣誓広場と名付けられており、魔都における観光名所として有名となっている。
特殊災厄監察官
冥界において特別な警戒を必要とすると認定された災厄因子を観察し、記録し、報告する任務を帯びた特別職。
身分は内務省員として扱われ、特殊災厄に関する事柄においては三等官級の権限を与えられる。
実質、三等官の持つ権限は大臣に次ぐものであり、普段は一介の九等官であるシュールが文武問わず高官たちと比肩するということで
内心煙たがっている者も少なくないようだ。
ズム・ダアダ騒乱以降、彼女を監視するために急きょ設けられた役職であり、
目下のところ特殊災厄とはズム・ダアダだけのことを指し、現在この職務に就いているのはシュール・レアルただ一人である。
副都I.V.N
冥界上層における行政中枢にして最大規模の都市。
I.V.Nはインシピット・ヴィータ・ノヴァの略称である。他にも「I.V.ノヴァ」、「ノヴァ」、「イヴン」などの通称でも呼ばれることがある。
魔都インシピット・ヴィータの双子都市で、魔都の発展と並行して開発が進められていった。
古代からの街道や運河の結節点で交通の要衝である。かつては大市が開かれる商業拠点として有名だったところ。
神界、人界との距離的親和性もあり、冥界も含めた三界のさまざまな商品が安定して入手できる数少ない都市でもある。
ブライヅヘルドからは馬車で2週間の距離である。
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